F値のソースを表示

{{出典の明記|date=2016-10-23}}
{{Otheruses|光学分野におけるF値 (F-number)|その他|F値 (曖昧さ回避)}}

'''F値''' （エフち、{{lang-en-short|F-number}}）とは、レンズの[[焦点距離]]を[[#有効口径と明るさ|有効口径]]で割った[[無次元量]]の値を指し、[[レンズ]]の明るさを示す指標として用いられる。F値のFとは「焦点の」を意味する"focal"から来ている。

F値が小さいほどレンズは明るく（=レンズを通る光量が多い）、シャッター速度を速くできる。
<ref>[https://av.jpn.support.panasonic.com/support/dsc/knowhow/knowhow11.html レンズの焦点距離とF値] - [[Panasonic]]</ref>

[[ファイル:Aperture diagram.svg|thumb|300px|[[%E7%B5%9E%E3%82%8A_(%E5%85%89%E5%AD%A6)#%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%BA%E7%B5%9E%E3%82%8A|絞り]]を変化させたF値の模式図。絞り1段ごとに光を集める面積は半分になり、F値は1.4倍となっている。]]

F値の表記は、「F」もしくは「𝑓/」に続けて、その値を表記する（例：F値が2の場合に「F2」もしくは「𝑓/2」）。またを<math>2\log_2 F</math>が
[[%E7%B5%9E%E3%82%8A_(%E5%85%89%E5%AD%A6)#%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%BA%E7%B5%9E%E3%82%8A|絞り]]の段数値となる。

== 有効口径と明るさ ==
有効口径とは、レンズの光軸上無限遠の位置にある点光源を想定したときに、その点光源からレンズへ入射する平行光線の光束の直径のことである。
F値を<math>{f_n}</math>とすると下の式のようになる。

<math>f_n=\frac{f}{\Phi}</math>

<math>{f}</math>: [[焦点距離]]<br />
<math>{\Phi}</math>: 有効口径

有効口径が大きいということは、光をより多く集められるということである。有効口径が<math>1/\sqrt{2}</math>になると光を集める面積は半分になる。したがって、F値が<math>\sqrt{2}</math>倍となるごとに明るさは半分となる。

== 焦点距離を割ることの意味 ==
* 焦点距離/開口径である「F値」が決まると実像の明るさが決定する。
* これに露出時間を乗じれば「光量」となる。
* 実像の大きさが焦点距離に比例する。

カメラのライトヴァリューLV値の定義としては「'''減光量'''」で考えて、F^2=1、1/T=1として、相対比値を2底の対数で表している。

レンズが結ぶ像の面積は焦点距離の2乗に比例して拡大する。一方、レンズに入射する光の量はレンズの有効面積に比例する。レンズの有効面積は有効直径の2乗に比例する。したがって、像の面積あたりの光量（照度）は焦点距離の2乗に反比例し有効径の2乗に比例する。すなわち、（有効径/焦点距離）の2乗≡1/F数の2乗に比例する。
<!-- 2つの係数の比をとることで[[無次元数|無次元化]]を行っているとも言える。←像の明るさが無次元のF数に拠るので、敢えて特別の基準を設けて無次元化しているわけではなく不適切な例として削除。フィルター解析で、主折れ点周波数で周波数軸を正規化するような場合にこそ、周波数が無次元の周波数比に還元されるから「無次元化」は相応しいが、Ｆ数は違う、元々の明るさの指標 -->

== F値とT値とH値 ==
F値はレンズの明るさを示す指標として広く使われているが、レンズの[[透過率]]などの影響により、F値のみを用いて[[露出 (写真)|露出]]を正確に議論をすることはできない。

特に問題となるのは（透過率とは無関係だが）レンズが撮像面から離れる[[接写|マクロ撮影]]の場合である。前の節の説明は無限遠の被写体の撮影が前提であるが、マクロ撮影ではその前提が大きく崩れる。レンズ面を通過する光量は同じのまま、レンズを離したことで像が大きくなっているわけであるから、一定サイズの像における光量はその分低下するという理屈である<ref>正確には対称型配置のレンズでは直感的に原理通り、おおよそ倍率に反比例するが、非対称な望遠タイプや逆望遠タイプでは比率が異なる。</ref>。日本の多くの（大手）メーカはマクロレンズについても通常の公称F値が示される設計としているが、[[ニコン]]はマクロレンズを実効F値が示される設計としている。[[安原製作所|安原]]のNANOHAx5のようにマクロ専用であるためとしてマクロ撮影時（同レンズの場合は5倍）における実効F値を仕様として公称している場合もある。

