レヴィ・チヴィタ接続

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テンプレート:Pathnavbox レヴィ-チヴィタ接続(レヴィ-チヴィタせつぞく、テンプレート:Lang-en-short)とは、リーマン多様体テンプレート:Mvar上に共変微分という概念を定める微分演算子で、テンプレート:Mvarがユークリッド空間nの部分多様体の場合は、nにおける(通常の意味の)微分をテンプレート:Mvarに射影したものが共変微分に一致する。

レヴィ-チヴィタ接続は擬リーマン多様体においても定義でき一般相対性理論に応用を持つ。

レヴィ-チヴィタ「接続」という名称はより一般的なファイバーバンドル接続概念の特殊な場合になっている事により、接続概念から定義される「平行移動」(後述)を用いる事で、テンプレート:Mvar上の相異なる2点を「接続」してこれら2点における接ベクトルを比較可能になる。

レヴィ-チヴィタ接続において定義される概念の多くは一般のファイバーバンドルの接続に対しても定義できる。

レヴィ-チヴィタ接続の名称はイタリア出身の数学者トゥーリオ・レヴィ=チヴィタによる。

モチベーション

テンプレート:MvarNの部分多様体、c(t)テンプレート:Mvar上の曲線、さらにv(t)c(t)上定義されたテンプレート:Mvar のベクトル場(すなわち各時刻テンプレート:Mvarに対し、v(t)v(t)Tc(t)Mを満たす)とし、

dtv(t):=Prc(t)(ddtvc(t))

と定義する。ここでテンプレート:Mathテンプレート:Mvarの点テンプレート:Mathにおけるn内の接平面(と自然に同一視可能なテンプレート:Math )への射影である。またテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar上のベクトル場とするとき、

XY|P:=dtYexp(tX)(P)

と定義する。ここでexp(tX)(P)は時刻テンプレート:Mvarに点PMを通るテンプレート:Mvar積分曲線である。実はこれらの量はテンプレート:Mvarの内在的な量である事、すなわちnからテンプレート:Mvarに誘導されるリーマン計量(とその偏微分)のみから計算できる事が知られている。具体的には以下の通りである:テンプレート:Math theoremここでv(t)=vi(t)xiであり、(gi)i(gj)jの逆行列である。すなわちδijクロネッカーのデルタとするとき、gigj=δijである。 テンプレート:Math proof

同様にX=XixiY=Yixiとすると、以下が成立する:テンプレート:Math theorem

定義と特徴づけ

前節で述べたようにdtv(t)テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarに内在的な量なので、一般のリーマン多様体に対しても、(テンプレート:EquationNote)、(テンプレート:EquationNote)、(テンプレート:EquationNote)式をもってこれらの量を定義できる:テンプレート:Math theoremテンプレート:Math theorem

レヴィ-チヴィタ接続の定義は(テンプレート:EquationNote)、(テンプレート:EquationNote)、(テンプレート:EquationNote)式に登場する局所座標(x1,,xm)に依存しているが、局所座標によらずwell-definedである事を証明できる。

レヴィ・チヴィタ接続の事をリーマン接続テンプレート:Lang-en-short)もしくはリーマン・レヴィ-チヴィタ接続テンプレート:Lang-en-short)とも呼ぶ[1][2][3]

レヴィ-チヴィタ接続を局所座標(x1,,xm)で表したとき、(テンプレート:EquationNote)式で定義されるΓijkを局所座標(x1,,xm)に関するクリストッフェル記号という。

リーマン幾何学の基本定理

レヴィ-チヴィタ接続は以下の性質により特徴づけられる:テンプレート:Math theoremここでテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar上の任意の可微分なベクトル場であり、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar上定義された任意の実数値テンプレート:Mvar級関数であり、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarは任意の実数であり、fYは点uMにおいてf(u)Yuとなるベクトル場であり、X(f)テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar方向微分であり、[X,Y]テンプレート:仮リンクである。すなわち、

[X,Y]:=XYYX=XiYjxixjYiXjxixj

条件1のように、任意のテンプレート:Mvar級関数に対して線形性が成り立つことをC(M)-線形であるという[4]。一般にC(M)-線形な汎関数は、一点の値のみでその値が決まる事が知られている[5]。例えばレヴィ-チヴィタ接続の場合、点PMにおけるXYの値はテンプレート:Mvarのみに依存しテンプレート:Mvar以外の点テンプレート:Mvarにおけるテンプレート:Mvarの値テンプレート:Mvarには依存しない。

