メモリスタのソースを表示

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{{Short description|非線形2端子基礎的電気部品}}
{{Use dmy dates|date=May 2022|cs1-dates=y}}

-->{{Distinguish|{{ill2|メミスター|en|Memistor}}|{{ill2|メモトランジスタ|en|Memtransistor}}}}{{Infobox electronic component|component=メモリスタ|photo=Memristor (50665029093) (cropped).jpg|photo_caption=[[イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校]]と[[アメリカ合衆国エネルギー省]]傘下{{ill2|アメリカ国立エネルギー技術研究所|en|National Energy Technology Laboratory}}によって開発されたメモリスタ|invented=[[蔡少棠]] (Leon O. Chua, 1971)|symbol=[[File:Memristor-Symbol.svg]]}}

'''メモリスタ''' (またはメモリスター。{{lang-en|memristor}}, {{IPAc-en|ˈ|m|ɛ|m|r|ᵻ|s|t|ər}}; ''メモリ抵抗器'' の[[かばん語]]) は、[[電荷]]と{{ill2|鎖交磁束|en|flux linkage|label=磁束鎖交}}に関係する非線形{{ill2|端子 (エレクトロニクス)|en|terminal (electronics)|label=2端子}}[[電子部品|電気部品]]である。通過した電荷を記憶し、それに伴って[[抵抗]]が変化する[[受動素子]]である。過去に流れた[[電流]]を'''記憶'''する'''抵抗'''器であることからメモリスタ ({{lang|en|memristor}}) と名づけられた。

1971年に{{仮リンク|蔡少棠|en|Leon_O._Chua|preserve=1|label=}}によって言及と命名がなされ、これにより、[[抵抗器]]、[[コンデンサ]]、[[インダクタ]]も含む基本的な電気部品の理論上のカルテットが完成した<ref name="chua712">{{cite journal|last1=Chua|first1=L.|date=1971|title=Memristor-The missing circuit element|journal=IEEE Transactions on Circuit Theory|volume=18|issue=5|pages=507–519|doi=10.1109/TCT.1971.1083337|citeseerx=10.1.1.189.3614}}</ref>。[[抵抗器]]、[[キャパシタ]]、[[インダクタ]]に次ぐ新たな受動素子であるので、“第4の回路素子” と呼ばれる。

{{仮リンク|蔡少棠|en|Leon_O._Chua|preserve=1|label=蔡}}と{{ill2|姜城模|en|Sung-Mo Kang|ko|강성모 (공학자)|label=姜|preserve=1}}は後にこの概念を'''メモリスティブ体系'''に一般化した<ref name="chua76">{{Citation|title=Memristive devices and systems|last1=Chua|first1=L. O.|last2=Kang|first2=S. M.|date=1 January 1976|journal=[[Proceedings of the IEEE]]|volume=64|issue=2|pages=209–223|doi=10.1109/PROC.1976.10092|s2cid=6008332}}</ref>。理想的なメモリスタ部品の主要な特性を複数の在来型の部品からなる回路で模倣するようなシステムも、一般にメモリスタと呼ばれる。 このようなメモリスタ・システム技術はいくつか開発されており、特に[[抵抗変化型メモリ|ReRAM]]がその1例である。

電子デバイスのメモリスティブ特性の特定は論争を呼んでいる。実験的には、理想的なメモリスタはまだ実証されていない<ref name="Pershin_2018" /><ref name="Kim_2019" />。

== 基本的な電気部品として ==
蔡は1971年の論文で、非線形抵抗器 (電圧対電流)、非線形コンデンサ (電圧対電荷)、および非線形インダクタ (磁束鎖交対電流) の間に理論上の対称性を特定した。この対称性から、彼は磁束と電荷を結び付ける第四の基礎的非線形回路要素の特性を推測し、これをメモリスタと呼んだ。線形 (または非線形) 抵抗器とは対照的に、メモリスタは過去の電圧または電流の記憶を含め、電流と電圧の間にダイナミックな関係を持っている。他の科学者は、{{ill2|バーナード・ウィドロー|en|Bernard Widrow}}の{{ill2|メミスター|en|memistor}}のようなダイナミックメモリ抵抗器を提案していたが、蔡は数理的普遍性を導入した。[[File:Two-terminal_non-linear_circuit_elements.svg|リンク=https://en.wikipedia.org/wiki/File:Two-terminal_non-linear_circuit_elements.svg|サムネイル|抵抗器、キャパシタ、インダクタ&メモリスタの概念の対称図]]

=== 由来と特性 ===
メモリスタは、通過した電荷<math display="inline">q(t)</math>と端子間の磁束鎖交<math display="inline">\Phi_\mathrm m(t)</math>が非線形関数関係であるような素子と定義される。すなわち、<math display="block">f(\mathrm \Phi_\mathrm m(t),q(t))=0</math>と表わされる<ref name="chua71">{{cite journal|last1=Chua|first1=L.|date=1971|title=Memristor-The missing circuit element|journal=IEEE Transactions on Circuit Theory|volume=18|issue=5|pages=507–519|doi=10.1109/TCT.1971.1083337|citeseerx=10.1.1.189.3614}}</ref>。磁束鎖交<math display="inline">\Phi_\mathrm m</math>は、インダクタの回路特性から一般化される。ここでは磁場を表すものではなく、その物理的意味については以下で説明する。 記号<math display="inline">\Phi_\mathrm m</math>はすなわち、電圧の時間積分と見なすことができる<ref>{{Citation|title=Pulsed high magnetic fields|last=Knoepfel|first=H.|year=1970|publisher=[[North-Holland Publishing Company|North-Holland]]|page=37, Eq. (2.80)|location=New York}}</ref>。

<math display="inline">\Phi_\mathrm m</math>と<math display="inline">q</math>の関係において、一方の他方に対する導関数は、一方または他方の値に依存する。そしてそれゆえ、それぞれの導関数は電荷を伴なう磁束の変化の電荷依存率を述べるメモリスタンス関数によって特徴づけられる。<math display="block">M(q)=\frac{\mathrm d\Phi_{\rm m}}{\mathrm dq} </math>磁束を電圧の時間積分として、電荷を電流の時間積分として代入すると、より便利な形式が得られる:<math display="block">M(q(t)) = \cfrac{\mathrm d\Phi_{\rm}/\mathrm dt}{\mathrm dq/\mathrm dt}=\frac{V(t)}{I(t)}</math>メモリスタを抵抗、キャパシタ、インダクタに関連付けるには、デバイスを特徴付ける項<math display="inline">M(q)</math>を分離し、[[常微分方程式]]として記述すると便利。
{| class="wikitable"
!素子
!{{ill2|特徴的性質|en|Characteristic property}} (単位)
!常微分方程式
|-
|[[抵抗器]](''R'')
|[[抵抗]]  ([[ボルト (単位)|V]] / [[アンペア|A]], or [[オーム|Ω]])
|<math display="inline">R={dV \over dI}</math>
|-
|[[キャパシタ]](''C'')
|[[静電容量]]  ([[クーロン|C]] / [[ボルト (単位)|V]], or [[ファラド]])
|<math display="inline">C={dq \over dV}</math>
|-
|[[インダクタ]](''L'')
|[[インダクタンス]]  ([[ウェーバ|Wb]] / [[アンペア|A]], or [[ヘンリー (単位)|ヘンリー]])
|<math display="inline">L={d\phi_m \over dI}</math>
|-
|'''メモリスタ'''(''M'')
|メモリスタンス  ([[ウェーバ|Wb]] / [[クーロン|C]], or [[オーム|Ω]])
|<math display="inline">M={d\phi_m \over dq}</math>
|}
上記の表は<math display="inline">I</math>、<math display="inline">q</math>、<math display="inline">\Phi_m</math>、および<math display="inline">V</math>の微分の有意義な比率を全てカバーする。<math display="inline">I</math>は<math display="inline">q</math>の導関数であり、また<math display="inline">\Phi_m</math>は<math display="inline">V</math>の積分であるため、<math display="inline">dI</math>を<math display="inline">dq</math>に、または<math display="inline">d\Phi_m</math>を<math display="inline">dV</math>に関連付けることができるデバイスはない。このことから、メモリスタは電荷に依存する抵抗であると推測できる。もし<math display="inline">M(q(t))</math>が定数の場合、[[オームの法則]]<math display="inline">R(t) = V(t)/I(t)</math>が得られる。ただし、<math display="inline">M(q(t))</math>が自明でない場合、<math display="inline">q(t)</math>と<math display="inline">M(q(t))</math>は時間とともに変化する可能性があるため、方程式は同等ではない。時間の関数として電圧を解くと、<math display="block">V(t) =\ M(q(t)) I(t)</math>が得られる。この方程式は<math display="inline">M</math>が電荷によって変化しない限り、メモリスタが電流と電圧の間で線形関係を定義することを示している。非ゼロ電流は時間変化する電荷を意味する。[[交流|交流電流]]は(しかしながら)、<math display="inline">q</math>の最大変化によって<math display="inline">M</math>に{{ill2|微小信号モデル|en|Small-signal model|label=大きな}}変化を引き起こさない限り{{Mdash}}正味の電荷の移動を伴わずに測定可能な電圧を誘導することにより回路動作の線形依存性を明らかにすることができる。

さらに、電流が印加されない場合、メモリスタは静的である。<math display="inline">I(t) = 0</math> の場合、<math display="inline">V(t) = 0</math>であり、<math display="inline">M(t)</math>は定数であることがわかる。これはメモリー効果の本質である。

同様に、<math display="inline">W(\phi(t))</math>をメモダクタンスとして定義できる<ref name="chua71" />。<math display="block">i(t)=W(\phi(t))v(t)</math>[[消費電力|電力消費]]特性、これは抵抗器の式<math display="inline">I^2R</math>を思い出させる。<math display="block">P(t) =\ I(t)V(t) =\ I^2(t) M(q(t))</math>''<math display="inline">M(q(t))</math>''がほとんど変化しない限り(交流下など)、メモリスタは定抵抗器のように見える。もしも''<math display="inline">M(q(t))</math>''が敏速に増加すると(しかしながら)電流と電力消費は急速に停止する。

''<math display="inline">M(q)</math>''は、<math display="inline">q</math>のすべての値に対して正になるように物理的に制限される (デバイスが受動的であり、ある<math display="inline">q</math>で[[超伝導|超伝導状態]]にならないと仮定する)。 負の値は、交流で動作するときにエネルギーを永続的に供給することを意味する。

== モデル化と検証 ==
メモリスタ機能の性質を理解するためには、{{ill2|半導体素子のモデル化|en|Semiconductor device modeling|label=デバイスのモデル化}}の概念から始めて、基本的な回路理論の概念についてある程度の知識があると役に立つ<ref name="muthuswamyBanerjee2019">{{cite book |last1=Muthuswamy |first1=Bharathwaj |last2=Banerjee |first2=Santo |title=Introduction to Nonlinear Circuits and Networks |date=2019 |publisher=Springer International |isbn=978-3-319-67325-7}}</ref>。

エンジニアや科学者が物理システムを元の形で分析することはめったにない。代わりに、彼らはシステムの挙動を近似するモデルを構築する。モデルの挙動を解析することで、彼らは実際のシステムの挙動を予測することを望んでいる。モデルを構築する主な理由は、通常、物理システムが複雑すぎて実際の分析に対応できないからである。

20世紀には、研究は研究者がメモリスティブ特性を認識していないデバイスで行われた。このため、そのようなデバイスはメモリスタとして認識されるべきであるという提案が提起された<ref name="muthuswamyBanerjee2019" />。PershinとDi Ventra<ref name="Pershin_2018" />は、理想的なメモリスタが実際に存在するのか、それとも純粋に数学的な概念であるのかについての長年の論争の解決に役立つテストを提案した。

2008年以降の研究の大部分はこの分野に集中しているため、この記事の残りの部分では主に[[ReRAM]]デバイスに関連するメモリスタについて説明する。

=== 超電導メモリスタ部品 ===
Paul Penfield博士は、1974年のMIT技術報告書<ref name="penfield1974">{{cite report |author=Penfield Jr, Paul L; Freund, Robert W; Kyhl, Robert L; Brodsky, Wesley G; Staelin, David H |date=1974-04-15 |url=httpc://hdl.handle.net/1721.1/56460 |title=Microwave and Millimeter Wave Techniques |series=Massachusetts Institute of Technology. Research Laboratory of Electronics. Quarterly Progress Report, no.113 |pages=31-32 |hdl=1721.1/56460}}</ref>の中で、[[ジョセフソン効果|ジョセフソン接合]]に関連してメモリスタについて言及している。これは回路デバイスの文脈における「メモリスタ」という単語の初期の使用例であった。

ジョセフソン接合を通る電流の項の1つは次の式のように表され: <math display="block">\begin{align}
             i_M(v) &= \epsilon\cos(\phi_0)v \\
&=W(\phi_0)v
\end{align}</math> <math display="inline">\epsilon</math>には物理的な超電導材料に基づく定数が、<math display="inline">v</math>には接合部両端間の電圧が、<math display="inline">i_M</math>には接合部を流れる電流が当て嵌まる。

20世紀後半を通じて、このジョセフソン接合における位相依存コンダクタンスに関する研究が行われた<ref name="langenberg74">{{Citation|title=Physical Interpretation of the <math>\cos\phi</math> term and implications for detectors|last=Langenberg|first=D. N.|date=1974|url=https://hal.archives-ouvertes.fr/jpa-00243770/file/ajp-rphysap_1974_9_1_35_0.pdf|journal=Revue de Physique Appliquée|volume=9|pages=35–40|doi=10.1051/rphysap:019740090103500}}</ref><ref name="pedersen1972">{{Citation|title=Magnetic field dependence and Q of the Josephson plasma resonance|last=Pedersen|first=N.F.|date=1972|url=https://backend.orbit.dtu.dk/ws/files/3534398/NF.pdf|journal=Physical Review B|volume=11|issue=6|pages=4151–4159|doi=10.1103/PhysRevB.6.4151|bibcode=1972PhRvB...6.4151P|display-authors=et. al.}}</ref><ref name="pedersen1974">{{cite book |last1=Pedersen |first1=N. F. |last2=Finnegan |first2=T. F. |last3=Langenberg |first3=D. N. |title=Low Temperature Physics-LT 13 |chapter=Evidence for the Existence of the Josephson Quasiparticle-Pair Interference Current |publisher=Springer US |publication-place=Boston, MA |date=1974 |doi=10.1007/978-1-4684-2688-5_52 |pages=268–271 |isbn=978-1-4684-2690-8}}</ref><ref name="thompson1973">{{Citation|title=Power flow for Josephson Elements|last=Thompson|first=E.D.|date=1973|journal=IEEE Trans. Electron Devices|volume=20|issue=8|pages=680–683|doi=10.1109/T-ED.1973.17728|bibcode=1973ITED...20..680T}}</ref>。この位相依存コンダクタンスを推論するためのより包括的なアプローチが、2014年にPeottaとDiVentraの独創的な論文で登場した<ref name="peottaDiVentra2014">{{Citation|title=Superconducting Memristors|last1=Peotta|first1=A.|last2=Di Ventra|first2=M.|date=2014|journal=Physical Review Applied|volume=2|issue=3|pages=034011-1-034011-10|arxiv=1311.2975|doi=10.1103/PhysRevApplied.2.034011|bibcode=2014PhRvP...2c4011P|s2cid=119020953}}</ref>。

=== メモリスタ回路 ===
理想的なメモリスタを研究することは現実的には難しいため、メモリスタを使用してモデル化できるその他の電気デバイスについて話すことにする。メモリスティブ・デバイス (システム) の数学的記述については、[[#理論]]を参照されたし。

放電管は、伝導電子<math display="inline">n_e</math>の数の関数である抵抗(値)で、メモリスティブ・デバイスとしてモデル化できる<ref name="chua76" />。<math display="block">\begin{align}
v_M&=R(n_e)i_M\\
\frac{dn_e}{dt}&=\beta n+\alpha R(n_e)i^2_M
\end{align}</math><math display="inline">v_M</math>は放電管の両端の電圧、<math display="inline">i_M</math>はそこを流れる電流、そして<math display="inline">n_e</math>は伝導電子の数である。単純なメモリスタンス関数は<math display="inline">R(n_e)=\frac{F}{n_e}</math>である。 <math display="inline">\alpha,\beta</math>そして<math display="inline">F</math>はチューブの寸法と充填ガスに依存するパラメータである。メモリスティブな挙動の[[メモリスタ#実験的試験|実験的な]]特定は、<math display="inline">v-i</math>平面における「ピンチ化ヒステリシス・ループ」である。一般的な放電管のこのような特性を示す実験については、[https://www.youtube.com/watch?v=hDfJoXrCSxk 「物理メモリスタのリサジュー図(A physical memristor Lissajous figure)」(YouTube)]を参照されたし。動画では物理メモリスタのピンチ化ヒステリシス特性における偏差をどのように理解するかも図解している<ref name="muthuswamy2014">{{cite book |doi=10.1109/ISCAS.2014.6865179 |chapter=Memristor modelling |title=2014 IEEE International Symposium on Circuits and Systems (ISCAS) |pages=490–493 |date=2014 |last1=Muthuswamy |first1=B. |last2=Jevtic |first2=J. |last3=Iu |first3=H. H. C. |last4=Subramaniam |first4=C. K. |last5=Ganesan |first5=K. |last6=Sankaranarayanan |first6=V. |last7=Sethupathi |first7=K. |last8=Kim |first8=H. |last9=Shah |first9=M. Pd. |last10=Chua |first10=L. O. |isbn=978-1-4799-3432-4 |s2cid=13061426}}</ref><ref name="sah2015">{{Citation|title=A Generic Model of Memristors with Parasitic Components|last=Sah|first=M.|date=2015|journal=IEEE TCAS I: Regular Papers|volume=62|issue=3|pages=891–898|display-authors=et. al.}}</ref>。

