保存拡大

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保存拡大(ほぞんかくだい、テンプレート:Lang-en)は数理論理学において、形式言語による理論同士の関係の一つであり、定理の証明を便利にするかもしれないが、決して元の理論が原理的に証明できる定理の範疇を超えないような、理論の拡張を指す。同様に、非保存拡大(ひほぞんかくだい、テンプレート:Lang-en)あるいは「真の拡大」[1]テンプレート:Lang-en)により拡張された理論は、元の理論より多くの定理を証明できる能力を持つ。

より形式的に言い直すと、 もし T1によるいかなる定理も T2による定理であり、 T2によるいかなる定理の T1における表現も既に T1の定理であるのならば、理論 T2証明論的に理論 T1の保存拡大になっていると言える[2]

より一般的には、 ΓT1 and T2の共通言語における論理式の集合とした時、 T2で証明できる Γのいかなる論理式も T1で証明できるならば、T2T1 に対して Γ保存テンプレート:Lang-en)であると表現できる[3]

無矛盾な理論の保存拡大は無矛盾性を維持する。保存拡大が無矛盾性を維持しないと反実仮想すると、テンプレート:仮リンクにより T2 の言語で書き得るあらゆる論理式は真になる、つまり T2 の定理になり、それにより T1の言語で書き得るあらゆる論理式も T1の定理になるので T1が無矛盾でなくなってしまう(背理法)。このように保存拡大は矛盾をもちこむ危険性が無い。この手続きは大きな理論を記述し、構成する方法論とも捉えることができる。つまり、無矛盾であると知られて(もしくは仮定されて)いる理論 T0 から出発して、その保存拡大 T1, T2 …を構成していくことで、無矛盾な大きな理論を構成することができる。

近年、保存拡大はオントロジーのモジュールを定義する際に使われるようになってきている[4]。形式論理としてのオントロジにおいて、その理論がある部分理論の保存拡大になっているとき、部分理論はモジュールとみなすことができる。

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

関連項目

  1. 英語の直訳であり、この訳語は定着していない。
  2. 新井敏康:「第2章と第5章」 http://fe.math.kobe-u.ac.jp/Movies/cm/2007-04-kiso-a-note1.pdf の定義2.9 pp.12-13. テンプレート:Accessdate
  3. 日本語でも、照井一成「直観主義論理への招待」(数学基礎論サマースクール 2013 講義資料 https://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~terui/summer2013.pdf テンプレート:Accessdate)の定理 5.10において、Π20論理式の集合に対する保存拡大を「Π20保存拡大」と呼んでいる。
  4. 例: 博物資料の記述に用いるオントロジ CIDOC CRM のドキュメント(7.1.2版) https://www.cidoc-crm.org/sites/default/files/cidoc_crm_version_7.1.2.pdf において Extensions of CIDOC CRM の節でそのような説明がされている。