接続 (微分幾何学)

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微分幾何学において接続(せつぞく、テンプレート:Lang-en-short)とは、多様体ファイバーバンドル上に平行移動の概念を定義する事ができる数学的構造である。ただし数学的な取り扱いを容易にするため、平行移動の概念で直接的に接続を定義するのではなく、実質的に等価な別概念を用いて接続を定義する。

接続概念はゲージ理論チャーン・ヴェイユ理論で用いられる。特にチャーン・ヴェイユ理論の特殊ケースとして、曲面に関する古典的なガウス・ボンネの定理一般の偶数次元多様体に拡張するのに役立つ。

接続は元々はクリストッフェル並びにレヴィ-チヴィタリッチによって[1]リーマン多様体上に導入された概念(レヴィ-チヴィタ接続)であるが、一般のベクトルバンドル上の接続(Koszul接続テンプレート:Refn)や主バンドルの接続(主接続)にも拡張され、さらに一般のファイバーバンドルの接続へと拡張された。ただし実際に研究が進んでいるのは、ベクトルバンドルとその主バンドルに対する接続概念である。

以下、本項では特に断りがない限り、多様体、関数、バンドル等は全てテンプレート:Mvar級の場合を考える。よって紛れがなければ「テンプレート:Mvar級」を省略して単に多様体、関数、バンドル等という。また特に断りがない限りベクトル空間は実数体上のものを考える。

概要

多様体テンプレート:Mvar上のベクトル場テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar上のc(t)に対し、テンプレート:Mvarc(t)に沿った「方向微分」を定義することを考える。ユークリッド空間における微分を参考にすると、

limΔt0Yc(t+Δt)Yc(t)Δt

のように定義するのがよいように思えるが、多様体上ではc(t+Δt)c(t)は別の点なので、両者の差Yc(t+Δt)Yc(t)は意味も持たない。しかしYc(t+Δt)c(t)まで「平行移動」できれば、平行移動の結果τtt+Δt(Yc(t+Δt))Yc(t)の差を取る事で「方向微分」を定義でき、これをテンプレート:Mvarc(t)に沿った共変微分dtYc(t)という。


逆にc(t)に沿った共変微分dtYc(t)が定義できていれば、

dtYc(t)=0

が恒等的に成立している事をもって、テンプレート:Mvarc(t)に沿って平行と呼ぶことで平行の概念を定義できる。


このように平行移動と共変微分は実質的に同値な概念であり、多様体のベクトル場に対して平行移動・共変微分を定義できる構造を多様体(の接バンドル)の接続という。


接続概念から定まる平行移動により、(何ら構造が定義されていない)多様体では無関係なはずの点c(t+Δt)におけるベクトルYc(t+Δt)c(t)におけるベクトルYc(t)と「接続」して関係づける事ができ、これが「接続」という用語の語源である[2]


上では接バンドルに対する接続を説明したが、より一般にベクトルバンドルの接続、あるいはさらに一般にファイバーバンドルの接続を考える事ができる。上述のように平行移動と共変微分は実質的に同値な概念なので、平行移動・共変微分のうち、定義しやすい方をもとにして接続概念を定義すればよい。

そこでベクトルバンドルの場合は共変微分を、一般のファイバーバンドルの場合は平行移動をベースにして接続概念を定義する。


接続によって定まるもう一つの重要概念として曲率があり、これはファイバーバンドルの「曲がり具合」を表している。特に接ベクトルバンドルの曲率は多様体それ自身の「曲がり具合」とみなせる。曲率概念は歴史的には3次元ユークリッド空間3内の曲面に対して定義されたものだが、実は「外の空間」である3がなくても定義できる曲面に内在的な量である事が示されたので、これを一般のリーマン多様体(の接ベクトルバンドル)、さらには一般のファイバーバンドルに対して拡張したものである。多様体に内在的な量としてみなしたとき、曲率の幾何学的意味は、閉曲線に沿ってベクトルを一周平行移動したとき、もとのベクトルとどの程度ずれるかを測った量であるとみなせる。

