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[[Image:Tractrix1.png|thumb|360px|right|トラクトリックス]] '''トラクトリックス''' (tractrix) 、'''牽引線'''(けんいんせん)、'''引弧線'''、'''犬曲線'''、'''追跡線'''とは、[[直交座標]]の方程式 :<math>\begin{align} x &= \pm \left(a\ln \frac{a + \sqrt{a^2 - y^2}}{y} - \sqrt{a^2 - y^2}\right) \\ &= \pm \left(a\,{\rm sech}^{-1}\frac{y}{a} - \sqrt{a^2 - y^2}\right)\quad(a>0) \end{align}</math> によって表される[[曲線]]である。 == 媒介変数による表示 == [[Image:Tractrixtry.gif|thumb|360px|right|[[棒]]を引きずることによってできるトラクトリックスの軌跡。]] [[媒介変数表示]]では :<math>x=\pm a\left(\ln \tan \frac{\theta}{2} + \cos \theta \right),\; y=a\sin \theta, \quad \theta\in\left[0, \frac{\pi}{2}\right].</math> と表される。ここで、座標[[原点 (数学)|原点]]に[[犬]]の飼い主が、y軸上の点 {{math|(0, ''a'')}} に長さ {{mvar|a}} の[[リーシュ|リード]]につながれた犬が居たとするとき、飼い主がx軸上を移動した際に、リードの伸縮が全くないと仮定した場合に犬が移動する[[軌跡 (数学)|軌跡]]がトラクトリックスになる。{{mvar|θ}} は飼い主と犬を結ぶ線分とx軸との成す角に相当する。牽引線、犬曲線などと呼ばれるのはそのためである。 あるいは、<math>\vartheta=\theta - \frac{\pi}{2}</math> として :<math>x=a\left(\operatorname{gd}^{-1}\vartheta - \sin \vartheta \right),\; y=a\cos \vartheta</math> と表される。ただし、<math>\operatorname{gd}^{-1}\vartheta</math> は[[グーデルマン関数]]の[[逆関数]]である。 さらに、<math>t=\operatorname{gd}^{-1}\vartheta</math> とおくことにより :<math>x=a\left(t - \tanh t\right),\; y=a\operatorname{sech} t</math> と表すこともできる。 == 特徴 == [[Image:Involute.gif|thumb|300px|right|カテナリーの伸開線としてのトラクトリックス]] [[Image:Evolute2.gif|thumb|300px|right|トラクトリックスの[[縮閉線]]としてのカテナリー]] * [[常微分方程式]] <math>\frac{{\rm d}x}{{\rm d}y} = \pm\frac{\sqrt{a^2-y^2}}{y}</math> を満たす。 * [[カテナリー]] <math>y=a\cosh\frac{x}{a}</math> の[[伸開線]]に相当し、y軸に対して[[線対称]]であり、x軸を[[漸近線]]に持つ。[[尖点]]は {{math|(0, ''a'')}}。 * 区間 <math>0 \leq x_1 \leq x \leq x_2</math> における[[弧長]]は <math>a\ln\frac{y_1}{y_2}</math> である。 * トラクトリックス上の尖点以外の任意の点をP、Pにおける[[曲率中心]]<ref>Pを表示する媒介変数として、前節に登場したもののうち {{mvar|θ}} を採用するとき、曲率半径OPは <math>a|\cot\theta\,|</math> となる。これから、弧長の簡潔な導出として、<math>\int_{\theta_2}^{\theta_1}a\cot\theta{\rm d}\theta=a\ln\frac{\sin\theta_1}{\sin\theta_2}=a\ln\frac{y_1}{y_2}</math> が得られる。</ref>をO、線分OPの延長とx軸との交点をQとするとき、OP・PQは一定となり、その値は {{math|''a''<sup>2</sup>}} に相当する<ref>結果として、Pを犬と見立てたとき、Oのx座標はx軸上を移動する飼い主のx座標に一致することとなる。