ナブラ記号のソースを表示

{{記号文字|∇}}
[[file:Harp.png|right|thumb|256px|ナブラ記号の名の由来となった[[竪琴]]のナブラ]]
[[記号]] ∇（ナブラ、{{lang-en-short|''nabla''}}）の呼び名は、似た形のヘブライの[[竪琴]]のギリシャ語名 {{lang|el|νάβλα}} に由来する（[[アラビア語]]と[[ヘブライ語]]での呼び名とも関係がある）。数学記号としてこれを用いたのは[[ウィリアム・ローワン・ハミルトン|ハミルトン]]だが、横向き楔形 <span style="font-size: larger; line-height: 100%;">⊲</span> としてである。 他にも稀に、[[ギリシャ文字]] &Delta; ([[Δ|delta]]) の逆さまであるということで、[[逆さ綴り]]にしたアトレッド (''atled'') を呼び名とすることもある。あるいは実際のギリシャ語での呼び名は「逆さまのデルタ」({{lang|el|ανάδελτα}}) である。

別系統の呼び名として、∇ が心臓を横から見た形に似ていることから「心臓」を意味する[[ペルシャ語]]の دل（デル）がある。

ナブラ記号は標準の HTML でも <code>&amp;nabla;</code> と書いて、あるいは [[LaTeX]] でも <code>\nabla</code> と書けば利用できる。[[ユニコード]]では16進で U+2207, 10進で 8711 に[[コードポイント]]を持つ。

なお、海面近くで小魚の群れが波を立てる様子を「なぶら」と呼ぶ地域があるが、これは魚群 (なむら) の転訛であり、数学記号とは無関係である<ref>[https://dictionary.goo.ne.jp/word/魚群_%28なむら%29/#jn-165122 魚群 (なむら)] デジタル大辞泉</ref>。

== 数学における用例 ==
∇ は[[数学]]において[[勾配 (ベクトル解析)|勾配]]、[[発散 (ベクトル解析)|発散]]、[[回転 (ベクトル解析)|回転]]を取る演算を指し示す微分作用素としての[[ナブラ]]演算を表すのに用いられる。[[微分幾何学]]における[[接続 (微分幾何学)|接続]]や、[[差分法]]における（[[前進差分]] &Delta; の逆としての）[[後退差分]]、あるいは主に[[束 (束論)|束論]]における（相等関係 &Delta; の逆としての）全関係を表すのにも用いられる。記号の導入者は[[アイルランド]]の数学・物理学者[[ウィリアム・ローワン・ハミルトン|ハミルトン]]で、1837年のことである<ref>W. R. Hamilton, in ''Trans. R. Irish Acad.'' XVII. 236 (1837)</ref>。[[ウィリアム・トムソン]]は1884年に{{quotation|"I took the liberty of asking Professor Bell whether he had a name for this symbol ∇ and he has mentioned to me ''nabla'', a humorous suggestion of [[ジェームズ・クラーク・マクスウェル|Maxwell]]'s. It is the name of an Egyptian harp, which was of that shape"（「{{訳語疑問点範囲|ベル教授にこの記号 ∇ の名付けについて尋ねる機会を得たとき、先生はマクスウェルの愉快な提案である『ナブラ』について私に教えてくれました。同じ形をしたエジプトの竪琴の名だというのです|date=2012年10月}}」）}}と書いている<ref>W. Thomson, ''Notes Lect. Molecular Dynamics & Wave Theory of Light'' at Johns Hopkins Univ. x 112 (MS) (1884)</ref>。

1901年に[[ウィラード・ギブズ|ギブズ]]と[[エドウィン・ビドウェル・ウイルソン|ウィルソン]]は
{{quotation|"This symbolic operator ∇ was introduced by Sir W. R. Hamilton and is now in universal employment. There seems, however, to be no universally recognized name for it, although owing to the frequent occurrence of the symbol some name is a practical necessity. It has been found by experience that the monosyllable ''del'' is so short and easy to pronounce that even in complicated formulae in which <math>\nabla</math> occurs a number of times, no inconvenience to the speaker or listener arises from the repetition. <math>\nabla</math>''V'' is read simply as 'del ''V''' " (W.R.ハミルトン卿が導入したこの記号演算子<math>\nabla</math>は、今は広く使われるようになっていますが、まだ一般的な呼び名はないようです。'del' なら単音節で発音しやすく、複雑な数式で<math>\nabla</math>が何度も出ていても煩雑になりません。<math>\nabla</math>Vは単純に「デルV」と読みます。)}}
と記した<ref>Gibbs & Wilson, ''Vector analysis: a text-book for the use of students of mathematics and physics, founded upon the lectures of J. Willard Gibbs by Edwin Bidwell Wilson'' (1901)</ref>。

== 造船工学での用例 ==
{{訳語疑問点範囲|∇ は造船工学（船舶設計）においても船やその他任意の水上容器の排水容積を表すのに用いられる。これは排水重量（船によって排水される水の総重量）を表すのにギリシャ文字の &Delta; を用いることに対応して、排水容積を表すのに &nabla; を用いるものであって、船が排水する水の総容積を長さの三乗の単位で表したものである。|date=2012年10月}}

== 符号位置 ==
{| class="wikitable" style="text-align:center;"
!記号!![[Unicode]]!![[JIS X 0213]]!![[文字参照]]!!名称
{{CharCode|8711|2207|1-2-64|ナブラ|nabla}}
|}

== 関連項目 ==
* [[ナブラ]]: ベクトル微分演算
* [[微分の記法]]

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
<references/>

== 外部リンク ==
*[http://www.mat.univie.ac.at/~neum/contrib/nabla.txt History of Nabla]
*[https://hdl.handle.net/2027.42/7869 A survey of the improper use of ∇ in vector analysis] (1994) Tai, Chen
*[https://cir.nii.ac.jp/crid/1520009409517843712 ヘブライ語のNebel（竪琴）を語源に持つナブラ∇について] (2003) 藤野 清次、情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ（CH）……ナブラの語源に溯り、その後、記号∇とその呼び名ナブラが徐々に定着した経緯についてまとめた論文

{{DEFAULTSORT:なふらきこう}}
[[Category:数学記号]]
[[Category:数学に関する記事]]

[[zh:劈形算符]]