ベクトルバンドルの接続

本節ではまずリーマン多様体の接続であるレヴィ-チヴィタ接続の定義を述べ、次により一般的なベクトルバンドルに対する接続の定義を述べる。

レヴィ-チヴィタ接続の定義

テンプレート:Main テンプレート:Mvarnの部分多様体とし、c(t)テンプレート:Mvar上の曲線とし、さらにv(t)c(t)上定義されたテンプレート:Mvarのベクトル場とし(すなわち各時刻テンプレート:Mvarに対し、v(t)v(t)Tc(t)Mを満たすとし)、

dtv(t):=Prc(t)(ddtvc(t))

と定義する。ここでテンプレート:Mathテンプレート:Mvarの点テンプレート:Mathにおけるn内の接平面(と自然に同一視可能なテンプレート:Math)への射影である。またテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar上のベクトル場とするとき、

XY|P:=dtYexp(tX)(P)

と定義する。ここでexp(tX)(P)は時刻テンプレート:Mvarに点PMを通るテンプレート:Mvar積分曲線である。実はこれらの量はテンプレート:Mvarの内在的な量である事、すなわちnからテンプレート:Mvarに誘導されるリーマン計量(とその偏微分)のみから計算できる事が知られている。


具体的にはテンプレート:Mvarに局所座標(x1,,xm)を取ると、以下のように書ける(アインシュタインの縮約で表記):

dtv(t)=(ddtvi(t)+dxj(t)dtvk(t)Γjki)xi XY=(XjYixj+XjYkΓjki)xi
   where Γjki=12gi(gkxj+gjxkgjkx)

そこでdtv(t)XYをリーマン多様体(M,g)に内在的な値とみなしたものを考える事ができる。XYは以下の公理で特徴づけられる事が知られている:

テンプレート:Math theorem ここでテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar上の任意の可微分なベクトル場であり、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar上定義された任意の実数値テンプレート:Mvar級関数であり、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarは任意の実数であり、fYは点uMにおいてf(u)Yuとなるベクトル場であり、X(f)テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar方向微分であり、[X,Y]テンプレート:仮リンクである。


dtv(t)XYを曲線上に制限したものとして定義できる。

ベクトルバンドルの接続の定義

テンプレート:Mainπ:EMを可微分多様体テンプレート:Mvar上のベクトルバンドルとし(テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarのいずれにもリーマン計量が入っているとは限らない)、Γ(E)テンプレート:Mvarの切断全体の集合とし、𝒳(M):=Γ(TM)テンプレート:Mvar上のベクトル場全体の集合とする。

ベクトルバンドルの接続は前述したレヴィ-チヴィタ接続の公理的特徴づけの5つの性質のうち3つを使って定義される。

テンプレート:Math theorem ここでテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar上の任意のベクトル場であり、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarの任意の切断であり、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarは実数であり、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar上定義された任意の実数値可微分関数であり、fsは点テンプレート:Mvarにおいてf(u)suとなるテンプレート:Mvarの切断であり、X(f)テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar方向微分である。

上述の定義から、一般のベクトルバンドルの接続もレヴィ-チヴィタ接続と同様、

Xs=(Xjsixj+XjskΓjki)ei

という形で書ける。ここで(x1,,xm)テンプレート:Mvarの局所座標であり、(e1,,en)テンプレート:Mvarの局所的な基底である[注 1]。ただしもちろんレヴィ-チヴィタ接続と違いΓijkは計量で書けるとは限らない。


さらに以下の定義をする: テンプレート:Math theorem

リーマン幾何学の基本定理から、レヴィ-チヴィタ接続とは、唯一の計量と両立する捻れなしのアフィン接続として特徴づけられる。

曲線上の微分

テンプレート:Mvarの曲線c(t)=(x1(t),,xm(t))上に切断s(t)が定義されているとき、接続の成分表示のX=Xixiを形式的にdcdt=dxidtxiに置き換えた

dts=(dxjdtsixj+dxjdtskΓjki)xi

を、曲線c(t)に沿った共変微分という。この定義は基底の取り方によらずwell-definedである。

平行移動

球面上の平行移動。大円で囲まれた三角形上でベクトルを一周平行移動すると、もとに戻ってきたときに元のベクトルには戻らない。
π:EM

をベクトルバンドルとし、テンプレート:Mvarの曲線

c(t)