サーミスタはメモリスティブ・デバイスとしてモデル化できる<ref name="sah2015" />。<math display="block">\begin{align}
v&=R_0(T_0)\exp\left[\beta\left(\frac{1}{T}-\frac{1}{T_0}\right)\right]i \\
&\equiv R(T)i \\
\frac{dT}{dt}&=\frac{1}{C}\left[-\delta\cdot(T-T_0)+R(T)i^2\right]
\end{align}
</math><math display="inline">\beta</math>は材料定数であり、<math display="inline">T</math>はサーミスタの絶対体温であり、<math display="inline">T_0</math>は周囲温度 (温度単位は両方ともケルビン)であり、<math display="inline">R_0(T_0)</math>は<math display="inline">T=T_0</math>における低温(側)抵抗(値)を示し、<math display="inline">C</math>は熱容量であり、そして<math display="inline">\delta</math>はサーミスタの損失定数(熱放散定数)である。

ほとんど研究されていない基礎的な現象は、pn接合におけるメモリスティブな挙動である<ref name="chuaTseng74">{{Citation|title=A memristive circuit model for p-n junction diodes|last1=Chua|first1=L. O.|last2=Tseng|first2=C.|date=1974|journal=International Journal of Circuit Theory and Applications|volume=2|issue=4|pages=367–389|doi=10.1002/cta.4490020406}}</ref>。メモリスタはダイオードベースの電荷蓄積効果を模倣する上で重要な役割を果たし、また(順方向過渡時に非常に重要な)導電率変調現象にも関与する。

=== 批評 ===
2008年に、{{仮リンク|ヒューレット・パッカード研究所|en|HP Labs|preserve=1|label=HP研}}のチームは[[酸化チタン(IV)|二酸化チタン]]の[[薄膜]]の分析に基き、その結果[[ReRAM]]デバイスの動作をメモリスタの概念に結び付けることができる、蔡のメモリスタについての実験的証拠を発見した。HP研によると、メモリスタは次のように動作する: メモリスタの{{Ill2|電気抵抗|en|electrical resistance|preserve=1}}は一定ではなく以前デバイスに流れた電流に依存し、すなわち、この現在の抵抗は以前にどれだけの電荷がそこを通って、どの方向に流れたかによって決まり; デバイスはその履歴{{Mdash}}いわゆる''不揮発性特性''{{Mdash}}を記憶する<ref name="chua11">{{cite journal|last1=Chua|first1=Leon|date=28 January 2011|title=Resistance switching memories are memristors|journal=Applied Physics A|volume=102|issue=4|pages=765–783|bibcode=2011ApPhA.102..765C|doi=10.1007/s00339-011-6264-9|doi-access=free}}</ref>。電力供給がオフになるとき、メモリスタは再度電源が入るまで自身の直近の抵抗(値)を記憶する<ref name="Williams08">{{cite journal|last1=Strukov|first1=Dmitri B.|last2=Snider|first2=Gregory S.|last3=Stewart|first3=Duncan R.|last4=Williams|first4=R. Stanley|date=2008|title=The missing memristor found|url=http://www.ece.ucsb.edu/~strukov/papers/2008/Nature2008.pdf|journal=[[Nature (journal)|Nature]]|volume=453|issue=7191|pages=80–83|bibcode=2008Natur.453...80S|doi=10.1038/nature06932|pmid=18451858|s2cid=4367148}}</ref><ref>{{Citation|title=Memristor FAQ|url=http://www.hpl.hp.com/news/2008/apr-jun/memristor_faq.html|publisher=[[Hewlett-Packard]]|access-date=2010-09-03}}</ref>。

HP研の結果は科学雑誌''[[ネイチャー|Nature]]'' に掲載された<ref name="Williams08" /><ref name="Williams - Spectrum 2008-12">{{cite journal|last1=Williams|first1=R. S.|date=2008|title=How We Found The Missing Memristor|url=http://personal.delen.polito.it/mario.biey/SupportiDidattici/rnl/memristor/spectrum08.pdf|journal=IEEE Spectrum|volume=45|issue=12|pages=28–35|doi=10.1109/MSPEC.2008.4687366|s2cid=27319894|access-date=2018-03-26|archive-date=2018-03-26|archive-url=https://web.archive.org/web/20180326202533/http://personal.delen.polito.it/mario.biey/SupportiDidattici/rnl/memristor/spectrum08.pdf|url-status=dead}}</ref>。この主張を受けて、蔡少棠は「メモリスタの定義は抵抗スイッチング効果に基く2端子不揮発性メモリデバイスのあらゆる形式をカバーするように一般化できる」と主張している<ref name="chua11" />。蔡はまた「メモリスタは既知の中で最も古い{{ill2|回路素子|en|circuit element}}であり、その効果は[[抵抗器]]、[[コンデンサ]]、そして[[インダクタ]]よりも古い」とも主張した<ref name="Memristor200yearsold">{{Citation|title=Memristor is 200 years old, say academics|last=Clarke|first=P.|date=23 May 2012|url=http://www.eetimes.com/electronics-news/4373652/Academics-Memristor-is-200-years-old|work=[[EE Times]]|access-date=2012-05-25}}</ref>。本物のメモリスタが物理的な現実において実際に存在し得るのかに関しては(しかしながら)いくつかの深刻な疑問がある<ref name="Meuffels_2012" /><ref name="DiVentra_2013" /><ref name="Sundqvist_2017">{{cite journal|last1=Sundqvist|first1=Kyle M.|last2=Ferry|first2=David K.|last3=Kish|first3=Laszlo B.|date=21 November 2017|title=Memristor Equations: Incomplete Physics and Undefined Passivity/Activity|journal=Fluctuation and Noise Letters|volume=16|issue=4|pages=1771001–519|arxiv=1703.09064|bibcode=2017FNL....1671001S|doi=10.1142/S0219477517710018|s2cid=1408810}}</ref><ref>{{Cite journal|last=Abraham|first=Isaac|date=2018-07-20|title=The case for rejecting the memristor as a fundamental circuit element|journal=Scientific Reports|volume=8|issue=1|pages=10972|bibcode=2018NatSR...810972A|doi=10.1038/s41598-018-29394-7|pmc=6054652|pmid=30030498}}</ref>。それに加えて、いくつかの実験的証拠では抵抗スイッチングメモリにおける非受動的{{ill2|ナノバッテリー|en|nanobatteries}}効果が観察できるため蔡の一般論と矛盾する<ref name="memristor_nanobattery">{{Citation|title=Nanobatteries in redox-based resistive switches require extension of memristor theory|last=Valov|first=I.|date=2013|journal=[[Nature Communications]]|volume=4|issue=4|pages=1771|arxiv=1303.2589|doi=10.1038/ncomms2784|pmc=3644102|bibcode=2013NatCo...4.1771V|pmid=23612312|display-authors=etal}}</ref>。そのような理想的または一般的なメモリスタが実際に存在するのか、それとも純粋に数学的な概念であるのかを分析するため、PershinとDi Ventraによって簡単なテストが提案された<ref name="Pershin_20183">{{cite journal|last1=Pershin|first1=Y. V.|last2=Di Ventra|first2=M.|date=2019|title=A simple test for ideal memristors|journal=Journal of Physics D: Applied Physics|volume=52|issue=1|pages=01LT01|arxiv=1806.07360|bibcode=2019JPhD...52aLT01P|doi=10.1088/1361-6463/aae680|s2cid=53506924}}</ref>。今までのところ、テストを合格できる実験用の抵抗スイッチングデバイス ([[ReRAM]]) はないようである<ref name="Pershin_20183" /><ref name="Kim_20192">{{cite journal|last1=Kim|first1=J.|last2=Pershin|first2=Y. V.|last3=Yin|first3=M.|last4=Datta|first4=T.|last5=Di Ventra|first5=M.|date=2019|title=An experimental proof that resistance-switching memories are not memristors|journal=Advanced Electronic Materials|arxiv=1909.07238|doi=10.1002/aelm.202000010|s2cid=202577242}}</ref>。

これらのデバイスは、[[超微細電子工学|ナノエレクトロニクス]] メモリデバイス、コンピュータロジック、そして[[ニューロモルフィック・エンジニアリング|ニューロモルフィック]]/ニューロメモリスティブ・コンピュータアーキテクチャでの応用を企図されている<ref>{{Citation|title=Engineers find 'missing link' of electronics|last=Marks|first=P.|date=30 April 2008|url=https://www.newscientist.com/article/dn13812|work=[[New Scientist]]|access-date=2008-04-30}}</ref><ref>{{Cite journal|last1=Zidan|first1=Mohammed A.|last2=Strachan|first2=John Paul|last3=Lu|first3=Wei D.|date=2018-01-08|title=The future of electronics based on memristive systems|journal=Nature Electronics|volume=1|issue=1|pages=22–29|doi=10.1038/s41928-017-0006-8|s2cid=187510377}}</ref>。2013年に、ヒューレット・パッカードの[[マーティン・フィンク]][[最高技術責任者|CTO]]は、「メモリスタ・メモリは早ければ2018年にも市販される可能性がある」と示唆した<ref name="memristor2018">{{Citation|title=HP 100TB Memristor drives by 2018 – if you're lucky, admits tech titan|date=1 November 2013|url=https://www.theregister.co.uk/2013/11/01/hp_memristor_2018/}}</ref>。2012年3月に、{{仮リンク|HRLラボラトリーズ|en|HRL Laboratories}}と[[ミシガン大学]]の研究者チームは、[[CMOS]]チップ上に構築された最初の機能するメモリスタ・アレイを発表した<ref name="HRLmemristor">{{Citation|title=Artificial synapses could lead to advanced computer memory and machines that mimic biological brains|date=23 March 2012|url=http://www.hrl.com/hrlDocs/pressreleases/2012/prsRls_120323.html|publisher=[[HRL Laboratories]]|access-date=30 March 2012}}</ref>。{{external media
|align = right
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|topic =
|image1 = [https://en.wikipedia.org/wiki/File:Memristor.jpg HP研にて専用に製作され、原子間力顕微鏡によって撮像された17列酸素欠乏二酸化チタンメモリスタ。配線幅は約50nm、つまり原子150個分<ref>{{Citation|last=Bush|first=S.|date=2 May 2008|title=HP nano device implements memristor|url=http://www.electronicsweekly.com/Articles/2008/05/02/43658/hp-nano-device-implements-memristor.htm|work=[[Electronics Weekly]]}}</ref>。メモリスタを流れる電流は酸素空孔をシフトさせ、抵抗の段階的かつ持続的な変化を引き起こす<ref name="Kanellos">{{Citation|last=Kanellos|first=M.|date=30 April 2008|title=HP makes memory from a once theoretical circuit|url=http://news.cnet.com/8301-10784_3-9932054-7.html|work=[[CNET|CNET News]]|access-date=2008-04-30}}</ref>]
}}1971年の当初の定義によれば、メモリスタは4番目の基本回路要素であり、電荷と磁束鎖交の間に非線形関係を形成する。2011年に[[蔡少棠|蔡]]は、より広い、抵抗スイッチングに基づく全ての2端子不揮発性メモリデバイスを含む定義を主張した<ref name="chua11" />。Williamsは[[磁気抵抗メモリ|MRAM]]、[[相変化メモリ]]そして[[ReRAM]]はメモリスタ技術であると主張した<ref name="Mellor2011">{{Citation|title=HP and Hynix to produce the memristor goods by 2013|last=Mellor|first=C.|date=10 October 2011|url=https://www.theregister.co.uk/2011/10/10/memristor_in_18_months/|work=The Register|access-date=2012-03-07}}</ref>。一部の研究者は、血液<ref name="Courtland2011">{{cite web |last=Courtland |first=R. |date=1 April 2011 |title=Memristors...Made of Blood? |url=https://spectrum.ieee.org/tech-talk/semiconductors/materials/blood-memristor |work=[[IEEE Spectrum]] |access-date=2012-03-07}}</ref>や皮膚<ref name="G K Johnsen et al">{{cite journal|last1=Johnsen|first1=G. K.|date=24 March 2011|title=Memristive model of electro-osmosis in skin|journal=Physical Review E|volume=83|issue=3|pages=031916|bibcode=2011PhRvE..83c1916J|doi=10.1103/PhysRevE.83.031916|pmid=21517534|s2cid=46437206}}</ref><ref name="McAlpine2011">{{Citation|title=Sweat ducts make skin a memristor|last=McAlpine|first=K.|date=2 March 2011|url=https://www.newscientist.com/article/mg20928024.500-sweat-ducts-make-skin-a-memristor.html|journal=[[New Scientist]]|volume=209|issue=2802|pages=16|doi=10.1016/S0262-4079(11)60481-8|bibcode=2011NewSc.209...16M|access-date=2012-03-07}}</ref>などの生物学的構造が定義に適合すると主張した。他の人は{{仮リンク|ヒューレット・パッカード研究所|en|HP Labs|preserve=1|label=HP研}}が開発中のメモリデバイスや他の形式の[[ReRAM]]はメモリスタではなく、むしろ可変抵抗システムのより広範なクラスの一部であり<ref name="Clarke2012">{{Citation|title=Memristor brouhaha bubbles under|last=Clarke|first=P.|date=16 January 2012|url=http://www.eetimes.com/electronics-news/4234678/Memristor-brouhaha-bubbles-under|work=[[EETimes]]|access-date=2012-03-02}}</ref>、そしてメモリスタの広義の定義はHPのメモリスタ特許を有利にする科学的に不当な{{ill2|土地収奪|en|land grabbing}}である<ref name="PaulMarks2012">{{Citation|title=Online spat over who joins memristor club|last=Marks|first=P.|date=23 February 2012|url=https://www.newscientist.com/article/mg21328535.200-online-spat-over-who-joins-memristor-club.html|work=[[New Scientist]]|access-date=2012-03-19}}</ref>と主張した。

2011年に、MeuffelsとSchroederは初期のメモリスタ論文の1つにイオン伝導に関する誤った仮定が含まれていることを指摘した<ref name="Meuffels_2011">{{citation|title=Comment on "Exponential ionic drift: fast switching and low volatility of thin-film memristors" by D.&nbsp;B. Strukov and R.&nbsp;S. Williams in Appl. Phys. A (2009) 94: 515–519|last1=Meuffels|first1=P.|last2=Schroeder|first2=H.|date=2011|journal=[[Applied Physics A]]|volume=105|issue=1|pages=65–67|doi=10.1007/s00339-011-6578-7|bibcode=2011ApPhA.105...65M|s2cid=95168959}}</ref>。2012年に、MeuffelsとSoniは、メモリスタの実現におけるいくつかの基本的な課題と難問について議論した<ref name="Meuffels_20122">{{cite arXiv|eprint=1207.7319|class=cond-mat.mes-hall|last1=Meuffels|first1=P.|last2=Soni|first2=R.|title=Fundamental Issues and Problems in the Realization of Memristors|date=2012}}</ref>。彼らは''[[Nature (journal)|Nature]]'' の論文「行方不明のメモリスタが見つかった(The missing memristor found)」<ref name="Williams08" />で提示された電気化学モデリングにおいて、電圧または電流ストレス下での「金属{{Mdash}}[[TiO2|TiO<sub>2−''x''</sub>]]{{Mdash}}金属」構造の挙動に対する{{ill2|濃度分極|en|concentration polarization}}効果の影響が考慮されていなかったため、不備を指摘した。この批判は2013年にValov''ら(et al.)''<ref name="memristor_nanobattery" />によって参照された。

ある種の[[思考実験]]において、MeuffelsとSoniは<ref name="Meuffels_20122" />、さらに次のような深刻な矛盾を明らかにした: いわゆる''不揮発性特性''<ref name="chua11" />を持つ電流制御メモリスタが物理的現実に存在する場合、その挙動はシステムの「情報」状態を変更するために必要な最小エネルギー量に制限を設ける[[ランダウアーの原理]]に違反することになる。この批判は最終的に{{Ill2|マッシミリアーノ・ディ・ヴェントラ|en|Massimiliano Di Ventra|label=Di Ventra}}とPershinによって採用された<ref name="DiVentra_20132">{{Citation|title=On the physical properties of memristive, memcapacitive and meminductive systems|last1=Di Ventra|first1=M.|last2=Pershin|first2=Y. V.|date=2013|journal=[[Nanotechnology (journal)|Nanotechnology]]|volume=24|issue=25|pages=255201|arxiv=1302.7063|doi=10.1088/0957-4484/24/25/255201|bibcode=2013Nanot..24y5201D|pmid=23708238|citeseerx=10.1.1.745.8657|s2cid=14892809}}</ref>。

