接続 (ベクトル束)

提供: testwiki
ナビゲーションに移動 検索に移動

テンプレート:Pathnavbox テンプレート:Otheruses ベクトルバンドルの接続(せつぞく、テンプレート:Lang-en-short)とは、微分幾何学の概念で、接ベクトルバンドルやより一般のベクトルバンドル微分概念を定義する演算子である。接続に定義される微分概念を共変微分という。

接続および共変微分の概念は元々リーマン多様体上のベクトル場の微分を定義するために導入されたもので、この接続をレヴィ-チヴィタ接続という。一般の接続概念はレヴィ-チヴィタ接続の満たす性質を自然に一般のベクトルバンドル拡張する事で得られる。


接続によって定まる重要な概念の一つとして平行がある。これは与えられたベクトル場の与えられた曲線に沿った共変微分がテンプレート:Mvarになる、という趣旨の概念で、曲線に沿って平行なベクトル場テンプレート:Mvar(あるいはより一般にベクトルバンドルの切断)により、曲線の起点テンプレート:Mvarにおけるベクトルテンプレート:Mvarが曲線の終点曲線の起点テンプレート:Mvarにおけるベクトルテンプレート:Mvar平行移動されたとみなす。 これにより、(何ら構造が定義されていない)多様体では無関係なはずの点テンプレート:Mvarにおけるベクトルテンプレート:Mvarと点テンプレート:Mvarにおけるベクトルテンプレート:Mvarにおけるベクトルを「接続」して関係づけて考える事ができる。


接続によって定まるもう一つの重要概念として曲率があり、これはベクトルバンドルの「曲がり具合」を表している。特に接ベクトルバンドルの曲率は多様体それ自身の「曲がり具合」とみなせる。曲率概念は歴史的には3次元ユークリッド空間3内の曲面に対して定義されたものだが、実は「外の空間」である3がなくても定義できる曲面に内在的な量である事が示されたので、これを一般のリーマン多様体(の接ベクトルバンドル)、さらには一般のベクトルバンドルに対して拡張したものである。多様体に内在的な量としてみなしたとき、曲率の幾何学的意味は、閉曲線に沿ってベクトルを一周平行移動したとき、もとのベクトルとどの程度ずれるかを測った量であるとみなせる。

接続概念はゲージ理論チャーン・ヴェイユ理論で用いられる。特にチャーン・ヴェイユ理論の特殊ケースとして、曲面に関する古典的なガウス・ボンネの定理一般の偶数次元多様体に拡張するのに役立つ。

準備

切断とその性質

接続の概念を定義するため、ベクトルバンドル関連の概念をいくつか定義する。テンプレート:Math theorem 定義から分かるように、接バンドルテンプレート:Mvarの切断の概念は、テンプレート:Mvarのベクトル場の概念に一致する。よってテンプレート:Mvar上のベクトル場全体の集合𝔛(M)Γ(TM)に一致する[1]

可微分多様体テンプレート:Mvar上の可微分な2つのベクトルバンドルπ1:E1Mπ2:E2Mに対し、写像

α:Γ(E1)Γ(E2)

を考える。テンプレート:Math theoremテンプレート:Math theorem実は次が成立する:テンプレート:Math theoremまた次が成立する:テンプレート:Math theorem

レヴィ-チヴィタ接続

テンプレート:Main

一般のベクトルバンドルに対する接続を定義するため、レヴィ-チヴィタ接続について簡単に振り返る。

テンプレート:Mvarnの部分多様体とし、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar上のベクトル場とするとき、

XY:=Pr(ddtYexp(tX)|t=0)

により定義する。ここでexp(tX)(u)は時刻テンプレート:Mvarに点uMを通るテンプレート:Mvarの積分曲線である。実はこれらの量はテンプレート:Mvarの内在的な量である事、すなわちnからテンプレート:Mvarに誘導されるリーマン計量(とその偏微分)のみから計算できる事が知られている。

そこでXYをリーマン多様体(M,g)に内在的な値とみなしたものを考える事ができる。このXYは以下の公理で特徴づけられる事が知られている:

テンプレート:Math theorem ここでテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar上の任意の可微分なベクトル場であり、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar上定義された任意の実数値テンプレート:Mvar級関数であり、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarは任意の実数であり、fYは点uMにおいてf(u)Yuとなるベクトル場であり、X(f)テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar方向微分であり、[X,Y]テンプレート:仮リンクである。


具体的には局所座標(x1,,xm)を使って、X=Xjxj

XY=(XjYixj+XjYkΓjki)xi
   where Γjki=12gi(gkxj+gjxkgjkx)

と書ける。Γijkを局所座標(x1,,xm)に関するクリストッフェル記号という。

ベクトルバンドルの接続

レヴィ-チヴィタ接続の概念を一般化したものとして、ベクトルバンドルに対する接続の概念がある。接続の概念はゲージ理論チャーン・ヴェイユ理論で重要な役割を果たす。本項では、議論の一般性を確保するために接続の概念を導入するが、あくまでレヴィ-チヴィタ接続やそこから誘導される接続を主軸として話を進める。

定義

π:EMを可微分多様体テンプレート:Mvar上の可微分な実ベクトルバンドルとし(テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarのいずれにもリーマン計量が入っているとは限らない)、Γ(E)テンプレート:Mvarの切断全体の集合とし、𝒳(M):=Γ(TM)テンプレート:Mvar上のベクトル場全体の集合とする。

