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アーベル群の圏
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{{混同|アーベル圏}} [[数学]]の一分野である[[圏論]]における'''アーベル群の圏'''(あーべるぐんのけん、{{lang-en-short|category of abelian groups}}){{math|'''Ab'''}} は、[[アーベル群]]を[[対象 (圏論)|対象]]とし[[群準同型]]を[[射 (圏論)|射]]とする[[圏 (圏論)|圏]]である。アーベル群の圏は[[アーベル圏]]の原型であり{{sfn|Pedicchio|Tholen|2004|p=200}}、実際に任意の[[小さい圏|小さい]]アーベル圏は {{math|'''Ab'''}} に埋め込める{{sfn|Mac Lane|1998|p=209}}。 == 性質 == * アーベル群の圏 {{math|'''Ab'''}} の[[零対象]]は、[[単位元]]のみからなる[[自明群]] {{math|{{mset|0}}}} が与える。 * アーベル群の圏 {{math|'''Ab'''}} の[[モノ射|単型射]]は[[単射|単準同型]]であり、[[エピ射|全型射]]は[[全射|全準同型]]、[[同型射]]は[[全単射|双射]]準同型である。 * アーベル群の圏 {{math|'''Ab'''}} は[[群の圏]] {{math|'''Grp'''}} の[[充満部分圏]]である。両者の主な違いは、{{math|'''Ab'''}} において二つの準同型 {{mvar|f, g}} の「和」{{math|''f'' + ''g''}} が定義され、<math display="block">\begin{align} (f+g)(x+y) = f(x+y) + g(x+y) &= f(x) + f(y) + g(x) + g(y) \\ &= f(x) + g(x) + f(y) + g(y) = (f+g)(x) + (f+g)(y) \end{align}</math> によってそれが再び群準同型となることである。ここで第三の等号において群が可換であるという仮定が用いられている。この準同型の加法により、アーベル群の圏 {{math|'''Ab'''}} は[[前加法圏]]となり、さらにアーベル[[群の直和|群の有限直和]]が{{仮リンク|双積|en|biproduct}}となるから、実際には[[加法圏]]を成す。 * アーベル群の圏 {{math|'''Ab'''}} において、[[核 (圏論)|圏論的核]]は[[核 (代数学)|代数学的核]]に一致する。すなわち、射 {{math|''f'': ''A'' → ''B''}} の圏論的な意味での核とは、{{math|1=''K'' {{coloneqq}} {{mset|''x'' ∈ ''A'' : ''f''(''x'') {{=}} 0}}}} で定義される {{mvar|A}} の部分群 {{mvar|K}} に包含準同型 {{math|''i'': ''K'' → ''A''}} を合わせて考えたものである。[[余核]]についても同様で、{{mvar|f}} の余核とは、[[剰余群]] {{math|1=''C'' = ''B''/''f''(''A'')}} に自然な射影 {{math|''p'': ''B'' → ''C''}} を合わせて考えたものになる(ここで {{math|'''Ab'''}} と {{math|'''Grp'''}} のさらなる重大な違いがあることに注意せよ。すなわち、{{math|'''Grp'''}} においては {{math|''f''(''A'')}} が {{mvar|B}} の[[正規部分群]]とならず、従って剰余群 {{math|''B''/''f''(''A'')}} が得られないことが起こり得る)。このように具体的に核と余核が記述できるから、{{math|'''Ab'''}} が実際に[[アーベル圏]]となることを見るのは極めて容易である。 * アーベル群の圏 {{math|'''Ab'''}} における[[積 (圏論)|圏論的直積]]は[[群の直積]]で与えられる。群の直積は、台集合の[[デカルト積]]に成分ごとの積で群演算を入れたものである。{{math|'''Ab'''}} は核を持つから、{{math|'''Ab'''}} が[[完備圏]]となることが示せる。{{math|'''Ab'''}} の[[余積|圏論的直和]]は群の直和で与えられる。{{math|'''Ab'''}} は余核を持つから、{{math|'''Ab'''}} が{{仮リンク|余完備|en|cocomplete}}となることも示せる。 * {{仮リンク|忘却函手|en|forgetful functor}} {{math|'''Ab''' → [[集合の圏|'''Set''']]}} はアーベル群の群構造を忘れて、その台[[集合]]を割り当てる(各群準同型も単に集合間の[[写像]]と見なす)ものである。この函手は[[忠実函手|忠実]]ゆえ、アーベル群の圏 {{math|'''Ab'''}}は{{仮リンク|具体圏|en|concrete category}}である。この忘却函手は[[左随伴]](任意の集合に、それが生成する[[自由アーベル群]]を割り当てる函手)を持つが、右随伴は持たない。 * アーベル群の圏 {{math|'''Ab'''}} において[[直極限]]をとる操作は[[完全函手]]である。[[整数]]の加法群 {{math|'''Z'''}} は{{仮リンク|生成対象|en|Generator (category theory)}} であるから、したがってアーベル群の圏 {{math|'''Ab'''}} は{{仮リンク|グロタンディエック圏|en|Grothendieck category}}になる(実際には、{{math|'''Ab'''}} はグロタンディエック圏の原型例である)。 * アーベル群の圏 {{math|'''Ab'''}} に属する対象が[[入射加群|入射対象]]となるための必要十分条件は、それが[[可除群]]となることである。また[[射影加群|射影対象]]となるための必要十分条件は、それが[[自由アーベル群]]となることである。{{math|'''Ab'''}} は射影的生成対象 {{math|'''Z'''}} と{{仮リンク|入射的余生成対象|en|injective cogenerator}} {{math|'''Q'''/'''Z'''}} を持つ。 * 二つのアーベル群 {{mvar|A, B}} が与えられたとき、それらの[[加群のテンソル積|テンソル積]] {{math|''A'' ⊗ ''B''}} が定義され、ふたたびアーベル群を成す。テンソル積を備えた {{math|'''Ab'''}} は[[モノイド圏|対称モノイド圏]]を成す。 * アーベル群の圏 {{math|'''Ab'''}} は[[デカルト閉圏|デカルト閉]]でない(したがって[[トポス (数学)|トポス]]にもならない)。これは[[指数対象]]がないためである。 == 関連項目 == * [[加群の圏]] * [[アーベル圏]] * [[加群の層|アーベル層]]: アーベル群の圏における多くの事実が、アーベル群の層の圏でも成り立つ。 == 参考文献 == {{reflist}} *{{Lang Algebra}} * {{cite book | last=Mac Lane | first=Saunders | authorlink=Saunders Mac Lane | title=[[Categories for the Working Mathematician]] | edition=2nd | series=[[Graduate Texts in Mathematics]] | volume=5 | location=New York, NY | publisher=[[Springer-Verlag]] | year=1998 | isbn=0-387-98403-8 | zbl=0906.18001 }} * {{cite book | editor1-last=Pedicchio | editor1-first=Maria Cristina | editor2-last=Tholen | editor2-first=Walter | title=Categorical foundations. Special topics in order, topology, algebra, and sheaf theory | series=Encyclopedia of Mathematics and Its Applications | volume=97 | location=Cambridge | publisher=[[Cambridge University Press]] | year=2004 | isbn=0-521-83414-7 | zbl=1034.18001 }} == 外部リンク == * {{nlab|id=Ab}} {{圏論}} {{DEFAULTSORT:ああへるくんのけん}} [[Category:圏 (数学)]] [[Category:群論]] [[Category:数学に関する記事]] [[Category:数学のエポニム]]
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