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{{Onesource|date=June 2010}} {{DISPLAYTITLE:T<sub>1</sub>空間}} {{分離公理}} [[数学]]の[[位相空間論]]周辺分野における '''T<sub>1</sub>-空間'''(T<sub>1</sub>-くうかん、{{lang-en-short|''T<sub>1</sub> space''}})は、相異なる二点を選べば必ず、その各々の点がもう一方の点を含まない[[開近傍]]を持つ[[位相空間]]を言う。同じことが[[位相的に識別可能]]な二点についてのみ成り立つ場合は '''R<sub>0</sub>-空間'''と言う。条件 T<sub>1</sub> および R<sub>0</sub> は[[分離公理]]の例である。 == 定義 == ''X'' は[[位相空間]]で、''x'' と ''y'' を ''X'' の点とする。いま、二点 ''x'', ''y'' が「[[部分集合の分離 (位相空間論)|分離]]」されるというのを、''x'', ''y'' のそれぞれ一方が、他方を含まない[[開集合]]の少なくとも一つに含まれることを意味するものとすれば、 * ''X'' が '''T<sub>1</sub>-空間'''であるとは、''X'' の任意の[[等号#等号否定|相異なる]]二点が分離できるときに言う。 * ''X'' が '''R<sub>0</sub>-空間'''であるとは、''X'' の任意の[[位相的に識別可能]]な二点が分離できるときに言う。 T<sub>1</sub>-空間は別名、{{訳語疑問点範囲|迫接空間|date=2012年7月}}(''accessible space''; 到達可能空間)あるいは'''フレシェ空間'''ともいい、R<sub>0</sub>-は別名、'''対称空間'''とも呼ばれる<ref group="*">「フレシェ空間」という語は函数解析学で[[フレシェ空間|全く別の意味]]でよく用いられ、[[列型空間]]の一種である[[フレシェ・ウリゾーン空間]]のことを単にフレシェ空間と呼ぶこともあるので、T<sub>1</sub> と呼ぶ方が紛れがない。同様に、「対称空間」の語も[[リーマン対称空間]]などを含む[[対称空間|別な意味]]で使われるほうが一般に知られているので、避けたほうが無難である。</ref>。 == 性質 == 位相空間 ''X'' に対して、以下の条件はどれもたがいに同値である。 * ''X'' は T<sub>1</sub>-空間である。 * ''X'' は[[コルモゴロフ空間| T<sub>0</sub>]] かつ R<sub>0</sub>-空間である。 * 各点が ''X'' において閉じている、即ち ''X'' の各点 ''x'' に対して[[単集合|単元集合]] {''x''} が[[閉集合]]である。 * ''X'' の任意の部分集合が、自身を含む開集合すべての交わりと一致する。 * ''X'' の任意の[[有限集合]]は閉集合である。 * ''X'' の任意の[[補有限集合]]は開集合である。 * 点 ''x'' における[[単項超フィルター]]は ''x'' にのみ収斂する。 * ''X'' の各点 ''x'' と各部分集合 ''S'' について、''x'' が ''S'' の[[極限点]]であることと、''x'' の任意の開[[近傍 (位相空間論)|近傍]]が ''S'' の点を無限個含むこととが同値になる。 位相空間 ''X'' に対して、以下の条件はどれもたがいに同値である。 * ''X'' は R<sub>0</sub>-空間である。 * ''X'' の各点 ''x'' について、単元集合 {''x''} の[[閉包 (位相空間論)|閉包]]は ''x'' と位相的に識別不能な点のみからなる。 * ''X'' 上の[[特殊化前順序]]は[[対称関係|対称的]](従って[[同値関係]])である。 * 点 ''x'' における単項超フィルターは ''x'' と位相的に識別不能な点にのみ収斂する。 * ''X'' の[[コルモゴロフ商]](位相的識別不能な点は同じ点であるとみなして得られる空間)は T<sub>1</sub> である。 * ''X'' の任意の開集合は閉集合の合併として書ける。 一般に位相空間における二点間の関係として : 「分離される」 ⇒ 「位相的に識別可能」 ⇒ 「相異なる」 という含意が成り立つ。一つ目の矢印の逆が成り立つならば、その空間は R<sub>0</sub> である。また二つ目の矢印の逆が成り立つ空間は [[T0空間|T<sub>0</sub>]] であり、両方の矢印の逆が成り立つときはそれは T<sub>1</sub> になる。明らかに、空間が T<sub>1</sub> となるのは R<sub>0</sub> および T<sub>0</sub> の双方を満たすときであり、かつそのときに限る。 有限 T<sub>1</sub>-空間は(任意の部分集合が閉になるから)必ず[[離散空間|離散的]]となることに注意。 == 例 == * [[シェルピンスキー空間]]は T<sub>0</sub> だが T<sub>1</sub> でないような位相の簡単な例である。 * {{仮リンク|重複区間位相|en|overlapping interval topology}} は T<sub>0</sub> だが T<sub>1</sub> でないような位相の簡単な例である。 * [[無限集合]]上の[[補有限位相]]は T<sub>1</sub> だが [[ハウスドルフ空間|ハウスドルフ]] (T<sub>2</sub>) でない位相空間の簡単な例である。このことは、補有限位相における任意の二つの開集合が必ず交わりを持つことからわかる。