接続は前述したレヴィ-チヴィタ接続の公理的特徴づけの5つの性質のうち3つを使って定義される: テンプレート:Math theorem

ここでテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar上の任意のベクトル場であり、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarの任意の切断であり、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar上定義された任意の実数値可微分関数であり、fXは点テンプレート:Mvarにおいてf(P)XPとなるベクトル場であり、X(f)テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar方向微分である。明らかにレヴィ-チヴィタ接続はアフィン接続である

なお、Koszul接続の事を線形接続テンプレート:Lang-en-short)と呼ぶ文献[2][3]もあるが、この言葉をアフィン接続の意味で用いている文献[4]や、接バンドルのテンプレート:仮リンク上の接続の意味で用いている文献[5][6]テンプレート:Refnもあるので注意が必要である。

またアフィン接続という名称ではあるが、この接続に関する事項、例えば平行移動は線形変換になり、(線形変換以外の)アフィン変換にはならない。この名称は、この接続をカルタン接続とみなしたときにアフィン空間をモデルとするカルタンの幾何学とみなせる事による。詳細はカルタンの幾何学の項目を参照されたい。


テンプレート:Mvarに計量テンプレート:Mvarが定義されているときには、以下の概念を定義できる:テンプレート:Math theoremまた、E=TMの場合、すなわちテンプレート:Mvarが多様体テンプレート:Mvar上のアフィン接続である場合は以下のテンソルを定義できる:テンプレート:Math theorem捩率テンソルの詳細は後の節で述べる。

リーマン幾何学の基本定理から、レヴィ-チヴィタ接続とは、(唯一の)捩れなしの計量アフィン接続として特徴づけられる。

ライプニッツ則を用いると、以下を示す事ができる:テンプレート:Math theoremテンプレート:Math proof

別定義

Xsテンプレート:Mvarに関してC(M)-線形であり、したがって点テンプレート:Mvarにおける値Xs|Pテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarにおける値テンプレート:Mvarのみから決まる。この事に着目すると、接続を若干違った角度から定式化できる。これを見るため、テンプレート:Mvarに値を取る線形写像s|P

s|P:XPTMXPs|PE

と定義すると、余接ベクトル空間テンプレート:Mvarの定義から、

s|P(T*ME)P

とみなせる。そこでテンプレート:Mvarの各点テンプレート:Mvars|P(T*ME)Pを対応させる切断

s:PMs|P(T*ME)P

を考える事ができる。よって接続は、テンプレート:Mvarの切断テンプレート:MvarT*MEの切断を対応させる写像

:Γ(E)Γ(T*ME)

とみなせる。この事実を用いると、接続を以下のようにも定義できる:テンプレート:Math theorem上記の2つの定義は同値であるが、後者はテンプレート:Mvarを明示しない分数学的取り扱いが若干楽になる場合が多い。

接続形式

(e1,,em)を開集合UM上で定義されたテンプレート:Mvarの局所的な基底とする。接続Xsテンプレート:Mvarに関して局所演算子であったので、テンプレート:Mvarへの制限Uを考える事ができる。以下、紛れがなければUの事を単にと書く。

テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar上のベクトル場とし、s=sjejテンプレート:Mvarの切断とすると、接続の定義から

Xs=X(sj)ej+sjXej

である。この式は、共変微分Xs=X(sjej)ライプニッツ則を適用して係数部分の微分X(sj)ejと基底部分の微分sjXejの和として表現したものと解釈できる。

そこで以下のような定義をする: テンプレート:Math theorem

定義から明らかに、

Xs=X(sj)ej+sjωij(X)ei

である。

さらにωijを成分で、

ωij=Γkjidxk

と表記すると、

Xs=(Xksixk+XksjΓkji)ei

とレヴィ-チヴィタ接続のときと同様の成分表示が得られる。Γkjiを(局所座標x=(x1,,xm)と局所的な基底e1,,enに関する)接続係数テンプレート:Lang-en-short[7]、あるいはレヴィ-チヴィタ接続の場合の名前を流用し、クリストッフェル記号という[8]

捩率テンソルテンプレート:Anchors

テンプレート:Main 本節ではアフィン接続

:𝔛(M)×𝔛(M)𝔛(M)

に対し、先に定義した捩率テンソル

T(X,Y):=XYYX[X,Y]

の性質を述べる。

意味づけ

「捩率」という名称に関してはLoring W. Tuによれば「T(X,Y)を「捩率」と呼ぶうまい理由は無いように見える」[9]が、このテンソルには以下のような意味付けが可能である。

なめらかな任意の写像α:U2Mに対し、リー括弧の性質より[xα,yα]=0であることから、x:=xとすると、

T(xα,yα)=xyαyxα

が成立する事を示せる。すなわち捩率テンソルは2つの微分の非可換度合いを表す量である[10]

また(アフィン空間をモデルとする)カルタン幾何学においては上記のものとは異なった意味付けが可能で、(カルタン幾何学の意味での)曲率の「並進部分」が捩率に対応している。詳細はカルタン幾何学#曲率の分解の節および捩率テンソル#カルタン幾何学の章を参照されたい。

性質

捩率テンソルの性質を見る。

テンプレート:Math theoremここでテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar上の任意の可微分なベクトル場である。