上定義されたテンプレート:Mvar上のベクトル場

v(t)

dtv(t)=0

を恒等的に満たすとき、v(t)c(t)平行であるという[3]。また、c(t0)上の接ベクトルw0Tc(t0)Mc(t1)上の接ベクトルw1Tc(t1)Mに対し、v(t0)=w0v(t1)=w1を満たすc(t)上の平行なベクトル場v(t)が存在するとき、w1w0c(t)に沿って平行移動テンプレート:Lang-en-short c(t))した接ベクトルであるという[3]


ユークリッド空間の平行移動と異なる点として、どの経路c(t)に沿って平行移動したかによって結果が異なる事があげられる。この現象をテンプレート:仮リンクテンプレート:Lang-en-short)という[4]

右図はホロノミーの具体例であり、接ベクトルを大円で囲まれた三角形に沿って一周したものを図示しているが、一周すると元のベクトルと90度ずれてしまっている事が分かる。


c(t)に沿ってw0Tc(0)Mc(t)まで平行移動したベクトルをφc,t(v)Tc(t)Mとするとφc,t:Tc(0)MTc(t)Mは線形変換である[5]。また共変微分は平行移動で特徴づけられる:

テンプレート:Math theorem

上述のように平行移動があれば共変微分が定義できるので、一般のファイバーバンドルではむしろ平行移動に基づいて接続概念を定義する。


テンプレート:Mvar上に計量テンプレート:Mvarが定義されていてしかもテンプレート:Mvarが計量と両立しているとすると、以下が成立する: テンプレート:Math theorem

本章では接続テンプレート:Mvarの「接続形式」という概念を述べる。本章で述べるように、むしろ接続形式から接続を定義したほうが数学的な構造を探る上で有利な点があり、このアイデアに沿って接続を定式化したのが後の章で述べる主バンドルの接続概念である。

定義

(e1,,em)を開集合UM上で定義されたテンプレート:Mvarの局所的な基底とするとき、接続形式を以下のように定義する:テンプレート:Math theorem接続形式が与えられれば

Xs=X(sj)ej+sjωij(X)ei

により接続を再現できるので、この意味において接続形式は接続テンプレート:Mvarの情報をすべて含んでいる。

性質

接続概念において重要な役割を果たす平行移動の概念は接続形式テンプレート:Mvarと強く関係しており、底空間テンプレート:Mvarの曲線c(t)に沿って定義された局所的な基底(e1(t),,en(t))テンプレート:Mvarで微分したものが接続形式ω(dcdt(0))に一致する。

よって特に(レヴィ・チヴィタ接続などの)テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarの計量と両立する接続の場合、テンプレート:Mvarによる平行移動は回転変換、すなわちSO(n)の元なので、その微分である接続形式テンプレート:MvarSO(n)のリー代数𝔰𝔬(n)の元、すなわち歪対称行列である[注 2]テンプレート:Math theorem


このように接続形式を用いるとベクトルバンドルの構造群(上の例ではSO(n))が接続形式の構造をリー群・リー代数対応により支配している事が見えやすくなる。

上では回転群SO(n)の場合を説明したが、GLn()(を自然にGL2n()の部分群とみなしたもの)やUn()物理学で重要なシンプレクティック群スピン群に対しても同種の性質が証明でき、接続形式がリー群・リー代数対応により支配されている事がわかる。

こうした事実は接続概念を直接リー群と接続形式とで記述する方が数学的に自然である事を示唆する。後で説明する、リー群の主バンドルに対する接続はこのアイデアを定式化したもので、主バンドルの接続は接続形式に相当するものを使って定義される。


そこで本項では、まずベクトルバンドルの接続と主バンドルの接続の両方を包括する概念であるファイバーバンドルの接続概念を導入する。この概念は「そもそも平行移動とは何か」を直接的に定式化したもので、この概念それ自身が接続形式の言葉で記述されるわけではない。