</ref>。 * トラクトリックスとその漸近線で囲まれる領域の[[面積]]は <math>\frac{\pi a^2}{2}</math>(半径 {{mvar|a}} の[[円 (数学)|円]]の面積の半分)である<ref><math>\int_{-\infty}^{\infty}y {\rm d}x</math> を計算しても勿論導出可能であるが、{{仮リンク|マミコンの定理|en|Mamikon's theorem}}を使えば、長さ {{mvar|a}} の棒が半回転する際に掃く面積に相当することが示される。</ref>。 * トラクトリックスをその漸近線の周りに[[回転]]させてできる[[回転体]]<ref>この回転体を構成する[[回転面]]のことを[[擬球面]](トラクトロイド)と称する。</ref>の[[表面積]]は <math>4\pi a^2</math>(半径 {{mvar|a}} の[[球体|球]]の表面積)<ref>媒介変数 {{mvar|θ}} の地点における線素片の弧長は <math>a\cot\theta{\rm d}\theta</math> となるから、<math>\int_{-\pi/2}^{\pi/2}2\pi y\cdot a\cot\theta{\rm d}\theta</math> を計算することにより導出できる。</ref>、[[体積]]は <math>\frac{2\pi a^3}{3}</math>(半径 {{mvar|a}} の球の体積の半分)<ref><math>\pi\int_{-\infty}^{\infty}y^2 {\rm d}x</math> を計算しても勿論導出可能であるが、次のように考えることもできる。トラクトリックスとその漸近線で囲まれる領域を {{mvar|θ}} と {{math|''θ'' + d''θ''}} との間にある等辺 {{mvar|a}}、頂角 d{{mvar|θ}} の微小[[二等辺三角形]]面積素片に分解し、各頂点を座標原点に([[回転 (数学)|回転]]を全く伴わない純粋[[平行移動]]で)集約し並べ直すと、半径 {{mvar|a}} の半円が漸近線上にその直径を含む形で構成される。元の領域の各微小二等辺三角形面積素片の漸近線からの[[幾何中心#三角形の重心|重心]]距離は、当該半円に並べ直した各微小二等辺三角形面積素片の漸近線からの重心距離の半分に相当しているから、[[パップス=ギュルダンの定理]]により、求める体積は当該半円を漸近線の周りに回転させることにより生ずる半径 {{mvar|a}} の球の体積の半分であると解することができる。</ref>である。 == 脚注 == {{脚注ヘルプ}} {{reflist}} == 参考文献 == * {{Cite book|和書 |last1 = オスターマン |first1 = A. |last2 = ヴァンナー |first2 = G. |translator = [[蟹江幸博]] |date = 2017-11 |title = 幾何教程 |volume = 下 |publisher = 丸善出版 |isbn = 978-4-621-30212-5 }} * {{Cite book|和書 |last1 = Apostol |first1 = Tom M. |last2 = Mnatsakanian |first2 = Mamikon A. |translator = 川辺治之 |date = 2016-08 |title = Aha! ひらめきの幾何学―アルキメデスも驚くマミコンの定理― |publisher = 共立出版 |isbn = 978-4-320-11138-7 }} == 関連文献 == * {{Cite journal|和書| doi = 10.11429/sugakukaisya1877.1881.42_8| issue = 42| pages = 8–11| author = 長澤龜之助|authorlink = 長澤龜之助| title = 第三套 雑記 曲線説第ニ稿| journal = 東京數學會社雑誌| year = 1881}}最後のページでトラクトリックスを解説している。 == 外部リンク == {{commons|Tractrix}} * {{MacTutor|class=Curves|id=Tractrix|title=Tractrix}} * {{PlanetMath|urlname=Tractrix|title=tractrix}} * {{mathworld|urlname=Tractrix|title=Tractrix}} {{デフォルトソート:とらくとりつくす}} [[Category:曲線]] [[Category:数学に関する記事]]
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