この文脈の中において、MeuffelsとSoniは<ref name="Meuffels_20122" />、基本的な熱力学的原理を次のように指摘した: 不揮発性情報ストレージにはシステムの異なる内部メモリ状態を相互に分離する[[自由エネルギー]]障壁の存在が必要であり; さもないと、一方が「中性の」状況に直面することになり、そしてシステムがちょうど[[熱ゆらぎ]]の影響下にある場合、ある記憶状態から別の記憶状態へ勝手気ままに変動してしまうだろう。熱ゆらぎに対して保護されていない場合、内部メモリ状態は、状態の劣化を引き起こすいくつかの拡散ダイナミクスを示す<ref name="DiVentra_20132" />。自由エネルギー障壁は(したがって)ビット操作の低[[符号誤り率|ビットエラー確率]]を保証するのに十分高くなければならない<ref name="Kish_2014">{{cite journal|last1=Kish|first1=Laszlo B.|last2=Granqvist|first2=Claes G.|last3=Khatri|first3=Sunil P.|last4=Wen|first4=He|date=2014|title=Demons: Maxwell's demon, Szilard's engine and Landauer's erasure–dissipation|journal=International Journal of Modern Physics: Conference Series|volume=33|pages=1460364|arxiv=1412.2166|bibcode=2014IJMPS..3360364K|doi=10.1142/s2010194514603640|s2cid=44851287}}</ref>。その結果として、とあるメモリデバイスにおけるビット値の意図的な変更について {{Mdash}} 必要な[[符号誤り率|ビットエラー確率]]に応じ {{Mdash}} エネルギー必要量には常に下限が存在する<ref name="Kish_2014" /><ref name="Kish_2015">{{cite book |doi=10.1109/ICNF.2015.7288632 |chapter=Critical remarks on Landauer's principle of erasure-dissipation: Including notes on Maxwell demons and Szilard engines |title=2015 International Conference on Noise and Fluctuations (ICNF) |pages=1–4 |date=2015 |last1=Kish |first1=L. B. |last2=Khatri |first2=S. P. |last3=Granqvist |first3=C. G. |last4=Smulko |first4=J. M. |isbn=978-1-4673-8335-6}}</ref>。

メモリスティブ体系の一般概念において、定義方程式は次のとおり ([[#理論]]を参照): <math display="block">\begin{align}
              y(t) &= g(\mathbf{x},u,t) u(t), \\
  \dot{\mathbf{x}} &= f(\mathbf{x},u,t),
\end{align}</math> <math display="inline">u(t)</math>は入力信号であり、そして<math display="inline">y(t)</math>は出力信号が当て嵌まる。ベクトル<math display="inline">\mathbf{x}</math>はデバイスの内部メモリ状態の違いを説明する<math display="inline">n</math>個の状態変数のセットを表す。<math>\dot{\mathbf{x}}</math>は時間を伴う状態ベクトル<math display="inline">\mathbf{x}</math>の時間依存変化率である。

一方が単なる[[曲線あてはめ|曲線当てはめ]]を超え、そして不揮発性メモリ要素(例えば[[抵抗変化型メモリ]]デバイス)の実際の物理モデリングを目指しているとき、前述の物理的な相関関係に常に注意を払う必要がある。提案されたモデルとその結果として得られる状態方程式の適切性をチェックするために、入力信号<math display="inline">u(t)</math>は、避けられない[[熱ゆらぎ]]の存在を考慮する、確率項(※原文: stochastic term) <math display="inline">\xi (t)</math> (※[[最小二乗法#計算の概要|最小二乗法の誤差項]](error term)[[ε]]に字面が似ているが[[ξ]]は違う([[分配関数#大分配関数|大分配関数]]))と重畳しうる。動的状態方程式の一般形は最終的に次のようになる:<math display="block">\dot{\mathbf{x}} = f(\mathbf{x}, u(t) + \xi(t), t),</math><math display="inline">\xi (t)</math>には、例えば、ホワイト[[ガウス雑音|ガウス]]電流または電圧[[ノイズ (電子工学)|ノイズ]]が当て嵌まる。ノイズに対するシステムの時間依存応答の解析的または数値的解析に基づいて、モデリング手法の物理的妥当性について決定を下すこと(例えば、システムは電源オフモードでもメモリの状態を保持できるかどうか?)が可能になる。

純正の電流制御メモリスタに関して、このような分析はDi VentraとPershin<ref name="DiVentra_20132" />によって行われた。提案された動的状態方程式には、このようなメモリスタが避けられない熱ゆらぎに対処できるようにする物理的メカニズムが提供されていないため、電流制御メモリスタは、電流ノイズの影響を受けると、時間の経過とともにその状態が不規則に変化する<ref name="DiVentra_20132" /><ref name="Slipko_2013">{{Citation|title=Changing the state of a memristive system with white noise|last1=Slipko|first1=V. A.|last2=Pershin|first2=Y. V.|last3=Di Ventra|first3=M.|date=2013|journal=[[Physical Review E]]|volume=87|issue=1|pages=042103|arxiv=1209.4103|doi=10.1103/PhysRevE.87.012103|bibcode=2013PhRvE..87a2103L|pmid=23410279|s2cid=2237458}}</ref>。Di VentraとPershin<ref name="DiVentra_20132" />はその結果、抵抗 (メモリ) 状態が電流または電圧の履歴のみに依存するメモリスタは、避けられない[[熱雑音|ジョンソン=ナイキスト・ノイズ]]から自らのメモリ状態を保護できず、永続的な情報損失(いわゆる「確率的大惨事」)に悩まされると結論付けた。電流制御メモリスタは、したがって、物理的現実に固体デバイスとして存在することはできない。

前述の熱力学的原理は、さらに2端子不揮発性メモリデバイス (例えば「抵抗スイッチング」メモリデバイス ([[ReRAM]]))の動作をメモリスタの概念と関連付けることはできないことを暗示し、つまり、そのようなデバイスは、それ自体では電流または電圧の履歴を記憶できない。異なる内部メモリまたは抵抗状態の間の遷移は[[確率|確率的な]]性質を持っている。状態{'''i'''}から状態{'''j'''}への遷移ついての確率は、両方の状態の間の自由エネルギー障壁の高さに依存する。遷移確率は、適切にメモリデバイスを駆動すること(すなわち、(たとえば)外部から印加されるバイアスを用いて、{'''i'''} → {'''j'''}の遷移間の自由エネルギー障壁を「下げる」こと)による影響を受ける可能性がしたがってある。

「抵抗スイッチング」イベントは、外部バイアスを特定の閾値を超える値に設定することによって簡単に強制できる。これは自明なケースであり、すなわち、{'''i'''} → {'''j'''}の遷移間の自由エネルギー障壁はゼロに減らされる。一方に閾値を下回るバイアスを印加する場合、デバイスが時間の経過とともに（ランダムな熱ゆらぎによって引き起こされる）切り替わる確率は依然として有限であるが、しかし {{Mdash}}確率過程を扱っているため{{Mdash}} スイッチング イベントがいつ発生するかを予測することは不可能である。これが、観測された抵抗スイッチング ([[ReRAM]]) プロセスすべての確率的性質の基本的な理由である。自由エネルギー障壁が十分に高くない場合、メモリデバイスは何もすることなくいっそ切り替わることも可能である。

2端子不揮発性メモリデバイスが明確な抵抗状態{'''j'''}にあることが判明した場合、(したがって) 現在のその状態と、前述のその電圧履歴との間に物理的な1対1の関係は存在しない。個々の不揮発性メモリデバイスのスイッチング挙動は、その結果、メモリスタ/メモリスティブ体系に対して提案されている数学的枠組み内では説明できない。

熱力学へのさらなる好奇心はメモリスタ/メモリスティブ デバイスは抵抗器のようにエネルギッシュに振る舞うはずであるという定義から生じる。このような機器に入力される瞬時電力は、{{Ill2|ジュール熱|en|Joule heating|preserve=1}}として周囲に完全に放散され、そのため、ある抵抗状態<math display="inline">\mathbf{x}_i</math>から別の抵抗状態<math display="inline">\mathbf{x}_j</math>に移行した後、システムには余分なエネルギーが残らない。したがって、(たとえこれらの異なる状態が異なるデバイスの抵抗(それ自体はデバイスの材質の物理的変化によって引き起こされるに違いない)を生じさせたとしても)状態<math display="inline">\mathbf{x}_i</math>(''U'' (''V'', ''T'', '''x'''<sub>''i''</sub>))におけるメモリスタデバイスの{{Ill2|内部エネルギー|en|internal energy|preserve=1}}は状態<math display="inline">\mathbf{x}_j</math>(''U'' (''V'', ''T'', '''x'''<sub>''j''</sub>))における場合と同じになる。

他の研究者は、線形{{Ill2|イオン移動|en|ionic mobility|label=イオンドリフト|preserve=1}}の仮定に基づくメモリスタモデルは、セット時間（高抵抗から低抵抗へのスイッチング）とリセット時間（低抵抗から高抵抗へのスイッチング）の間の非対称性を考慮しておらず、且つ、実験データと一致するイオン移動度値が提供されてないことを指摘した。この欠陥を補うために非線形イオンドリフトモデルが提案されている<ref name="Mitre_2012">{{citation|title=Switching-time analysis of binary-oxide memristors via a non-linear model|last1=Hashem|first1=N.|last2=Das|first2=S.|date=2012|url=http://www.mitre.org/sites/default/files/pdf/11_3987.pdf|journal=[[Applied Physics Letters]]|volume=100|issue=26|pages=262106|doi=10.1063/1.4726421|bibcode=2012ApPhL.100z2106H|access-date=2012-08-09}}{{Dead link|date=October 2023|bot=InternetArchiveBot|fix-attempted=yes}}</ref>。

[[ReRAM]]の研究者による2014年の論文は、Strukov (HP) の初期/基本メモリスタ モデリング方程式は実際のデバイスの物理(学)をよく反映していないと結論付けた一方、PickettのモデルやMenzelのECMモデル (Menzelはその論文の共著者) などの後続の (物理ベースの) モデルには十分な予測可能性があるが、しかし計算量的には法外に高い。2014年現在、これらの課題のバランスをとるモデルの探索が続けられている; この論文ではChang氏とYakopcic氏のモデルが潜在的に優れた妥協案であると指摘している<ref name="E. Linn et al">{{cite journal|last1=Linn|first1=E.|last2=Siemon|first2=A.|last3=Waser|first3=R.|last4=Menzel|first4=S.|date=23 March 2014|title=Applicability of Well-Established Memristive Models for Simulations of Resistive Switching Devices|journal=IEEE Transactions on Circuits and Systems I: Regular Papers|volume=61|issue=8|pages=2402–2410|arxiv=1403.5801|bibcode=2014arXiv1403.5801L|doi=10.1109/TCSI.2014.2332261|s2cid=18673562|author3-link=Rainer Waser}}</ref>。

{{ill2|マーティン・レイノルズ|en|Martin Reynolds}}(研究機関[[ガートナー]]の電気工学アナリスト) は「HPが自社のデバイスをメモリスタと呼んでいたのはいい加減であった一方、批評家たちは、それはメモリスタではないと学者ぶって言っていた。」とコメントした<ref name="Martin Reynolds">{{Citation|title=Wonks question HP's claim to computer-memory missing link|last=Garling|first=C.|date=25 July 2012|url=https://www.wired.com/wiredenterprise/2012/07/memristors/|work=Wired.com|access-date=2012-09-23}}</ref>。

=== 実験的試験 ===
[[蔡少棠|蔡]]は、デバイスがメモリスタとして適切に分類されるかどうかを判断するための実験的試験を提案した<ref name="chua76" />:

* 電圧{{Ndash}}電流平面における[[リサジュー図形|リサージュ曲線]]は初期条件とは関係なく、双極性の周期的な電圧または電流によって駆動されると、ピンチ化[[ヒステリシス]]・ループになる。
* ピンチ化ヒステリシス・ループの各突出部の面積は、強制信号の周波数が増加するにつれて縮小する。
* 周波数が無限大に近づくにつれて、ヒステリシス・ループは原点を通る直線に縮退し、その傾きは強制信号の振幅と形状に依存する。

蔡によれば<ref name="MemristorExperimentalTests">{{Citation|title=Memristors: Past, Present and future|last=Chua|first=L.|date=13 June 2012|url=http://sti.epfl.ch/files/content/sites/sti/files/shared/sel/pdf/Abstract_Prof_Chua.pdf|archive-url=https://web.archive.org/web/20140308025032/http://sti.epfl.ch/files/content/sites/sti/files/shared/sel/pdf/Abstract_Prof_Chua.pdf|archive-date=8 March 2014|access-date=2013-01-12|url-status=dead}}</ref><ref name="MemristorExperimentalTests2">{{Citation|title=Three Fingerprints of Memristor|last1=Adhikari|first1=S. P.|last2=Sah|first2=M. P.|last3=Hyongsuk|first3=K.|last4=Chua|first4=L. O.|date=2013|journal=[[IEEE Transactions on Circuits and Systems I]]|volume=60|issue=11|pages=3008–3021|doi=10.1109/TCSI.2013.2256171|s2cid=12665998}}</ref>、[[ReRAM]]、[[磁気抵抗メモリ|MRAM]]、そして[[相変化メモリ]]を含む、全ての抵抗スイッチング・メモリはこれらの基準を満たしており、メモリスタである。しかしながら、初期条件の範囲または周波数の範囲にわたるリサージュ曲線についてのデータの欠如が、この主張の評価を複雑にする。

実験的証拠は、酸化還元ベースの抵抗メモリ (ReRAM) には蔡のメモリスタ・モデルとは相反する{{ill2|ナノバッテリー|en|nanobatteries}}効果が含まれることを示している。これはメモリスタ理論を正確なReRAMモデリングを可能にするために拡張または修正する必要があることを暗示している<ref name="memristor_nanobattery" />。

== 理論 ==
2008年に、{{仮リンク|ヒューレット・パッカード研究所|en|HP Labs|preserve=1|label=HP研}}出身の研究者は、[[酸化チタン(IV)|二酸化チタン]]の薄膜に基づくメモリスタンス関数についてのモデルを発表した<ref name="Williams08" />。<math display="inline">R_\mathrm{ON}</math> ≪ <math display="inline">R_\mathrm{OFF}</math>について、メモリスタンス関数は以下であると同定された:<math display="block">M(q(t)) = R_\mathrm{OFF} \cdot \left(1-\frac{\mu_{v}R_\mathrm{ON}}{D^2} q(t)\right)</math> ここで<math display="inline">R_\mathrm{OFF}</math>は高抵抗状態を表し、<math display="inline">R_\mathrm{ON}</math>は低抵抗状態を表し、<math display="inline">\mu_{v}</math>は薄膜内のドーパントの移動度を表し、そして<math display="inline">D</math>は膜厚を表す。HP研のグループは「非線形イオンドリフトおよび境界効果に帰因する実験の測定(結果)とメモリスタモデル間の差異を埋め合わせるためには『窓関数』が必要である」と指摘した。

=== スイッチとしての動作 ===
一部のメモリスタについて、印加電流または電圧は抵抗に大きな変化を引き起こす。このようなデバイスは抵抗に望ましい変化を達成するために費やさなければならない時間とエネルギーを調べることによってスイッチとして特徴づけられる場合がある。これは印加電圧が一定のままであると仮定する。単一スイッチング・イベント中のエネルギー放散について解くと、メモリスタにとって<math display="inline">T_\mathrm{on}</math>から<math display="inline">T_\mathrm{off}</math>までの時間内に<math display="inline">R_\mathrm{on}</math>から<math display="inline">R_\mathrm{off}</math>に切り替わるには、電荷が<math display="inline">\Delta Q = {Q_\mathrm{on}}-{Q_\mathrm{off}} </math>だけ変化しなければならないことが明らかになる。<math display="block">E_{\mathrm{switch}}
=\ V^2\int_{T_\mathrm{off}}^{T_\mathrm{on}} \frac{\mathrm dt}{M(q(t))}
=\ V^2\int_{Q_\mathrm{off}}^{Q_\mathrm{on}}\frac{\mathrm dq}{I(q)M(q)}
=\ V^2\int_{Q_\mathrm{off}}^{Q_\mathrm{on}}\frac{\mathrm dq}{V(q)} =\ V\Delta Q </math><math display="inline">V = {I(q)M(q)}</math>を代入し、定数<math>V</math>に<math display="inline">\int\frac{\mathrm dq}{V} = \Delta\frac{Q}{V}</math>を代入すると、最終的な式が得られる。この電力特性はコンデンサ・ベースの[[MOSFET|金属酸化物半導体]][[トランジスタ]]の電力特性とは根本的に異なる。トランジスタとは異なり、電荷の観点からメモリスタの最終状態はバイアス電圧に依存しない。