そして次にファイバーバンドルの接続概念を用いて主バンドルの接続概念を定義すると同時に、主バンドルの接続を接続形式の言葉で再定式化し、ベクトルバンドルの接続と主バンドルの接続の接続形式の言葉で記述する。

ファイバーバンドルの接続テンプレート:Anchors

テンプレート:Main 主バンドルの接続を定義する前準備として、一般のファイバーバンドルに対する接続を定義する。後述するように、主バンドルの接続はファイバーバンドルに対する接続で群作用に対して普遍になるものである。

すでに述べたように研究が進んでいるのばベクトルバンドルの接続なので、そのような目的のためにはこの一般の接続概念は必要ない。しかしファイバーバンドルの接続により、ベクトルバンドルの接続と次章に述べる主バンドルの接続とを統一的な視点から語る事ができるようになり、主バンドルの接続に基づいてベクトルバンドルの接続の性質をそれに対応する主バンドルの接続と対応付けて調べる事ができる。

定義に至る背景テンプレート:Anchors

π:EMをベクトルバンドルとし、テンプレート:MvarをこのバンドルのKoszul接続とする。テンプレート:Mvar上の任意の曲線テンプレート:Mathテンプレート:Math上の任意の切断テンプレート:Mathで平行なものに対し、テンプレート:Mathテンプレート:Mvar上の曲線とみなしたときにdsdtが入るテンプレート:Mvarの部分空間を「水平部分空間」と呼ぶ。

以上のように接続テンプレート:Mvarから水平部分空間が定まるが、逆に水平部分空間の情報があれば接続を再現できる事も知られている[6]

このことからベクトルバンドルの場合は接続概念は水平部分空間の概念は等価なので、一般のファイバーバンドルに対する接続を水平部分空間の概念を用いて定義する事にする。

定義

以上の考察を元に、ファイバーバンドルの接続を定義する。そのためにまず「垂直部分空間」という概念を定義する。π:EMをファイバーテンプレート:Mvarを持つファイバーバンドルとし、テンプレート:Mathテンプレート:Mvarの元とするとしテンプレート:Mvarが誘導する写像をπ*:TETMとするとき、

𝒱e:={ξTeEπ*(ξ)=0}=Te(Eπ(e))

を、テンプレート:Mvarにおけるテンプレート:Mvar垂直部分空間テンプレート:Lang-en-short)という[7][8]テンプレート:Refn。そしてファイバーバンドルの接続を以下のように定義する:

テンプレート:Math theorem

名称に関して

ファイバーバンドルの接続のことをエーレスマン接続[9]テンプレート:Lang-en-short)と呼ぶ場合があるが[10]主バンドルに対する接続の事を「エーレスマン接続」と読んでいる書籍[11]もあるので注意が必要である[12]。なお主バンドル上においても両者の概念は同値ではなく、ファイバーバンドルの接続のうち構造群の作用に関して不変なものを主バンドルの接続と呼ぶ。

両者の区別のため、一般のファイバーバンドルの接続を一般の接続テンプレート:Lang-en-short[13])、主バンドルの接続を主接続テンプレート:Lang-en-short[14])と呼ぶ場合がある。

またファイバーバンドルの接続のうち、完備なもののみを「エーレスマン接続」と呼ぶ場合もある[15]。なおエーレスマン自身による定義では完備性を仮定していた[16]

平行移動、共変微分

平行移動

π:EMをファイバーバンドルとし、{e}eEをその接続とする。 テンプレート:Math theorem

接続の定義から、

π*|e:|eTπ(e)M

はベクトル空間としての同型であるので、この逆写像

Lifte:Tπ(e)Me

を考える事ができる。Lifte(v)vTπ(e)Mテンプレート:Mvarへの水平リフトテンプレート:Lang-en-short[17])という。水平リフトの定義から明らかなように、切断s(t)が平行である必要十分条件は

ddts(t)=Lifts(t)(ddtc(t))

を満たす事である[17]

共変微分

テンプレート:Math theorem同様にテンプレート:Mvar上の曲線c(t)に沿った切断s(t)に対し、s(t)c(t)に沿った共変微分

dts(t)=ddts(t)Lifts(t)(ddtc(t))

