ディラック測度
数学におけるディラック測度(ディラックそくど、テンプレート:Lang-en-short)は、適当な集合 テンプレート:Mvar(に テンプレート:Mvar の部分集合からなる任意のσ-代数を入れたもの)上で、点 テンプレート:Math に対して、定義される測度 テンプレート:Math であって、任意の(可測)部分集合 テンプレート:Math に対して
を満たすものを言う。ただし テンプレート:Math は テンプレート:Mvar の指示関数を表す。
ディラック測度は確率測度であり、確率の言葉で言えば標本空間 テンプレート:Mvar においてほとんど確実に テンプレート:Mvar が起こるかどうかを表すものである。この測度を テンプレート:Mvar における単テンプレート:仮リンクと呼ぶこともある。ただし、ディラックデルタを(デルタ列の極限として)点列で定義する場合には、ディラック測度を原子測度(atomic measure)として扱うことは正しくない。ディラック測度は テンプレート:Mvar 上の確率測度全体の成すの凸集合のテンプレート:仮リンクである。
その名称は、測度が特別な種類のシュヴァルツ超函数として得られるという事実に基づいての、(例えば実数直線上で定義される)シュワルツ超函数として考えたディラックのデルタ関数からの逆成である。また、等式
(これをデルタ函数の定義の一部として書くときには
の形に書くのが普通)は、ルベーグ積分論における定理として成立する。
ディラック測度の性質
以下、テンプレート:Math は適当な可測空間 テンプレート:Math において、一つ選んで固定した点 テンプレート:Mvar を中心とするディラック測度を表す。
- テンプレート:Math は確率測度であり、したがって有限測度である。
また、テンプレート:Math は位相空間で、テンプレート:Mvar が少なくとも テンプレート:Mvar 上のボレル代数 テンプレート:Math と同程度には細かいと仮定する。
- テンプレート:Math が狭義正測度であるための必要十分条件は、位相 テンプレート:Mvar がすべての空でない開集合に テンプレート:Mvar が含まれるようなものであることである。例えば、自明な位相 {∅, X} の場合が挙げられる。
- テンプレート:Math が確率測度であることからは、局所有限測度でもあることもわかる。
- ハウスドルフ位相空間 テンプレート:Mvar にそのボレル代数を併せて考えるとき、テンプレート:Math は内部正則測度であるための条件を満たす。なぜならば、テンプレート:Math} のような単集合は常にコンパクトであるからである。したがって テンプレート:Math はラドン測度でもある。
- 多くの応用においてそうであるように、位相 テンプレート:Mvar は十分細かくテンプレート:Math} が閉となるものと仮定する。このとき テンプレート:Math の台はテンプレート:Math} である(そうでない場合、テンプレート:Math は テンプレート:Math におけるテンプレート:Math} の閉包をとる)。さらに、テンプレート:Math は台がテンプレート:Math} であるような唯一つの確率測度である。
- テンプレート:Mvar が テンプレート:Mvar-次元ユークリッド空間 テンプレート:Math に通常の σ-代数と テンプレート:Mvar-次元ルベーグ測度 テンプレート:Math を入れたものとするとき、テンプレート:Math は テンプレート:Math に関して特異である。実際、テンプレート:Math を単純に テンプレート:Math} と テンプレート:Math} に分解すれば、テンプレート:Math が成立する。