Sパラメータのソースを表示

{{出典の明記|date=2012年3月}}
'''Sパラメータ'''([[:en:Scattering parameters|Scattering parameters]])とは、[[高周波]][[電子回路]]や高周波[[電子部品]]の特性を表すために使用される[[二端子対回路|回路網パラメータ]]のひとつ。'''散乱行列'''（'''S行列'''）または'''散乱パラメータ'''とも呼ばれる。回路網の通過・反射電力特性を表現する。

== 定義 ==
=== n端子対回路網の定義 ===
n対の端子を持つ電気回路において、入力方向に進む波の振幅を''a<sub>1</sub>・・・a<sub>n</sub>'' 、出力方向に進む波の振幅を''b<sub>1</sub>・・・b<sub>n</sub>''としたとき、次のように記述する。

:''b<sub>1</sub> = S<sub>11</sub>a<sub>1</sub> + S<sub>12</sub>a<sub>2</sub> + ・・・ + S<sub>1n</sub>a<sub>n</sub>''
:''b<sub>2</sub> = S<sub>21</sub>a<sub>1</sub> + S<sub>22</sub>a<sub>2</sub> + ・・・ + S<sub>2n</sub>a<sub>n</sub>''
::''・・・''
:''b<sub>n</sub> = S<sub>n1</sub>a<sub>1</sub> + S<sub>n2</sub>a<sub>2</sub> + ・・・ + S<sub>nn</sub>a<sub>n</sub>''

これらの式を[[行列]]を用いて次のように表現する。
:<math>\begin{pmatrix} b_1 \\ \vdots \\ b_n \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} S_{11} & \cdots & S_{1n} \\ \vdots & \ddots & \vdots \\ S_{n1} & \cdots & S_{nn}\end{pmatrix}\begin{pmatrix} a_1 \\ \vdots \\ a_n \end{pmatrix}</math>
この''S<sub>11</sub>''・・・''S<sub>nn</sub>''を要素とする行列が散乱行列であり、行列の要素がSパラメータである。Sパラメータの各要素は[[複素数]]表現であり、回路の[[振幅]]に対する影響に加えて[[位相]]に対する影響も内包する。

進行波の振幅 <math>a_i</math>， <math>b_i</math> は、電力の平方根の次元を持つように定義されることが多い．しかし，<math>|a_i|^2</math>，<math>|b_i|^2</math> が実際に電力になるとは限らない<ref>{{Cite web|和書|url=http://home.hiroshima-u.ac.jp/amakawa/S-parameter-j.html |title=Sパラ再入門|accessdate=2013-03-19}}</ref>．また，<math>a_i</math>， <math>b_i</math> を電圧進行波や電流進行波とする流儀もある<ref>{{harvtxt|Collin|2001}}，{{harvtxt|Mavaddat|1996}}</ref>．

=== 2端子対回路網の定義 ===
2対の端子を持つ回路網（[[2端子対回路網|二端子対回路]]、すなわち'''4端子回路網'''）にて使われることが多く、入力側の端子対を'''端子対1'''、出力側の端子対を'''端子対2'''とした場合には次のように定義される。

:<math>\begin{pmatrix}b_1 \\ b_2 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} S_{11} & S_{12} \\ S_{21} & S_{22} \end{pmatrix}\begin{pmatrix} a_1 \\ a_2 \end{pmatrix}\,</math>

ここで、
*<math>a_1</math> は '''端子対1'''から入力される電力の平方根。
*<math>a_2</math> は '''端子対2'''から入力される電力の平方根。
*<math>b_1</math> は '''端子対1'''から出力される電力の平方根。
*<math>b_2</math> は '''端子対2'''から出力される電力の平方根。
*<math>S_{11}</math> は '''端子対1'''から信号を入力したときに、'''端子対1'''に反射する信号。絶対値の[[デシベル]]表示は、'''端子対1'''の[[反射損失]] (リターンロス) を示す。
*<math>S_{21}</math> は '''端子対1'''から信号を入力したときに、'''端子対2'''に通過する信号。絶対値の[[デシベル]]表示は、'''端子対1'''から'''端子対2'''の[[挿入損失]] (インサーションロス) を示す。
*<math>S_{12}</math> は '''端子対2'''から信号を入力したときに、'''端子対1'''に通過する信号。絶対値の[[デシベル]]表示は、'''端子対2'''から'''端子対1'''の[[挿入損失]] (インサーションロス) を示す。
*<math>S_{22}</math> は '''端子対2'''から信号を入力したときに、'''端子対2'''に反射する信号。絶対値の[[デシベル]]表示は、'''端子対2'''の[[反射損失]] (リターンロス) を示す。

== 測定方法・表示方法 ==
Sパラメータの測定にはしばしば[[ネットワーク・アナライザ (高周波回路)|ネットワークアナライザ]]が利用される。

S<sub>11</sub>とS<sub>22</sub>の[[利得 (電気工学)|利得]]が[[定在波比]] (VSWR) を示すため、Sパラメータの[[利得 (電気工学)|利得]]の[[デシベル]]表示は、
: <math>
20 \log _{10} \left| S_{ji} \right|
</math> [dB]
と表示される。

== 脚注 ==
{{Reflist}}

== 参考文献 ==
*{{Citation | last=Collin|first=Robert E.|year=2001|title=Foundations for Microwave Engineering|edition=2nd|series=IEEE Press Series on Electromagnetic Wave Theory|publisher=[[Wiley]]|isbn=978-0780360310}}
*{{Cite book|和書|author=市川古都美|coauthors=市川裕一|year=2008|title=高周波回路設計のためのSパラメータ詳解|publisher=CQ出版社|isbn=978-4789830256|url=http://www.cqpub.co.jp/hanbai/books/30/30251.htm}}
*{{Citation | last=Mavaddat|first=R. |year=1996|title=Network Scattering Parameters|series=Advanced Series in Circuits and Systems|volume=Vol. 2|publisher=World Scientific|isbn=978-9810223052}}

== 関連項目 ==
<!-- {{Commonscat|}} -->
* [[二端子対回路]]
* [[高周波回路]]
* [[S行列]]
* [[黒川兼行]] - 一般化散乱パラメータの提唱者

<!-- == 外部リンク == -->

{{Tech-stub}}
{{Physics-stub}}

{{デフォルトソート:Sはらめえた}}
[[Category:無線工学]]
[[Category:電気回路]]
[[Category:電磁気学]]