なお、5番目の条件は後述するテンソル積の共変微分を用いると、

Zg=0

とも書ける。

Koszulの公式

上述した特徴づけを使うと、レヴィ-チヴィタ接続の成分によらない具体的な表記を得る事ができる。 テンプレート:Math theorem

略記法

テンプレート:Main 文章の前後関係から局所座標が分かるときはxiの事を

xii

等と略記し、jYの事を

jY

と略記する。さらにYi;jjYの成分表示

jY=Yi;ji

により定義する[6]。一方、関数テンプレート:Mvarの偏微分jf

f,j

と「,」をつけて略記する。したがってY=Yiiとすれば、

Yi;j=Yi,j+YkΓijk

が成立する。

なお、

Yi;j,k

j(kY)テンプレート:Mvar番目の係数ではなく後述する二階共変微分j,kYテンプレート:Mvar番目の係数を意味するので注意されたい。

平行移動

球面上の平行移動。大円で囲まれた三角形上でベクトルを一周平行移動すると、もとに戻ってきたときに元のベクトルには戻らない。

テンプレート:Main

定義

リーマン多様体(M,g)上の曲線c(t)上定義されたテンプレート:Mvar上のベクトル場v(t)

dtv(t)=0

を恒等的に満たすとき、v(t)c(t)平行であるという[7]。また、c(t0)上の接ベクトルw0Tc(t0)Mc(t1)上の接ベクトルw1Tc(t1)Mに対し、v(t0)=w0v(t1)=w1を満たすc(t)上の平行なベクトル場v(t)が存在するとき、w1w0c(t)に沿って平行移動テンプレート:Lang-en-short c(t))した接ベクトルであるという[7]

ユークリッド空間の平行移動と異なる点として、どの経路c(t)に沿って平行移動したかによって結果が異なる事があげられる。この現象をテンプレート:仮リンクテンプレート:Lang-en-short)という[8]

右図はホロノミーの具体例であり、接ベクトルを大円で囲まれた三角形に沿って一周したものを図示しているが、一周すると元のベクトルと90度ずれてしまっている事が分かる。

性質

c(t)に沿ってw0Tc(0)Mc(t)まで平行移動したベクトルをφc,t(v)Tc(t)Mとするとφc,t:Tc(0)MTc(t)Mは線形変換であり、しかも計量を保つ。すなわち以下が成立する:

テンプレート:Math theorem

実は平行移動の概念によってレヴィ-チヴィタ接続を特徴づける事ができる:テンプレート:Math theorem

ホロノミー群

とくに点uMからテンプレート:Mvar自身までのテンプレート:Mvar上の閉曲線c(t)に沿って一周する場合、接ベクトルvTuMを平行移動した元をφc(v)と書くことにすると、

Hol(,P):={ϕccテンプレート:Mvarからテンプレート:Mvar自身までの区分的になめらかな閉曲線}

は(合成関数で積を定義するとき)TuM上の直交群の(とは限らない)部分リー群になる[9]Hol(,P)をレヴィ-チヴィタ接続テンプレート:Mvarに関するテンプレート:仮リンクテンプレート:Lang-en-shortという。テンプレート:Mvar弧状連結であればHol(,P)は点テンプレート:Mvarによらず同型である。

幾何学的意味づけ

テンプレート:Main

滑りとねじれのない転がし

テンプレート:Mvarをユークリッド空間Nテンプレート:Mvar次元部分多様体としテンプレート:Refnテンプレート:Mvar上に曲線c(t)を取り(図の青の線)、c(t)に沿ってテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar次元平面nN「滑ったり」「ねじれたり」することなく転がした[注 1]ときにできる曲線の軌跡をc~(t)とする(図の紫の線)。

テンプレート:Mvarを転がすと、時刻テンプレート:Mvarc(t)nに接した瞬間にTc(t)Mnに重なるので、自然に写像

φt:Tc(t)Mn

が定義できる。この写像を使うと、テンプレート:Mvarのレヴィ・チヴィタ接続テンプレート:Mvarの幾何学的意味を述べることができる:テンプレート:Math theoremすなわち、曲線c(t)に沿ったv(t)の共変微分をnに移したものは、v(t)nに移したものを通常の意味で微分したものに一致する。この事実から特に、レヴィ-チヴィタ接続による平行移動とnにおける通常の意味での平行移動の関係を示すことができる:テンプレート:Math theorem

接続形式

(e1,,em)を接バンドルTMの局所的な基底とし、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar上のベクトル場とし、Y=Yjejとすると、レヴィ-チヴィタ接続の定義から

