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{{出典の明記|date=2020年11月}} '''RC回路'''({{lang-en-short|RC circuit}})は、[[抵抗器]]と[[コンデンサ]]で構成され、[[電圧源]]または[[電流源]]で駆動される[[電気回路]]。'''RCフィルタ'''、'''RCネットワーク'''とも。1つの抵抗器と1つのコンデンサから構成される一次RC回路は、最も単純なRC回路の例である。 ==概要== [[File:Discharging capacitor.svg|200px|thumb|right| RC回路]] 線形[[アナログ回路]]部品には、[[抵抗器]](R)、[[コンデンサ]](C)、[[コイル]](L)がある。これらの組み合わせとしては、RC回路のほかに[[RL回路]]、[[LC回路]]、[[RLC回路]]が重要である(それぞれ、使っている部品の種類によって名前が付けられている)。多くの[[アナログ回路]]の重要な基本的特性はこれらの回路で示される。特に、これらの回路は[[パッシブフィルタ]]として機能する。本項目では、[[直列回路と並列回路#直列回路|直列]]型と[[直列回路と並列回路#並列回路|並列]]型のRC回路を扱う。 ==複素インピーダンス== [[静電容量]]<math>C</math>([[ファラド]])のコンデンサの[[インピーダンス]]<math>Z_C</math>([[オーム]])は次の式で表される。 {{Indent|<math>Z_C = \frac{1}{sC}</math>}} [[角周波数]]<math>s</math>は一般に[[複素数]]であり、次のように記述される。 {{Indent|<math>s \ = \ \sigma + j \omega</math>}} ここで *<math>j = \sqrt{-1}</math>([[虚数単位]]) *<math>\sigma</math>は[[指数減少]]定数([[ラジアン]]/秒) *<math>\omega</math>は[[正弦波]]角周波数(ラジアン/秒) ===正弦波定常状態=== 正弦波定常状態は、入力電圧が(指数減少成分がない)純粋な正弦波であるような特殊ケースを意味する。したがって {{Indent|<math>\sigma \ = \ 0</math>}} であり、<math>s</math>は次のように表せる。 {{Indent|<math>s \ = \ j \omega</math>}} ==直列回路== [[File:RC Series Filter (with V&I Labels).svg|thumb|right|250px|[[直列回路と並列回路#直列回路|直列]]RC回路]] 直列回路を[[分圧回路]]と見たとき、コンデンサにかかる[[電圧]]は以下のようになる。 {{Indent|<math>V_C(s) = \frac{1/Cs}{R + 1/Cs}V_{in}(s) = \frac{1}{1 + RCs}V_{in}(s)</math>}} また、抵抗器にかかる電圧は以下のようになる。 {{Indent|<math>V_R(s) = \frac{R}{R + 1/ Cs}V_{in}(s) = \frac{ RCs}{1 + RCs}V_{in}(s)</math>}} ===伝達関数=== コンデンサの[[伝達関数法|伝達関数]]は次のようになる。 {{Indent|<math>H_C(s) = {V_C(s) \over V_{in}(s)} = {1 \over 1 + RCs}</math>}} 同様に抵抗器の伝達関数は以下の通りである。 {{Indent|<math>H_R(s) = {V_R(s) \over V_{in}(s)} = {RCs \over 1 + RCs}</math>}} ====極と零点==== どちらの伝達関数にも1つの[[極 (複素解析)|極]]が次の位置にある。 {{Indent|<math>s = - {1 \over RC}</math>}} さらに、抵抗器の伝達関数には[[原点]]に[[零点]]がある。 ===利得と位相角=== それぞれの部品における利得の大きさは以下の通り。 {{Indent|<math>G_C = | H_C(j \omega) | = \left|\frac{V_C(j \omega)}{V_{in}(j \omega)}\right| = \frac{1}{\sqrt{1 + \left(\omega RC\right)^2}}</math><br> <math>G_R = | H_R(j \omega) | = \left|\frac{V_R(j \omega)}{V_{in}(j \omega)}\right| = \frac{\omega RC}{\sqrt{1 + \left(\omega RC\right)^2}}</math>}} また、それぞれの位相角は次の通り。 {{Indent|<math>\phi_C = \angle H_C(j \omega) = \tan^{-1}\left(-\omega RC\right)</math><br> <math>\phi_R = \angle H_R(j \omega) = \tan^{-1}\left(\frac{1}{\omega RC}\right)</math>}} これらの式をまとめて、出力を一般的な[[フェーザ表示]]で表すと次のようになる。 {{Indent|<math>V_C \ = \ G_{C}V_{in} e^{j\phi_C}</math><br><math>V_R \ = \ G_{R}V_{in} e^{j\phi_R}</math>}} ===電流=== この回路は直列回路なので、電流はどの箇所でも同じであり、次の式で得られる。 {{Indent|<math>I(s) = \frac{V_{in}(s) }{R+1/ Cs} = { Cs \over 1 + RCs } V_{in}(s)</math>}} ===インパルス応答=== 各部品にかかる電圧の[[インパルス応答]]は、それぞれの伝達関数の逆[[ラプラス変換]]である。これは、入力電圧がインパルス([[ディラックのデルタ関数]])の時の回路の応答(出力)を表している。 コンデンサの電圧におけるインパルス応答は次の通り。 {{Indent|<math>h_C(t) = {1 \over RC} e^{-t / RC} u(t) = { 1 \over \tau} e^{-t / \tau} u(t)</math>}} ここで<math>u(t)</math>は[[ヘヴィサイドの階段関数]]であり、 {{Indent|<math>\tau \ = \ RC</math>}} は、[[時定数]]である。 同様に、抵抗器の電圧のインパルス応答は次の通りである。 {{Indent|<math>h_R(t) = \delta (t) - {1 \over RC} e^{-t / RC} u(t) = \delta (t) - { 1 \over \tau} e^{-t / \tau} u(t)</math>}} ここで<math>\delta(t)</math>は[[ディラックのデルタ関数]]である。 ===周波数領域=== 回路の特性は[[周波数領域]]でも表現できる。周波数領域で解析することで、回路(フィルタ)がどの周波数を通過/除去するかを知ることができる。この解析は、周波数が非常に高くなるときや非常に低くなるときの利得がどうなるかを検討する際にも重要である。 <math>\omega \to \infty</math>となるとき: {{Indent|<math>G_C \to 0</math><br><math>G_R \to 1</math>}} <math>\omega \to 0</math>となるとき: {{Indent|<math>G_C \to 1</math><br><math>G_R \to 0</math>}} となる。 すなわち、コンデンサにかかる電圧を出力としたとき、高周波は減衰(除去)し、低周波は通過する。したがって、この回路は[[ローパスフィルタ|低周波濾波器]]として機能する。しかし、抵抗器にかかる電圧を出力とすると、高周波は通過し、低周波は除去される。この場合はこの回路が[[ハイパスフィルタ|高周波濾波器]]として機能する。 フィルタが通過させる周波数の範囲を、そのフィルタの[[帯域幅]]という。フィルタによって信号の電力が本来の半分に減衰させられる周波数を[[遮断周波数]]と呼ぶ。そのとき、回路の利得は次のようになる。 {{Indent|<math>G_C = G_R = \frac{1}{\sqrt{2}}</math>}} この値を上掲の式に当てはめると {{Indent|<math>\omega_{c} = \frac{1}{RC} \ \mathrm{rad/s}</math>}} または {{Indent|<math>f_c = \frac{1}{2\pi RC} \ \mathrm{Hz}</math>}} となる。これがフィルタによって電力が本来の半分になる周波数である。 明らかに位相も周波数によって変化するが、一般に利得の変化ほど注目されない。 <math>\omega \to 0</math>となるとき: {{Indent|<math>\phi_C \to 0</math><br> <math>\phi_R \to 90^{\circ} = \pi/2^{c}</math>}} <math>\omega \to \infty</math>となるとき: {{Indent|<math>\phi_C \to -90^{\circ} = -\pi/2^{c}</math><br> <math>\phi_R \to 0</math>}} となる。 