Williamsによって説明されたメモリスタの種類は、その抵抗範囲全体にわたるスイッチング後、理想的ではなくなり、「ハードスイッチング・レジーム」とも呼ばれる、[[ヒステリシス]]を形成する<ref name="Williams08" />。もう一つの種類のスイッチは、周期的な<math display="inline">M(q)</math>を持ち、そのため一定のバイアスの下では、各''オフ''-''オン''・イベントの後に''オン''-''オフ''・イベントが続くことになるだろう。このようなデバイスは、あらゆる条件下でメモリスタとして機能するが、実用性は低くなる。

=== メモリスティブ体系 ===
<math display="inline">n</math>次メモリスティブ体系のより一般的な概念では、定義方程式は次のとおりであり、
<math display="block">\begin{align}
              y(t) &= g(\textbf{x},u,t)u(t), \\
  \dot{\textbf{x}} &= f(\textbf{x},u,t)
\end{align}</math>
ここで<math display="inline">u(t)</math>は入力信号であり、<math display="inline">y(t)</math>は出力信号であり、ベクトル<math display="inline">\mathbf{x}</math>はデバイスを説明する<math display="inline">n</math>個の状態変数のセットを表し、そして<math display="inline">g</math>と<math display="inline">f</math>は[[連続写像|連続関数]]である。電流制御メモリスティブ体系の場合、信号<math display="inline">u(t)</math>は電流信号<math display="inline">i(t)</math>を表し、信号<math display="inline">y(t)</math>は電圧信号<math display="inline">v(t)</math>を表す。電圧制御メモリスティブ体系の場合、信号<math display="inline">u(t)</math>は電圧信号<math display="inline">v(t)</math>を表し、信号<math display="inline">y(t)</math>は電流信号<math display="inline">i(t)</math>を表す。

''純粋な''メモリスタはこれらの方程式の特殊なケースであり、つまり<math display="inline">x</math>が電荷のみに依存(<math display="inline">\mathbf{x} = q</math>)するとき、電荷は時間微分<math display="inline">\frac{\mathrm dq}{\mathrm dt} = i(t)</math>を介して電流に関係するためである。したがって、''純粋な''メモリスタの場合、<math display="inline">f</math> (すなわち、状態の変化率) は電流<math display="inline">i(t)</math>と等しいか、それに比例しなければならない。

=== ピンチ化ヒステリシス ===
[[File:Pinched crossing hysteresis.png|thumb|right|V対I、ピンチ化ヒステリシス曲線の例]]
メモリスタとメモリスティブ体系の結果生じる特性のうち1つが、ピンチ化[[ヒステリシス]]効果の存在である<ref name="DiVentraPershin2011">
{{citation
 |last1=Pershin |first1=Y. V.
 |last2=Di Ventra |first2=M.
 |date=2011
 |journal=[[Advances in Physics]]
 |title=Memory effects in complex materials and nanoscale systems
 |volume=60 |issue=2 |pages=145–227
 |arxiv=1011.3053
 |bibcode=2011AdPhy..60..145P
 |doi=10.1080/00018732.2010.544961
|s2cid=119098973
 }}</ref>。電流制御メモリスティブ体系の場合、入力<math display="inline">u(t)</math>は電流<math display="inline">i(t)</math>であり、出力<math display="inline">y(t)</math>は電圧<math display="inline">v(t)</math>であり、そして曲線の傾きは電気抵抗を表す。ピンチ化ヒステリシス曲線の傾きにおける変化は([[ReRAM]]およびその他の形式の2端子抵抗メモリの現象の中心である)異なる抵抗状態間のスイッチングを示す。高周波においては、メモリスティブ理論はピンチ化ヒステリシス効果が退化してしまうことを予測し、線形抵抗器を表す直線をもたらす。非交差ピンチ化ヒステリシス曲線の一部の種類 (タイプ-IIと示される) は、メモリスタによって説明することはできないことが証明された<ref name="Biolek2011">
{{citation
 |last1=Biolek |first1=D.
 |last2=Biolek |first2=Z.
 |last3=Biolkova |first3=V.
 |date=2011
 |journal=[[Electronics Letters]]
 |title=Pinched hysteresis loops of ideal memristors, memcapacitors and meminductors must be 'self-crossing'
 |volume=47 |issue=25 |pages=1385–1387
 |doi=10.1049/el.2011.2913
|bibcode=2011ElL....47.1385B
 }}</ref>。

=== メモリスティブ・ネットワークと回路相互作用の数学モデル ===
メモリスティブ・ネットワークの概念は蔡少棠によって1965年の彼の論文「メモリスティブ・デバイスと体系(Memristive Devices and Systems)」で初めて発表された。蔡は人間の脳の振舞いをシミュレートできるかもしれない人工ニューラル・ネットワークを構築する手段としてメモリスティブ・デバイスの利用を提案した。事実、回路におけるメモリスティブ・デバイスはキルヒホッフの法則による複雑な相互作用を持つ。メモリスティブ・ネットワークはメモリスタンスの特性を示す電子部品である、メモリスティブ・デバイスに基づく、人工ニューラル・ネットワークの一種である。メモリスティブ・ネットワークにおいて、メモリスティブ・デバイスは人間の脳のニューロンとシナプスの振舞いをシミュレートするために使用される。ネットワークは一連の重みを介して他の各層に接続される、メモリスティブ・デバイスの層から構成される。これらの重みはトレーニング・プロセス中に調整され、ネットワークが新しい入力データに対して学習と適応することを可能にする。メモリスティブ・ネットワークの利点の1つは、比較的シンプルで安価なハードウェアを使用して実装でき、これらを低コストの人工知能システムを開発するための魅力的な選択肢にする。また、より少ない電力で情報の格納と処理をできるため、従来の人工ニューラル・ネットワークよりもエネルギー効率が高い可能性もある。しかしながら、メモリスティブ・ネットワークの分野は、まだ開発の初期段階にあり、その能力と限界を完全に理解するには、さらなる研究が必要とされている。電圧発生器を直列に接続したメモリスティブ・デバイスのみの最も単純なモデルの場合、各デバイスのネットワークの内部メモリの進化を説明する、厳密な閉じた形式の方程式 ({{ill2|キャラヴェリ-トラヴェルサ-ディ・ヴェントラ方程式|en|Caravelli-Traversa-Di_Ventra_equation|label='''C'''aravelli-'''T'''raversa-'''D'''i '''V'''entra方程式}}、CTDV)<ref>{{cite journal |last=Caravelli  |display-authors=etal|arxiv=1608.08651 |title=The complex dynamics of memristive circuits: analytical results and universal slow relaxation |year=2017 |doi=10.1103/PhysRevE.95.022140 |pmid= 28297937 |volume=95 |issue= 2 |pages= 022140 |journal=Physical Review E|bibcode=2017PhRvE..95b2140C |s2cid=6758362}}</ref>が存在する。2つの抵抗値間のスイッチの(しかし現実的ではない)単純なメモリスタ・モデルの場合、(<math display="inline">dx/dt=I/\beta-\alpha x</math>を伴う)Williams-Strukovモデル<math display="inline">R(x)=R_{off} (1-x)+R_{on} x</math>によって与えられる、次のような形式を取る一連の非線形結合微分方程式が存在する:
<math display="block"> \frac{d\vec{x}}{dt}  = -\alpha \vec{x}+\frac{1}{\beta} (I-\chi \Omega X)^{-1} \Omega \vec S </math>
ここで、<math display="inline">X</math>は対角線上に要素<math display="inline">x_i</math>を持つ対角行列であり、<math display="inline">\alpha,\beta,\chi</math>はメモリスタの物理パラメータに基づく。ベクトル<math display="inline">\vec S </math>は、メモリスタに直列に接続された電圧発生器のベクトルである。回路トポロジーは、グラフの回転行列(cycle matrix)という観点から定義される、射影作用素(projector operator) <math display="inline">\Omega^2=\Omega</math>にのみ入る。この方程式はキルヒホッフの法則による相互作用の簡潔な数学的記述を提供する。興味深いことに、この方程式はリアプノフ関数や古典的なトンネル現象の存在など、[[ホップフィールド・ネットワーク]]と共通する多くの特性を共有する<ref>{{cite journal |last=Caravelli  |display-authors=etal|arxiv=1608.08651 |title=Global minimization via classical tunnelling assisted by collective force field formation |year=2021 |doi=10.1126/sciadv.abh1542 |pmid= 28297937 |volume=7 |issue=52 |journal=Science Advances|page=022140 |bibcode=2021SciA....7.1542C |s2cid=231847346 }}</ref>。メモリスティブ・ネットワークの文脈において、CTD(V)方程式は異なる動作条件下におけるメモリスティブ・デバイスの振舞いを予測するため、若しくは特定の用途向けメモリスティブ回路の設計と最適化をするために使用される。

=== 拡張された(理論)体系 ===
一部の研究者の中には[[ReRAM]]の振る舞いの説明におけるHPのメモリスタ・モデルの科学的な正当性に疑問を提起し<ref name="Clarke2012" /><ref name="PaulMarks2012" />、そして拡張メモリスティブ・モデルを提案した<ref name="memristor_nanobattery"/>。

一例<ref name="memresistor">
{{cite arXiv
 |last=Mouttet |first=B.
 |date=2012
 |title=Memresistors and non-memristive zero-crossing hysteresis curves
 |eprint=1201.2626
 |class=cond-mat.mes-hall
}}</ref>では、級数展開時に入力信号<math display="inline">u(t)</math>の高次導関数を組み込んだ動的体系を含むことによってメモリスティブ・システム・フレームワークを拡張するよう試みており、
<math display="block">\begin{align}
              y(t) &= g_0(\textbf{x}, u)u(t) + g_1(\textbf{x}, u){\operatorname{d}^2u\over\operatorname{d}t^2} +
                        g_2(\textbf{x}, u){\operatorname{d}^4u\over\operatorname{d}t^4} + \ldots +
                        g_m(\textbf{x}, u){\operatorname{d}^{2m}u\over\operatorname{d}t^{2m}}, \\
  \dot{\textbf{x}} &= f(\textbf{x}, u)
\end{align}</math>
ここで<math display="inline">m</math>は正の整数であり、<math display="inline">u(t)</math>は入力信号であり、<math display="inline">y(t)</math>は出力信号であり、 ベクトル<math display="inline">\mathbf{x}</math>はデバイスを説明する<math display="inline">n</math>個の状態変数のセットを表し、そして<math display="inline">g</math>と<math display="inline">f</math>は[[連続写像|連続関数]]である。この方程式はメモリスティブ・システムとして同じゼロ交差ヒステリシス曲線を生成するが、しかしメモリスティブ・システムによって予測されるそれよりも異なる[[周波数特性|周波数応答]]を伴う。

別の例は、オフセット値<math display="inline">a</math>を含む、予測されるゼロ交差ピンチ化ヒステリシス効果を破る観測されたナノバッテリー効果について勘定に入れることを提案している<ref name="memristor_nanobattery"/>。
<math display="block">\begin{align}
              y(t) &= g_0(\textbf{x},u)(u(t)-a), \\
  \dot{\textbf{x}} &= f(\textbf{x},u)
\end{align}</math>

== ヒステリック(ヒステリシス的な)電流-電圧メモリスタの実装 ==
ヒステリック電流-電圧曲線またはヒステリック電流-電圧曲線とヒステリック磁束-電荷曲線の両方を伴うメモリスタの実装が存在する[arXiv:2403.20051]。ヒステリック電流-電圧曲線を伴うメモリスタは電流と電圧の履歴に依存する抵抗を利用し、そしてそれらの簡素な構造、高エネルギー効率、そして高インテグレーション(en:integration, 完成? or 集積?)ゆえ、メモリー技術の未来にとっては良い前兆である[DOI: 10.1002/aisy.202200053]。
=== 二酸化チタンメモリスタ ===
2007年に[[ヒューレット・パッカード]]の{{ill2|リチャード・スタンレー・ウィリアムズ|en|R. Stanley Williams}}によって実験的な固体版が報告された時、メモリスタへの関心が再燃した
<ref>
{{Citation
 |last=Fildes |first=J.
 |date=13 November 2007
 |title=Getting More from Moore's Law
 |url=http://news.bbc.co.uk/2/hi/technology/7080772.stm
 |publisher=[[BBC News]]
 |access-date=2008-04-30
}}</ref><ref>
{{Citation
 |last=Taylor |first=A. G.
 |date=2007
 |title=Nanotechnology in the Northwest
 |url=http://www.ieee-or.org/beeep/2007/sep/beeep_sep07.pdf
 |journal=Bulletin for Electrical and Electronic Engineers of Oregon
 |volume=51
 |issue=1 |page=1
}}</ref><ref>{{Citation
 |title=Stanley Williams
 |url=http://www.hpl.hp.com/people/stan_williams/
 |publisher=[[Hewlett-Packard|HP Labs]]
 |access-date=2011-03-20
 |archive-url=https://web.archive.org/web/20110719014357/http://www.hpl.hp.com/people/stan_williams/
 |archive-date=2011-07-19
 |url-status=dead
 }}</ref>。この論文は初めて、[[ナノスケール]]薄膜の振る舞いに基づくメモリスタの特性があるかもしれない固体デバイスを実証したものであった。このデバイスは、理論上のメモリスタに示唆されたように磁束を利用するでもなく、コンデンサと同じように電荷を蓄えるでもなく、代わりに電流の履歴に応じた抵抗を実現する。
HPの[[酸化チタン(IV)|TiO<sub>2</sub>]]メモリスタにおける彼らの初期のレポートには引用されていないけれども、二酸化チタンの抵抗スイッチング特性は元々1960年代に述られていた<ref name="Argall1968">
{{Citation
 |last=Argall |first=F.
 |date=1968
 |title=Switching Phenomena in Titanium Oxide Thin Films
 |journal=[[Solid-State Electronics]]
 |volume=11 |issue=5 |pages=535–541
 |doi=10.1016/0038-1101(68)90092-0
 |bibcode=1968SSEle..11..535A
}}</ref>。

HPのデバイスは厚さ5nmの2つの[[電極]](一方は[[チタン]]、他方は[[白金]])の間に、薄い (50[[ナノメートル|nm]]) [[二酸化チタン]]膜からできている。当初は、二酸化チタン膜には2つの層があり、そのうちの1つは[[酸素]]原子がわずかに欠乏している。酸素空孔は[[電荷担体|電荷キャリア]]として働き、空乏層の抵抗が非空乏層よりもはるかに低いことを意味する。電界が印加されると、酸素空孔はドリフトし (''[[固体電解質|高速イオン伝導体]]'' を参照されたし)、高抵抗層と低抵抗層の間の境界を変える。したがって膜全体の抵抗は、特定の(電流の方向を変えることで可逆的になる)方向にどれくらいの電荷が通過したかに依存する<ref name="Williams08"/>。HPのデバイスはナノスケールでの高速イオン伝導を示すため、[[ナノイオニクス|ナノイオン・デバイス]]と考えられる<ref name="Terabe2007">。
{{citation
 |last1=Terabe |first1=K.
 |last2=Hasegawa |first2=T.
 |last3=Liang |first3=C.
 |last4=Aono |first4=M.
 |date=2007
 |title=Control of local ion transport to create unique functional nanodevices based on ionic conductors
 |journal=[[Science and Technology of Advanced Materials]]
 |volume=8 |issue=6 |pages=536–542
 |doi=10.1016/j.stam.2007.08.002
 |bibcode=2007STAdM...8..536T
|doi-access=free
 }}</ref>

メモリスタンスはドープ層と空乏層の両方が抵抗に寄与する場合のみ表される。イオンがもはや移動できなくなるほどメモリスタに十分な電荷が通過するとき、デバイスは[[ヒステリシス]](状態)に入る。それは積分<math display="inline">q = \int I {\mathrm dt}</math>をすることを止め、むしろ<math display="inline">q</math>を上界に保ち、そして<math display="inline">M</math>は固定される、したがって電流が逆流するまで定抵抗器としての機能を果たす。

しばらくの間、薄膜酸化物のメモリ応用は活発な調査が行われていた分野であった。[[IBM]]は2000年にウィリアムズによって述べられたものに似ている構造物に関する論文を公開した<ref name="Beck2000">
{{citation
 |last1=Beck |first1=A.
 |date=2000
 |title=Reproducible switching effect in thin oxide films for memory applications
 |journal=[[Applied Physics Letters]]
 |volume=77 |issue=1
 |page=139
 |doi=10.1063/1.126902
 |bibcode=2000ApPhL..77..139B
|display-authors=etal}}</ref>。[[サムスングループ|サムスン]]はウィリアムズによって述べられたものに似た酸化物空孔ベースのスイッチに関する米国特許を取得している<ref>Stefanovich, Genrikh; Cho, Choong-rae; Yoo, In-kyeong; Lee, Eun-hong; Cho, Sung-il; Moon, Chang-wook (2006) "Electrode structure having at least two oxide layers and non-volatile memory device having the same" {{US Patent |7417271}}</ref>。