レンズの透過率が問題になる場合としては、コーティング技術がなかった時代の表面反射では、例えば1面の透過率が95%とすれば4群6枚構成のレンズで4群=8面から約66%（0.95の8乗は0.6634...）の光量しか透過しないことになる。[[スムース・トランスファー・フォーカス|STF]]レンズのようにフィルタが含まれている光学系などでも問題となる。光学系の透過率を加味した実質的な明るさを示す指標を'''T値'''と呼び、映画用高級レンズでは[[絞り (光学)|絞り環]]がT値表示されていることがある。前述の[[スムース・トランスファー・フォーカス|STFレンズ]]等を除くとスチル写真用レンズにはほとんど存在しないが[[フォトン (カメラ)|フォトン]]用クック・アモタール・アナスチグマット2inT2.2（F2）とクック・フィールド・パンクロ4inT2.8（F2.5）、[[ニコン]]のFマウント[[ニコン産業用・特殊用レンズの一覧#300mmT2.2|300mmT2.2]]（F2）が知られている。ただコーティング技術の進歩で表面反射が減り、またレンズを透過した後の光量を測定するTTL露出計が一般的になっていることもあり、一般用途の写真撮影においてF値とT値の差が問題になることはないと考えてよい。

[[ローデンシュトック#イマゴン|イマゴン]]など絞りでなくレンコン状などのグリッドで光量調整するレンズではF値が使えないため、相当値のH値が使用される。これも露出決定に際しF値と同様に扱って問題はない。

== 開放F値 ==
レンズの絞りを開放（全開）した時のF値を'''開放F値'''という。開放F値の小さなレンズを「明るいレンズ」という。また高速シャッタースピードで撮影できることから「ハイスピードレンズ」「高速レンズ」などの呼び方もある。

一般向けに市販されている製品としては、数字上F値は[[コシナ]]の「[[フォクトレンダー#現代日本に蘇ったフォクトレンダー|フォクトレンダー]]スーパーノクトンF0.8」（[[マイクロフォーサーズ]]、29mm、フルサイズ換算58mm）、{{要説明範囲|実効F値|date=2024-07-05}}であれば[[ライカ]]の「ノクティルックス M 50mm f/0.95」(ライカMマウント)や、[[ニコン]]の「ニッコール Z 58mm f/0.95 S Noct」（[[ニコンZマウントレンズの一覧|ニコンZマウント]]）などが最も明るいレンズである。またかつては[[キヤノン]]から「キヤノン 50mm f/0.95」(キヤノンSマウント)が市販されていた。

特注品としては、[[アポロ計画]]用に設計されたものを[[スタンリー・キューブリック]]が手に入れ、映画『[[バリー・リンドン]]』に使用した[[カール・ツァイス]]の「プラナー50mmF0.7」や、旧日本軍用に東京光学（現[[トプコン]]）が設計した「トーコー50mmF0.7」を基に戦後再設計し、[[毎日新聞社]]の南極探検隊が使用した「シムラー50mmF0.7」などがある。

現実的にはシャッタースピードの限界や[[被写界深度]]の問題があるため、最高でもF1.2からF1.4程度が実用域、F2.8程度あれば充分に明るいレベルといえる。

== 国際絞りと大陸絞り ==
現在はF1に始まり1段階で露光量が半分になる国際絞りが一般に使用されている。すなわちF1、F1.4、F2、F2.8、F4、F5.6、F8、F11、F16、F22、F32、F45、、、である。

古いレンズには大陸絞りを採用しているレンズもある。（F1.1、F1.6、）F2.2、F3.2、F4.5、F6.3、F9、F12.5、F18、F25、F36、F50、、、である。

== 標準的なF値表示 ==
=== 1段ごと ===
{|class="wikitable" style="text-align:center"
!Av
| −2 || −1 || 0 || 1 || 2 || 3 || 4 || 5 || 6 || 7 || 8 || 9 || 10 || 11 || 12 || 13 || 14 || 15 || 16
|-
|-bgcolor="#CCFFCD"
!表示
| 0.5 || 0.7 || 1.0 || 1.4 || 2 || 2.8 || 4 || 5.6 || 8 || 11 || 16 || 22 || 32 || 45 || 64 || 90 || 128 || 180 || 256
|-
!計算値
| 0.5 || 0.707… || 1.0 || 1.414… || 2.0 || 2.828… || 4.0 || 5.657… || 8.0 || 11.31… || 16.0 || 22.62… || 32.0 || 45.25… || 64.0 || 90.51… || 128.0 || 181.02… || 256.0
|}