上述の定理と前に述べた定理から、以下の系が従う: テンプレート:Math theorem

接続と捩率テンソルも局所座標で

Xs=(Xsix+XjskΓjki)xi
T(X,Y)=TjkiXjYkxi

と書くとき、次が成立する[11][12]テンプレート:Math theorem

よって捩率テンソルが恒等的にテンプレート:Mvarになる接続、すなわち捩れなしテンプレート:Lang-en-short)の場合、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarに対して対象なテンソルになる。このため捩れなしの接続の事を対称テンプレート:Lang-en-short)な接続ともいう[11]


外微分テンプレート:Mvarに対し、次が成立する:テンプレート:Math theorem テンプレート:Math proof すなわちが捩れなしである事は、が外微分と「両立」する事と同値である。

接続の誘導

本節では、あるベクトルバンドル上定義された接続から別のベクトルバンドル上の接続を定義する方法を述べる。その過程でレヴィ-チヴィタ接続のときにも議論した曲線P(t)に沿った共変微分に関しても述べる。

引き戻し

これまで同様テンプレート:Mvar上の可微分なベクトルバンドルπ:EMの接続とし、さらにf:NMを可微分多様体テンプレート:Mvarからテンプレート:Mvarへの可微分な写像とすると、テンプレート:Mvarによるテンプレート:Mvarの引き戻し(pullback bundle

π:f*(E)N

を考える事ができる。


テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarの局所座標y:VNux:UMmで、Vf1(U)となるものを選び、さらにテンプレート:Mvar上のテンプレート:Mvarの基底e1,,enを選んで接続を接続形式を使って

Us=(dsi+sjωij)ei

と成分表示する。 テンプレート:Math theoremf*()がwell-definedな事の証明は省略する。接続係数を使えば、

f*()YVs=(Yksiyk+YksjxykΓji)ei

である。


引き戻しの特殊な場合として、テンプレート:Mvarが線分の場合がある。この場合写像P:(0,1)Mテンプレート:Mvar上の曲線とみなせる。曲線P(t)に沿った切断テンプレート:Mvarに対し、

sdt:=f*(f*()ddtf*(s))

を考える事ができる。dtsを接続によって定まる曲線P(t)に沿った切断テンプレート:Mvarの共変微分という。成分で書けば

sdt=(dsidt+dxkdtsjΓkji)ei

となるので、レヴィ-チヴィタ接続の場合の曲線P(t)に沿った切断テンプレート:Mvarの共変微分の概念の一般化になっている事がわかる。

直和・テンソル積への誘導

多様体テンプレート:Mvar上の2つのベクトルバンドルテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarがあり、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarにはそれぞれ接続12が定義されているとする。このとき、E1E2上に

(12)X(s1,s2):=(X1s1,X2s2) for XTM(s1,s2)Γ(E1E2)

により、接続が定義できる[13]。またE1E2上に

(12)Xs1s2:=X1s1s2+s1X2s2 for XTMs1s2Γ(E1E2)

により、接続が定義できる[13]

双対バンドルの接続とリーマン計量

テンプレート:Mvarのベクトルバンドルテンプレート:Mvarに接続

が定義されているとき、テンプレート:Mvarの双対バンドルテンプレート:Mvarに以下の性質を満たす接続

*

を定義できる[14][13]

Xω,s=X*ω,s+ω,Xs

ここでテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar上の任意のベクトル場であり、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarの任意の切断であり、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarの任意の切断であり、,テンプレート:Mvarの双対ベクトル空間テンプレート:Mvarの元とテンプレート:Mvarの元との内積である。紛れがなければテンプレート:Mvarを単にテンプレート:Mvarと書く事も多い。


テンプレート:Mvarにリーマン計量がテンプレート:Mvar定義されている場合、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarは自然に同一視でき、

Xg(s1,s2)=g(X*s1,s2)+g(s1,Xs2)

が成立する事になるが、一般には*は異なる。情報幾何学の分野では*の事を双対接続テンプレート:Lang-en-short[15]という。

次が成立する: テンプレート:Math theorem

ここで*g=0E×E上の双線形写像テンプレート:Mvarを自然に(EE)*の元とみなしたときの共変微分である。


また簡単な計算から以下が従う: テンプレート:Math theorem ここで「tω」はテンプレート:Mvar転置行列である。

複数の接続の関係

接続の定義から明らかに以下の性質を示すことができる:テンプレート:Math theoremまた、2つの接続

,:𝔛(M)×Γ(E)Γ(E)

に対し、

A(X,s):=Xs'Xs

とすると、A(X,s)テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar双方に関してC(M)-線形である事が示せ、したがって前に述べた定理からATMEEというバンドル写像だとみなせる。逆に接続:𝔛×Γ(E)Γ(E)とバンドル写像A:TMEEが与えられると、

Xs='Xs+A(X,s)

テンプレート:Mvar上の接続である事を確かめられる。まとめると、以下の定理が成り立つ:テンプレート:Math theorem

UMを取り、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar上の局所的な基底e1,,enを固定し、切断テンプレート:Mvars=skekと成分表示すると、

'Xs:=(Xsj)ej

により局所的に接続を定義できるが、

A(X,s):=Xs'Xs

の成分表示は

A(xj,ek):=XjskΓijkei

とクリストッフェル記号を用いて書ける[16]