XY=X(Yj)ej+YjXej

である。この式は、共変微分XY=X(Yjej)ライプニッツ則を適用して成分部分の微分X(Yj)ejと基底部分の微分YjXejの和として表現したものと解釈できる。

そこで以下のような定義をする: テンプレート:Math theorem

定義から明らかに

ωij(ek)=Γikj

が成立する。

接続概念において重要な役割を果たす平行移動の概念は接続形式テンプレート:Mvarと強く関係しており、底空間テンプレート:Mvarの曲線c(t)に沿って定義された局所的な基底(e1(t),,em(t))テンプレート:Mvarで微分したものが接続形式ω(dcdt(0))に一致する。

よって特に(レヴィ・チヴィタ接続などの)テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarの計量と両立する接続の場合、テンプレート:Mvarによる平行移動は回転変換、すなわちSO(m)の元なので、その微分である接続形式テンプレート:MvarSO(m)のリー代数𝔰𝔬(m)の元、すなわち歪対称行列である[注 2]テンプレート:Math theorem


このように接続形式を用いるとベクトルバンドルの構造群(上の例ではSO(m))が接続形式の構造をリー群・リー代数対応により支配している事が見えやすくなる。

上では回転群SO(m)の場合を説明したが、物理学で重要な他の群、例えばシンプレクティック群スピン群に対しても同種の性質が証明でき、接続形式がリー群・リー代数対応により支配されている事がわかる。

こうした事実は接続概念を直接リー群と接続形式とで記述する方が数学的に自然である事を示唆する。リー群の主バンドルの接続はこのアイデアを定式化したもので、主バンドルの接続は接続形式に相当するものを使って定義される。詳細は接続 (ファイバー束)の項目を参照されたい。

測地線

テンプレート:See also

定義

リーマン多様体(M,g)上の曲線c(t)測地線方程式

dtddtc(t)=0

を恒等的に満たすものを測地線という[10]。2階微分は物理的には加速度であるので、測地線とは加速度が恒等的にテンプレート:Mvarである曲線、すなわちユークリッド空間における直線を一般化した概念であるとみなせるテンプレート:Refn


リーマン多様体テンプレート:Mvar上の曲線の、弧長パラメータによる「二階微分」の長さ

dsdcds

テンプレート:Mvarにおけるc(s)測地線曲率テンプレート:訳語疑問点テンプレート:Lang-en-short[11])、あるいは単に曲率テンプレート:Lang-en-short)という。よって測地線は、曲率がテンプレート:Mvarの曲線と言い換える事ができる。

存在性と一意性

常微分方程式の局所的な解の存在一意性から、点PMにおける接ベクトルvTPMに対し、あるε>0が存在し、

c(0)=Pdcdt(0)=v

を満たす測地線c(t)(ε,ε)上で一意に存在する。この測地線を

exp(tv)

と書く。

しかし測地線は任意の長さに延長できるとは限らない。たとえば2{0}(に通常のユークリッド空間としての計量を入れた空間)において、測地線c(t)=(1t,0)t<1までしか延長できない。任意の測地線がいくらでも延長できるとき、リーマン多様体は測地線完備であるという[12]


測地線が全域に拡張できるか否かに関して以下の定理が知られている。テンプレート:Math theorem

特徴づけ

測地線の概念を全く違った角度から特徴づける事ができる。

弧長の停留曲線

このことを示すため、いくつか記号を導入する。(M,g)をリーマン多様体とし、(M,g)上のレヴィ-チヴィタ接続とする。 UMmテンプレート:Mvarの局所座標とする。以下、テンプレート:Mvar上でのみ議論する。議論を簡単にするため、テンプレート:Mvarmの部分集合と同一視する。


テンプレート:Mvar上の滑らかな曲線P(t)を考え、この曲線の座標表示をx:[a,b]UmP(t)=x(t)=(x1(t),,xm(t))とする。さらに η:[a,b]Um を滑らかな写像でη(a)=η(b)=0となるものとし、ε>0に対して曲線

xε,η(t):=x(t)+εη(t)

を考える。ここで和や定数倍はx(t)η(t)mの元と見たときの和や定数倍である。

そして、

L(x,v):=gx(v,v)