により定義する。この事からすなわち、共変微分dts(t)とは、平行移動からのズレを表す量である事がわかる。

一般の接続からベクトルバンドルの接続へ

ベクトルバンドルのKoszul接続から一般の接続概念が得られる事をすでに見たが、逆にベクトルバンドル上の(一般の)接続が定める共変微分がKoszul接続の公理を満たす条件は以下の通りである:テンプレート:Math theoremKoszul接続から一般の接続概念を誘導する方法と(上記の定理の条件を満たす)一般の接続概念からKoszul接続を誘導する方法は「逆写像」の関係にあり、上記の定理の条件を満たす一般の接続概念とKoszul接続は1:1に対応する[18]

主バンドルの接続テンプレート:Anchors

テンプレート:Main

定義

主バンドルの接続は、ファイバーバンドルの接続で群作用に対して不変になるものである。すなわち、テンプレート:Math theoremここで𝒱p垂直部分空間𝒱e:={ξTePπ*(ξ)=0}=Te(Pπ(e))であり、(Rg)*gGテンプレート:Mvarへの右からの作用Rg:pPpgPテンプレート:Mvarに誘導する写像である。pテンプレート:Mvarにおける水平部分空間という。

リー代数を使った定式化

本節では、前節で定義した主バンドルの接続概念をリー代数を使って特徴づける。後述するようにこちらの定義が自然にベクトルバンドルの接続と対応する。

そのために基本ベクトル場の概念を導入する。テンプレート:Mvarをリー群とし、𝔤をそのリー代数とし、さらにπ:PMテンプレート:Mvar-主バンドルとするとき、リー代数の元A𝔤と点pPに対し、

A_p:=ddt(pexp(tA))|t=0TpP

により、テンプレート:Mvar上のベクトル場A_を定義する。A_テンプレート:Mvarに対応するテンプレート:Mvar上のテンプレート:仮リンクテンプレート:Lang-en-short)というテンプレート:Refnテンプレート:Refn


基本ベクトル場の定義より明らかに各pPに対し、写像

ζp:A𝔤A_p𝒱p

は全単射であるので、テンプレート:Mvarの写像の逆写像を考えることができる。この逆写像を分解TpP=𝒱ppの垂直部分空間への射影Vp:TpP𝒱pと合成する事で、

TpPVp𝒱pζp1𝔤

を作る事ができる。この写像を𝔤に値を取る1-形式とみなしたものを

ωp

とし、各点テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarを対応させるテンプレート:Mvar上の𝔤値1-形式の場テンプレート:Mvar接続形式テンプレート:Lang-en-short)というテンプレート:Refn

以上の議論から明らかに垂直射影からテンプレート:Mvarが定まり、逆にテンプレート:Mvarから垂直射影が定まるのでテンプレート:Mvarによって接続概念を定式化できる:テンプレート:Math theorem

ここで(Rg)*gGテンプレート:Mvarへの右からの作用Rg:pPpgPテンプレート:Mvarに誘導する写像であり、テンプレート:Math随伴表現テンプレート:Lang-en-short

Ad(g):dhdt(0)𝔤ddtgh(t)g1|t=0𝔤

である[19]

主バンドルとしての接続から前述の方法でテンプレート:Mvarの接続形式が定まり、逆に接続形式テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarになる方向を水平方向とすることでテンプレート:Mvarに主バンドルとしての接続が再現できるので、両者の定義は同値である。

ベクトルバンドルの接続と主バンドルの接続の関係性テンプレート:Anchors

テンプレート:Mainテンプレート:See also 本節では接続形式の章で述べたアイデアに基づいて、ベクトルバンドルの接続(Koszul接続)と主バンドルの接続(主接続)の関係を述べる。

接続形式の章で見たSO(n)のケースだけでなくGLn()の部分リー群テンプレート:Mvarに対して両者の関係性を示すため、本章ではまず「テンプレート:Mvar-フレーム」、および「テンプレート:Mvar-テンプレート:仮リンク」という概念を導入する。「テンプレート:Mvar-フレーム」はテンプレート:MvarSO(n)の場合は正規直交基底に相当するものであり、テンプレート:Mvar-フレームバンドルはテンプレート:Mvar-フレームを束ねてできるバンドルであり、自然にテンプレート:Mvar-主バンドルとみなせる。