この事からクリストッフェル記号は'Xs:=(Xsj)ejとのズレを表す量であると解釈できる。

平行移動とホロノミー群

平行移動

テンプレート:Mvar上の可微分なベクトルバンドルπ:EMの接続とし、P(t)テンプレート:Mvar上の区分的に滑らかな曲線とし、テンプレート:MvarP(t)上のテンプレート:Mvarの切断とする。すなわち各P(t)に対し、sP(t)Eが定義でき、tsP(t)が可微分であり、しかもπ(sP(t))=P(t)が任意のテンプレート:Mvarに耐いて成立するものとする。

テンプレート:Math theorem テンプレート:Mvarがユークリッド空間でテンプレート:Mvarがその接バンドルである場合、sdt=dsdt=0であれば、ベクトルsP(t)sP(t)の基点がテンプレート:Mvarによって動くだけでその大きさも向きも一定である。すなわちP(t)に沿ってsP(0)を「平行移動」して動かしている事になるので、一般のベクトルバンドルの場合にもsdt=0である事を平行と呼ぶのである。

P(t)に沿った切断ssがいずれもP(t)に沿って平行であり、しかも時刻t=aのときsP(a)=s'P(a)であれば、別の時刻t=bでもsP(b)=s'P(b)である事を容易に示すことができる。よって写像

φa,b:v=sP(a)EP(a)sP(b)EP(b)

は切断sの取り方によらずwell-definedである。

テンプレート:Math theorem

球面上の平行移動。測地線(=大円)で囲まれた三角形上でベクトルを一周平行移動すると、もとに戻ってきたときに元のベクトルには戻らない。

ユークリッド空間の場合と違い、どの曲線に沿って平行移動したかによって平行移動の結果が異なる事に注意されたい。すなわち曲線P(t)に沿った平行移動をφa,b(v)、曲線Q(t)に沿った平行移動をψa,b(v)とするとき、たとえP(a)=Q(a)P(b)=Q(b)であってもφa,b(v)=ψa,b(v)であるとは限らない。この現象をテンプレート:仮リンクテンプレート:Lang-en-short)という[17]


φa,bの定義より、φa,bEP(a)からEP(b)への写像であるとみなせるが、この写像は以下を満たす: テンプレート:Math theoremよって平行移動により、(接続や計量が定義されていない)多様体テンプレート:Mvarでは本来無関係のはずのEP(a)EP(b)がつながって(connect)、EP(a)の元とEP(b)の元を比較する事ができるようになる。接続(connection)という名称は、ここから来ている。


テンプレート:Mvarにリーマン計量テンプレート:Mvarが定義されているときは以下が成立する事を容易に示せる:テンプレート:Math theorem

曲線P(t)上定義されたテンプレート:Mvarの切断e1(t),,en(t)で、各時刻テンプレート:Mvarに対してe1(t),,en(t)テンプレート:Mvarの基底の基底になっており、しかもe1(t),,en(t)P(t)に沿って平行なものをP(t)に沿った水平フレームテンプレート:訳語疑問点テンプレート:Lang-en-short)という。

共変微分の特徴づけ

これまで共変微分の概念を用いる事で平行移動の概念を定義してきたが、逆に平行移動の概念を用いて共変微分を特徴づけることができる:

テンプレート:Math theorem

ここでddtφa,t1(s(t))はベクトル空間EP(a)における微分ddtφa,t1(s(t))=limtaφa,t1(s(t))s(a)tである。なお、φa,t1(s(t))テンプレート:MvarによらずEP(a)に属するので、EP(a)上の差や極限を考えることができる。

テンプレート:Math proof


上記の定理を用いると、共変微分の成分表示に意味を持たせる事ができる。これをみるためx:UMmテンプレート:Mvarを局所座標とし、テンプレート:Mvarを成分でx=(x1,,xm)とあらわし、さらにe1,,enテンプレート:Mvar上定義されたテンプレート:Mvarの局所的な基底とすると、

sdt(a)=ddtφa,t1(s(t))|t=a=ddtsi(t)φa,t1(ei(x(t)))|t=a=dsidt(a)(ei(x(a)))+si(a)ddtφa,t1(ei(x(t)))|t=a

であるので、これを共変微分の成分表示

sdt|t=a=dsidt(a)ei(x(a))+si(a)ωij(dxdt(a))ej(x(a))

と比較する事で、以下が結論付けられる: テンプレート:Math theorem

すなわち

sdt|t=a=dsidt(a)ei(x(a))+si(a)ωij(dxdt(a))ej(x(a))

の第一項、第二項はそれぞれ、s=sieiライプニッツ則に従って微分したときのテンプレート:Mvarの方の微分、テンプレート:Mvarの方の微分に対応していると解釈できる。

ホロノミー群

テンプレート:Mathを固定するとき、テンプレート:Mvarから出てテンプレート:Mvar自身へと戻る各閉曲線テンプレート:Mvarに沿った平行移動はテンプレート:Mvarからテンプレート:Mvar自身への線形同型写像φC:EPEPを定めると、曲線の連結テンプレート:Mvarに対しφCC=φCφCとなるし、テンプレート:Mvarの逆向きの曲線をC¯とすると、φC¯=φC1となる事が容易に示せる。