と定義し弧長積分

Sx,η(ε):=abL(xε,η(t),dxε,ηdt(t))dt

を考える。テンプレート:Math theorem「停留曲線」は直観的には滑らかな曲線全体の空間での「微分」がテンプレート:Mvarになるという事である。

変分法の一般論から次が成立する:テンプレート:Math theorem曲線x(t)の弧長

s=atgx(dxdt,dxdt)dt

によってx(t)をパラメトライズする事を弧長パラメーター表示という。実は次が成立する:テンプレート:Math theoremテンプレート:Math proof

エネルギーの停留曲線

上では測地線が

L(x,v):=gx(v,v)
Sx,η(ε):=abL(xε,η(t),dxε,ηdt(t))dt

に対して停留曲線になる事を示したが、エネルギーテンプレート:Refn

L¯(x,v):=gx(v,v)2

から得られる

S¯x,η(ε):=abL¯(xε,η(t),dxε,ηdt(t))dt

に対しても停留曲線は測地線になっている事が知られている。

しかもこの事実はテンプレート:Mvarが正定値や非退化でなくても成立する:テンプレート:Math theoremテンプレート:Math theoremこの事実は擬リーマン多様体を基礎に置く一般相対性理論では、運動エネルギーを最小にする曲線、すなわち自由落下曲線が測地線になる事を含意する。

正規座標

測地線の局所的存在性から、点PMにおける接ベクトル空間テンプレート:Mvarの原点の近傍0PUTPMの任意の元vUに対し、測地線expP(tv)が存在する。必要ならテンプレート:Mvarを小さく取り直す事で写像

vUexpP(v)M

が中への同型になるようにする事ができる。ベクトル空間テンプレート:Mvarの開集合からテンプレート:Mvarへの中への同型なので、vUexpP(v)Mテンプレート:Mvarの点テンプレート:Mvarの周りの局所座標と見なす事ができる。この局所座標をテンプレート:Mvarの点テンプレート:Mvarにおけるテンプレート:仮リンクテンプレート:Lang-en-short)という[13]


nにおいて、Y(x)=(Y1(x),,Yn(x))X=(X1,,Xn)方向の方向微分

(XiY1xi,,XiYnxi)

である。正規座標において、共変微分は方向微分と一致する: テンプレート:Math theorem

なお、後述するテンソルの共変微分に関しても、正規座標においては方向微分に一致する[14]

曲率

動機

レヴィ-チヴィタ接続を成分で書いた

XZ=(XjZixj+XjZkΓjki)xi

より、M=mであれば、すなわちMが「平たい」空間であれば、クリストッフェル記号は全て0になる。よって

この「平たい」空間とのズレを測るのが曲率である。ただしクリストッフェル記号は局所座標の取り方に依存しているため、クリストッフェル記号自身を用いるのではなく、別の方法で「平たい」空間とのズレを測る。

ズレを測るため、クリストッフェル記号Γjkiが全てテンプレート:Mvarであれば、

XZ=X(Zi)xi

となる事に着目する。この事実から「平たい」空間では、

XYZYXZ=XY(Zi)xiYX(Zi)xi=[X,Y](Zi)xi=[X,Y]Z

が常に成立する事を示せる。そこで

R(X,Y)Z:=XYZYXZ[X,Y]Z

と定義すると、R(X,Y)Zテンプレート:Mvarが「平たい」ときには恒等的にゼロになり、この意味においてR(X,Y)Zテンプレート:Mvarの「曲がり具合」を表している考えられる。

定義と性質

定義

テンプレート:Mvar上のベクトル場テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarに対し、

R(X,Y)Z:=XYZYXZ[X,Y]Z

と定義し、テンプレート:Mvarに関する曲率テンプレート:Lang-en-short)もしくは曲率テンソルテンプレート:Lang-en-short)という[15]。ここで[X,Y]テンプレート:仮リンクである。 テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarのいずれに関してもC(M)-線形である事が知られており、したがって、各PMに対し、

RP:(X,Y,Z)TPM×TPM×TPMR(X,Y)ZTPM

というテンソルとみなせる。

規約

一部の文献[16]では符号を反転したR(X,Y)Z:=(XYZYXZ[X,Y]Z)を曲率と呼んでいるので注意されたい。

本項の規約では後述する断面曲率の定義において分子をgP(RP(v,w)w,v)=gP(RP(v,w)v,w)とせねばならずマイナスが出てしまうが、文献[16]の規約であればマイナスが出ない点で有利である。

性質

次の事実が知られている:テンプレート:Math theorem

ここで(XR)テンプレート:Mvarが3つの接ベクトルテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarを引数にとって1つの接ベクトルR(X,Y)Wを返す事から、テンプレート:Mvarテンソル積T*MT*MT*MTMの元とみなしたときの共変微分である。テンソル積に対する共変微分の定義は後述する。