次に本章ではテンプレート:Mvarのフレームバンドル上の接続からテンプレート:MvarのKoszul接続が定まる事を見る。そして構造群テンプレート:Mvarを持つベクトルバンドルの接続がテンプレート:Mvarと「両立する」事を定義し、最後にテンプレート:Mvar-フレームバンドルの接続の接続形式とベクトルバンドルのテンプレート:Mvarと両立する接続の接続形式が1対1の関係にある事を見る。

フレームバンドル

定義

テンプレート:Mvar-フレーム」とは正規直交基底の概念を一般化したもので、テンプレート:MvarSO(n)の場合、テンプレート:Mvar-フレームが正規直交基底に相当する。

テンプレート:Math theorem ここでe'1,,e'nnの標準的な基底であり、geiは線形変換gGGLn()テンプレート:Mvarに作用させたものである。

構造群テンプレート:Mvarを持つベクトルバンドルの定義から、テンプレート:Mvar-フレームの定義はバンドルチャートの取り方によらずwell-definedである。


FG(E)uuM上のテンプレート:Mvar-フレーム全体の集合とすると、

FG(E):=uMFG(E)u

は自然にテンプレート:Mvar上のテンプレート:Mvar-主バンドルをなし、FG(E)を構造群テンプレート:Mvarに関するフレームバンドルという[20]テンプレート:Refn

主接続からKoszul接続の誘導

π:EMテンプレート:Mvarを構造群を持つベクトルバンドルとし、FG(E)をそのフレームバンドルとする。さらにテンプレート:Mvar-主バンドルFG(E)に接続形式がω=(ωij)ijの接続が入っているとする。開集合UM上定義されたテンプレート:Mvarの局所的な基底e=(e1,,en)に対し、

ω^:=e*(ω)

を、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarからテンプレート:Mathへの写像と見たときの接続形式テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarへの引き戻しとし、ω^ω^=(ω^ij)i,jと成分表示する。

テンプレート:Math theorem

構造群と接続の両立

テンプレート:MvarGLn()の部分リー群とする。構造群テンプレート:Mvarを持つベクトルバンドルの接続(Koszul接続)がテンプレート:Mvarと両立する事を以下のように定義する。直観的には平行移動がテンプレート:Mvarの元で書ける事を意味する:テンプレート:Math theorem定義より明らかに以下が従う:テンプレート:Math theorem接続がテンプレート:Mvarと両立する事は、接続形式がテンプレート:Mvarのリー代数に入っている事と同値である:テンプレート:Math theorem接続形式の章では平行移動が常にSO(n)の元で表せるときに接続形式がSO(n)のリー代数に入っている事を示したが、上記の定理はこの事実をGLn()の任意の部分リー群に対して示したものである。

ベクトルバンドルの接続から主接続の接続へ

テンプレート:Mvarと両立する接続はフレームバンドルの接続に対応している:テンプレート:Math theorem本章の成果をまとめると、以下の結論が得られる:テンプレート:Math theorem

共変微分の対応関係

ベクトルバンドルEMの切断テンプレート:Mvarが与えられたとき、FG(M)上の関数

ψs:(e1,,en)FG(M)(s1,,sn)n, where s=siei

を定義できる。このとき次が成立する:テンプレート:Math theoremここでLift(X)ψsFG(M)上のベクトル場Y:=Lift(X)によりFG(M)上のn値関数ψsの各成分を微分したY(ψs)の事である。

曲率

一般のファイバーバンドルの曲率

テンプレート:Main ファイバーバンドルπ:EM接続(テンプレート:Lang-en-short){e}eEが与えられているとき、テンプレート:Mvarの接ベクトル空間はTeE=𝒱eeと分解できた。そこで

