ナブラ記号

記号 ∇(ナブラ、テンプレート:Lang-en-short)の呼び名は、似た形のヘブライの竪琴のギリシャ語名 テンプレート:Lang に由来する(アラビア語とヘブライ語での呼び名とも関係がある)。数学記号としてこれを用いたのはハミルトンだが、横向き楔形 ⊲ としてである。 他にも稀に、ギリシャ文字 Δ (delta) の逆さまであるということで、逆さ綴りにしたアトレッド (atled) を呼び名とすることもある。あるいは実際のギリシャ語での呼び名は「逆さまのデルタ」(テンプレート:Lang) である。
別系統の呼び名として、∇ が心臓を横から見た形に似ていることから「心臓」を意味するペルシャ語の دل(デル)がある。
ナブラ記号は標準の HTML でも ∇ と書いて、あるいは LaTeX でも \nabla と書けば利用できる。ユニコードでは16進で U+2207, 10進で 8711 にコードポイントを持つ。
なお、海面近くで小魚の群れが波を立てる様子を「なぶら」と呼ぶ地域があるが、これは魚群 (なむら) の転訛であり、数学記号とは無関係である[1]。
数学における用例
∇ は数学において勾配、発散、回転を取る演算を指し示す微分作用素としてのナブラ演算を表すのに用いられる。微分幾何学における接続や、差分法における(前進差分 Δ の逆としての)後退差分、あるいは主に束論における(相等関係 Δ の逆としての)全関係を表すのにも用いられる。記号の導入者はアイルランドの数学・物理学者ハミルトンで、1837年のことである[2]。ウィリアム・トムソンは1884年にテンプレート:Quotationと書いている[3]。
1901年にギブズとウィルソンは テンプレート:Quotation と記した[4]。
造船工学での用例
符号位置
| 記号 | Unicode | JIS X 0213 | 文字参照 | 名称 |
|---|
関連項目
脚注
- ↑ 魚群 (なむら) デジタル大辞泉
- ↑ W. R. Hamilton, in Trans. R. Irish Acad. XVII. 236 (1837)
- ↑ W. Thomson, Notes Lect. Molecular Dynamics & Wave Theory of Light at Johns Hopkins Univ. x 112 (MS) (1884)
- ↑ Gibbs & Wilson, Vector analysis: a text-book for the use of students of mathematics and physics, founded upon the lectures of J. Willard Gibbs by Edwin Bidwell Wilson (1901)
外部リンク
- History of Nabla
- A survey of the improper use of ∇ in vector analysis (1994) Tai, Chen
- ヘブライ語のNebel(竪琴)を語源に持つナブラ∇について (2003) 藤野 清次、情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH)……ナブラの語源に溯り、その後、記号∇とその呼び名ナブラが徐々に定着した経緯についてまとめた論文