成分表示

曲率はクリストッフェル記号Γijkを用いて以下のように表すことができる:テンプレート:Math theorem 以下のようにも成分表示できる: テンプレート:Math theorem ここでは下記のKulkarni–Nomizu積である:

(hk)(X,Y,Z,W):=h(X,Z)k(Y,W)+h(Y,W)k(X,Z)h(X,W)k(Y,Z)h(Y,Z)k(X,W)

特徴づけ

PMを原点とする正規座標(x1,...,xm)を使うと曲率は以下のように特徴づけられるテンプレート:Refnテンプレート:Math theoremここでRikj:=g(R(xk,x)xj,xi)である。

また、

ξ:U2M

を任意のなめらかな関数とし、

X:=ξ*(x1)Y:=ξ*(x2)

とし、φtX(Q):=expQ(tX)φtY(Q):=expQ(tY)に沿った平行移動を

(φ*X)t:EQEφt(Q)(φ*Y)t:EQEψt(Q)

とすると、曲率を以下のように特徴づけられる[17][18]テンプレート:Math theoremこの定理は一般のベクトルバンドルに対する接続においても成立する[17][18]

断面曲率、リッチ曲率、スカラー曲率

をリーマン多様体(M,g)のレヴィ-チヴィタ接続とし、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarの点とし、v,wTPMとし、さらにe1,,emTPMの基底とする。テンプレート:Math theoremなお、書籍によっては本項のリッチ曲率、スカラー曲率をそれぞれ1n1倍、1n(n1)倍したものをリッチ曲率、スカラー曲率と呼んでいるものもある[19]ので注意されたい。 また断面曲率はKP(v,w)という記号で表記する文献も多いが、後述するガウス曲率と区別するため、本稿ではSecP(v,w)という表記を採用した。


定義から明らかなように、以下が成立する:テンプレート:Math theoremテンプレート:Math theorem実は断面曲率は曲率テンソルを特徴づける:テンプレート:Math theorem

部分リーマン多様体における断面曲率

テンプレート:Mainテンプレート:See also

テンプレート:Mvar次元リーマン多様体テンプレート:Mvarが別のリーマン多様体M¯の余次元テンプレート:Mvarの部分リーマン多様体、すなわちMM¯dimM¯=dimM+1の場合は、以下が成立する[20]テンプレート:Math theoremここでe1,,emは点uMにおける主方向でκ1,,κmを対応する主曲率であり、Secu(X,Y)テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarにおける断面曲率であり、Secu(X,Y)M¯テンプレート:Mvarにおける断面曲率である。

よって特にテンプレート:Mvarが2次元リーマン多様体でM¯3の場合はテンプレート:Mvarの断面曲率Secu(X,Y)はガウス曲率テンプレート:Mvarに一致する(Theorema Egregium)。

定曲率空間

テンプレート:Math theorem定曲率空間では曲率が下記のように書ける:テンプレート:Math theorem上記の定理より、必要ならリーマン計量テンプレート:Mvar1|c|倍する事で、任意の定曲率空間は、曲率がテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar、もしくはテンプレート:Mvarの定曲率空間と「相似」である事がわかる。

曲率がテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarの定曲率空間については以下の事実が知られている:テンプレート:Math theoremよって被覆空間の一般論から以下の系が従う:テンプレート:Math theorem

テンソルの共変微分テンプレート:Anchors

本節ではテンソルに対する共変微分を定義する。

1-形式の共変微分

(M,g)はリーマン多様体なので、テンプレート:Mvarの接ベクトル空間と余接ベクトル空間は自然に同一視できる。テンプレート:Anchorsこの同型写像を

XTMXT*M
αT*MαTM

と書くことにする(Musical isomorphism)。 テンプレート:Math theorem ここでテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar上のベクトル場である。するとテンプレート:Mvar上のベクトル場テンプレート:Mvarに対しライプニッツ則

X(α(Y))=(Xα)(Y)+α(XY)

が成り立ち、局所座標(x1,,xm)で書けば、

Xα=(XjαkxjαiXjΓjki)dxk

テンプレート:Math proof

定義

より一般に、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar上のテンプレート:Math-テンソル場の共変微分はライプニッツ則により定義する。 テンプレート:Math theorem

また微分形式に関しては

iT*MiT*M

と見なすことによりテンソル積の共変微分を用いて微分形式の共変微分を定義できる。

具体例

テンプレート:Mvar上のテンプレート:Mvar-形式、すなわちテンプレート:Mvar上の関数f:Mの共変微分は

Xf=Xf

である。またテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar-形式とし、c(t)dcdt(0)=Xc(0)を満たす曲線とすると、Xαは通常の微分