Ve:TeE𝒱eHe:TeEe

をそれぞれ垂直部分空間、水平部分空間への射影とする。曲率概念はこのテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarを使って定義する:テンプレート:Math theoremここで[,]テンプレート:仮リンクである。テンプレート:MvarC(E)-線形であり[21][22]テンプレート:Refnテンプレート:Refn、よってテンプレート:Mvarは双線形写像

Ω:TE×TE𝒱

であるとみなせる[注 3]

フロベニウスの定理を用いると、曲率形式が恒等的に0である事は超平面の族{e}eE可積分である事と同値である事を示せる[23]。したがって曲率形式は水平部分空間 {e}eEが可積分ではない度合いを表す量である

主接続の曲率

テンプレート:Main 本節では、主接続の場合に対し、上記で定義した曲率形式をリー代数の言葉で書き換える。テンプレート:Mvarをリー群とし、𝔤テンプレート:Mvarのリー代数とし、さらにπ:PMテンプレート:Mvar-主バンドルとし、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarの主接続とする。リー代数𝔤におけるリー括弧を使って

[ω,ω]𝔤(X,Y):=[ω(X),ω(Y)]𝔤

と定義しテンプレート:Refn、さらに前の章と同様、リー代数の元に基本ベクトル場を対応させる写像

ζp:A𝔤A_p𝒱p

を考える。紛れがなければ添字テンプレート:Mvarを省略し単にテンプレート:Mvarと書く。テンプレート:Math theorem

ベクトルバンドルの接続の曲率

テンプレート:Main

定義

Koszul接続が定義されたベクトルバンドルの曲率を以下のように定義する:

テンプレート:Math theoremテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarに関してC(M)-線形であり[24]、よってテンプレート:Mvarは各点PMに対し、

RPT*MT*ME*E

を対応させるテンソル場とみなせる。


さらにKoszul接続の曲率形式を以下のように定義する:テンプレート:Math theorem

一般の接続の曲率形式との関係

すでに述べたようにベクトルバンドルπ:EM上のKoszul接続テンプレート:Mvarには、それと対応するファイバーバンドルとしての接続{Ve}eEが定義可能であるが、上述したKoszul接続の曲率は前述した一般のファイバーバンドルの曲率形式Ω(ξ,η)=V([H(ξ),H(η)])と以下の関係を満たす。ここでテンプレート:Mvarは水平部分空間への射影である。テンプレート:Math theoremよって特にKoszul接続の曲率形式Ω^eとは以下の関係を満たす:

Ωij(X,Y)=ei,V(Liftej(X),Liftej(Y))

ここでe=(e1,,en)であり、(e1,,en)はその双対基底である。

主接続の曲率との関係

EMのフレームバンドルFG(M)の曲率形式とKoszul接続の曲率形式は以下の関係を満たす:テンプレート:Math theorem

ホロノミー群

本節では特に断りのない限り、π:EM完備な接続={e}eEが定義されたファイバーバンドルでテンプレート:Mvar連結なものとする。ここで接続が完備であるとは、テンプレート:Mvar上の任意の曲線c(t)上にc(0)からc(1)までの平行移動を常に定義可能な事を指す。

定義

x0Mテンプレート:Mvarの点とし、c(t)Mテンプレート:Mvarからテンプレート:Mvar自身への区分的になめらかな閉曲線とすると、接続が完備なのでテンプレート:MvarのファイバーEx0の任意の元テンプレート:Mvarに対し、テンプレート:Mvarc(t)Mに沿って一周平行移動してできた元をφc(e)Ex0とする事で、Ex0上の可微分同相写像

φc:Ex0Ex0

を定義できる。 テンプレート:Math theorem

ホロノミーリー代数

uMにおける接ベクトルvTuMに対し、eEuvテンプレート:Mvarでの水平リフトを対応させる

eEuLifte(v)eTeE

をファイバーEu上の切断とみなしたものをLift(vu)と書く。

2つのベクトルvu,wuTuMに対し、Lift(vu)Lift(wu)はいずれもEu上のベクトル場なので、曲率形式テンプレート:Mvarに対して、

Ω(Lift(vu),Lift(wu))VE=TEu

を定義でき、これはEu上のベクトル場とみなせる[25]。さらにu0Mをfixし、テンプレート:Mvarからu0までつなぐ曲線c(t)に沿ってΩ(Lift(vu),Lift(wu))を平行移動したものをΩc(Lift(vu),Lift(wu))と書く。

