線形力学系
線形力学系(せんけいりきがくけい、テンプレート:Lang-en-short)とは、行列で定義され、線形性を持つ力学系である。
定義
一般に テンプレート:Math における線形力学系は、ベクトル値関数 テンプレート:Math と、テンプレート:Mvar 次の正方行列 テンプレート:Mvar により、次のような微分方程式で表される。
ただしこれは、テンプレート:Math が連続的に変化する場合であり、離散系の場合には、
で表される。
これが線形であるとは、テンプレート:Math と テンプレート:Math が解ならば、任意のスカラー テンプレート:Mvar について、線形結合 テンプレート:Math も解である、ということを意味している。
線形力学系は、多くの非線形の場合と異なり、完全に解くことができる。このとき、解は行列の指数 テンプレート:Math(連続系)、もしくは累乗 テンプレート:Mvar(離散系)によって表現され、その振る舞いは一般的に行列 テンプレート:Mvar の固有値、固有ベクトルによって理解できる。 非線形のときでも、変数変換により線型化して解くことができることもある。また、不動点の周りでの線形近似は、非線形系を理解するのに役立つ(ハートマン=グロブマンの定理)。
線形力学系の解
初期値 テンプレート:Math が、行列 テンプレート:Mvar の固有ベクトル テンプレート:Math ならば、初期条件は
となる。ただし、テンプレート:Mvar は、固有ベクトル テンプレート:Math に対応する固有値である。このとき、解は、
となる。
もし テンプレート:Mvar が対角化可能ならば、任意の初期値 テンプレート:Math は、固有ベクトルの線形結合で一意に表される。つまり、次のような係数 テンプレート:Mvar が一意に存在する。
このとき解は、
となる。
対角化不可能な場合でも一般に行列の指数関数を用いて
と、解を導くことができる。
二次元の場合
二次元の線形力学系は、
で表される。この系では、テンプレート:Mvar は テンプレート:Math 次正方行列である。テンプレート:Mvar の固有値は、行列式 テンプレート:Math と、トレース テンプレート:Mvar を用いて、
のように書くことができる。
また、 であり、 である。
もし、 ならば、固有値の符号が異なり原点は、鞍点 (テンプレート:En) となる。
ならば、原点は孤立した平衡点ではない。
ならば、固有値の符号が同じになり、 ならば(漸近)安定、 ならば中立安定、 ならば不安定になる。また固有値が実数ならば節点 (テンプレート:En) となる。ただし、二つの固有値が同じときには対角化可能なときスター、不可能なとき退化節点 (テンプレート:En) となる。最後に複素数のときは、渦状点 (テンプレート:En) となる。