2010年4月に、HP研は彼らが1[[ナノ秒|ns]] (~1GHz) スイッチング時間で動作し、そして3nm四方サイズの実用的なメモリスタを手に入れたと発表し<ref>
{{Citation
 |title=Finding the Missing Memristor - R. Stanley Williams
 |url=https://www.youtube.com/watch?v=bKGhvKyjgLY
}}</ref>、それは技術の未来にとっては良い前兆である<ref>
{{Citation
 |last=Markoff |first=J.
 |date=7 April 2010
 |title=H.P. Sees a Revolution in Memory Chip
 |url=https://www.nytimes.com/2010/04/08/science/08chips.html?hpw
 |work=[[New York Times]]
}}</ref>。これらの密度では、それは現在のサブ25nm[[フラッシュメモリ]]技術に簡単に匹敵する可能性がある。

=== 二酸化ケイ素メモリスタ ===
1960年代には早くも二酸化ケイ素の[[ナノテクノロジー|ナノスケール]]薄膜においてメモリスタンスが報告されているようである<ref>{{cite journal |last1= Kavehei|first1=O. |last2= Iqbal|first2=A. |last3= Kim|first3=Y.S. |last4= Eshraghian|first4=K. |last5= Al-Sarawi|first5=S. F. | last6= Abbott|first6=D. |title= The fourth element: characteristics, modelling and electromagnetic theory of the memristor |journal= Proceedings of the Royal Society A: Mathematical, Physical and Engineering Sciences
|date=2010 |volume= 466 |issue= 2120 |pages= 2175–2202|doi=10.1098/rspa.2009.0553 |arxiv=1002.3210 |bibcode=2010RSPSA.466.2175K |s2cid=7625839 }}</ref>。

しかしながら、ケイ素中におけるヒステリック・コンダクタンスにメモリスティブ効果との関連性が確認されたのは2009年になってからである<ref>{{ citation | last1= Ben-Jamaa | first1= M. H. | last2= Carrara | first2=S. | last3= Georgiou|first3=J. | last4= Archontas|first4=N. | last5= De Micheli |first5=G. | title= Fabrication of memristors with poly-crystalline silicon nanowires | journal= Proceedings of 9th IEEE Conference on Nanotechnology | date=2009 | volume=1|issue=1|pages=152–154}}</ref>。
さらに最近(2012年初)、Tony Kenyon、Adnan Mehonicそして彼らのグループは、導電性原子間力顕微鏡を使用して電気バイアス下での酸素の動きを直接調べ、そしてその結果得られた導電性フィラメントを画像化し、酸化ケイ素薄膜における抵抗スイッチングは欠陥操作された二酸化ケイ素における酸素空孔フィラメントの形成によるものであることを明確に実証した<ref>{{cite journal |last1= Mehonic |first1=A. |last2= Cueff |first2=S. |last3= Wojdak |first3=M. , … |last4= Kenyon |first4= A. J. |title= Resistive switching in silicon suboxide films |journal= Journal of Applied Physics |date=2012 |volume=111|issue=7 |pages=074507–074507–9 |doi= 10.1063/1.3701581|bibcode=2012JAP...111g4507M |url=https://hal.archives-ouvertes.fr/hal-01148232v2/file/Memristor%20manuscript%20_%20JAP_FINAL.pdf }}</ref>。

=== 高分子メモリスタ ===
2004年に、KriegerとSpitzerは、機能する不揮発性メモリセル作成するために必要なスイッチング特性と保持(力)を改善した高分子(ポリマー)の動的ドーピングと無機誘電体様材料を述べた<ref>
{{Citation
 |last1=Krieger |first1=J. H.
 |last2=Spitzer |first2=S. M.
 |date=2004
 |chapter=Non-traditional, Non-volatile Memory Based on Switching and Retention Phenomena in Polymeric Thin Films
 |title=Proceedings of the 2004 Non-Volatile Memory Technology Symposium
 |page=121
 |publisher=[[IEEE]]
 |doi=10.1109/NVMT.2004.1380823
 |isbn=978-0-7803-8726-3
|s2cid=7189710
 }}</ref>。彼らは電極と(電極からのイオン抽出を強化する)活性薄膜の間の不動態層を使用した。この不動態層のように(イオン抽出場の大幅な削減を可能にする)[[固体電解質|高速イオン伝導体]]を利用することを可能にする。

2008年7月に、ErokhinとFontanaは、最近発表された二酸化チタンメモリスタよりも先に高分子メモリスタを開発したと主張した<ref name="Erokhin2008">
{{cite arXiv
 |last1=Erokhin |first1=V.
 |last2=Fontana |first2=M. P.
 |date=2008
 |title=Electrochemically controlled polymeric device: A memristor (and more) found two years ago
 |class=cond-mat.soft
 |eprint=0807.0333
}}</ref>。

2010年に、Alibart、Gamrat、Vuillaumeら(et al.)<ref>{{cite journal | last1 = An | last2 = Alibart | first2 = F. | last3 = Pleutin | first3 = S. | last4 = Guerin | first4 = D. | last5 = Novembre | first5 = C. | last6 = Lenfant | first6 = S. | last7 = Lmimouni | first7 = K. | last8 = Gamrat | first8 = C. | last9 = Vuillaume | first9 = D. | date = 2010 | title =  An Organic Nanoparticle Transistor Behaving as a Biological Spiking Synapse| doi=10.1002/adfm.200901335 | journal = Advanced Functional Materials | volume = 20 | issue = 2| pages = 330–337 | arxiv = 0907.2540 | s2cid = 16335153 }}</ref>は、メモリスタとして振る舞い<ref>{{cite journal | last1 = Alibart | first1 = F. | last2 = Pleutin | first2 = S. | last3 = Bichler | first3 = O. | last4 = Gamrat | first4 = C. | last5 = Serrano-Gotarredona | first5 = T. | last6 = Linares-Barranco | first6 = B. | last7 = Vuillaume | first7 = D. | date = 2012 | title =  A Memristive Nanoparticle/Organic Hybrid Synapstor for Neuroinspired Computing|doi=10.1002/adfm.201101935 | journal = Advanced Functional Materials | volume = 22 | issue = 3| pages = 609–616 | arxiv = 1112.3138 | hdl = 10261/83537 | s2cid = 18687826 }}</ref>そして生物学的スパイキング・シナプスの主な振る舞いを示す新しいハイブリッド有機/[[ナノ粒子]]デバイス (略: {{ill2|NOMFET|en|NOMFET}}: ナノ粒子有機メモリ・電界効果トランジスタ) を発表した。このデバイスは、シナプスタ (シナプス・トランジスタ) とも呼ばれ、神経にインスパイヤされた回路 (パブロフ学習を示す連想記憶) を実証するために使用された<ref>{{cite journal | last1 = Pavlov's | last2 = Transistors | first2 = Organic | last3 = Bichler | first3 = O. | last4 = Zhao | first4 = W. | last5 = Alibart | first5 = F. | last6 = Pleutin | first6 = S. | last7 = Lenfant | first7 = S. | last8 = Vuillaume | first8 = D. | last9 = Gamrat | first9 = C. | date = 2013 | title =  Pavlov's Dog Associative Learning Demonstrated on Synaptic-Like Organic Transistors| journal = Neural Computation | volume = 25 | issue = 2| pages = 549–566 | doi=10.1162/NECO_a_00377| pmid =  22970878| arxiv = 1302.3261 | bibcode = 2013arXiv1302.3261B | s2cid = 16972302 }}</ref>。

2012年に、Crupi、PradhanそしてTozerらは、有機「イオンベース」メモリスタを利用し神経シナプス記憶回路を作り出すための概念実証設計を述べた<ref>
{{Citation
 |last1=Crupi |first1=M.
 |last2=Pradhan |first2=L.
 |last3=Tozer |first3=S.
 |title=Modelling Neural Plasticity with Memristors
 |journal=IEEE Canadian Review
 |url=http://www.ieee.ca/canrev/cr68/IEEECanadianReview_no68.pdf
 |volume=68 |pages=10–14
 |date=2012
}}</ref>。そのシナプス回路は、忘却に基づく不活化と同様に学習について[[長期増強]]を実証した。回路の格子を使用して、光のパターンが格納されたのちに思い出された。これは輪郭や動きのある線などの視覚信号を処理する時空間フィルターとして機能する、[[視覚野#一次視覚野_(V1)|一次視覚野]]にあるV1ニューロンの挙動を真似する。

2012年に、Erokhinと共著者らは、高分子メモリスタに基づく学習と適応について能力を備えた確率的3次元行列を実証した<ref>{{cite journal |last1=Erokhin |first1=V. |last2=Berzina |first2=T. |last3=Gorshkov |first3=K. |last4=Camorani |first4=P. |last5=Pucci |first5=A. |last6=Ricci |first6=L. |last7=Ruggeri |first7=G. |last8=Signala |first8=R. |last9=Schüz |first9=A. |title=Stochastic hybrid 3D matrix: learning and adaptation of electrical properties |journal=Journal of Materials Chemistry |date=2012 |volume=22 |issue=43 |page=22881 |doi=10.1039/C2JM35064E }}</ref>。

=== 積層メモリスタ ===
2014年に、Bessonovら(et al.)は、プラスチックホイル上の銀電極の間に挟まれている{{ill2|酸化モリブデン類 (曖昧さ回避)|en|Molybdenum oxide|label=MoO<sub>x</sub>}}/[[MoS2|MoS<sub>2</sub>]]ヘテロ構造から成るフレキシブル・メモリスティブ・デバイスを報告した<ref name="flexible_memristor">
{{citation
 |last=Bessonov |first=A. A.
 |date=2014
 |title=Layered memristive and memcapacitive switches for printable electronics
 |journal=[[Nature Materials]]
 |doi=10.1038/nmat4135
|display-authors=etal|bibcode = 2015NatMa..14..199B
 |pmid=25384168
 |volume=14
 |issue=2
 |pages=199–204}}</ref>。この製造方法は、二次元層状[[遷移金属ダイカルコゲナイド]] (TMD) で使われる印刷および溶液処理技術に完全に基づく。メモリスタは機械的に柔軟性があり、[[透明|光学的に透明]]で、そして低コストで生産される。スイッチのメモリスティブな振る舞いは、顕著なメモキャパシティブ効果を伴うことが判明した。高いスイッチング性能は、{{ill2|シナプス可塑性|en|Synaptic plasticity|preserve=1}}が実証され、そして機械的変形に対する持続可能性が斬新なコンピューティング技術において生物学的神経システムの魅力的な性質を模倣することを保証する。

=== 原子抵抗器 ===
原子抵抗器(Atomristor)は、原子的に薄いナノマテリアルまたは原子シートでメモリスティブな振る舞いを示す電気デバイスとして定義されている。2018年に、テキサス大学の{{ill2|デジ・アキンワンデ|en|Deji Akinwande|label=アキンワンデ}}・グループのGeとWuら(et al.)は、垂直{{ill2|金属-絶縁体-金属|en|metal-insulator-metal}} (MIM) デバイス構造に基づく単層{{ill2|遷移金属ダイカルコゲナイド単分子膜|en|Transition metal dichalcogenide monolayers|label=TMD}} (MX<sub>2</sub>, M = [[モリブデン|Mo]], [[タングステン|W]]; そして X = [[硫黄|S]], [[セレン|Se]]) 原子シートで普遍的なメモリスティブ効果を最初に報告した<ref>{{Cite journal|last1=Ge|first1=Ruijing|last2=Wu|first2=Xiaohan|last3=Kim|first3=Myungsoo|last4=Shi|first4=Jianping|last5=Sonde|first5=Sushant|last6=Tao|first6=Li|last7=Zhang|first7=Yanfeng|last8=Lee|first8=Jack C.|last9=Akinwande|first9=Deji|date=2017-12-19|title=Atomristor: Nonvolatile Resistance Switching in Atomic Sheets of Transition Metal Dichalcogenides|journal=Nano Letters|volume=18|issue=1|pages=434–441|doi=10.1021/acs.nanolett.7b04342|pmid=29236504|bibcode=2018NanoL..18..434G|doi-access=free}}</ref>。この研究は後に、約0.33nmの最薄メモリ材料である、[[窒化ホウ素|六方晶窒化ホウ素]]単分子膜まで拡張された<ref>{{Cite journal |last1=Wu |first1=Xiaohan |last2=Ge |first2=Ruijing |last3=Chen |first3=Po-An |last4=Chou |first4=Harry |last5=Zhang |first5=Zhepeng |last6=Zhang |first6=Yanfeng |last7=Banerjee |first7=Sanjay |last8=Chiang |first8=Meng-Hsueh |last9=Lee |first9=Jack C. |last10=Akinwande |first10=Deji |date=April 2019 |title=Thinnest Nonvolatile Memory Based on Monolayer h-BN |journal=Advanced Materials |volume=31 |issue=15 |pages=1806790 |doi=10.1002/adma.201806790 |pmid=30773734 |bibcode=2019AdM....3106790W |s2cid=73505661 }}</ref>。これら原子抵抗器は、成形フリー・スイッチングそして単極性と双極性動作の両方を提供する。スイッチング挙動は、さまざまな導電性電極(金、銀そしてグラフェン)をともなう、単結晶膜や多結晶膜に見られる。原子的に薄いTMDシートは、[[化学気相成長|CVD]]/[[有機金属気相成長法|MOCVD]]によって調製され、低コスト製造を可能にする。その後、低「オン」抵抗と巨大なオン/オフ比を活かして、MoS<sub>2</sub>またはh-BN(六方晶-窒化ホウ素)原子抵抗器に基づく高性能ゼロパワー[[高周波スイッチ|RFスイッチ]]が証明され、[[第5世代移動通信システム|5G]]、[[第6世代移動通信システム|6G]]そして[[テラヘルツ|THz]]通信とおよび(その)接続システム向けといったメモリスタの新たな用途を示唆している<ref>{{Cite journal|last1=Kim|first1=Myungsoo|last2=Ge|first2=Ruijing|last3=Wu|first3=Xiaohan|last4=Lan|first4=Xing|last5=Tice|first5=Jesse|last6=Lee|first6=Jack C.|last7=Akinwande|first7=Deji|date=2018|title=Zero-static power radio-frequency switches based on MoS<sub>2</sub> atomristors|journal=Nature Communications|volume=9|issue=1|pages=2524|doi=10.1038/s41467-018-04934-x|pmid=29955064|pmc=6023925|bibcode=2018NatCo...9.2524K}}</ref><ref>{{Cite journal |date=June 2022 |title=Towards zero-power 6G communication switches using atomic sheets |journal=Nature Electronics |volume=5 |issue=6 |pages=331–332 |doi=10.1038/s41928-022-00767-1 |s2cid=249221166 }}</ref>。2020年に、導電性仮想点メカニズムの原子論的理解は、{{ill2|ネイチャー ナノテクノロジー|en|Nature Nanotechnology|preserve=1|label=nature nanotechnology}}の論文で解明された<ref>{{Cite journal |last1=Hus |first1=Saban M. |last2=Ge |first2=Ruijing |last3=Chen |first3=Po-An |last4=Liang |first4=Liangbo |last5=Donnelly |first5=Gavin E. |last6=Ko |first6=Wonhee |last7=Huang |first7=Fumin |last8=Chiang |first8=Meng-Hsueh |last9=Li |first9=An-Ping |last10=Akinwande |first10=Deji |date=January 2021 |title=Observation of single-defect memristor in an MoS<sub>2</sub> atomic sheet |journal=Nature Nanotechnology |volume=16 |issue=1 |pages=58–62 |doi=10.1038/s41565-020-00789-w |pmid=33169008 |bibcode=2021NatNa..16...58H |s2cid=226285710 |url=https://pure.qub.ac.uk/en/publications/observation-of-singledefect-memristor-in-an-mos2-atomic-sheet(1dd31266-03d2-4ba0-b1b7-71b701f6a9d6).html }}</ref>。

=== 強誘電体メモリスタ ===
[[強誘電体]]メモリスタ<ref>
{{citation
 |last=Chanthbouala |first=A.
 |date=2012
 |title=A ferroelectric memristor
 |journal=[[Nature Materials]]
 |volume=11
 |pages=860–864
 |doi=10.1038/nmat3415
 |pmid=22983431
 |issue=10
 |arxiv=1206.3397
 |bibcode=2012NatMa..11..860C
|s2cid = 10372470|display-authors=etal}}</ref>は、2つの金属電極の間に挟まれた薄い強誘電体バリアに基づく。接合の全域にわたって正または負の電圧を印加することで[[強誘電体]]物質の分極を切り替えることは、2桁台の抵抗値変動をもたらす可能性がある: {{nowrap|R<sub>OFF</sub> ≫ R<sub>ON</sub>}} (この効果は「[[トンネル効果|トンネル]]電気抵抗<!--Tunnel Electro-Resistance-->」と呼ばれる)。一般に、分極は急には切り替わらない。その逆転は、逆の分極を有する強誘電体領域の核形成と成長を通じて徐々に起こる。この過程で、抵抗値はR<sub>ON</sub>でもR<sub>OFF</sub>でもなく、その中間である。電圧を周期的に変えると、強誘電体領域の形態が徐々に発展し、抵抗値の微調整が可能になる。強誘電体メモリスタの主な利点は、メモリスタ応答速度の設計を監督する方法を提供することで強誘電体領域のダイナミクスを調整できるということ、そして抵抗値変動は純粋に電子現象によるものであり、材料構造への大きな改変が伴なわないため、デバイスの信頼性を向上させるということである。