よって

Hol(E,,P):={φCCテンプレート:Mvarから出てテンプレート:Mvar自身へと戻る閉曲線}

とすると、Hol(E,,P)テンプレート:Mvarの自己線形同型のなすの部分群をなす。Hol(E,,P)テンプレート:Mvarにおけるテンプレート:Mvarに関するホロノミー群テンプレート:Lang-en-short)という。なお、テンプレート:Mvar弧状連結であればテンプレート:MvarによらずHol(E,,P)が同型である事を容易に示せるので、テンプレート:Mvarを略して単にHol(E,)とも書く。


また、

Hol0(E,,P):={φCCテンプレート:Mvarから出てテンプレート:Mvar自身へと戻る閉曲線でテンプレート:Mvar上0-ホモトープなもの}

とすると、Hol0(E,,P)Hol(E,,P)の部分群をなす。Hol0(E,,P)テンプレート:Mvarにおけるテンプレート:Mvarに関する制約ホロノミー群テンプレート:Lang-en-short)という。テンプレート:Mvar弧状連結であればテンプレート:MvarによらずHol0(E,,P)が同型である事も同様に示せるので、テンプレート:Mvarを略して単にHol0(E,)とも書く。


定義から明らかなように、Hol(E,,P)Hol0(E,,P)テンプレート:Mvar上の線形同型全体のなすリー群GL(EP)の部分群である。実は次が成立する事が知られている:テンプレート:Math theorem

測地線

定義と性質

接バンドルテンプレート:Mvarにアフィン接続が定義されているとき、測地線の概念を以下のように定義する: テンプレート:Math theorem

すなわち「二階微分」が常にテンプレート:Mvarになる曲線を測地線と呼ぶのである。平行移動の定義から、測地線とはddtP(t)P(t)に沿って平行であると言い換える事もできる。

恒等的に同じ点を取る「曲線」は自明に測地線方程式を満たすが、これは通常の意味での曲線ではないので、以下このような「曲線」を測地線とは呼ばない事にする。


測地線の定義は曲線P(t)のパラメーターテンプレート:Mvarに依存して定義されている事に注意されたい。P(t)が測地線であっても、パラメーターを別の変数テンプレート:Mvarに変数変換して得られるP(u)は測地線になるとは限らない。実際、P(t)が測地線となるパラメーターは線形変換を除いて一意である:テンプレート:Math theorem テンプレート:Math proof

P(t)が測地線となるパラメーターテンプレート:Mvarアフィン・パラメーターという[18]。上記の定理はアフィン・パラメーターがアフィン変換を除いて一意な事を意味する。

測地線の局所的な存在性と一意性

測地線方程式を成分で書くと、P(t)=(x1(t),,xm(t))として

d2xidt2+dxjdtdxkdtΓjki=0 for i=1,,m

となる。ここでΓjkiは接続係数である。この式は常微分方程式であり、常微分方程式は局所的な解の存在一意性が言えるので、次が成立する事になる:

テンプレート:Math theorem

曲線は大域的に存在するとは限らない。 たとえば2{0}(に通常のユークリッド空間としての計量を入れた空間)において、曲線c(t)=(1t,0)t<1までしか延長できない。

測地線の局所的な存在一意性が示されたので、以下の定義をする:テンプレート:Math theorem

Pv(kt)=Pkv(t)である事を容易に確かめられるので、指数写像はwell-definedである。

Hopf-Rinowの定理

上の定理で測地線の定義域(ε,ε)全域に拡張できるとは限らない。テンプレート:Mvar上のに関する任意の測地線の定義域が全域に拡張できるとき、(M,)測地線完備テンプレート:Lang-en-short[19]、あるいは単に完備テンプレート:Lang-en-short[20]であるという。


がリーマン多様体のレヴィ-チヴィタ接続の場合は、測地線が全域に拡張できるか否かに関して以下の定理が知られている。

テンプレート:Math theorem

テンプレート:Mvarがコンパクトであれば、テンプレート:Mvar上の任意のリーマン計量テンプレート:Mvarは必ず完備な距離を定めるので、Hopf-Rinowの定理からテンプレート:Mvarが定めるレヴィ-チビタ接続に関してテンプレート:Mvarが測地線完備な事が従う。

しかし一般の接続に対してはこのような事は成立するとは限らない。実際テンプレート:Mvarがコンパクトであっても、テンプレート:Mvar上の擬リーマン計量が定めるレヴィ-チビタ接続は測地線完備になるとは限らず、反例としてテンプレート:訳語疑問点範囲が知られている。

正規座標

実は次の事実が知られている:テンプレート:Math theoremよってV:=exp(U)とすると、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarの近傍で、

expP1:VMUTPMm

テンプレート:Mvarの周りの座標近傍とみなせる。この座標近傍をテンプレート:Mvarの周りのテンプレート:仮リンクテンプレート:Lang-en-short)という[21]

同一の測地線を定めるアフィン接続

2つのアフィン接続 :,:𝔛(M)×𝔛(M)𝔛(M)テンプレート:Mvar上の任意の曲線テンプレート:Mathに対し、

dtP(t)=0dtP(t)=0

を満たすとき、同一の測地線を定めるという。

D(X,Y):=XY'XY

とし、

S(X,Y)=12(D(X,Y)+D(Y,X))
A(X,Y)=12(D(X,Y)D(Y,X))

とする。

このとき次が成立する事が知られている: テンプレート:Math theorem

簡単な計算により

A(X,Y)=T(X,Y)T(X,Y)

