アルティン・リースの補題

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数学において、アルティン・リースの補題テンプレート:Lang-en-short)は、ヒルベルトの基底定理のような結果とともに、ネーター環上の加群についての基本的な結果である。1950年代に数学者エミール・アルティンテンプレート:仮リンクによって独立に証明された。特別な場合はオスカー・ザリスキに先に知られていた。

この補題から得られる結果にクルルの交叉定理がある。また、完備化の完全性を証明するためにも使われるテンプレート:Sfn

補題の主張

Iネーター環 Rイデアルとする。M を有限生成 R-加群とし N をその部分加群とする。このときある整数 k ≥ 1 が存在して、n ≥ k に対して

InMN=Ink(IkMN)

が成り立つ。

証明

必要な概念や表記が準備されてしまえば、補題は R が「ネーター的」であるという事実から直ちに従うテンプレート:Sfn

任意の環 R および R のイデアル I に対して、blIR=n=0In とおく(blow-up のbl)。部分加群の減少列 M=M0M1M2I-フィルター(I-filtration)であるとは、IMnMn+1 が成り立つときにいう。さらに、それが安定(stable)であるとは、十分大きい n に対して IMn=Mn+1 であるときにいう。MI-フィルターが与えられているとき、blIM=n=0Mn とおく。これは blIR 上の次数加群である。

さて、MR-加群とし、有限生成 R-加群による I-フィルター Mi が与えられているとする。次のことを確認する。

blIMblIR 上有限生成加群であることと、フィルターが I-安定であることは同値である。

実際、フィルターが I-安定であれば、blIM ははじめの k+1 個の M0,,Mk によって生成され、これらは有限生成であるので、blIM も有限生成である。逆に、blIM が有限生成であれば、j=0kMj として、nk に対して、各 fMn

f=aijgij,aijInj

と書ける。ただし gijMj,jk の生成元。つまり、fInkMk である。

これで R がネーター的であると仮定すれば補題を証明できる。Mn=InM とする。すると MnI-安定なフィルターである。したがって、上記より、blIMblIR 上有限生成である。しかし blIRR[It]R がネーター環なのでネーター環である。(環 R[It]テンプレート:仮リンクと呼ばれる。)したがって、blIM はネーター加群であり任意の部分加群は blIR 上有限生成である。とくに、N に induced filtration が与えられているとき、すなわち Nn=MnN であるとき、blIN は有限生成である。すると induced filtration も上記の確認により I-安定である。

クルルの交叉定理の証明

環の完備化における使用に加えて、補題の典型的な応用はクルルの交叉定理 (Krull's intersection theorem)

ネーター局所環の真のイデアル I に対して、n=1In=0

の証明である。共通部分 N に補題を適用すれば、ある k が存在して

Ik+1N=I(IkN)

が成り立つ。すると N=IN なので中山の補題によって N=0 である。

テンプレート:Reflist

参考文献

外部リンク