したがって、[[直流]](0[[ヘルツ|Hz]])ではコンデンサの電圧は信号の電圧と位相が同じだが、抵抗器の電圧は位相が90°進む。周波数が高くなるにつれて、コンデンサの電圧の位相は信号の位相に対して90°遅れるようになっていき、抵抗器の電圧の位相は信号の位相と同じになっていく。 ===時間領域=== {{Indent|''本節では[[ネイピア数]] e に関する知識を前提としている。''}} 最も直接的に[[時間領域]]のふるまいを調べるには、上掲の<math>V_C</math>と<math>V_R</math>の式に[[ラプラス変換]]を施せばよい。これにより実質的に<math>j\omega \to s</math>という変換がなされる。[[ヘヴィサイドの階段関数|ステップ入力]](<math>t = 0</math>以前には<math>V_{in} = 0</math>で、その後<math>V_{in} = V</math>となる入力)を与えると、 {{Indent|<math>V_{in}(s) = V\frac{1}{s}</math><br> <math>V_C(s) = V\frac{1}{1 + sRC}\frac{1}{s}</math><br> <math>V_R(s) = V\frac{sRC}{1 + sRC}\frac{1}{s}</math>}} となる。 [[ファイル:Series RC capacitor voltage.svg|thumb|right|230px|コンデンサ電圧のステップ応答]] [[ファイル:Series RC resistor voltage.svg|thumb|right|230px|抵抗電圧のステップ応答]] [[部分分数分解]]と逆[[ラプラス変換]]により、次が得られる。 {{Indent|<math>\,\!V_C(t) = V\left(1 - e^{-t/RC}\right)</math><br> <math>\,\!V_R(t) = Ve^{-t/RC}</math>}} これらの式はコンデンサに電荷が蓄積されるときのコンデンサと抵抗器にかかる電圧を意味する。コンデンサが放電するときは式が全く逆になる。これは、<math>C=Q/V</math> と <math>V=IR</math> という関係([[オームの法則]])を使って電荷と電流で書き換えることもできる。 図に示されている通り、コンデンサにかかる電圧は時間経過とともに ''V'' に近づき、抵抗器にかかる電圧は 0 に近づいていく。これは、コンデンサが時間とともに電圧供給によって電荷を蓄えていき、最終的に完全に電荷を蓄えたときに[[開回路]]になるという直観的理解とも一致する。 これらの式は、直列RC回路に[[時定数]]があることを示し、それを一般に<math>\tau = RC</math>と表す。<math>\tau</math>はコンデンサにかかる電圧<math>V_C</math>が<math>V(1 - 1/e)</math>まで上がるのにかかる時間、および抵抗器にかかる電圧<math>V_R</math>が<math>V(1/e)</math>まで下がるのにかかる時間に対応している。 増減率は<math>\tau</math>当たり<math>\left(1 - \frac{1}{e}\right)</math>である。したがって、<math>t=N\tau</math>から<math>t = (N+1)\tau</math>までの間に電圧は<math>t=N\tau</math>のときの電圧から最終的な電圧に向かって 63.2% 変化する。したがって、コンデンサへの電荷蓄積は<math>\tau</math>後には 63.2 % となり、約<math>5\tau</math>でほぼ完全に(99.3%)電荷を蓄積する。コンデンサが完全に電荷を蓄積した状態で電圧源を短絡回路に置き換えると、コンデンサにかかる電圧は<math>V</math>から 0 へ時間とともに[[指数関数的減衰|指数関数的に低下]]していく。<math>\tau</math>後には電荷が 36.8% となり、約<math>5\tau</math>でほぼ完全に(0.7%)放電する。なお、回路に流れる電流<math>I</math>は、抵抗器にかかる電圧から[[オームの法則]]によって求めることができる。 以上のことは、回路を表した以下の[[微分方程式]]を解くことでも導き出すことができる。 {{Indent|<math>\frac{V_{in} - V_C}{R} = C\frac{dV_C}{dt}</math><br> <math>\,\!V_R = V_{in} - V_C</math>}} 1つめの方程式は[[積分因子]]を使って解くことができ、2つめはそこから容易に解ける。