である事がわかるので、次の系が従う:

テンプレート:Math theoremなお、接続テンプレート:Mvarの局所座標表示

XY=X(Yk)xk+XjYkΓijkxi

に対し、クリストッフェル記号の添字テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarの役割を反対にした

'XY=X(Yk)xk+XjYkΓikjxi

は局所座標の取り方によらずwell-definedでしかも接続の公理を満たす事が知られている[22]。よって特に次が成立する: テンプレート:Math theorem


レヴィ-チヴィタ接続における測地線の特徴づけ

テンプレート:Main レヴィ・チヴィタ接続の場合は測地線を全く別の角度から特徴づける事ができる。


測地線方程式は曲線テンプレート:Mvarの長さabdudtdtを端点を固定して変分したときのオイラー・ラグランジュ方程式に等しい[23][24][25]。ここでv:=g(v,v)である。すなわち、測地線は長さに関する停留曲線(≒端点を固定した曲線のなす空間において「微分」がゼロのなる曲線)である。

また測地線方程式は曲線テンプレート:Mvarの「エネルギー」abdudt2dtを端点を固定して変分したときのオイラー・ラグランジュ方程式にもなっている[26]

曲線の曲率

リーマン多様体テンプレート:Mvar上の曲線に対し、以下の定義をする。 テンプレート:Math theorem ここでv:=g(v,v)である。

前述の定理から、明らかに次が従う: テンプレート:Math theorem なお、弧長パラメータの定義よりdPds=0が常に成り立つので、

0=ddtg(dPds,dPds)=2g(dsdPds,dPds)

である。よって次が従う: テンプレート:Math theorem


なおここで定義した「曲線の曲率」は次章で定義する「(接続が定義された)多様体の曲率」とは別概念であるので注意されたい。実際、

  • 「曲線の曲率」は曲線P(s)のみならず「外側の空間」テンプレート:Mvarがあって初めて定義されるものであるのに対し、次章で述べる「多様体の曲率」の定義にはこのような「外側の空間」は必要ない。
  • 「曲線の曲率」はあくまで曲線の接線方向の微分を考えているのに対し、「多様体の曲率」は2つの接ベクトルがあって初めて定義されるものであり、これら2つの接ベクトルが同一の場合はテンプレート:Mvarになってしまう。

曲率

本節では接続が定義されたベクトルバンドルπ:EM曲率をまず天下り的に定義し、その性質を見る。次に曲率の概念をホロノミーを使う事で特徴づける事により、曲率概念に対する空間に内在的な幾何学的解釈を与える。最後に共変外微分の概念を導入して共変外微分を使って曲率概念を特徴づける。

動機

曲率の概念を定義するため、モチベーションを述べる。 ベクトルバンドルπ:EMの接続の局所座標UMmと局所的なテンプレート:Mvarの基底e1,,enにおける成分表示

XUs=(Xsix+XjskΓjki)ei

を考える。

E=TMがレヴィ-チヴィタ接続の場合、M=mであれば、すなわちテンプレート:Mvarが「平たい」空間であれば、クリストッフェル記号Γjkiは全てテンプレート:Mvarになる。

よって一般のベクトルバンドルの場合も、クリストッフェル記号Γjkiが全てテンプレート:Mvarになる局所座標と局所基底がとれればバンドルは「平たい」とみなす事にする。


この「平たい」バンドルとのズレを測るのが曲率である。ただしクリストッフェル記号は局所座標の取り方に依存しているため、クリストッフェル記号自身を用いるのではなく、別の方法で「平たい」バンドルとのズレを測る。

ズレを測るため、クリストッフェル記号Γjkiが全てテンプレート:Mvarであれば、

Xs=(Xsi)ei

となる事に着目する。この事実から「平たい」バンドルに対しては、

XYsYXs=(XYsi)ei(YXsi)ei=([X,Y]si)ei=[X,Y]s

が常に成立する事を示せる。そこで一般の接続に対し、

R(X,Y)s:=XYsYXs[X,Y]s

と定義すると、R(X,Y)sは「平たい」バンドルのときには恒等的にゼロになり、この意味においてR(X,Y)sはバンドルの「曲がり具合」を表している考えられる。

定義

以上のモチベーションの元、曲率を以下のように定義する:

テンプレート:Math theorem

(M,g)がリーマン多様体の場合は、テンプレート:Mvarのレヴィ・チヴィタ接続の曲率の事を「テンプレート:Mvarの曲率」、「テンプレート:Mvarの曲率」等と呼ぶことにする。

リーマン多様体における特徴づけ

リーマン多様体(M,g)においては、テンプレート:Mvarの曲率はリーマン計量をテイラー展開したときの2次の項として特徴づける事ができる:

テンプレート:Math theorem ここでRikj:=g(R(xk,x)xj,xi)である。

曲率形式

e1,,enテンプレート:Mvarの開集合テンプレート:Mvar上で定義された局所的な基底とするとき、e1,,enに関する曲率形式を以下のように定義する: テンプレート:Math theorem

さらに(x1,,xm)テンプレート:Mvarの局所座標とし、

R(xk,x)ej=Rijkei

と成分分解すると、

Ωij(X,Y)=RijkXkY

が成立する。

性質

ω=(ωij)ijを同じ局所座標e1,,enに関する接続形式すると以下が成立する: テンプレート:Math theorem ここで接続行列のウェッジ積ωωは行列積(ωikωkj)の事である。ΩωΩΩも同様に定義する。 第二構造方程式は曲率の定義を成分で書く事で得られる。一般化されたビアンキの第二恒等式は第二構造方程式から従う。