=== 1/2段ごと ===
{|class="wikitable" style="text-align:center"
!Av
| −1 || −0.5 || 0 || 0.5 || 1 || 1.5 || 2 || 2.5 || 3 || 3.5 || 4 || 4.5 || 5 || 5.5 || 6 || 6.5 || 7 || 7.5 || 8 || 8.5 || 9 || 9.5 || 10 || 10.5 || 11 || 11.5 || 12 || 12.5 || 13 || 13.5 || 14
|-
|-bgcolor="#FFFFCC"
!表示
|style="background:#CCFFCC;"| 0.7 || 0.8 ||style="background:#CCFFCC;"| 1.0 || 1.2 ||style="background:#CCFFCC;"| 1.4 || 1.7 ||style="background:#CCFFCC;"| 2 || 2.4 ||style="background:#CCFFCC;"| 2.8 || 3.3 ||style="background:#CCFFCC;"| 4 || 4.8 ||style="background:#CCFFCC;"| 5.6 || 6.7 ||style="background:#CCFFCC;"| 8 || 9.5 ||style="background:#CCFFCC;"| 11 || 13 ||style="background:#CCFFCC;"| 16 || 19 ||style="background:#CCFFCC;"| 22 || 27 ||style="background:#CCFFCC;"| 32 || 38 ||style="background:#CCFFCC;"| 45 || 54 ||style="background:#CCFFCC;"| 64 || 76 ||style="background:#CCFFCC;"| 90 || 107 ||style="background:#CCFFCC;"| 128
|}

=== 1/3段ごと ===
{|class="wikitable" style="text-align:center"
!Av
| −1 || −0.7 || −0.3 || 0 || 0.3 || 0.7 || 1 || 1.3 || 1.7 || 2 || 2.3 || 2.7 || 3 || 3.3 || 3.7 || 4 || 4.3 || 4.7 || 5 || 5.3 || 5.7 || 6 || 6.3 || 6.7 || 7 || 7.3 || 7.7 || 8 || 8.3 || 8.7 || 9 || 9.3 || 9.7 || 10 || 10.3 || 10.7 || 11 || 11.3 || 11.7 || 12 || 12.3 || 12.7 || 13
|-
|-bgcolor="#e5d1cb"
!表示
|style="background:#CCFFCC;"| 0.7 || 0.8 || 0.9 ||style="background:#CCFFCC;"| 1.0 || 1.1 || 1.2 ||style="background:#CCFFCC;"| 1.4 || 1.6 || 1.8 ||style="background:#CCFFCC;"| 2 || 2.2 || 2.5 ||style="background:#CCFFCC;"| 2.8 || 3.2 || 3.5 ||style="background:#CCFFCC;"| 4 || 4.5 || 5.0 ||style="background:#CCFFCC;"| 5.6 || 6.3 || 7.1 ||style="background:#CCFFCC;"| 8 || 9 || 10 || style="background:#CCFFCC;"|11 || 13 || 14 ||style="background:#CCFFCC;"| 16 || 18 || 20 ||style="background:#CCFFCC;"| 22 || 25 || 29 ||style="background:#CCFFCC;"| 32 || 36 || 40 ||style="background:#CCFFCC;"| 45 || 51 || 57 ||style="background:#CCFFCC;"| 64 || 72 || 80 ||style="background:#CCFFCC;"| 90
|}

