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'''JT-60'''は、[[日本]]の[[磁場閉じ込め方式|磁場封じ込め型]][[核融合]]実験装置である。[[日本原子力研究所]]（JAERI、後に[[日本原子力研究開発機構]]を経て[[量子科学技術研究開発機構]]）が1985年から運用している。「JT」はJAERI [[トカマク型|Tokamak]]、「60」は計画当初のプラズマ体積60立方メートルに由来する<ref>[http://www.jaea.go.jp/14/back/no110.html 「ロクマル」への誇りと愛着－那珂核融合研究所－] 日本原子力研究開発機構 JAEAメールマガジン（2010年1月15日）2020年4月25日閲覧</ref><ref name=":0">{{Cite journal|author=量子科学技術研究開発機構|month=7|year=2020|title=FEATURE ARTICLE 0 1 ファーストプラズマに向けJT-60SAいよいよ始動！|url=https://www.qst.go.jp/uploaded/attachment/17338.pdf|journal=QST NEWS LETTER|volume=13|page=|pages=1-2}}</ref>。当時最高水準の核融合[[積]](温度・密度・閉じ込め時間の積)を樹立した。
<math>(1.77 \times 10^{28}\  \mathrm{K \cdot s \cdot m^{-3}}  =  1.53 \times 10^{21}\  \mathrm{keV \cdot s \cdot m^{-3}}</math>)<ref>{{Cite web|和書|url=http://www-jt60.naka.qst.go.jp/figure-J/html/figure_jt60_3.html|title=核融合プラズマ性能の進展|publisher=量子科学技術研究開発機構|accessdate=2020/6/26}}</ref>
== 概要 ==
JT-60は[[トカマク型]]でD型の断面で欧州の[[Joint European Torus|JET]]に似ている。実験結果は[[ITER]]に反映されている。

1998年、重水素プラズマで良好な成績を収めた。JT-60では[[トリチウム]]は使用していない。トリチウムを使用した場合、投入エネルギーと発生エネルギーの比([[エネルギー増倍率|Q]])は1.25になることが予想される。核融合反応の持続にはQは1よりもはるかに大きい値が必要である。

2006年5月9日、日本原子力研究開発機構は28.6秒プラズマの持続に成功したと発表した。2004年の16.5秒の記録を塗り替えた背景には安定した磁場を作るために用いた[[フェライト相|フェライト]]部品の貢献がある。

== 後継機 ==
JT-60は、日本と[[欧州連合]]によって締結された「[[幅広いアプローチ]]（正式名称：「核融合エネルギーの研究分野における、ブローダー・アプローチ活動の共同実施のための政府間協定）」によって、日本原子力研究開発機構と[[欧州原子力共同体]]の相互研究成果の持ち寄りによって、改造設置が行われることになった。

正式名称はJT-60SA。2007年に着工し、2020年4月22日に完成が発表された<ref>{{cite news|url=https://www.jaif.or.jp/journal/japan/2778.html|title=核融合超伝導トカマク型実験装置「JT-60SA」が完成、今秋のプラズマ着火予定 |publisher=[[日本原子力産業協会]] |newspaper=原子力産業新聞 |date=2020年4月23日 |accessdate=2020/6/26}}</ref>。高さ約16メートル、幅は約13メートルで、2020年4月時点では世界最大の核融合実験装置である<ref>「核融合実験 最大の装置＊茨城に完成」『[[読売新聞]]』朝刊2020年4月23日（社会面）</ref>。プラズマ体積は、JT-60の約2倍に相当する、133立方メートル<ref>{{Cite web|和書|url=http://www-jt60.naka.qst.go.jp/figure-J/html/figure_jt60sa_2.html|title=JT-60SAの装置パラメータ|publisher=量子科学技術研究開発機構|accessdate=2020/6/26}}</ref>になり、初期諸元はプラズマ密度や物理学的な諸元は、[[ITER]]に匹敵する予定。なお、この実験装置は、サテライト・トカマク型実験装置として、欧州原子力共同体側からも遠隔運転が出来るようになっている。また、プラズマ閉じ込め用の[[コイル]]を[[超伝導]]化することで100秒間のフラットトップ時間を得る<ref name=":0" />とともに、プラズマ断面形状の非円形度および三角度をJT-60Uより高くすることで高いβ値が得られるものと期待されている。

最大の目的は、核融合発電の実証を目指して、高いQ値及びβ値の実証的研究を行うことである。ITERの場合には、400秒の核融合反応の維持を目指しているが、JT-60SAでは100秒間の維持を目指している<ref name=":0" />。100秒を目標にしたのは、プラズマの状態が安定するのに100秒かかると考えられており、100秒を維持できるノウハウがあれば原理的には500秒や1000秒以上という次の段階へ進むことも可能という<ref name=":0" />。