なお、一般化されたビアンキの第二恒等式においてテンプレート:Mathの場合がビアンキの第二恒等式テンプレート:Lang-en-short)である[27]

成分表示

(x1,,xm)テンプレート:Mvarの局所座標とし、e1,,enテンプレート:Mvarの局所的な基底とすると、接続係数Γikjを用いて以下のように表すことができる:テンプレート:Math theorem

アフィン接続の場合の性質

捩率テンソルを

T(X,Y)=τi(X,Y)ei

と成分表示して得られる2-形式τiを並べてできる縦ベクトルτ=t(τ1,,τm)を考える事ができる。テンプレート:Mvarの事を基底(e1,,em)に関する捩率形式テンプレート:Lang-en-short)という[28]テンプレート:Refn


さらに局所的な基底e1,,enTMの双対基底をθ1,,θnT*Mとするとテンプレート:Refn、これらは1形式である。これらを並べた縦ベクトルをθ=t(θ1,,θn)とする。

このとき、次が成立する: テンプレート:Math theorem

ビアンキの第一および第二恒等式は以下のようにも書くことができる: テンプレート:Math theorem ここで添字は「テンプレート:Math」で考える。すなわち「i3」は巡回和である。

さらに次が成立する:テンプレート:Math theorem

レヴィ-チヴィタ接続の場合の性質

レヴィ-チヴィタ接続の場合は以下のようにも成分表示できる: テンプレート:Math theorem ここでは下記のKulkarni–Nomizu積である:

(hk)(X,Y,Z,W):=h(X,Z)k(Y,W)+h(Y,W)k(X,Z)h(X,W)k(Y,Z)h(Y,Z)k(X,W)

次の事実が知られている: テンプレート:Math theorem


レヴィ-チヴィタ接続は捩れなしなので、ビアンキの第一および第二恒等式を以下のように書く事ができる: テンプレート:Math theorem ここで(XR)テンプレート:MvarTM×TM×T*Mの元とみなしたときの共変微分である。


ビアンキの第二恒等式は以下のようにも書ける[29]テンプレート:Refn

(XRm)(Y,Z,V,W)+(YRm)(Z,X,V,W)+(ZRm)(X,Y,V,W)=0

ここで

Rm(X,Y,Z,W):=g(R(X,Y)Z,W)

であり、(XRm)RmT*MT*MT*MT*Mに値を取るテンソル場とみなしたときの共変微分である。Rmリーマンの)曲率テンソルテンプレート:Lang-en-short[30][31]という。

断面曲率、リッチ曲率、スカラー曲率

をリーマン多様体(M,g)のレヴィ-チヴィタ接続とし、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarの点とし、v,wTPMとし、さらにe1,,emTPMの基底とする。

テンプレート:Math theorem なお、書籍によっては本項のリッチ曲率、スカラー曲率をそれぞれ1n1倍、1n(n1)倍したものをリッチ曲率、スカラー曲率と呼んでいるものもある[32]ので注意されたい。 また断面曲率はKP(v,w)という記号で表記する文献も多いが、後述するガウス曲率と区別するため、本稿ではSecP(v,w)という表記を採用した。


定義から明らかなように、以下が成立する: テンプレート:Math theorem テンプレート:Math theorem

実は断面曲率は曲率テンソルを特徴づける: テンプレート:Math theorem

部分リーマン多様体における断面曲率

テンプレート:Mainテンプレート:See alsoテンプレート:Mvar次元リーマン多様体テンプレート:Mvarが別のリーマン多様体M¯の余次元テンプレート:Mvarの部分リーマン多様体、すなわちMM¯dimM¯=dimM+1の場合は、以下が成立する[33]テンプレート:Math theoremここでe1,,emは点uMにおける主方向でκ1,,κmを対応する主曲率であり、Secu(X,Y)テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarにおける断面曲率であり、Secu(X,Y)M¯テンプレート:Mvarにおける断面曲率である。

よって特にテンプレート:Mvarが2次元リーマン多様体でM¯3の場合はテンプレート:Mvarの断面曲率Secu(X,Y)はガウス曲率テンプレート:Mvarに一致する(Theorema Egregium)。

ホロノミーによる曲率の特徴づけ

本節ではホロノミーを使うことで曲率概念を特徴づけ、これにより曲率概念を多様体に内在的な幾何学的な意味付けを与える。


まず記号を定義する。これまで通りをベクトルバンドルπ:EMの接続とし、U22の原点テンプレート:Mvarの開近とし、テンプレート:Mvarの元を成分で(x,y)と表し、ξ:UMを埋め込みとし、テンプレート:Mvar上のベクトル場テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar

X=ξ*(x)Y=ξ*(x)

とする。c(t)2上の以下のような閉曲線とする:O2からtだけ右に動き、tだけ上に動き、tだけ左に動き、tだけ下に動く。

このときξc(t)に沿って、ξ(O)のファイバーEφ(O)の元テンプレート:Mvarを平行移動したものは、

et=ΦYtΦXtΦYtΦXt(e)