=== カーボン・ナノチューブ・メモリスタ ===
2013年に、Ageev、Blinovら(et al.)<ref name="Rubashkina2013">{{cite journal|last1=Ageev|first1=O. A.|last2=Blinov|first2=Yu F.|last3=Il’in|first3=O. I.|last4=Kolomiitsev|first4=A. S.|last5=Konoplev|first5=B. G.|last6=Rubashkina|first6=M. V.|last7=Smirnov|first7=V. A.|last8=Fedotov|first8=A. A.|title=Memristor effect on bundles of vertically aligned carbon nanotubes tested by scanning tunnel microscopy|journal=Technical Physics|date=11 December 2013|volume=58|issue=12|pages=1831–1836|doi=10.1134/S1063784213120025|bibcode = 2013JTePh..58.1831A |s2cid=53003312}}</ref>は、カーボン・ナノチューブ(CNT)の束を[[走査型トンネル顕微鏡]]で研究している際に、垂直に一列に整列させたCNTに基づく構造物においてメモリスタ効果が観測されることを報告した。

その後、CNTメモリスティブ・スイッチングはナノチューブが不均一な弾性ひずみΔ''L''0を有する場合に観察される<ref>{{cite journal|last1=Il'ina|first1=Marina V.|last2=Il'in|first2=Oleg I.|last3=Blinov|first3=Yuriy F.|last4=Smirnov|first4=Vladimir A.|last5=Kolomiytsev|first5=Alexey S.|last6=Fedotov|first6=Alexander A.|last7=Konoplev|first7=Boris G.|last8=Ageev|first8=Oleg A.|title=Memristive switching mechanism of vertically aligned carbon nanotubes|journal=Carbon|date=October 2017|volume=123|pages=514–524|doi=10.1016/j.carbon.2017.07.090|bibcode=2017Carbo.123..514I }}</ref>ことが発見された。これは、ひずんだСNTのメモリスティブ・スイッチング・メカニズムは不均一な弾性ひずみの形成と続いて起こる再分布、及び外部電界 ''E''(''x'',''t'') の影響下にあるナノチューブにおける圧電界''Edef''に基づくということが示された。

=== 生体分子メモリスタ ===
バイオマテリアルが[[人工神経|人工シナプス]]における利用について評価されており、そして[[ニューロモルフィック・エンジニアリング|ニューロモルフィック・システム]]における応用についてポテンシャルが示されている<ref>{{Cite journal|last1=Park|first1=Youngjun|last2=Kim|first2=Min-Kyu|last3=Lee|first3=Jang-Sik|date=2020-07-16|title=Emerging memory devices for artificial synapses|journal=Journal of Materials Chemistry C|volume=8|issue=27|pages=9163–9183|doi=10.1039/D0TC01500H|s2cid=219912115 }}</ref>。特に、人工シナプス・デバイスとしてのコラーゲンベースのバイオメモリスタを利用することの実現可能性が調査されており<ref>{{Cite journal|last1=Raeis-Hosseini|first1=Niloufar|last2=Park|first2=Youngjun|last3=Lee|first3=Jang-Sik|date=2018|title=Flexible Artificial Synaptic Devices Based on Collagen from Fish Protein with Spike-Timing-Dependent Plasticity|journal=Advanced Functional Materials|volume=28|issue=31|pages=1800553|doi=10.1002/adfm.201800553|s2cid=104277945 }}</ref>、[[リグニン]]に基づくシナプス性デバイスが電圧の符号に依存する連続的な電圧掃引を伴う電流の上昇または下降を実証した一方<ref>{{Cite journal|last1=Park|first1=Youngjun|last2=Lee|first2=Jang-Sik|date=2017-09-26|title=Artificial Synapses with Short- and Long-Term Memory for Spiking Neural Networks Based on Renewable Materials|journal=ACS Nano|volume=11|issue=9|pages=8962–8969|doi=10.1021/acsnano.7b03347|pmid=28837313}}</ref>、さらに天然の絹繊維がメモリスティブ特性を実証した;<ref>{{Cite journal|last1=Hota|first1=Mrinal K.|last2=Bera|first2=Milan K.|last3=Kundu|first3=Banani|last4=Kundu|first4=Subhas C.|last5=Maiti|first5=Chinmay K.|date=2012|title=A Natural Silk Fibroin Protein-Based Transparent Bio-Memristor|journal=Advanced Functional Materials|volume=22|issue=21|pages=4493–4499|doi=10.1002/adfm.201200073|s2cid=137399893 }}</ref> 生体分子に基づくスピンメモリスティブ・システムも研究されている<ref>{{Cite journal|last1=Cardona-Serra|first1=Salvador|last2=Rosaleny|first2=Lorena E.|last3=Giménez-Santamarina|first3=Silvia|last4=Martínez-Gil|first4=Luis|last5=Gaita-Ariño|first5=Alejandro|date=2020-12-16|title=Towards peptide-based tunable multistate memristive materials|journal=Physical Chemistry Chemical Physics|volume=23|issue=3|pages=1802–1810|doi=10.1039/D0CP05236A|pmid=33434247|hdl=10550/79239|s2cid=231595640 |hdl-access=free}}</ref>。

2012年に、{{ill2|サンドロ・カッラーラ|en|Sandro Carrara}}と共著者たちは初めて、高感度バイオセンサーの実現を目指す生体分子メモリスタを提案した<ref>{{cite journal |last1=Milano |first1=G. |last2=Porro |first2=S. |last3=Valov |first3=I. |last4=Ricciardi |first4=C. |title=Recent Developments and Perspectives for Memristive Devices Based on Metal Oxide Nanowires |journal=Advanced Electronic Materials |date=2019 |volume=5 |issue=9 |page=1800909 |doi=10.1002/aelm.201800909 |s2cid=139445142}}</ref>。それ以後、いくつかのメモリスティブ・[[センサ|センサー]]が実証されている<ref>{{cite journal |last1=Carrara |first1=S. |title=The Birth of a New Field: Memristive Sensors. A Review |journal=IEEE Sensors Journal |date=2021 |volume=21 |issue=11 |pages=12370–12378 |doi=10.1109/JSEN.2020.3043305 |bibcode=2021ISenJ..2112370C |s2cid=234542676 |url=https://ieeexplore.ieee.org/document/9286539}}</ref>。

=== スピン・メモリスティブ体系 ===

==== スピントロニクス・メモリスタ ====
ChenとWang、[[ハードディスクドライブ|ディスク-ドライブ]]・メーカー、[[シーゲイト・テクノロジー]]の研究員たちは磁気メモリスタの見込みがある物の3つの例を述べた<ref name="Xiaobin2009">
{{citation
 |last1=Wang |first1=X.
 |last2=Chen |first2=Y.
 |last3=Xi |first3=H.
 |last4=Dimitrov |first4=D.
 |date=2009
 |title=Spintronic Memristor through Spin Torque Induced Magnetization Motion
 |journal=[[IEEE Electron Device Letters]]
 |volume=30 |issue=3 |pages=294–297
 |doi=10.1109/LED.2008.2012270
 |bibcode=2009IEDL...30..294W
|s2cid=39590957
 }}</ref>。あるデバイスにおいて、デバイスのあるセクションにおける電子のスピンが、もう1つのセクションにおけるそれら(電子のスピン)から異なる方向に指し示す時に抵抗は生じ、2つのセクションの間の境界、「領域壁」を作り出す。デバイスに流れ込む電子は一定の(デバイスの磁化状態を変える)スピンを持っている。磁化の変化は (順番に<!--in turn-->) 領域壁を移動させ、抵抗を変化させる。研究の趣旨は、{{ill2|IEEE Spectrum|en|IEEE Spectrum}}によるインタビューにつながった<ref name="Neil2009">{{cite web
 |last1        = Savage
 |first1       = N.
 |date         = 16 March 2009
 |title        = Spintronic Memristor
 |url          = http://www.spectrum.ieee.org/semiconductors/devices/spintronic-memristors
 |work         = IEEE Spectrum
 |access-date   = 2011-03-20
 |archive-url  = https://web.archive.org/web/20101224201054/https://spectrum.ieee.org/semiconductors/devices/spintronic-memristors
 |archive-date = 2010-12-24
 |url-status     = dead
}}</ref>。初の磁気トンネル接合におけるスピン流による領域壁運動に基づく[[スピントロニクス]]・メモリスタの実験的証明が2011年に載った<ref name="Chanthbouala2011">{{cite journal |last1=Chanthbouala |first1=A. |last2=Matsumoto |first2=R. |last3=Grollier |first3=J. |last4=Cros |first4=V. |last5=Anane |first5=A. |last6=Fert |first6=A. |last7=Khvalkovskiy |first7=A. V. |last8=Zvezdin |first8=K. A. |last9=Nishimura |first9=K. |last10=Nagamine |first10=Y. |last11=Maehara |first11=H. |last12=Tsunekawa |first12=K. |last13=Fukushima |first13=A. |last14=Yuasa |first14=S. |title=Vertical-current-induced domain-wall motion in MgO-based magnetic tunnel junctions with low current densities |journal=Nature Physics |date=10 April 2011 |volume=7 |issue=8 |pages=626–630 |doi=10.1038/nphys1968 |arxiv=1102.2106 |bibcode=2011NatPh...7..626C |s2cid=119221544 }}</ref>。

==== 磁気トンネル接合におけるメモリスタンス ====
[[トンネル磁気抵抗効果|磁気トンネル接合]]が、外因性 (酸化還元反応、電荷捕獲/デトラップおよび障壁内でのエレクトロマイグレーション) と内因性 ({{ill2|スピン伝達トルク|en|spin-transfer torque}})の両方の、いくつかの潜在的に相補的なメカニズム等を通じてメモリスタとして機能を果たすことが提案されている。
===== 外部的メカニズム =====
1999年から2003年にかけて実施された調査に基づき、Bowenら(et al.)は、双安定(性)のスピン依存状態<ref name="BowenAPL2006">
{{Cite journal
    | doi = 10.1063/1.2345592
    | volume = 89
    | issue = 10
    | pages = 103517
    | last1 = Bowen | first1 = M.
    | last2 = Maurice| first2 = J.-L.
    | last3 = Barthe´le´my| first3 = A.
    | last4 = Prod’homme| first4 = P.
    | last5 = Jacquet| first5 = E.
    | last6 = Contour| first6 = J.-P.
    | last7 = Imhoff| first7 = D.
    | last8 = Colliex| first8 = C.
    | title = Bias-crafted magnetic tunnel junctions with bistable spin-dependent states
    | journal = Applied Physics Letters
    | date = 2006
    |bibcode = 2006ApPhL..89j3517B }}</ref>([[抵抗変化型メモリ|抵抗スイッチング]])を賦与された[[トンネル磁気抵抗効果|磁気トンネル接合]] (MTJ) について2006年に実験結果を発表した。MTJは、[[ハーフメタリック|ハーフメタリック酸化物]]LSMOと強磁性金属CoCr電極を分離するSrTiO3 (STO) トンネル障壁より成る。MTJの通常の2つの(電極磁化の平行または反平行整列によって特徴づけられた)デバイス抵抗状態は、電界を印加することによって変更される。電界がCoCrからLSMO電極に印加される時、[[トンネル磁気抵抗効果|トンネル磁気抵抗]] (TMR) 比は正である。電界の方向が逆転される時、TMR(比)は負である。両方の場合において、約30%のTMRの巨大な増幅が発見されている。([[トンネル磁気抵抗効果|Julliereモデル]]内では)[[ハーフメタリック]]LSMO電極から完全にスピン偏極した電流が流れるため、この正負変換は効果的なSTO/CoCr界面のスピン偏極における正負変換を暗示する。この多状態効果の起源は、観測されたCrの障壁への移行と、その酸化(作用)の状態次第である。TMRの正負変換は、ランドスケープ(横置き)STO/CoCr界面にてCrOx酸化還元反応によって引き起こされた変遷からトンネリングまでと同様に、状態の修飾からSTO/CoCr界面密度まで生み出すことができる。

MgOベースのMTJ内でMgOベースのメモリスティブ・スイッチングに関する報告が2008<ref name="HalleyAPL2008">
{{Cite journal
| doi = 10.1063/1.2938696
| volume = 92| issue = 21| pages = 212115
| last1 = Halley| first1 = D.
| last2 = Majjad| first2 = H.
| last3 = Bowen| first3 = M.
| last4 = Najjari| first4 = N.
| last5 = Henry| first5 = Y.
| last6 = Ulhaq-Bouillet| first6 = C.
| last7 = Weber| first7 = W.
| last8 = Bertoni| first8 = G.
| last9 = Verbeeck| first9 = J.
| last10 = Van Tendeloo| first10 = G.
| title = Electrical switching in Fe/Cr/MgO/Fe magnetic tunnel junctions
| journal = Applied Physics Letters
| date = 2008
|bibcode = 2008ApPhL..92u2115H }}</ref>～09年<ref name="krzysteczko2009apl">
{{citation
 |last1=Krzysteczko |first1=P.
 |last2=Günter |first2=R.
 |last3=Thomas |first3=A.
 |date=2009
 |journal=[[Applied Physics Letters]]
 |title=Memristive switching of MgO based magnetic tunnel junctions
 |volume=95
 |issue=11 |page=112508
 |doi=10.1063/1.3224193
 |bibcode=2009ApPhL..95k2508K
 |arxiv=0907.3684
|citeseerx=10.1.1.313.2571
 |s2cid=15383692
 }}</ref>頃から出現した。観測されたメモリスティブ効果を説明するために絶縁MgO層内の酸素空孔のドリフトが提案された一方<ref name="krzysteczko2009apl" />、別の説明は酸素空孔の<ref name="BertinJAP2011">
{{citation
| volume = 109| issue = 8| pages = 013712–013712–5
| last1 = Bertin| first1 = Eric
| last2 = Halley| first2 = David
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| last7 = DaCosta| first7 = Victor
| last8 = Arabski| first8 = Jacek
| last9 = Doudin| first9 = Bernard
| title = Random barrier double-well model for resistive switching in tunnel barriers
| journal = Journal of Applied Physics| access-date = 2014-12-15
| date = 2011| url = http://scitation.aip.org/content/aip/journal/jap/109/8/10.1063/1.3561497
|bibcode = 2011JAP...109a3712D |doi = 10.1063/1.3530610 }}</ref>局所的な状態における電荷捕獲/デトラップと、スピントロニクスにおける<ref name="schleicherNC2014">
 {{citation
 | doi = 10.1038/ncomms5547
 | volume = 5
 | last1 = Schleicher| first1 = F.
 | last2 = Halisdemir| first2 = U.
 | last3 = Lacour| first3 = D.
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 | title = Localized states in advanced dielectrics from the vantage of spin- and symmetry-polarized tunnelling across MgO
 | journal = Nature Communications| date = 2014-08-04|bibcode = 2014NatCo...5.4547S | pmid=25088937 | page=4547| doi-access = free}}</ref>その影響である可能性が提案された。これはデバイスの(強誘電性<ref name="garciaS2010">
  {{citation
  | doi = 10.1126/science.1184028
  | pmid = 20075211
  | volume = 327| issue = 5969| pages = 1106–1110
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  | title = Ferroelectric Control of Spin Polarization| journal = Science| date = 2010-02-26|bibcode = 2010Sci...327.1106G | s2cid = 206524358
 | doi-access = free}}</ref>あるいは{{ill2|マルチフェロイック性|en|multiferroicity}}<ref name="pantelAM2012">
  {{citation
  | doi = 10.1038/nmat3254| volume = 11| issue = 4| pages = 289–293
  | last1 = Pantel| first1 = D.
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  | title = Reversible electrical switching of spin polarization in multiferroic tunnel junctions
  | journal = Nature Materials| date = 2012-02-26|bibcode = 2012NatMa..11..289P | pmid=22367005}}</ref>のような固有の特性を備えた複合酸化物類を活用する)メモリスティブ動作において酸素空孔が、どういう役割を果たすのか理解することの重要性を強調する。

===== 本質的メカニズム =====
MTJの磁化状態は{{ill2|スピン伝達トルク|en|Spin-transfer torque}}によって制御され(そして従って)この固有の物理的メカニズムを通して、メモリスティブな振る舞いを示しうる。このスピン・トルクは接合の中を流れる電流によって誘発され、そして[[磁気抵抗メモリ|MRAM]]を達成する効率的な手段につながる。しかしながら、接合の中を流れる電流の時間の長さは必要とされる電流の量を決定する、すなわち換言すれば、電荷が基本変数である<ref>
{{citation
 |last        = Huai
 |first       = Y.
 |title       = Spin-Transfer Torque MRAM (STT-MRAM): Challenges and Prospects
 |url         = http://www.cospa.ntu.edu.tw/aappsbulletin/data/18-6/33spin.pdf
 |journal     = AAPPS Bulletin|date=December 2008|volume=18|issue=6 |pages=33–40
 |url-status     = dead
 |archive-url  = https://web.archive.org/web/20120323215048/http://www.cospa.ntu.edu.tw/aappsbulletin/data/18-6/33spin.pdf
 |archive-date = 2012-03-23
}}</ref>。

