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[[数学]]における'''ディラック測度'''(ディラックそくど、{{Lang-en-short|Dirac measure}})は、適当な集合 {{mvar|X}}(に {{mvar|X}} の[[部分集合]]からなる任意の[[完全加法族|σ-代数]]を入れたもの)上で、点 {{math|''x'' ∈ ''X''}} に対して、定義される[[測度]] {{math|δ{{sub|''x''}}}} であって、任意の[[可測集合|(可測)部分集合]] {{math|''A'' ⊆ ''X''}} に対して :<math>\delta_{x} (A) = 1_A(x)= \begin{cases} 0, & x \not \in A; \\ 1, & x \in A \end{cases}</math> を満たすものを言う。ただし {{math|1{{sub|''A''}}}} は {{mvar|A}} の[[指示関数]]を表す。 ディラック測度は[[確率測度]]であり、確率の言葉で言えば[[標本空間]] {{mvar|X}} において[[ほとんど (数学)|ほとんど確実]]に {{mvar|x}} が起こるかどうかを表すものである。この測度を {{mvar|x}} における単{{仮リンク|アトム (測度論)|label=原子元|en|Atom (measure theory)}}と呼ぶこともある。ただし、ディラックデルタを(デルタ列の極限として)点列で定義する場合には、ディラック測度を原子測度(atomic measure)として扱うことは正しくない。ディラック測度は {{mvar|X}} 上の確率測度全体の成すの凸集合の{{仮リンク|極値点|en|extreme point}}である。 その名称は、測度が特別な種類のシュヴァルツ超函数として得られるという事実に基づいての、(例えば[[実数直線]]上で定義される)[[シュワルツ超函数]]として考えた[[ディラックのデルタ関数]]からの[[逆成]]である。また、等式 :<math>\int_{X} f(y) \, d\delta_{x} (y) = f(x)</math> (これをデルタ函数の定義の一部として書くときには :<math>\int_{X} f(y) \delta_{x} (y) \, dy = f(x)</math> の形に書くのが普通)は、[[ルベーグ積分]]論における定理として成立する。 == ディラック測度の性質 == 以下、{{math|δ<sub>''x''</sub>}} は適当な可測空間 {{math|(''X'', Σ)}} において、一つ選んで固定した点 {{mvar|x}} を中心とするディラック測度を表す。 * {{math|δ<sub>''x''</sub>}} は確率測度であり、したがって有限測度である。 また、{{math|(''X'', ''T'')}} は[[位相空間]]で、{{mvar|Σ}} が少なくとも {{mvar|X}} 上の[[ボレル代数]] {{math|σ(''T'')}} と同程度には細かいと仮定する。 * {{math|δ<sub>''x''</sub>}} が[[狭義正測度]]であるための[[必要十分条件]]は、位相 {{mvar|T}} がすべての空でない開集合に {{mvar|x}} が含まれるようなものであることである。例えば、自明な位相 {∅, ''X''} の場合が挙げられる。 * {{math|δ<sub>''x''</sub>}} が確率測度であることからは、[[局所有限測度]]でもあることもわかる。 * [[ハウスドルフ空間|ハウスドルフ位相空間]] {{mvar|X}} にそのボレル代数を併せて考えるとき、{{math|δ<sub>''x''</sub>}} は[[内部正則測度]]であるための条件を満たす。なぜならば、{{math| {''x''}}} のような[[単集合]]は常に[[コンパクト空間|コンパクト]]であるからである。したがって {{math|δ<sub>''x''</sub>}} は[[ラドン測度]]でもある。 * 多くの応用においてそうであるように、位相 {{mvar|T}} は十分細かく{{math| {''x''}}} が閉となるものと仮定する。このとき {{math|δ<sub>''x''</sub>}} の[[台 (測度論)|台]]は{{math| {''x''}}} である(そうでない場合、{{math|supp(δ<sub>''x''</sub>)}} は {{math|(''X'', ''T'')}} における{{math| {''x''}}} の閉包をとる)。さらに、{{math|δ<sub>''x''</sub>}} は台が{{math| {''x''}}} であるような唯一つの確率測度である。 * {{mvar|X}} が {{mvar|n}}-次元[[ユークリッド空間]] {{math|'''R'''<sup>''n''</sup>}} に通常の σ-代数と {{mvar|n}}-次元[[ルベーグ測度]] {{math|λ<sup>''n''</sup>}} を入れたものとするとき、{{math|δ<sub>''x''</sub>}} は {{math|λ<sup>''n''</sup>}} に関して[[特異測度|特異]]である。実際、{{math|'''R'''<sup>''n''</sup>}} を単純に {{math|''A'' {{=}} '''R'''<sup>''n''</sup> ∖ {''x''}}} と {{math|''B'' {{=}} {''x''}}} に分解すれば、{{math|δ<sub>''x''</sub>(''A'') {{=}} λ<sup>''n''</sup>(''B'') {{=}} 0}} が成立する。 == 参考文献 == *{{cite book |title=Treatise on analysis, Part 2 |chapter=Examples of measures |page=100 |author=Jean Dieudonné |url=https://books.google.co.jp/books?id=7rCKMyHfd_EC&pg=PA100&redir_esc=y&hl=ja |isbn=0-12-215502-5 |year=1976 |publisher=Academic Press}} *{{cite book |title=Harmonic analysis and applications|author=John Benedetto |chapter=§2.1.3 Definition, δ |url=https://books.google.co.jp/books?id=_SCeYgvPgoYC&pg=PA72&redir_esc=y&hl=ja |page=72 |isbn=0-8493-7879-6 |year=1997 |publisher=CRC Press}} == 関連項目 == * [[離散測度]] {{DEFAULTSORT:ていらつくそくと}} [[Category:測度論]] [[Category:数学に関する記事]] [[Category:数学のエポニム]]
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