に等しい。ここでeEに対し、ΦXt(e)ΦYt(e)はそれぞれπ(e)からテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar積分曲線に沿ってテンプレート:Mvarだけ進むのに合わせてeEを平行移動したものである。テンプレート:Math theorem

すなわち、曲率R(X,Y)は、

R(X,Y)|π(e)e=limt0ΦYtΦXtΦYtΦXt(e)et2

により特徴づけられる。よって直観的には曲率R(X,Y)は(テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarが可換になるように拡張した場合に)テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarが定める平行移動の非可換度合いを表している。

共変外微分による曲率の特徴づけ

本節では共変外微分の概念を導入し、この概念を用いて曲率概念を特徴づける。

共変外微分

まず共変外微分の概念を導入する。

π:EMをベクトルバンドルとし、

:Γ(E)Γ(T*ME)

テンプレート:Mvarの接続とし、

𝒜p(M):=Γ(pT*M)𝒜p(E):=Γ(EpT*M)

とする。

テンプレート:Math theorem 共変外微分がwell-definedである事の証明は省略する。紛れがなければ添字のテンプレート:Mvarを省略し、dと書く。

共変外微分は以下を満たす: テンプレート:Math theorem

共変外微分は通常の外微分と違い、

dd=0

なるとは限らない。しかし

dd(sω)=d((ds)ω+sdω)=(dds)ωds)dω+dsdω=(dds)ω

となるので、sΓ(E)=𝒜0(E)に対してddsが分かれば一般のsωに対してdd(sω)が計算できる事になる。

曲率の特徴づけ

実はddsは曲率に一致する事が知られている: テンプレート:Math theorem

なお、すでに述べたようにddテンプレート:Mvarになるとは限らないが、dddは必ずテンプレート:Mvarになる事が知られており、この事実はビアンキの第二恒等式と同値である: テンプレート:Math theorem

一般の接続へ

テンプレート:Main これまで本項では共変微分テンプレート:Mvarを用いて接続概念を考察してきたが、 実はむしろテンプレート:Mvarから接続概念を定義したほうが、数学的に有利である事が示唆される。その理由は2つある。

第一に、リーマン多様体であればテンプレート:Mvarから定義される曲率テンソルを使って記述できた恒等式、例えば(第二)構造方程式や(第二)ビアンキ恒等式は、一般のベクトルバンドルではテンプレート:Mvarを使わないと記述できない(曲率の章を参照)。



第二に、接続概念において重要な役割を果たす平行移動の概念は接続形式テンプレート:Mvarと強く関係しており、ベクトルバンドルEMの底空間テンプレート:Mvarの曲線c(t)に沿って定義された局所的な基底(e1(t),,em(t))テンプレート:Mvarで微分したものが接続形式ω(dcdt(0))に一致する。

よって特にテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarの計量と両立する接続の場合、テンプレート:Mvarによる平行移動は回転変換、すなわちSO(n)の元なので、その微分である接続形式テンプレート:MvarSO(n)のリー代数𝔰𝔬(n)の元、すなわち歪対称行列である[注 1]


このように接続形式を用いるとベクトルバンドルの構造群(上の例ではSO(n))が接続形式の構造をリー群・リー代数対応により支配している事が見えやすくなる。

上では回転群SO(m)の場合を説明したが、GLn()(を自然にGL2n()の部分群とみなしたもの)やUn()物理学で重要なシンプレクティック群スピン群に対しても同種の性質が証明でき、接続形式がリー群・リー代数対応により支配されている事がわかる。


こうした事実は接続概念を直接リー群と接続形式とで記述する方が数学的に自然である事を示唆する。リー群の主バンドルの接続はこのアイデアを定式化したもので、主バンドルの接続は接続形式に相当するものを使って定義される。詳細は接続 (ファイバー束)の項目を参照されたい。

脚注

出典

テンプレート:Reflist

注釈

テンプレート:Reflist

関連項目

文献

参考文献

その他

  1. #Tu p.52.
  2. #Wendl3 p.76.
  3. #Kolar p.109.
  4. #Koszul p.78.
  5. #Kobayashi-Nomizu-1 p.119
  6. テンプレート:Cite web
  7. #Andrews Lecture 8 p.74.
  8. #Tu p.100.
  9. 原文"There does not seem to be a good reason for calling T(X,Y) the torsion."。#Tu p.44.
  10. #Wendl4 p.101.
  11. 11.0 11.1 #Tu p.100.
  12. #Wendl4 p.102.
  13. 13.0 13.1 13.2 #小林 pp.40-41.
  14. #Wang p.4.
  15. テンプレート:Cite book
  16. #Wendl3 p.80/
  17. #Tu p.113.
  18. #Kobayashi-Nomizu-1 p.138.
  19. #Tu p.130.
  20. #小林 p.89.
  21. #Tu p.118.
  22. #Kobayashi-Nomizu-1 p.146
  23. #新井 pp.324-326.
  24. #Lee p.101.
  25. #佐々木 pp.89-91.
  26. #新井 pp.329-331.
  27. 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「Tu204」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  28. #小林 p.107.
  29. 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「Tu204-207」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  30. #Tu p.207.
  31. #Lee p.118.
  32. #Carmo p.97.
  33. #Carmo p.131.


引用エラー: 「注」という名前のグループの <ref> タグがありますが、対応する <references group="注"/> タグが見つかりません