本質的 (スピン伝達トルク) および外部的 (抵抗スイッチング) メカニズムの組み合わせは自然に状態ベクトル'''x'''&nbsp;=&nbsp;(''x''<sub>1</sub>,''x''<sub>2</sub> (ここで''x''<sub>1</sub>は電極の磁性状態を述べ、''x''<sub>2</sub>はMgO障壁の抵抗状態を示す))によって述べられる2次のメモリスティブ体系につながる。この場合、''x''<sub>1</sub>の変化は (スピン・トルクは高電流密度に起因するため) 電流制御型である一方、''x''<sub>2</sub>の変化は (酸素空孔のドリフトは高電界に起因するため) 電圧制御型である。メモリスティブ磁気トンネル接合における両方の効果の現存はナノスケール・シナプス-ニューロン・システムの着想につながった<ref name="krzysteczko2012advmat">
{{citation
 |last1=Krzysteczko |first1=P.
 |last2=Münchenberger |first2=J.
 |last3=Schäfers |first3=M.
 |last4=Reiss |first4=G.
 |last5=Thomas |first5=A.
 |date=2012
 |journal=[[Advanced Materials]]
 |title=The Memristive Magnetic Tunnel Junction as a Nanoscopic Synapse-Neuron System
 |volume=24
 |issue=6 |pages=762–766
 |doi=10.1002/adma.201103723|pmid=22223304
 |bibcode=2012APS..MAR.H5013T
 |s2cid=205242867
 }}</ref>。

==== スピン・メモリスティブ体系 ====
メモリスティブな振る舞いについて根本的に異なるメカニズムがPershinと{{Ill2|マッシミリアーノ・ディ・ヴェントラ|en|Massimiliano Di Ventra|label=Di Ventra}}によって提案された<ref>{{cite web|url=http://physics.ucsd.edu/~diventra/|title=Massimiliano Di Ventra's Homepage|website=physics.ucsd.edu}}</ref><ref name="Pershin2008">
{{citation
 |last1=Pershin |first1=Y. V.
 |last2=Di Ventra |first2=M.
 |date=2008
 |title=Spin memristive systems: Spin memory effects in semiconductor spintronics
 |journal=[[Physical Review B]]
 |volume=78
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 |doi=10.1103/PhysRevB.78.113309
|bibcode=2008PhRvB..78k3309P |arxiv=0806.2151 |s2cid=10938532
 |url=https://scholarcommons.sc.edu/phys_facpub/24
 }}</ref>。著者らは{{仮リンク|蔡少棠|en|Leon_O._Chua|preserve=1|label=蔡}}と{{ill2|姜城模|en|Sung-Mo Kang|ko|강성모 (공학자)|label=姜|preserve=1}}によって定義されたようなメモリスティブ体系の幅広いクラスに属する半導体スピントロニクス構造の特定の種類を証明している<ref name="chua76"/>。そのような構造におけるメモリスティブな振る舞いのメカニズムは(ナノ構造におけるイオン輸送よりも(むしろ)、より便利なコントロールを与える)電子スピン自由度に完全に基づく。(電圧などの) 外部制御パラメーターが変更される時に、電子スピン偏極の調整はヒステリシスに起因する拡散(過程)と緩和過程のために遅らされる。この結果は半導体/強磁性体境界面におけるスピン抽出の研究において予期されたが<ref>
{{citation
 |last1=Pershin |first1=Y. V.
 |last2=Di Ventra |first2=M.
 |date=2008
 |title=Current-voltage characteristics of semiconductor/ferromagnet junctions in the spin-blockade regime
 |journal=[[Physical Review B]]
 |volume=77
 |issue=7 |page=073301
 |doi=10.1103/PhysRevB.77.073301
|bibcode=2008PhRvB..77g3301P |arxiv=0707.4475 |s2cid=119604218
 }}</ref>、しかしメモリスティブな振る舞いの見地からは述べられていない。短いタイムスケール上、これらの構造は、ほぼ理想的なメモリスタとして振る舞う<ref name="chua71"/>。この結果は半導体スピントロニクスの応用可能範囲を広げ、そして未来の実用的な応用に一歩前進させる。

=== 自律志向型チャネル・メモリスタ ===
2017年に、Kris Campbellは正式に自律志向型チャネル (SDC: '''S'''elf-'''D'''irected '''C'''hannel) メモリスタを発表した<ref>
{{Citation
 |last=Campbell |first=K.
 |date= January 2017
 |title=Self-directed channel memristor for high temperature operation
 |journal=Microelectronics Journal
 |volume=59
 |pages=10–14
 |doi=10.1016/j.mejo.2016.11.006
|arxiv=1608.05357
 |s2cid=27889124
 }}
</ref>。SDCデバイスは世界中の研究者、学生そしてエレクトロニクス愛好家にとって商業的に利用可能な最初のメモリスティブ・デバイスである<ref>
{{Citation
 |title=Knowm Memristors
 |url=http://knowm.org/product/bs-af-w-memristors/
 |publisher=[[Knowm Inc]]
}}</ref>。SDCデバイスは製造後、即座に使用可能である。Ge<sub>2</sub>Se<sub>3</sub>活性層にて、Ge-Ge等極結合などが発見され、およびスイッチングを引き起こす。3つの層は上部タングステン電極の直下に、堆積中に一緒に混ぜ合わさり共同で銀-[[電界効果トランジスタ#端子|ソース]]層を形成する、Ge<sub>2</sub>Se<sub>3</sub>/Ag/Ge<sub>2</sub>Se<sub>3</sub>からなる。SnSe層はこれら2つの層の間にあり、銀-ソース層が活性層と直接接触しないことを保証する。高温では銀は活性層には移行せず、(と同時に)また活性層は約{{convert|350|C|F}}の高いガラス遷移温度を維持するため、デバイスは著しくより高い(加工)処理温度および動作温度を、それぞれ{{convert|250|C|F}}および少なくとも{{convert|150|C|F}}を持つ。これら処理および動作温度はフォトドープまたは熱的にアニールされる必要がある[[硫黄|S]]-ベースのガラス類 (例えばGeS) を含む、ほとんどのイオン伝導性カルコゲン化物デバイスのタイプよりも高い。これらの要因はSDCデバイスに{{convert|150|C|F}}での長時間連続動作を含む、広範囲の温度にわたる動作を可能にする。

== ヒステリック(ヒステリシス的な)磁束-電荷メモリスタの実装 ==
ヒステリック電流-電圧曲線とヒステリック磁束-電荷曲線の両方を伴ったメモリスタの実装が存在する[arXiv:2403.20051]。ヒステリック電流-電圧曲線とヒステリック磁束-電荷曲線の両方を伴ったメモリスタは磁束と電荷の履歴に依存するメモリスタンスを利用する。それらのメモリスタはデータ転送なしに算術論理ユニットおよびメモリ・ユニットの機能性を融合できる[DOI: 10.1002/adfm.201303365]。 

=== 時間積分化・成形フリー・メモリスタ ===
時間積分化・成形フリー (TiF: '''T'''ime-'''i'''ntegrated '''F'''ormingfree) メモリスタは(正および負のバイアス範囲における2つの区別可能な分岐を伴う)ヒステリック磁束-電荷曲線を明らかにする。そしてTiFメモリスタもまた(正および負のバイアス範囲における2つの区別可能な分岐を伴う)ヒステリック電流-電圧曲線を明らかにする。TiFメモリスタのメモリスタンス状態は磁束と電荷の両方によって制御されうる[DOI: 10.1063/1.4775718]。TiFメモリスタは初めて2011年に[[ハイデマリー・シュミット]]と彼女のチームによって実証された[DOI: 10.1063/1.3601113]。このTiFメモリスタは、金属性伝導電極(一方は(純)金、他方は白金)の間のBiFeO<sub>3</sub>薄膜から構成される。TiFメモリスタのヒステリック磁束-電荷曲線は(正および負のバイアス範囲における一方の分岐(書き込み分岐)において)その勾配を連続的に変化させ、およびならびに(正および負のバイアス範囲における一方の分岐(読み込み分岐)において)定数勾配を持つ[arXiv:2403.20051]。蔡少棠によると[Reference 1: ''10.1.1.189.3614'']磁束-電荷曲線の勾配はメモリスタのメモリスタンスまたはその内部状態変数に対応する。TiFメモリスタは2つの読み込み分岐において定数メモリスタンスを伴う、およびならびに2つの書き込み分岐において再構成可能メモリスタンスを伴うメモリスタとして考えられる。TiFメモリスタのヒステリック電流-電圧曲線を述べる物理的メモリスタ・モデルは2つの読み込みおよびならびに2つの書き込み分岐における静的と動的内部状態変数を実装する[arXiv:2402.10358]。

非線形メモリスタの静的および動的内部状態変数は線形、非線形、そして超越さえ(例えば指数または対数)入力-出力関数を表す非線形メモリスタにおける動作を実装するために使用されうる。

微小電流 – 微小電圧範囲におけるTiFメモリスタの輸送特性は非線形である。この非線形性は基本的な以前および現在のフォン-ノイマン(型)コンピュータの算術論理ユニットにおけるビルディングブロックの、すなわち換言すれば、真空管およびトランジスタの微小電流 – 微小電圧範囲における非線形特性とよく似ている。真空管およびトランジスタとは対照的に、ヒステリック磁束-電荷メモリスタ(すなわち換言すれば、TiFメモリスタ)の信号出力は(信号出力をメモリに格納する前に動作電力を消される時に)失われない。従って、ヒステリック磁束-電荷メモリスタはデータ転送なしで算術論理ユニットおよびメモリ・ユニットの機能性を融合すると言われる[DOI: 10.1002/adfm.201303365]。ヒステリック電流-電圧メモリスタの微小電流 – 微小電圧範囲における輸送特性は線形である。これは「なぜヒステリック電流-電圧メモリスタはメモリ・ユニットをよく設立されるのか」および「なぜそれらはデータ転送なしで算術論理ユニットおよびメモリ・ユニットの機能性を融合できないのか」を説明する[arXiv:2403.20051]。

== 潜在的な用途 ==
メモリスタは相変わらず研究室の珍品であるが、(将来はともかく)今までのところでは、いかなる商業用途をも得るには不十分な数しか製造されなかった。この大量利用可能性の欠如にもかかわらず、Allied Market Researchによれば、メモリスタ市場は2015年に320万ドルの価値であった、そして当時は2022年までに7900万ドルの価値になると予測されていた<ref>{{cite web|url=http://finance.yahoo.com/news/memristor-market-expected-reach-79-161500403.html|title=Memristor Market Expected to Reach $79.0 Million by 2020, Globally - Allied Market Research|access-date=2017-02-25|archive-url=https://web.archive.org/web/20170226050430/http://finance.yahoo.com/news/memristor-market-expected-reach-79-161500403.html|archive-date=2017-02-26|url-status=dead}}</ref>。事実、2022年には1億9000万ドルの価値であった<ref>{{cite web|url=https://finance.yahoo.com/news/groundbreaking-memristor-technology-set-disrupt-124300759.html#:~:text=The%20global%20memristor%20market%20is,period%20from%202023%20to%202028 | title=Groundbreaking Memristor Technology Set to Disrupt Electronics Industry, Fueling a Projected $2.6 Billion Market Growth by 2028 | date=27 September 2023 }}</ref>。

メモリスタの潜在的な用途には超伝導量子コンピュータ用アナログ・メモリが入っている<ref name="peottaDiVentra2014"/>。

メモリスタは潜在的に([[Dynamic Random Access Memory|DRAM]]に似たアクセス時間とともにハードドライブよりも大きいデータ密度を可能にし、両方のコンポーネントを置き換える)[[不揮発性メモリ|不揮発性ソリッド-ステート・メモリ]]に仕立て上げられ得る<ref name="Kanellos" />。HPは平方センチメートルあたり100[[ギガビット]]を収容可能なクロスバー・ラッチ・メモリを試作した<ref name="EETimes">{{Citation |last=Johnson |first=R. C. |date=30 April 2008 |title='Missing link' memristor created |url=http://www.eetimes.com/electronics-news/4076910/-Missing-link-memristor-created-Rewrite-the-textbooks- |work=[[EE Times]] |access-date=2008-04-30 }}</ref>、そして(最大1000層または1[[ペタビット]]/cm<sup>3</sup>からなる)スケーラブル3Dデザインを提案した<ref>
{{Citation|date=January 22, 2010
|url=https://www.youtube.com/watch?v=bKGhvKyjgLY&t=37m45s
 |title=Finding the Missing Memristor - R. Stanley Williams|work=Youtube}}</ref>。2008年5月にHPは、そのデバイスが現在のところDRAMの約10分の1の速度に到達していることを報告した<ref>
{{Citation
 |last=Markoff |first=J.
 |date=1 May 2008
 |title=H.P. Reports Big Advance in Memory Chip Design
 |url=https://www.nytimes.com/2008/05/01/technology/01chip.html
 |work=[[New York Times]]
 |access-date=2008-05-01
}}</ref>。そのデバイスの抵抗は、格納された値に影響を及ぼさないようにするために、[[交流]]で読み出される<ref>
{{Citation
 |last=Gutmann |first=E.
 |date=1 May 2008
 |title=Maintaining Moore's law with new memristor circuits
 |url=https://arstechnica.com/old/content/2008/05/maintaining-moores-law-with-new-memristor-circuits.ars
 |work=[[Ars Technica]]
 |access-date=2008-05-01
}}</ref>。2012年5月に、そのアクセス時間が(同時代のフラッシュメモリよりも100倍近く速い)90ナノ秒に改善されたことが報告された。と同時にエネルギー消費(量)はフラッシュメモリによって消費される「それ」のたった1パーセントであった<ref>{{Citation
 |last=Palmer |first=J.
 |date=18 May 2012
 |title=Memristors in silicon promising for dense, fast memory
 |url=https://www.bbc.co.uk/news/science-environment-18103772
 |newspaper=[[BBC News]]
 |access-date=2012-05-18
}}</ref>。

メモリスタは、[[プログラマブルロジックデバイス|プログラマブル・ロジック]]<ref>Snider, Gregory Stuart (2004) "Architecture and methods for computing with reconfigurable resistor crossbars" {{US patent|7203789}}</ref>・[[信号処理]]<ref>Mouttet, Blaise Laurent (2006) "Programmable crossbar signal processor" {{US Patent|7302513}}</ref>、[[超解像技術|超解像イメージング]]<ref>{{cite journal |last1=Dong |first1=Zhekang |last2=Sing Lai |first2=Chun |last3=He |first3=Yufei |last4=Qi |first4=Donglian |last5=Duan |first5=Shukai |title=Hybrid dual-complementary metal–oxide–semiconductor/memristor synapse-based neural network with its applications in image super-resolution |journal=IET Circuits, Devices & Systems |date=1 November 2019 |volume=13 |issue=8 |pages=1241–1248 |doi=10.1049/iet-cds.2018.5062|doi-access=free }}</ref>・{{ill2|物理ニューラルネットワーク|en|physical neural network}}<ref>Snider, Greg (2003) "Molecular-junction-nanowire-crossbar-based neural network" {{US patent|7359888}}</ref>、[[制御理論|制御システム]]<ref>Mouttet, Blaise Laurent  (2007) "Crossbar control circuit" {{US Patent|7609086}}</ref>、[[再構成可能コンピューティング]]<ref>Pino, Robinson E. (2010) "Reconfigurable electronic circuit" {{US Patent|7902857}}</ref>、{{ill2|イン-メモリ・コンピューティング|en|in-memory computing}}<ref>{{cite journal |last1=Ielmini |first1=D |last2=Wong |first2=H.-S. P. |title=In-memory computing with resistive switching devices |journal=Nature Electronics |date=2018 |volume=1 |issue=6 |pages=333–343 |doi=10.1038/s41928-018-0092-2 |hdl=11311/1056513 |s2cid=57248729 |hdl-access=free }}</ref>、[[ブレイン・マシン・インタフェース|ブレイン=コンピュータ・インタフェース]]<ref>Mouttet, Blaise Laurent (2009) "Memristor crossbar neural interface" {{US Patent|7902867}}</ref>そして[[RFID]]<ref>Kang, Hee Bok (2009) "RFID device with memory unit having memristor characteristics" {{US Patent|8113437}}</ref>に用途がある。メモリスティブ・デバイスは潜在的に、CMOS-ベースの論理演算<!--computation-->の置換を可能にする、ステートフル論理推論<!--implication-->に使用され<ref>{{cite journal |last1=Luo |first1=Li |last2=Dong |first2=Zhekang |last3=Duan |first3=Shukai |last4=Lai |first4=Chun Sing |title=Memristor-based stateful logic gates for multi-functional logic circuit |journal=IET Circuits, Devices & Systems |date=20 April 2020 |volume=14 |issue=6 |pages=811–818 |doi=10.1049/iet-cds.2019.0422|doi-access=free }}</ref>(、)いくつかの初期の研究などは、この方向性で報告されている<ref>{{cite journal |last1=Lehtonen |first1=E. |last2=Poikonen |first2=J.H. |last3=Laiho |first3=M. |title=Two memristors suffice to compute all Boolean functions |journal=Electronics Letters |date=2010 |volume=46 |issue=3 |pages=230 |doi=10.1049/el.2010.3407 |bibcode=2010ElL....46..230L }}</ref><ref>
{{cite book
 |last1=Chattopadhyay |first1=A.
 |last2=Rakosi |first2=Z.
 |date=2011
 |doi=10.1109/VLSISoC.2011.6081665
 |isbn=978-1-4577-0170-2
 |pages=200
|chapter=Combinational logic synthesis for material implication
 |title=2011 IEEE/IFIP 19th International Conference on VLSI and System-on-Chip
 |s2cid=32278896
 }}</ref>。

