ノルム化可能空間のソースを表示

[[数学]]における[[位相線型空間]]が'''ノルム付け可能'''であるとは、そのもともとの[[位相の特徴付け|位相]]が適当な{{ill2|ノルム位相|de|Normtopologie|label=ノルムの誘導する位相}}に一致するときに言う。ノルム付け可能な位相線型空間は'''ノルム化可能線型空間'''あるいは短く'''ノルム化可能空間'''（ノルムかかのうくうかん、{{lang-en-short|normable space}}; '''ノルム可能空間'''）と呼ぶ。ノルム化可能空間は[[位相空間論]]および[[関数解析学]]において特に興味を持たれる。

== 定義 ==
[[位相線型空間]] {{math|(''V'', {{mathcal|T}})}} が'''ノルム化可能'''であるとは、{{mvar|V}} 上の[[ノルム]] {{math|{{norm|&bull;}}}} が存在して、集合
: <math>U_\varepsilon := \{ v \in V \mid \| v \| \leq \varepsilon \}</math>
の全体が、位相 {{mathcal|T}} に関して[[零ベクトル]]の[[近傍基|基本近傍系]]を成すときに言う{{sfn|Heine|2012|p=35}}

== 性質 ==
一般に、ノルム化可能空間の位相は複数の異なるノルムから生成されうるが、二つのノルム {{math|{{norm|&bull;}}{{sub|''a''}}}} および {{math|{{norm|&bull;}}{{sub|''b''}}}} が同じ位相を生成するならば、それらは互いに[[ノルム同値|同値]]であり、そのようなノルムを一つ選べば {{mvar|V}} は[[ノルム線型空間]]を成し、その{{ill2|ノルム位相|de|Normtopologie}}が {{mathcal|T}} に一致する{{sfn|Kelley|Namioka|2013|p=43}}

ノルム付け可能性は、以下の操作を保存する:
* ノルム化可能空間の任意の[[部分線型空間|部分空間]]はふたたびノルム化可能である{{sfn|Schaefer|2013|p=41}}。
* ノルム化可能空間の[[閉集合|閉]]部分空間による任意の[[商線型空間|商空間]]はふたたびノルム化可能である{{sfn|Schaefer|2013|p=41}}。
* ノルム化可能空間からなる[[族 (数学)|族]]の[[加群の直積|直積空間]]がノルム化可能であるための必要十分条件は、それら空間が[[補有限|有限個の例外を除く]]すべて[[零ベクトル空間|零]]となることである{{sfn|Schaefer|2013|p=42}}。
* ノルム化可能空間の[[完備距離空間#完備化|完備化]]はふたたびノルム化可能である{{sfn|Schaefer|2013|p=41}}。

他の空間との関係として:
* 任意のノルム化可能空間は{{ill2|DF空間|en|DF-space}}である。ある意味逆の結果として、局所凸位相線型空間が[[距離化可能]]DF空間ならばノルム化可能である。<ref>{{nlab|id=DF+space#properties|title=DF space}} Proposition 3.1.</ref>
* 局所凸位相線型空間の強双対が距離化可能であるための必要十分条件は、もとの空間がノルム化可能となることである。<ref>{{nlab|id=Fréchet+space#properties|title=Fréchet space}} duals</ref>

== ノルム化可能性の判定 ==
{{ill2|コルモゴロフのノルム化可能判定法|de|Normierbarkeitskriterium von Kolmogoroff}}によれば、[[ハウスドルフ空間|ハウスドルフ]]位相線型空間がノルム化可能となる必要十分条件は、[[有界集合|有界]][[凸集合|凸]]な零近傍を持つことである。特に、任意のハウスドルフ[[局所凸空間]]は有界な零近傍を持てはノルム化可能である。

故に、ノルム化可能でない位相線型空間の例は、全て局所凸空間でない。特に、[[ルベーグ空間#0 < p < 1 の場合の Lp 空間|''L{{sup|p}}''({{closed-closed|0, 1}}) (0 < ''p'' < 1)]] はそのような例である。また任意の無限次元[[モンテル空間]]、特に[[シュヴァルツ超函数]]論に現れる[[試験函数]]としての[[隆起函数]]の空間 {{math|''{{mathcal|D}}''(Ω)}}, [[シュヴァルツ空間|急減少函数]]の空間 {{math|''{{mathcal|S}}''(Ω)}}, [[滑らかな函数]]の空間 {{math|''{{mathcal|E}}''(Ω)}}, {{ill2|コンパクト台付き超函数|de|Distribution mit kompaktem Träger}}の空間 {{math|''{{mathcal|E}}&prime;''(Ω)}}, [[緩増加超函数]]の空間 {{math|''{{mathcal|S}}&prime;''(Ω)}}, [[シュヴァルツ超函数]]の空間 {{math|''{{mathcal|D}}&prime;''(Ω)}} なども同様の例になっている。さらなるノルム化可能でない位相線型空間の例は、[[弱位相]] {{mvar|σ}} を無限次元ノルム空間 {{mvar|E}} 上で考えることで与えられる。空間 {{math|(''E'', ''σ'')}} がノルム化可能であるための必要十分条件は {{mvar|E}} が有限次元なることである。

== 注 ==
=== 注釈 ===
{{notelist}}
=== 出典 ===
{{reflist}}

== 関連項目 ==
* {{ill2|準ノルム化可能空間|de|Quasinormierbarer Raum}}
* [[距離化可能空間]]

== 参考文献 ==
* {{wikicite|reference= {{citation2|surname1=Heine, Jürgen|title=Topologie und Funktionalanalysis: Grundlagen der Abstrakten Analysis mit Anwendungen|edition=2.|publisher=de Gruyter|isbn=978-3-486-71968-0|date=2012|language=de
}} |ref={{sfnref|Heine|2012}}}}
* {{wikicite|reference= {{citation2|surname1=Kelley, John Leroy; Namioka, Isaac|title=Linear Topological Spaces|publisher=Springer|isbn=978-3-662-41914-4|date=2013|language=de
}} |ref={{sfnref|Kelley|Namioka|2013}}}}
* {{wikicite|reference= {{citation2|surname1=Schaefer, Helmut H.|title=Topological Vector Spaces|series=Graduate Texts in Mathematics  3|publisher=Springer|isbn=978-1-4684-9928-5|date=2013|language=de
}} |ref={{sfnref|Schaefer|2013}}}}

== 外部リンク ==
* {{SpringerEOM|title=Norm|urlname=Norm|author=Gorin, E.A.}}

{{DEFAULTSORT:のるむかかのうくうかん}}
[[Category:位相線型空間]]
[[Category:位相空間論]]
[[Category:関数解析学]]
[[Category:数学に関する記事]]