諸元は、JT-60の2倍以上の規模になり、様々な改良が施されることになっているが、JT-60の名称がそのまま用いられるのは、JT-60建屋をそのまま再利用することや、これまでのJT-60実験が評価されたためである<ref name=":0" />。

本研究装置の目的は、ITERを補完する実験を行うこと、ITERを支援する実験を行うこと、ITERの実験や原型炉開発のための人材を育成することにある<ref name=":0" />。

[[平成]]28年度（2016年度）より原子力機構の核融合開発部門は量研機構に移行した。

クライオスタットベース、超伝導平衡磁場コイル、真空容器、トロイダル磁場コイル、中心[[ソレノイド]]（CS）、クライオスタット胴部を設置した<ref>{{Cite web|和書|title=JT-60SA建設|url=https://www.qst.go.jp/site/jt60/5148.html|website=www.qst.go.jp|accessdate=2020-04-18|publisher=量子科学技術研究開発機構}}</ref>。
[[File:JT-60SA Inauguration Ceremony.png|thumb|2023年12月1日に行われた、JT-60SA運転開始記念式典。左から、欧州委員（エネルギー担当）の[[カドリ・シムソン]]、[[文部科学大臣]]の[[盛山正仁]]、[[内閣府特命担当大臣（科学技術政策担当）]]の[[高市早苗]]。]]
最初のプラズマ「ファーストプラズマ」を着火する統合試験運転を2020年春から実施中で、ファーストプラズマは2020年秋の予定<ref name=":0" />であったが、実験開始後に生じたクライオスタット内での超伝導コイル本体と電路をつなぐコイル接続部の絶縁損傷により、大幅に遅れ、2023年10月23日にファーストプラズマを発生させた<ref>[https://www.qst.go.jp/site/press/20231024-1.html JT-60SA初のプラズマ生成に成功～日欧で取り組む幅広いアプローチ活動で大きなマイルストーンを達成～]</ref>。

=== 主要仕様 ===
* 装置形式：[[トカマク型]] - トロイダル磁場コイル・ポロイダル磁場コイル・中心ソレノイドは超伝導型
* プラズマ電流：5.5 MA<ref>{{Cite web|和書|title=JT-60SA計画とは|url=https://www.qst.go.jp/site/jt60/5150.html|website=www.qst.go.jp|accessdate=2020-04-18|publisher=量子科学技術研究開発機構}}</ref>
* トロイダル磁場：2.25 T
* 大半径：2.97 m
* 小半径：1.18 m
* 非円形度：1.93
* 三角度：0.50
* 表面安全係数：3
* プラズマ体積：133 m<sup>3</sup>
* フラップトップ時間：100 s
* 加熱・電流駆動パワー：41 MW × 100 s
* 垂直入射 NBI：16 MW
* 接線入射(Co) NBI：4 MW
* 接線入射(CTR) NBI：4 MW
* 負イオン源 NBI：10 MW
* 電子[[サイクロトロン]]波(ECRH)：7 MW
* プラズマ対向機器熱負荷：15 MW/m<sup>2</sup>
* 年間[[中性子]]発生量：1.5 × 10<sup>21</sup>

== 関連項目 ==
=== 設置運営者 ===
* [[量子科学技術研究開発機構]]

=== 場所 ===
* 那珂研究所内([[茨城県]][[那珂市]])

=== 関連事業 ===
* [[幅広いアプローチ]]
* [[KSTAR]] - 将来的に'''5分'''間の高温プラズマの維持を実現を目指す[[韓国]]の核融合実験炉<ref>대덕 시험용 핵융합로 ‘KSTAR’ 가동 『중앙 데일리 뉴스』2011.04.02 </ref>。

== 脚注 ==
{{reflist}}

== 外部リンク ==
* [https://www.qst.go.jp/site/jt60/ 先進プラズマ研究開発] - 量子科学技術研究開発機構
* [https://web.archive.org/web/20060603155534/http://www.yomiuri.co.jp/dy/features/science/20060511TDY04004.htm JT-60's Newly Achieved Plasma Record]（2006年6月3日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]]）

{{核融合実験装置}}
{{DEFAULTSORT:JTろくしゆう}}

[[Category:エネルギー]]
[[Category:核融合炉]]
[[Category:日本原子力研究開発機構]]
[[Category:量子科学技術研究開発機構]]