エルランゲン・プログラム

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エルランゲン・プログラムテンプレート:Lang-de-shortテンプレート:Lang-en-short)とは、1872年フェリックス・クラインが23歳でエルランゲン大学の教授職に就く際、幾何学とは何か、どのように研究すべきものかを示した指針である。日本語ではエルランゲン(の)目録と表記される場合もある[1]

概説

古代ギリシアにおいて「幾何学」といえばユークリッド幾何学の事であったが、数学の発展に伴い、様々な幾何学が登場した。その契機の一つは非ユークリッド幾何学の発見であり、双曲幾何学および楕円幾何学というユークリッド幾何学の平行線公理を満たさない新しい幾何学が提唱された。

この他にも遠近法の数学的な基盤として登場した射影幾何をはじめとして、アフィン幾何学テンプレート:Lang-en-short)、メビウス幾何学テンプレート:Lang-en-short)、テンプレート:仮リンクテンプレート:Lang-en-short)、ラゲール幾何学(テンプレート:Lang-en-short)などが登場した[2]


クラインのエルランゲン・プログラムは、ソフス・リーテンプレート:De(変換群の理論、今日で言うリー群の理論)に基づいて[3]、こうした複数の幾何学を統一的な視点で扱うためのテンプレート:Rubyを提示する。今日の言葉で言えば、これは幾何学を等質空間とみなす、というものである[2]。(なお古くは等質空間の事をクライン空間テンプレート:Lang-en-short)と呼んだ[4])。

すなわち、クラインの意味での幾何学とはリー群テンプレート:Mvarと、テンプレート:Mvarが推移的に作用する多様体テンプレート:Mvarとの組(G,X)の事である[2]。クラインはテンプレート:Mvarの事をテンプレート:De[5][注 1]テンプレート:En[5])と呼び、ハスケルはこれをテンプレート:Enと訳した[2]テンプレート:Mvar上に一点テンプレート:Mvarを取り、テンプレート:Mvarの固定部分群をHx={hGhx=x}とすると、Hgx=g1Hgテンプレート:Mvarによらずテンプレート:Mvarは同型であり、テンプレート:Mvar

[g]G/HgxX

により自然にG/Hxと同型である。このため(G,X)のかわりにリー群テンプレート:Mvarとその閉部分リー群テンプレート:Mvarの組[注 2](G,Hx)の事をクラインの意味での幾何学と呼んでも良い[2][6]

具体例は以下の通りである:

幾何学 テンプレート:Mvar テンプレート:Mvar テンプレート:Mvar
ユークリッド幾何学 𝔼n=n 𝔼n上の等長変換

Isom(𝔼n)={fA,bAO(n),bn}

ここでO(n)直交群であり、fA,b(x)=Ax+b

O(n)
楕円幾何学 n=n+1/ここでxyk:x=ky n上の等長変換群

Isom(n)=O(n+1)

{(A001)|AO(n)}
双曲幾何学 n={xn+1x12++xn2xn+12=1}ここでx=(x1,,xn+1) n上の等長変換群

Isom(n)=O(n,1)

ここでO(n,1)ローレンツ群である。

{(A001)|AO(n)}
(実)射影幾何学 n=n+1/ここでxyk:x=ky 射影線型群PGLn+1()=GLn+1()/ここでABk:A=kB {(*0**)GLn+1()}/

クラインの幾何学では、Gの作用に不変な性質を探る事が目的となる。例えばユークリッド幾何学では、等長変換に不変な性質、例えば三角形の合同、を研究する。


注意すべきは空間テンプレート:Mvarが同一でも、テンプレート:Mvarが異なれば別の幾何学とみなされる事である。例えばユークリッド空間𝔼n上にアフィン変換全体のなすリー群をテンプレート:Mvarとして選んだアフィン幾何学相似変換全体のなすリー群をテンプレート:Mvarとして選んだ相似幾何学はユークリッド幾何学とは区別される。アフィン幾何学では、アフィン変換に不変な性質を探ることになるので、ユークリッド幾何学での研究対象であってもアフィン幾何学の研究対象ではないものが存在する。例えば前述した三角形の合同はアフィン変換に対して不変ではないので、アフィン幾何学の研究対象ではない。

カルタンの幾何学

テンプレート:Main クラインの考え方は数学界に大きな影響を与え、当時乱立していた各種の幾何学を近代的な視点で再統一することに成功した。クラインの定義はその後数十年の間主流であり続けたが、ただベルンハルト・リーマンが創立したリーマン幾何学のみは等質空間とみなせず、したがってエルランゲン・プログラムでは捉えられなかった。

20世紀に入り、ヘルマン・ワイルの創出したアフィン接続を契機に、アンリ・カルタンらによってクラインの幾何学とリーマン幾何学を包括するカルタンの幾何学が提案された。

幾何学の関係性[7]
ユークリッド幾何学 一般化  クラインの幾何学
 → 
 
   ↓一般化    ↓一般化
リーマン幾何学 一般化 カルタンの幾何学
 → 
 


リーマン幾何学が、多様体テンプレート:Mvarの各点の接ベクトル空間計量ベクトル空間とみなすように、カルタンの幾何学では、テンプレート:Mvarの各点の接ベクトル空間を𝔤/𝔥とみなす。ここで𝔤𝔥はそれぞれ、クラインの意味の幾何学(G,H)を構成するリー群テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarリー代数である。

サーストンの幾何学

テンプレート:Main サーストンは自身の幾何学化予想を定式化する際、新たな幾何学の概念を定式化した。サーストンの意味の幾何学は、リーマン多様体上のクラインの意味での幾何学であり、群作用がリーマン計量と両立し、しかもある種の極大性をみたすものとして定式化される。


3次元空間には8種類の幾何学が存在し、3次元多様体を適切に分解したものには必ずこの8つの幾何学のいずれかが入る、というのが幾何学化予想で、ペレルマンにより解決された。

脚注

注釈

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出典

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文献

参考文献

原論文

関連項目

外部リンク

  1. 『岩波数学事典(第4版)』の項目名では「エルランゲンの目録」、矢野健太郎編『数学小辞典』(共立出版)では「エルランゲン目録」となる。
  2. 2.0 2.1 2.2 2.3 2.4 #Sharpe pp.138-139.
  3. #Klein p.1.
  4. #Sharpe pp.153. なお原文に「古くは」(テンプレート:En)とあるので具体的にいつの事であるか不明。
  5. 5.0 5.1 #Birkhoff p.7.
  6. #Sharpe pp.150.
  7. #Sharpe Preface.


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