ギブスの不等式

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ギブスの不等式(ぎぶすのふとうしき、: Gibbs' inequality)とは、情報理論における離散確率分布エントロピーに関する式である。確率分布のエントロピーに関しては、ギブスの不等式を出発点としていくつかの式が考案されており、ファーノの不等式などがある。

この不等式は19世紀ウィラード・ギブスが最初に提示した。

定義

ある確率分布 P を次のように表す。

P={p1,,pn}

別の確率分布 Q を次のように表す。

Q={q1,,qn}

このとき、次の不等式が成り立つ。

i=1npilog2pii=1npilog2qi

ただし、これは全ての i について次の等式が成り立つときだけ等式として成り立つ。

pi=qi

2つの量の差は、カルバック・ライブラー情報量(相対エントロピー)の符号を反転させたものと等しい。したがって、この不等式は次のようにも表せる。

DKL(PQ)0

証明

対数の性質から、次が成り立つ。

log2a=lnaln2

従って、自然対数 (ln) について証明できれば十分である。自然対数には次の性質がある。

lnxx1

これは、全ての x について成り立つ(x=1 のときだけ等号)。

pi がゼロでない全ての i の集合を I とする。すると、

iIpilnqipiiIpi(qipi1)=iIqi+iIpi=iIqi+10

となるので、次が成り立つ。

iIpilnqiiIpilnpi

両辺に 0 を加えても大小関係は変わらないから、0 であるような pi も含めることができて、

i=1npilnqii=1npilnpi

等式として成り立つには、次の条件が成立しなければならない。

  1. 全ての iI について qipi=1 であれば、lnqipi=1qipi が成り立つ。
  2. iIqi=1 であれば、証明の3行目から4行目の部分で等号が成り立つ。

これらが成り立つのは、i = 1, ..., n について以下が成立しているときのみである。

pi=qi

他の証明手法

イェンセンの不等式を使って証明することもできる。

Pエントロピーは次の式で上限が与えられる。

H(p1,,pn)logn

証明は簡単で、全ての i について qi=1/n とすればよい。

関連項目