具体的に書くと、''X'' を[[整数]]全体の成す集合とし、その上の開集合 ''O''<sub>''A''</sub> とは、''X'' の[[有限集合]] ''A'' [[ほとんど (数学)|を除く全て]]の元を含むもののことと定めれば、任意の相異なる二整数 ''x'', ''y'' について、<div style="margin: 1ex 2em 1ex auto;"> ** 開集合 ''O''<sub>{''x''}</sub> は ''y'' を含むが ''x'' を含まず、また開集合 ''O''<sub>{''y''}</sub> は ''x'' を含むが ''y'' を含まない ** あるいは同じことだが、任意の単元集合 {''x''} は、開集合 ''O''<sub>{''x''}</sub> の補集合ゆえ、閉集合である </div>ということがわかるから、先に述べた定義(と同値な条件)からこれは T<sub>1</sub>-空間である。これが T<sub>2</sub> でないことは、任意の二つの開集合 ''O''<sub>''A''</sub>, ''O''<sub>''B''</sub> の[[共通部分 (数学)|交わり]]は ''O''<sub>''A''∪''B''</sub> であり、これは空になり得ないことによる。あるいは、偶数全体の成す集合は、この空間の[[コンパクト空間|コンパクト]]だが[[閉集合|閉]]でない部分集合となることからも、この空間がハウスドルフでないことがわかる。 * 今の例を少し変更して、[[二重点付き補有限位相]]を考えると、これは R<sub>0</sub> だが T<sub>1</sub> でも R<sub>1</sub> でもない空間の例を与える。再び ''X'' を整数全体の成す集合とし、先の例で定義した ''O''<sub>''A''</sub> を使って開集合の[[準基]] ''G''<sub>''x''</sub> を、各整数 ''x'' に対して''x'' が[[偶数]]のとき: ''G''<sub>''x''</sub> = ''O''<sub>{''x'', ''x''+1}</sub>, ''x'' が[[奇数]]のとき: ''G''<sub>''x''</sub> = ''O''<sub>{''x''-1, ''x''}</sub> で定めると、この位相の開基はこの準開基に属する集合の有限交叉に書けるから、''X'' の開集合は有限集合 ''A'' に対して<div style="margin: 1ex 2em;"><math>U_A := \bigcap_{x \in A} G_x</math></div>の形になる。こうして得られた空間は、偶数 ''x'' に対して ''x'' と ''x'' + 1 とが位相的に識別不能だから、T<sub>0</sub> でない(従って、もちろん T<sub>1</sub> でもない)が、そのことを除けば先の例と本質的には変わりがない。 * (代数閉体上定義された)[[代数多様体]]上の[[ザリスキー位相]]は T<sub>1</sub> である。これは、[[局所座標系]]で (''c''<sub>1</sub>, …, ''c''<sub>''n''</sub>) とあらわされる点が[[多項式]]系 ''x''<sub>1</sub> - ''c''<sub>1</sub>, …, ''x''<sub>''n''</sub> - ''c''<sub>''n''</sub> の[[零点集合]]であることに注意すれば、従って一点集合が閉となることによる。一方、この例が[[ハウスドルフ空間|ハウスドルフ]] (T<sub>2</sub>) でないことはよく知られた事実である。ザリスキー位相は本質的には補有限位相の例になっている。 * 任意の[[完全不連結空間]]は T<sub>1</sub> である。これは各点において、その点のみからなる一点集合はその点の属する連結成分であり、従って閉集合となることによる。 == 一般化および関連概念 == "T<sub>1</sub>" や "R<sub>0</sub>" およびこれらと類する同様の呼称は、位相空間のみならず近い概念である[[一様空間]]や[[コーシー空間]]、[[収斂空間]]などに対しても用いられる。いま挙げたような概念全てに統一的に適用できる特徴付けは、単項超フィルター(あるいは定[[有向点族]])の極限の一意性(T<sub>1</sub> の場合。R<sub>0</sub> の場合は、位相的識別不能性[[の違いを除いて|を除いた]]一意性)である。 実のところ、一様空間あるいはもっと一般のコーシー空間は必ず R<sub>0</sub> になるので、これらに対する場合の T<sub>1</sub>-分離公理は T<sub>0</sub>-分離公理に帰せられる。しかしながら、それ以外の([[前位相空間]]などの)収斂空間では R<sub>0</sub> 単独でも十分に意味のある条件になりうる。 == 注釈 == <references group="*"/> == 参考文献 == * {{Cite book| last=Willard| first=Stephen| year=1998| title=General Topology| edition=| volume= | series= |place=New York | publisher=Dover| pages=86–90| isbn = 0-486-43479-6}}. * {{Cite book| last=Folland| first=Gerald| year=1999| title=Real analysis: modern techniques and their applications| edition=2nd| volume=| series=| place=| publisher=John Wiley & Sons, Inc| page=116| isbn = 0-471-31716-0}}. {{DEFAULTSORT:T ていわんくうかん}} [[Category:位相空間論]] [[Category:分離公理]] [[Category:位相的構造]] [[Category:数学に関する記事]]
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