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{{出典の明記|date=2021年10月2日 (土) 04:26 (UTC)}} '''メトロポリス法'''({{lang-en|''Metropolis method''}} )は、[[モンテカルロ法]]による[[シミュレーション]]において、[[乱数]]発生により作った新しい状態を棄却するか採択するかの基準の与え方、あるいは{{仮リンク|重点サンプリング|en|importance sampling}}による[[分配関数]]の[[近似|近似計算]]の方法。具体的には、[[系 (自然科学)|系]]の[[エネルギー]] {{mvar|E}} の変化 {{math|Δ''E''}} によって、 :<math> \mathrm{\Delta}E \le 0 </math> ならば[[確率]] 1 で、 :<math> \mathrm{\Delta}E \, > 0 </math> ならば確率 {{math|e{{sup|−''β'' Δ''E''}}}} で採択する。ここで {{math|''β'' {{=}} (''k'' {{sub|B}}''T'' ){{sup|−1}}}} は[[逆温度]]、{{math|''k''{{sub|B}}}} は[[ボルツマン定数]]、{{mvar|T}}は系の[[熱力学温度]]である。 一般に、[[詳細釣り合い|詳細釣り合いの原理]]、非周期性 ({{en|aperiodicity}}) がある棄却採択法ならば、[[熱力学的平衡|熱平衡状態]]の[[統計集団|アンサンブル]]が得られる。 {{main|メトロポリス・ヘイスティングス法}} == 導出 == 系の[[時間発展]]が[[マスター方程式]]によって記述されるとする。 :<math>\frac{\partial P(E,t)}{\partial t} = \int_{-\infty}^{\infty}\Bigl\{W(E,E')P(E',t) - W(E',E)P(E,t) \Bigr\}\,\mathrm{d}E\,.</math> ここで {{math|''P'' (''E'' , ''t'' )}} は時刻 {{mvar|t}} における[[エネルギー]] {{mvar|E}} の分布、すなわち[[確率密度関数]]である。右辺の[[積分]]の第一項はエネルギー {{mvar|E{{'}}}} の状態からエネルギー {{mvar|E}} へ遷移する流れを、第二項はエネルギー {{mvar|E}} の状態からエネルギー {{mvar|E{{'}}}} へ遷移する流れを表す。つまり、{{math|''P'' (''E'' )}} を {{mvar|E}} でラベルづけされた物質の量だと思えば、第一項は単位時間当たりの流入量、第二項は単位時間当たりの流出量に相当する。[[係数]]の {{math|''W'' (''E'', ''E{{'}}'' )}} はエネルギー {{mvar|E{{'}}}} の状態からエネルギー {{mvar|E}} の状態への[[遷移確率]](頻度)を表す。 [[定常状態]]の確率密度関数はマスター方程式の左辺が {{math|0}} となる場合を考えれば充分だが、一般の遷移確率 {{mvar|W}} に対してこれを解くことはできない。[[熱力学的平衡|平衡状態]]を仮定するならば、更に条件を強めることができ、次の[[詳細釣り合い]]の条件を考えればよいことになる。 :<math>0 = W(E,E')P^\mathrm{eq}\!(E') - W(E',E)P^\mathrm{eq}\!(E).</math> これは次のように変形することができる。 :<math>\frac{P^\mathrm{eq}\!(E)}{P^\mathrm{eq}\!(E')} = \frac{W(E,E')}{W(E'\!,E)}.</math> ここで {{math|''P'' {{sup|eq}}}} は平衡状態における確率密度関数 {{mvar|P}} である。今は[[熱力学]]系について考えているので、[[統計力学]]の設定を持ち込めば、系のエネルギー状態の分布は[[カノニカル分布]]になるべきであり、平衡状態の確率密度 {{math|''P'' {{sup|eq}}}} は[[ボルツマン因子]] {{math|e{{sup|−''βE''}}}} と[[分配関数]] {{mvar|Z}} の比に書き換えられる。 :<math>P^\mathrm{eq}\!(E) = \frac{\mathrm{e}^{-\beta E}}{Z(\beta)}.</math> 詳細釣り合いの式について確率密度をボルツマン因子に置き換えれば、分配関数は消去され次の関係を得る。 :<math>\mathrm{e}^{-\beta(E-E')} = \frac{W(E,E')}{W(E'\!,E)}.</math> この関係を満たすように状態を変化させることで、平衡状態において典型的な状態を重点サンプリングすることができる。 特に、遷移確率 {{math|''W'' (''E , E{{'}}'' )}} を次のように与えればメトロポリス法を得る({{math|Δ''E'' :{{=}} ''E'' − ''E{{'}}''}} とすればこれは冒頭の式に一致する)。 :<math> W(E,E') = \begin{cases} {\tau_0}^{-1}\quad & \mbox{for}~~ E \leq E'\, \\ {\tau_0}^{-1}\mathrm{e}^{-\beta(E-E')}\quad & \mbox{for}~~ E > E'\,. \end{cases} </math> {{math|''τ''{{sub|0}}}} は適当な定数であり、系の時間スケールに相当する。実際の計算では {{math|''τ''{{sub|0}} {{=}} 1}} とすることが多いが、系のカイネティクスを考える場合には実際の大きさを推定する必要がある。ただし、メトロポリス法の場合、エネルギー的に安定な状態を見つけたとき、確率 {{math|1}} で遷移するモデルを扱っているので、実際の系のカイネティクスは無視されていると思ってよい。 ==関連記事== *[[計算物理学]] *[[マルコフ連鎖モンテカルロ法]] *[[メトロポリス・ヘイスティングス法]] *[[焼きなまし法]] - メトロポリス法を利用した最適化アルゴリズム *[[詳細釣り合い]] {{DEFAULTSORT:めとろほりすほう}} [[Category:アルゴリズム]] [[Category:モンテカルロ法]] [[Category:近似法]] [[Category:数学に関する記事]]
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