=== 1/4段ごと ===
====0≦Av≦5====
{|class="wikitable" style="text-align:center"
!Av
| 0 || 0.25 || 0.5 || 0.75 || 1 || 1.25 || 1.5 || 1.75 || 2 || 2.25 || 2.5 || 2.75 || 3 || 3.25 || 3.5 || 3.75 || 4 || 4.25 || 4.5 || 4.75 || 5 <!-- || 10.25 || 10.5 || 10.75 || 11 || 10.25 || 11.5 || -->
|-
|-bgcolor="#5D8AA8"
!表示
|style="background:#CCFFCC;"| 1.0 || 1.1 ||style="background:#FFFFCC;"| 1.2 || 1.3 ||style="background:#CCFFCC;"| 1.4 || 1.5 ||style="background:#FFFFCC;"| 1.7 || 1.8 ||style="background:#CCFFCC;"| 2 || 2.2 ||style="background:#FFFFCC;"| 2.4 || 2.6 ||style="background:#CCFFCC;"| 2.8 || 3.1 ||style="background:#FFFFCC;"| 3.4 || 3.7 ||style="background:#CCFFCC;"| 4 || 4.4 ||style="background:#FFFFCC;"| 4.8 || 5.2 ||style="background:#CCFFCC;"| 5.6
|-
|-bgcolor="#5D8AA8"
!ミノルタ
|style="background:#CCFFCC;"| 1.0<sub>0</sub> || 1.0<sub>1</sub> ||style="background:#FFFFCC;"| 1.0<sub>2</sub> || 1.0<sub>3</sub> ||style="background:#CCFFCC;"| 1.4<sub>0</sub> || 1.4<sub>1</sub> ||style="background:#FFFFCC;"| 1.4<sub>2</sub> || 1.4<sub>3</sub> ||style="background:#CCFFCC;"| 2.0<sub>0</sub> || 2.0<sub>1</sub> ||style="background:#FFFFCC;"| 2.0<sub>2</sub> || 2.0<sub>3</sub> ||style="background:#CCFFCC;"| 2.8<sub>0</sub> || 2.8<sub>1</sub> ||style="background:#FFFFCC;"| 2.8<sub>2</sub> || 2.8<sub>3</sub> ||style="background:#CCFFCC;"| 4.0<sub>0</sub> || 4.0<sub>1</sub> ||style="background:#FFFFCC;"| 4.0<sub>2</sub> || 4.0<sub>3</sub> ||style="background:#CCFFCC;"| 5.6<sub>0</sub>
|}
====5≦Av≦10====
{|class="wikitable" style="text-align:center"
!Av
| 5 || 5.25 || 5.5 || 5.75 || 6 || 6.25 || 6.5 || 6.75 || 7 || 7.25 || 7.5 || 7.75 || 8 || 8.25 || 8.5 || 8.75 || 9 || 9.25 || 9.5 || 9.75 || 10 <!-- || 10.25 || 10.5 || 10.75 || 11 || 10.25 || 11.5 || -->
|-
|-bgcolor="#5D8AA8"
!表示
|style="background:#CCFFCC;"| 5.6 || 6.2 ||style="background:#FFFFCC;"| 6.7 || 7.3 ||style="background:#CCFFCC;"| 8 || 8.7 ||style="background:#FFFFCC;"| 9.5 || 10 ||style="background:#CCFFCC;"| 11 || 12 ||style="background:#FFFFCC;"| 14 || 15 ||style="background:#CCFFCC;"| 16 || 17 ||style="background:#FFFFCC;"| 19 || 21 ||style="background:#CCFFCC;"| 22 || 25 ||style="background:#FFFFCC;"| 27 || 29 ||style="background:#CCFFCC;"| 32
|-
|-bgcolor="#5D8AA8"
!ミノルタ
|style="background:#CCFFCC;"| 5.6<sub>0</sub> || 5.6<sub>1</sub> ||style="background:#FFFFCC;"| 5.6<sub>2</sub> || 5.6<sub>3</sub> ||style="background:#CCFFCC;"| 8.0<sub>0</sub> || 8.0<sub>1</sub> ||style="background:#FFFFCC;"| 8.0<sub>2</sub> || 8.0<sub>3</sub> ||style="background:#CCFFCC;"| 11<sub>0</sub> || 11<sub>1</sub> ||style="background:#FFFFCC;"| 11<sub>2</sub> || 11<sub>3</sub> ||style="background:#CCFFCC;"| 16<sub>0</sub> || 16<sub>1</sub> ||style="background:#FFFFCC;"| 16<sub>2</sub> || 16<sub>3</sub> ||style="background:#CCFFCC;"| 22<sub>0</sub> || 22<sub>1</sub> ||style="background:#FFFFCC;"| 22<sub>2</sub> || 22<sub>3</sub> ||style="background:#CCFFCC;"| 32<sub>0</sub>
|}

== 注 ==
<references/>

== 関連項目 ==
*[[レンズ]]
*[[被写界深度]]

== 外部リンク ==

* [http://finch.wp.xdomain.jp/camera/macro/ カメラと光について]　マクロ撮影時の実効F値について記載あり
{{Tech-stub}}
{{写真}}
{{デフォルトソート:えふち}}
[[Category:幾何光学]]
[[Category:無次元数]]