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E.ホップの拡張定理
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数学の[[測度論]]における'''{{仮リンク|E.ホップ|en|Eberhard Hopf}}の拡張定理'''({{Lang-en-short|Hopf extension theorem}})とは、[[有限加法的測度]]が[[完全加法族]]上の(完全加法的)[[測度論|測度]]に拡張できるための条件を述べた[[定理]]である。 {{mvar|X}} を集合、<math>\mathcal{F}</math> を {{mvar|X}} 上の[[有限加法族]]とする。<math>\mathcal{F}</math> 上の有限加法的測度 {{mvar|μ}} が、{{mathcal|F}} が生成する[[完全加法族]] <math>\sigma [ \mathcal{F} ]</math> 上の測度へと拡張されるための必要十分条件は、{{mvar|μ}} が <math>\mathcal{F}</math> 上[[完全加法的集合関数|完全加法的]]であることである。さらに、可算個の <math>X_1, X_2, \ldots \in \mathcal{F}</math> で {{math2|1=''μ''(''X{{sub|k}}'') < ∞ (∀''k''),}} {{math2|1=''X'' = ⋃{{subsup||''k''{{=}}1|∞}}''X{{sub|k}}''}} なるものが存在すれば、拡張は一意的である。 [[カラテオドリの拡張定理]]は、[[ジョルダン測度]]が[[ルベーグ測度]]に一意に拡張できることを示したものだが、E.ホップは、より一般の有限加法的測度が(完全加法的)測度に拡張できるための必要十分条件を示した<ref>[https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~aida/lecture/24/analysisB2.pdf#page=4 ルベーグ積分入門後編 平成24年12月13日版] 会田茂樹</ref>。ただし、本稿の一般の有限加法的測度についての定理を「カラテオドリの拡張定理」と呼んでいるテキストも多く見られる。 == 定理の内容 == <math>\Sigma_0</math> を[[集合]] <math>X</math> の部分集合の[[有限加法族]]とする。関数 :<math>\mu_0\colon \Sigma_0 \to\mathbb{R}\cup \{\infty\}</math> は'''有限加法的'''であるとする。すなわち :<math>\mu_0\bigl( \textstyle\bigcup\limits_{n=1}^N A_n \bigr) = \sum\limits_{n=1}^N \mu_0 (A_n)</math> が <math>\Sigma_0</math> 内の任意の有限個の[[素集合|互いに素]]な集合 <math>A_1, A_2, \ldots, A_N</math> に対して成り立つものとする。 また、この関数はより強い'''σ-加法性'''も満たすものとする。すなわち、 :<math>\mu_0\bigl( \textstyle\bigcup\limits_{n=1}^\infty A_n \bigr) = \sum\limits_{n=1}^\infty \mu_0 (A_n)</math> が、<math>\cup_{n=1}^\infty A_n \in \Sigma_0</math> を満たす <math>\Sigma_0</math> 内の任意の互いに素な集合列 <math>( A_n )_{n \in \mathbb{N}}</math> に対して成り立つものとする(これらの2つの性質を満たす関数 <math>\mu_0</math> は[[前測度]]として知られている)。このとき <math>\mu_0</math> は、<math>\Sigma_0</math> により生成される[[完全加法族|σ-代数]] <math>\Sigma</math> 上で定義されるある測度へと拡張される。すなわち、<math>\Sigma_0</math> への[[定義域#定義域の制限と延長|制限]]が <math>\mu_0</math> と一致するようなある測度 :<math>\mu : \Sigma\to \mathbb{R}\cup\{\infty\}</math> が存在する。 <math>\mu_0</math> が σ-有限であるなら、この拡張は一意である。 == 拡張の非一意性 == <math>\mu_0</math> が <math>\sigma</math>-有限でないなら、上述のような拡張は必ずしも一意ではない。たとえその拡張自身が <math>\sigma</math>-有限であっても、その一意性は保証されない。 そのような一例を挙げる: <math>a, b \in \mathbb{Q}</math> に対し、<math>[a,b)</math> の形で表される任意の <math>\mathbb{Q}</math> の部分集合を'''有理閉開区間'''と呼ぶことにする。 <math>X</math> を <math>\mathbb{Q}\cap[0,1)</math> とし、<math>\Sigma_0</math> を、<math>\mathbb{Q}\cap[0,1)</math> に含まれるすべての有理閉開区間の有限な[[合併 (集合論)|合併]]からなる代数とする。実際そのような <math>\Sigma_0</math> が代数であることは簡単に証明することができる。また、<math>\Sigma_0</math> に含まれるすべての空でない集合は無限大であることも、簡単に分かる。 <math>\mu_0</math> を、<math>\Sigma_0</math> に定義される集合計数関数 (<math>\#</math>) とする。<math>\mu_0</math> が <math>\Sigma_0</math> 内において有限加法的かつ <math>\sigma</math>-加法的であることは明らかである。<math>\Sigma_0</math> に含まれるすべての空でない集合は無限大であるため、すべての空でない集合 <math>A\in\Sigma_0</math> に対して <math>\mu_0(A)=+\infty</math> が成り立つ。 今 <math>\Sigma</math> を、<math>\Sigma_0</math> によって生成される <math>\sigma</math>-代数とする。<math>\Sigma</math> が <math>X</math> の部分集合のボレル <math>\sigma</math>-代数であり、<math>\#</math> と <math>2\#</math> は <math>\Sigma</math> 上定義される測度で、それらはいずれも <math>\mu_0</math> の拡張であることが分かる。 == 解説 == この定理は、完全加法性が簡単に確かめられる小さい有限加法族上で測度を定義してから、それが生成する完全加法族への測度の拡張を行うことが常に可能である点において、優れている。この定理は自明ではない。なぜならばこの定理では、<math>\mu_0</math> を有限加法族からより大きい完全加法族へと拡張し、しかも(<math>\mu_0</math> が <math>\sigma</math>-有限であるなら)その拡張は一意であり、また拡張した関数の完全加法性も満たされている必要があるためである。 == 参考文献 == * {{Cite book|和書 |author=伊藤清三 |year=2008 |title=ルベーグ積分入門 |series=数学選書4 |edition=第46版 |publisher=[[裳華房]] |isbn=978-4-7853-1304-3 |ref=harv}} == 脚注 == {{Reflist}} == 関連項目 == * [[前測度]] * [[カラテオドリの拡張定理]] * [[コルモゴロフの拡張定理]] {{Mathanalysis-stub}} {{確率論}} {{DEFAULTSORT:ほつふのかくちようていり}} [[Category:測度論の定理]] [[Category:数学に関する記事]] [[Category:数学のエポニム]]
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