(Xα)(Y1,,Yk)|c(0)=ddt(αc(t)(Y1|c(t),,Yk|c(t)))

にほかならない[21]

二階共変微分テンプレート:Anchors

テンプレート:See also

定義

テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar上のテンプレート:Math-テンソル場とし、ベクトル場テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Math-テンソル場としての共変微分テンプレート:Mvarを対応させる写像を

T

と書くと、Tテンプレート:Math-テンソル場とみなせる。同様にテンプレート:Mvarテンプレート:Math-テンソル場とし、ベクトル場テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Math-テンソル場としての共変微分テンプレート:Mvarを対応させる写像をTとする。テンプレート:Math-テンソル場全体の集合をΓ(r,s)と書き、合成

Γ(r,s)Γ(r,s+1)Γ(r,s+2)

により定義される写像を

2T

と書き、2Tテンプレート:Mvar二階共変微分テンプレート:Lang-en-short[22]という。三階以上の共変微分も同様に定義できる。


二階共変微分Γ(r,s)Γ(r,s+1)Γ(r,s+2)で1つ目に増えた引数にベクトル場テンプレート:Mvar、2つ目に増えた引数にベクトル場テンプレート:Mvarを代入したテンプレート:Math-テンソル場を

X,Y2T

と書く。

性質

定義から明らかなようにX,Y2Tは双線形性

X,Y2T=XiYjxi,xj2T

を満たす。このことからも分かるようにX,Y2TY(XT)は別の値であり、両者は

X(YT)=X,Y2T+XYT

という関係を満たす[22]

テンプレート:Math proof

規約

X,Y2Tの2つの微分Γ(r,s)Γ(r,s+1)Γ(r,s+2)で増えた2つの引数のうちどちらにテンプレート:Mvarを入れ、どちらにテンプレート:Mvarを入れるかは文献によって異なる。本項では文献[23][24][25]に従い、先に増えた引数にテンプレート:Mvar、後から増えた引数にテンプレート:Mvarを入れたが、文献[21]では逆に先に増えた引数にテンプレート:Mvarを入れている。


また、我々は文献[25]に従い、「X,Y2T」という記号を使ったが、文献によっては「X,Y2T」の事をXYTと書くものもある[23][24]。この値はテンプレート:Mvarテンプレート:Mathテンプレート:Mathを順に作用させたX(YT)とは異なるので注意されたい。

リッチの公式

テンプレート:Math theorem

なお、(R(X,Y)α)(Z):=α(R(X,Y)Z)と定義すれば[26]、最後の式は

X,Y2αY,X2α=R(X,Y)α

と書ける。


一般の(r,s)-テンソルの場合の公式は上記の公式にライプニッツ則を適用する事で得られる。例えば(2,0)-テンソルに対しては、

X,Y2Z1Z2Y,X2Z1Z2=(R(X,Y)Z1)Z2+Z1R(X,Y)Z2

であるし[27](1,1)-テンソルに対しては、下記のとおりである:

X,Y2ZαY,X2Zα=(R(X,Y)Z)αZR(X,Y)α

リーマン多様体上のベクトル解析

本節では勾配発散ラプラシアンという、ユークリッド空間におけるベクトル解析の演算子をリーマン多様体上で定義する。

ホッジ作用素、余微分

テンプレート:Main リーマン多様体上のベクトル解析を展開するための準備としてホッジ作用素と余微分を定義する。テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarの次元とする。テンプレート:Mvarが向き付け可能なとき、テンプレート:Mvar上にリーマン計量テンプレート:Mvarから定まる体積形式テンプレート:Mvarとする。αkT*Mを微分形式とするとき

αβ=*α,βdV

が任意のβmkT*Mに対して成立するような*αmkT*Mが存在する。*αテンプレート:Mvarホッジ双対といい、テンプレート:Mvar*αを対応させる作用素「*」をホッジ作用素という[28]


さらにテンプレート:Mvar余微分テンプレート:Anchors

δα:=(1)m(i+1)+1*d*α

により定義する[29]。ここでテンプレート:Mvar外微分である。外微分および余微分はレヴィ-チヴィタ接続による共変微分と以下の関係を満たす:テンプレート:Math theorem ここでιeiテンプレート:Mvarによるテンプレート:仮リンク

(ιXα)(X1,,Xn1):=α(X,X1,,Xn1)