テンプレート:Math theorem

実は以下の定理が成立する。なお、以下の定理は主バンドルに対するAmbrose–Singerの定理を任意のファイバーバンドルに一般化したものである: テンプレート:Math theorem

接続の歴史

接続は、歴史的にはまずリーマン幾何学において見出された。接続の概念のはじまりをどこに置くかについては諸説あるが、クリストッフェルの研究をその淵源とする見方があるテンプレート:Refn。クリストッフェルは1869年の論文で、座標変換の導関数が満たす関係式の研究を通じ、現在クリストッフェル記号とよばれる量を発見したテンプレート:Sfn。これを用いて、リッチはその学生であるレヴィ=チヴィタとともに、彼らがテンプレート:仮リンクとよんだ、共変微分を用いる今でいうテンソル解析の計算の手法をつくりあげたテンプレート:Sfn

レヴィ=チヴィタはまた、1916年に、リーマン幾何学における接ベクトル平行移動の概念を発見し、これが共変微分によって記述されることをみつけたテンプレート:Sfnレヴィ-チヴィタ接続の名前はこのことによる)。1918年にワイルはそれを一般化して、アフィン接続の概念に到達したテンプレート:Sfnテンプレート:Refn。ここで「接続」にあたる語(テンプレート:Lang-de-short)がはじめて使用されたテンプレート:Citation needed

それからすぐに、エリ・カルタンによって、さらなる一般化が行われた。カルタンはクラインエルランゲン・プログラムの局所化を試みていたのである。1920年代にカルタンは、微分形式を用いた記述によって、現在テンプレート:仮リンクと呼ばれるものを発見していったテンプレート:Sfn。カルタンのこの仕事により、リーマン幾何学だけでなく、テンプレート:仮リンク射影幾何学などのさまざまな幾何学を研究するための基礎が築かれた。

しかしカルタンの記述は、微分幾何学の他の基本的概念の整備が進んでいない当時、理解されづらいものだった。その仕事をよりわかりやすいものにして発展させるために、カルタンの学生にあたるCharles Ehresmannは、1940年代から主バンドルファイバーバンドルを研究した。1951年の論文でEhresmannは、主バンドルの接続を、テンプレート:仮リンクを用いる方法と微分形式による方法の両方で定義したテンプレート:Sfnファイバーバンドルの接続)。

その一方で、1950年にJean-Louis Koszulは、ベクトル束の接続の代数的定式化を与えたテンプレート:Sfnベクトルバンドルの接続)。Koszulの定式化によると、クリストッフェル記号を明示的に用いる必要は必ずしもなくなり、接続の取り扱いは容易になったテンプレート:Citation needed

関連項目

出典

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注釈

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文献

参考文献

歴史的な文献

外部リンク

  1. テンプレート:Citation(絶対微分学の方法とその応用)矢野(1971) 和訳pp.17-95
  2. #Spivak p.251. 「this possibility of comparing, or "connecting", tangent spaces at different points gives rise to the term "connection".」
  3. 3.0 3.1 #Tu p.263.
  4. #Tu p.113.
  5. #Tu p.263.
  6. #Spivak p.251.
  7. #Tu p.256.
  8. #Wendl3 p.73.
  9. 「エーレスマン接続」という訳語は#佐古を参考にした。#佐古に目次にこの名称が確認できる。
  10. #Epstein p.95.
  11. #Tu p.256.
  12. テンプレート:Cite web
  13. #Kolar p.80.
  14. #Kolar p.99.
  15. #Kolar p.81.
  16. #Tuynman p.345.
  17. 17.0 17.1 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「Wendl3-74」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  18. #Wendl3 p.78.
  19. #Tu p.123.
  20. #Salamon p.5.
  21. #Wendl5 p.121.
  22. #Kolar p.77.
  23. #Wendl5 pp.119,121.
  24. #小林 p.43.
  25. 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「Kolar82」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません


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