得られる解はラプラス変換を使って得られる解と全く同じである。 ====積分器==== 高い周波数でのコンデンサにかかる電圧を出力とする。高い周波数とは {{Indent|<math>\omega \gg \frac{1}{RC}</math>}} となるような周波数である。 これはつまり、コンデンサに電荷が蓄積されるのに十分な時間がないため、そこにかかる電圧も非常に小さいことを意味する。したがって、入力電圧は抵抗器にかかる電圧にほぼ等しい。これを示すため、次の電流<math>I</math>の式を考える。 {{Indent|<math>I = \frac{V_{in}}{R+1/j\omega C}</math>}} ここで、周波数についての条件は以下のようにも表せる。 {{Indent|<math>\omega C \gg \frac{1}{R}</math>}} したがって {{Indent|<math>I \approx \frac{V_{in}}{R}</math>となり、これは単なる[[オームの法則]]である。}} ここで {{Indent|<math>V_C = \frac{1}{C}\int_{0}^{t}Idt</math>}} であるから {{Indent|<math>V_C \approx \frac{1}{RC}\int_{0}^{t}V_{in}dt</math>}} となり、これはコンデンサにかかる電圧が一種の[[積分器]]となることを意味する。 ====微分器==== 低い周波数での抵抗器にかかる電圧を出力とする。低い周波数とは {{Indent|<math>\omega \ll \frac{1}{RC}</math>}} となるような周波数である。 この場合は、コンデンサは電荷を蓄積する時間があり、その電圧は入力電圧とほぼ等しくなる。再び電流<math>I</math>の式を考える。 {{Indent|<math>R \ll \frac{1}{\omega C}</math>}} であるから {{Indent|<math>I \approx \frac{V_{in}}{1/j\omega C}</math><br> <math>V_{in} \approx \frac{I}{j\omega C} \approx V_C</math>}} となる。したがって、抵抗器にかかる電圧は {{Indent|<math>V_R = IR = C\frac{dV_C}{dt}R</math><br> <math>V_R \approx RC\frac{dV_{in}}{dt}</math>}} となり、これは抵抗器にかかる電圧が一種の[[微分器]]となることを意味する。 [[積分]]や[[微分法|微分]]をより正確にするには、[[オペアンプ]]を使い、その入力や[[フィードバック]]ループに抵抗器やコンデンサを適切に配置する必要がある。 ==並列回路== [[File:RC Parallel Filter (with I Labels).svg|thumb|right|250px|[[直列回路と並列回路#並列回路|並列]]RC回路]] 並列RC回路は直列RC回路ほど興味深い性質を持たない。これは主に出力電圧<math>V_{out}</math>が入力電圧<math>V_{in}</math>と等しいためである。そのため、[[電流源]]を使って入力信号を与えない限り、この回路はフィルタとして機能しない。 複素インピーダンスを使ってそれぞれを流れる電流を表すと、 {{Indent|<math>I_R = \frac{V_{in}}{R}\,</math><br> <math>I_C = j\omega C V_{in}\,</math>}} となる。 以上から明らかなように、コンデンサの電流は抵抗器(および入力)電流から90°位相がずれている。代わりに制御微分方程式を使って表すと次のようになる。 {{Indent|<math>I_R = \frac{V_{in}}{R}</math><br> <math>I_C = C\frac{dV_{in}}{dt}</math>}} ステップ入力(実質的な0[[ヘルツ|Hz]]または[[直流]]信号)を与えると、入力の微分は<math>t=0</math>で[[ディラックのデルタ関数|インパルス]]となる。したがって、コンデンサは急速に電荷が蓄積され、回路が切れた状態になる。 ==関連項目== * [[電気回路]] * [[積分回路]]、[[積分器]] * [[微分器]] ==外部リンク== *[http://www.muzique.com/schem/filter.htm RC Filter Calculator] {{DEFAULTSORT:RCかいろ}} [[Category:アナログ回路]]
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