である。

テンプレート:Mvar上の関数f:Mに対し、fの勾配を以下のように定義する。 テンプレート:Math theorem ここでテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarの外微分であり、「」は計量テンプレート:Mvarによる[[#接ベクトル空間と余接ベクトル空間の同型写像|テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarの同型写像]]であり、fは関数の(0,0)-テンソルとみなしてテンソル場の共変微分Xf=Xfを考え、前節のようにfを定義したものである。


発散

テンプレート:Mvar上のベクトル場テンプレート:Mvarの発散を以下のように定義する: テンプレート:Math theorem ここでテンプレート:Mvar余微分であり、「」は計量テンプレート:Mvarによる[[#接ベクトル空間と余接ベクトル空間の同型写像|テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarの同型写像]]である。

発散のマイナスの符号は規約の問題で、ここに述べたものからマイナスの符号を取ったものを発散と呼ぶこともある[30]


ヘッシアン

テンプレート:Mvar上の関数f:Mに対し、前節のようにfを定義すると、f=dfである。前節同様2階共変微分X,Y2f を定義する。 テンプレート:Math theorem

ヘッシアンは

X,Y2f=Y,X2f

を満たすことを証明できるので[31]、ヘッシアンは対称2次形式である。

ラプラシアン

テンプレート:See alsoリーマン多様体上の関数テンプレート:Mvarのラプラシアンを以下のように定義する: テンプレート:Math theorem

発散の定義でマイナスの符号がつく規約を採用した関係で、通常のラプラシアンとは符号が反対になっている事に注意されたい(この章で後述する他のラプラシアンも同様)。


上述したラプラシアンの定義を微分形式に拡張する事ができるが、拡張方法は(同値ではない)2通りの方法がある。

ホッジ・ラプラシアン

関数テンプレート:Mvarに対するラプラシアンがΔf=δdfと書けていた事に着目し、微分形式テンプレート:Mvarに対し、以下のようにラプラシアンを定義する: テンプレート:Math theorem なお、2つ目の等号はdd=δδ=0を使った。テンプレート:Mvarが0次の微分形式、すなわちテンプレート:Mvar上の関数の場合はdδα=0なので、関数の場合に対するホッジ・ラプラシアンはラプラス・ベルトラミ作用素に一致する。

ボホナー・ラプラシアン

関数テンプレート:Mvarに対するラプラシアンがtr(2f)と書けることに着目し、微分形式テンプレート:Mvarのもう一つのラプラシアンを以下のように定義する: テンプレート:Math theorem ここでe1,,enは接ベクトル空間の局所的な正規直交基底である。E:=kT*Mとするとき、余ベクトル空間の内積g:T*M×T*Mが誘導する写像g:T*MT*Mを考え、合成

Γ(T*ME)Γ(T*MT*ME)gΓ(E)×(1)Γ(E)

*と書く。ここでΓ(E)テンプレート:Mvarに値を取るテンソル場の集合である。すると

ΔBα:=*α

が成立する[32]

ヴァイツェンベック・ボホナーの公式

テンプレート:Main 2つのラプラシアンは以下の関係を満たす: テンプレート:Math theorem ここでテンプレート:Mvarは曲率テンソルであり、(ιejR(ei,ej)α)(X1,,Xn1)=α(R(ei,ej)ej,X1,,Xn1)である。


上記の公式をヴァイツェンベック・ボホナーの公式[33][34]テンプレート:Lang-en-short[35])あるいはヴァイツェンベックの公式テンプレート:Lang-en-short[36])という。

特にテンプレート:Mvarが1-形式であれば、以下が成立する[35]

ΔHαΔBα=Ric(α)

ここでRic(α)リッチ曲率Ric(X,Y)を使って

Ric(α)(X)=Ric(X,α)

により定義される1-形式であり、「」は計量テンプレート:Mvarによる[[#接ベクトル空間と余接ベクトル空間の同型写像|テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarの同型写像]]である。

擬リーマン多様体のレヴィ-チヴィタ接続テンプレート:Anchors

最後に一般相対性理論で重要な擬リーマン多様体のレヴィ-チヴィタ接続について述べる。ここで擬リーマン多様体(M,g)とはリーマン多様体と同様、各点uMに対してテンプレート:Mvarに関してなめらかで非退化な二次形式gu:TuM×TuMを対応させるが、テンプレート:Mvarに正定値性を要求しないものである[37]テンプレート:Refn。このようなテンプレート:Mvar擬リーマン計量という。

擬リーマン多様体(M,g)の場合もテンプレート:Mvarが正定値とは限らないだけで、リーマン多様体の場合と同じ式でレヴィ-チヴィタ接続を定義できる[38]。またリーマン多様体の場合と同じ公理によってレヴィ-チヴィタ接続を特徴づける事も可能である[38]

平行移動、共変微分、測地線、正規座標、曲率といった概念も同様に定義でき、平行移動はテンプレート:Mvarを保つ線形写像となる。

一方、リーマン多様体のものとの違いとしては、Hopf-Rinowの定理が成り立たない事が挙げられる。リーマン多様体の場合、テンプレート:Mvarがコンパクトであればテンプレート:Mvarは距離空間として完備なのでHopf-Rinowの定理からテンプレート:Mvarは測地線完備になる。しかしテンプレート:Mvarがコンパクトであっても、テンプレート:Mvar上の擬リーマン計量が定めるレヴィ-チビタ接続は測地線完備になるとは限らず、反例としてテンプレート:訳語疑問点範囲が知られている。

また擬リーマン多様体ではv:=g(v,v)が定義できるとは限らないので、測地線を長さabdudtdtの停留場曲線として特徴づける事はできない。しかしエネルギーabdudt2dtは擬リーマン多様体でも定義でき、測地線をエネルギーの停留曲線として特徴づけられる[39]。一般相対性理論においては、これはエネルギーを極小にする曲線が自由落下の軌道である事を意味する[39]

歴史

レヴィ・チヴィタ接続は、トゥーリオ・レヴィ=チヴィタ(Tullio Levi-Civita)の名前に因んでいるが、エルヴィン・クリストッフェル(Elwin Bruno Christoffel)によりそれ以前に"発見"されていた。レヴィ・チヴィタは、[40] テンプレート:仮リンク(Gregorio Ricci-Curbastro)とともに、クリストッフェルの記号[41] を用いて平行移動の概念を定義し、平行移動と曲率との関係を研究した。それによってホロノミーの現代的定式化を開発した。[42]

レヴィ・チヴィタによる曲線に沿ったベクトルの平行移動や内在的微分という概念は、元々Mn𝐑n(n+1)2 という特別な埋め込みに対して考えられた。しかし、実際にはそれらは抽象的なリーマン多様体にたいしても意味をなす概念である。何故ならば、クリストッフェルの記号は任意のリーマン多様体上で意味を持つからである。

1869年、クリストッフェルは、ベクトルの内在的微分の各成分は反変ベクトルと同様な変換にしたがうことを発見した。この発見はテンソル解析の真の始まりである。1917年になって初めて、レヴィ・チヴィタによって、アフィン空間に埋め込まれた曲面の内在的微分が、周囲のアフィン空間での通常の微分の接方向成分として解釈された。

出典

テンプレート:Reflist

注釈

テンプレート:Reflist

文献

参考文献

歴史的な文献

関連項目

外部リンク

テンプレート:Tensors

  1. #Andrews Lecture 8 p.74, Lecture 10 p.98.
  2. #新井 p.304.
  3. #Tu p.45.
  4. #Tu p.49.
  5. #Tu pp.56-58.
  6. #Kobayashi-Nomizu-1 p.144.
  7. 7.0 7.1 #Tu p.263.
  8. #Tu p.113.
  9. #小林 p.72.
  10. #Tu p.103.
  11. #Tu p.138.
  12. #Tu p.130.
  13. #Tu p.118.
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  15. #小林 p.43
  16. 16.0 16.1 #Gallier p.394.
  17. 17.0 17.1 #Prasolov p.203.
  18. 18.0 18.1 #Rani p.22.
  19. #Carmo p.97.
  20. #Carmo p.131.
  21. 21.0 21.1 #Berger p.705.
  22. 22.0 22.1 #Viaclovsky pp.23, 25, 26.
  23. 23.0 23.1 #Viaclovsky p. 23.
  24. 24.0 24.1 #Parker p.7.
  25. 25.0 25.1 #Taylor p.92.
  26. #Parker p.13.
  27. #Viaclovsky p.15.
  28. #Gallier p.100.
  29. #Gallier p.375.
  30. 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「:4」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  31. 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「:3」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  32. #Parker p.15, #Gallier pp.392.
  33. テンプレート:Cite web
  34. テンプレート:Cite web
  35. 35.0 35.1 #Gallier pp.396.
  36. 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「Wang-27-2」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  37. #新井 p.281.
  38. 38.0 38.1 #新井 pp.300-302.
  39. 39.0 39.1 #新井 pp.329-331.
  40. See Levi-Civita (1917)
  41. See Christoffel (1869)
  42. See Spivak (1999) Volume II, page 238


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