2009年に、[[LC回路|LC]]ネットワークとメモリスタからなるシンプルな電子回路<ref>
{{citation
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 |title=Memristive model of amoeba learning
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 |volume=80 |issue=2 |page=021926
 |doi=10.1103/PhysRevE.80.021926
 |pmid=19792170
 |bibcode=2009PhRvE..80b1926P
 |arxiv=0810.4179
|s2cid=9820970
 }}</ref>は、単細胞(微)生物の適応行動についての実験をモデル化するために使用された<ref name="amoebaexp">
{{citation
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 |last3=Nakagaki |first3=T.
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 |journal=[[Physical Review Letters]]
 |volume=100 |issue=1 |page=018101
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 |url=https://lib-repos.fun.ac.jp/dspace/bitstream/10445/4400/2/Final20071109.pdf
 |hdl-access=free
 }}</ref>。周期的パルスの訓練の対象となった、(細胞質におけるチャネルの粘稠度が周期的環境変化に呼応する、変形菌''[[モジホコリ]]''の振る舞いに似た)この回路は学習し、次に来るパルスを予期するということが証明された<ref name="amoebaexp"/>。そのような回路の応用には(例えば)[[パターン認識]]を含むかもしれない。[[DARPA]]の[[SyNAPSE]]プロジェクトは([[ボストン大学]]ニューロモルフィックス研とのコラボレーションで)HP研に資金を提供したことは、メモリスティブ体系に基づいているかもしれないニューロモルフィック・アーキテクチャを開発してきている。2010年に、{{ill2|マッシミリアーノ・ヴェルサーチ|en|Massimiliano Versace|label=Versace}}とChandlerは、MoNETA (Modular Neural Exploring Traveling Agent) モデルを述べた<ref>
{{cite web
 |last1=Versace |first1=M.
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 |date=23 November 2010
 |title=MoNETA: A Mind Made from Memristors
 |url=https://spectrum.ieee.org/robotics/artificial-intelligence/moneta-a-mind-made-from-memristors/0
 |work=[[IEEE Spectrum]]
}}<br />{{cite journal
 |last1=Versace |first1=M.
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 |issue=12
|s2cid=45300119
 }}</ref>。MoNETAは仮想(エージェント)およびロボットエージェントを強化するためにメモリスティブ・ ハードウェアを使用して全脳回路を実装する最初の大規模ニューラルネットワークモデルである<ref>{{Citation
 |last=Snider  |first=G.
 |date=2011
 |title=From Synapses to Circuitry: Using Memristive Memory to Explore the Electronic Brain
 |journal=[[IEEE Computer]]
 |volume=44 |issue=2 |pages=21–28
 |doi=10.1109/MC.2011.48
|s2cid = 16307308|display-authors=etal}}</ref>。アナログ・ソフト・コンピューティング・システムの構築におけるメモリスタ・クロスバー構造の応用はMerrikh-BayatとShourakiによって実証された<ref>
{{Citation
 |last1=Merrikh-Bayat |first1=F.
 |last2=Bagheri-Shouraki |first2=S.
 |last3=Rohani |first3=A.
 |date=2011
 |title=Memristor crossbar-based hardware implementation of IDS method
 |journal=[[IEEE Transactions on Fuzzy Systems]]
 |doi=10.1109/TFUZZ.2011.2160024
 |volume=19 |issue=6 |pages=1083–1096
|arxiv=1008.5133|s2cid=3163846
 }}</ref>。2011年に、ファジー入出力端子を伴うアナログ・メモリスティブ・{{ill2|ニューロ-ファジー|en|neuro-fuzzy}}・コンピューティング・システムを作成するために、どうメモリスタ・クロスバーを[[ファジィ論理|ファジー論理]]と組み合わされ得るのか、彼らは証明した<ref>
{{cite arXiv
 |last1=Merrikh-Bayat |first1=F.
 |last2=Bagheri-Shouraki |first2=S.
 |date=2011
 |title=Efficient neuro-fuzzy system and its Memristor Crossbar-based Hardware Implementation
 |eprint=1103.1156
 |class=cs.AI
}}</ref>。学習は[[ヘッブの法則|ヘビアン学習則]]からインスピレーションを受けたファジー関係の作成に基づく。

2013年に蔡少棠はメモリスタが及ぼす広範囲にわたる複雑な現象と応用そして、どう「それらを不揮発性アナログ・メモリとして使えるか」及び「古典的な[[馴化]](現象)及び学習現象の模倣ができるのか」をはっきり示すチュートリアルを公開した<ref>
{{cite journal
 |last=Chua |first=L.
 |date=2013
 |title=Memristor, Hodgkin-Huxley, and Edge of Chaos
 |journal=[[Nanotechnology (journal)|Nanotechnology]]
 |volume=24 |issue=38 |pages=383001
 |bibcode=2013Nanot..24L3001C
 |doi=10.1088/0957-4484/24/38/383001
|pmid=23999613
 |s2cid=34999101
 }}</ref>。

== 派生デバイス ==
=== メミスターとメモトランジスタ ===
{{ill2|メミスター|en|memistor}}と{{ill2|メモトランジスタ|en|memtransistor}}はメモリスタ機能を含むトランジスタ-ベース・デバイスである。
=== メモキャパシタとメミンダクタ ===
2009年に、{{Ill2|マッシミリアーノ・ディ・ヴェントラ|en|Massimiliano Di Ventra|label=Di Ventra}}、Pershin、そして蔡は、メモリスティブ体系についての概念を(特性がシステムの状態と履歴に依存する)メモキャパシタとメミンダクタという形で容量性素子と誘導性素子に拡張し<ref name="DiVentra2009">
{{citation
 |last1=Di Ventra |first1=M.
 |last2=Pershin |first2=Y. V.
 |last3=Chua |first3=L.
 |title=Circuit elements with memory: memristors, memcapacitors and meminductors
 |journal=[[Proceedings of the IEEE]]
 |volume=97 |issue=10 |pages=1717–1724
 |date=2009
 |arxiv=0901.3682
 |doi=10.1109/JPROC.2009.2021077
|bibcode=2009arXiv0901.3682D
 |s2cid=7136764
 }}</ref>、Di VentraとPershinによって2013年にさらに拡張された<ref name="DiVentra_2013" />。
=== メモフラクタンスとメモフラクタ、2次と3次のメモリスタ、メモキャパシタとメミンダクタ ===
2014年9月に、Mohamed-Salah Abdelouahab、Rene Lozi、そして[[蔡少棠]]は、[[分数階微積分学|分数階微分]]を使った1-、2-、3-、及びn-次メモリスティブ素子の一般理論を発表した<ref>
{{Citation
 |last1=Abdelhouahad |first1=M.-S.
 |last2=Lozi |first2=R.
 |last3=Chua |first3=L.
 |title=Memfractance: A Mathematical Paradigm for Circuit Elements with Memory
 |journal=[[International Journal of Bifurcation and Chaos]]
 |volume=24 |issue=9 |pages=1430023 (29 pages)
 |doi=10.1142/S0218127414300237
 |date=September 2014
|bibcode = 2014IJBC...2430023A |url=https://hal.archives-ouvertes.fr/hal-01322396/file/Lozi_Memfractance_IJBC_2014_personnal_file_for_HAL.pdf
 }}</ref>。

== 歴史 ==
メモリスタの存在は1971年に{{仮リンク|蔡少棠|en|Leon_O._Chua|preserve=1|label=}}の論文で指摘されていたが、対応する物理現象が発見されず、メモリスタは長い間実現されることはなかった。しかし、2008年に米{{仮リンク|ヒューレット・パッカード研究所|en|HP Labs|preserve=1|label=ヒューレット・パッカード(HP)研究所}}により[[酸化チタン(IV)|二酸化チタン]]の薄膜を用いたメモリスタが開発され、第4の回路素子として注目を集めることとなった。

記憶素子としては[[フラッシュメモリ]]より高速・低消費電力であり<ref name="rbbtoday">{{Cite web|和書 |url=https://www.rbbtoday.com/article/2010/04/09/66995.html |title=HPが新発見――「memristor」で演算機能とメモリ機能を統合 2010年4月9日 |publisher=RBB TODAY |accessdate=2014-11-19}}</ref>、[[DRAM]]より安価で省電力であるという性質を持っていると言われ、両方を置き換える可能性がある。面積あたりの記憶容量もフラッシュメモリと比べて2倍にでき、また[[放射線]]による影響も受けないというメリットがある<ref name="rbbtoday" />。

2010年4月には、メモリスタが[[論理演算]]装置としても使用できることを確認したとHPが発表。演算装置と記憶素子を単一のデバイスに統合できるため、より小型でエネルギー効率の良いデバイスを開発できる可能性が示された<ref name="rbbtoday" />。

HPは2020年までの完全な形での商品化を目指している。
===少史===
====先達====
[[ハンフリー・デービー|サー・ハンフリー・デービー]]が1808年という昔にメモリスタ効果によって説明されうる最初の実験を実施したと一部の人に言われている<ref name="Memristor200yearsold" /><ref>
{{Citation
 |last1=Prodromakis |first1=T.
 |last2=Toumazou |first2=C.
 |last3=Chua |first3=L.
 |title=Two centuries of memristors
 |journal=[[Nature Materials]]
 |volume=11 |issue=6 |pages=478–481
 |doi=10.1038/nmat3338
 |pmid=22614504
 |date=June 2012
 |bibcode=2012NatMa..11..478P
}}</ref>。しかしながら関連した性質を持って構築された最初のデバイスは({{ill2|ADALINE|en|ADALINE}}と呼ばれる早期の人工ニューラルネットワークの回路素子を述るために[[バーナード・ウィドロー]]によって1960年に作られた造語)[[メミスター]](すなわち換言すれば、メモリ抵抗器)であった。数年後(1968年に)ArgallがTiO<sub>2</sub>の抵抗スイッチング効果を証明する論文(後にメモリスタの証拠があるとヒューレットパッカード出身の研究者らによって主張されたものでもある)を公開した<ref name="Argall1968"/>{{citation needed|date=January 2020|reason=HPによる2008年の主張は引用が必要}}。
====理論的説明====
[[蔡少棠]]は1971年に彼の新しい2端子回路素子を仮定した<!--postulated-->。第4の基礎的な回路素子として、それは電荷と磁束鎖交との間の関係によって特徴づけられた<ref name="chua71"/>。5年後、彼と彼の生徒「姜城模」は[[リサジュー図形|リサジュー曲線]]において電流{{snd}}対{{snd}}電圧の振る舞いを特徴づけるメモリスタの理論と(ゼロ交差の性質を含む)メモリスティブ体系を一般化した<ref name="chua76"/>。
====21世紀====
2008年5月1日に、Strukov、Snider、Stewart、そしてWilliamsは''Nature'' 誌にて、ナノスケール・システムとメモリスタで見つけた2端子抵抗スイッチングの振る舞いの間のつながりを特定したとする論文を公開した<ref name="Williams08"/>。

2009年1月23日に、[[Di Ventra]]、Pershin、そして蔡は、(特性がシステムの状態と履歴に依存する)容量性素子と誘導性素子(すなわち[[コンデンサ|キャパシタ]]と[[インダクタ]])にメモリスティブ体系についての概念を拡張した<ref name="DiVentra2009"/>。

2014年7月に、({{ill2|アルゼンチン国立サン・マルティン総合大学|en|Universidad Nacional de General San Martín}}、{{ill2|INTI|en|INTI}}、{{ill2|CNEA|en|CNEA}}、そして{{ill2|CONICET|en|CONICET}}出身の研究者から成る)MeMOSat/LabOSatグループ<ref name="labosat1">
{{citation |last=Barella |first=M. |date=2016 |chapter=LabOSat: Low cost measurement platform designed for hazardous environments |doi=10.1109/SASE-CASE.2016.7968107|title=2016 Seventh Argentine Conference on Embedded Systems (CASE) |pages=1–6 |isbn=978-987-46297-0-8 |s2cid=10263318 }}
</ref>は、メモリ・デバイスを[[低軌道]]に投入した<ref>{{Cite news
 |title= Probaron con éxito las memorias instaladas en el satélite argentino "Tita"
 |url= http://www.telam.com.ar/notas/201407/71782-satelite-argentino-tita-inti-comision-nacional-de-energia-atomica-memorias-prueba.html
 |work= [[Telam]] |date=21 July 2014
}}</ref>。それ以来、異なるデバイスで7回のミッション<ref name="labosat2">
{{citation |last=Barella |first=M. |date=2019 |title=Studying ReRAM devices at Low Earth Orbits using the LabOSat platform|journal=[[Radiation Physics and Chemistry]] |volume=154 |pages=85–90 |doi=10.1016/j.radphyschem.2018.07.005 |bibcode=2019RaPC..154...85B |doi-access=free }}
</ref>を、{{ill2|Satellogic|en|Satellogic}}のÑu-Sat低軌道衛星のオンボード(機内)で、実験を行っている<ref>{{Cite web|url=http://www.unsam.edu.ar/escuelas/ciencia/labosat/|title=UNSAM - Universidad Nacional de San Martín|website=www.unsam.edu.ar}}</ref><ref>{{Cite news
 |title= Qué hace LabOSat, el laboratorio electrónico dentro de los nanosatélites Fresco y Batata
 |url= https://www.lanacion.com.ar/tecnologia/que-hace-labosat-el-laboratorio-electronico-dentro-de-los-nanosatelites-fresco-y-batata-nid1911090
 |work= [[Telam]] |date=22 June 2016
}}</ref>{{clarify|date=January 2020|reason=これらのデバイスとメモリスタとの関係は何ですか?}}。

2015年7月7日に、Knowm Incは、自律志向型チャネル (SDC: Self-Directed Channel) メモリスタの商業化を発表した<ref>
{{Cite news
 |title= Startup Beats HP, Hynix to Memristor Learning
 |url= http://www.eetimes.com/document.asp?doc_id=1327068
 |work= [[EE Times]] |date=5 July 2015
}}</ref>。これらのデバイスは、相変わらず少量生産に留まっている。

2018年7月13日に、メモリスタ評価[[ペイロード (航空宇宙)|ペイロード]]を飛ばすためにMemSat ('''Mem'''ristor '''Sat'''ellite: メモリスタ衛星) が打ち上げられた<ref>{{Cite news
 |title= MemSat
 |url= http://space.skyrocket.de/doc_sdat/memsat.htm
 |work= Gunter Space Page |date=22 May 2018
}}</ref>。

{{anchors|Lithionics}}2021年に、[[MIT]]の{{ill2|ジェニファー・ルップ|en|Jennifer Rupp}}とMartin Bazantは、[[ニューロモルフィック・エンジニアリング|ニューロモルフィック・コンピューティング]]における[[酸化リチウム]]-ベース・メモリスタを含む、[[電極|バッテリー電極]]におけるそれらの使用を越えた[[リチウム]]の応用を調査するために「リチオニクス(Lithionics)」研究プログラムを始めた<ref>{{Cite web|url=https://eepower.com/news/mit-and-ericsson-collaborates-to-research-new-generation-of-energy-efficient-computing-networks/|title=MIT and Ericsson Collaborates to Research New Generation of Energy-Efficient Computing Networks - News|website=eepower.com}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://www.allaboutcircuits.com/news/mit-and-ericsson-set-goals-zero-power-devices-new-field-lithionics/|title=MIT and Ericsson Set Goals for Zero-power Devices and a New Field—"Lithionics" - News|website=www.allaboutcircuits.com}}</ref>。

2023年5月に、TECHiFAB [[有限会社 (ドイツ)|GmbH]]<nowiki>[https://techifab.com/]</nowiki>は、TiFメモリスタの商業化を発表した[arXiv: 2403.20051, arXiv: 2402.10358]。これらのTiFメモリスタは、相変わらず少量~中量生産に留まっている。

[[サイエンス|''Science誌'']]2023年9月号に、中国人科学者{{ill2|张文彬|en|Wenbin Zhang}}''ら(et al.)'' は、[[エッジコンピューティング|エッジ・コンピューティング]]・アプリケーション向けに最適化された、[[機械学習]]及び[[人工知能]]タスクの速度と効率性を劇的に向上させるように設計された、メモリスタ-ベース[[集積回路]]の開発とテストを述べた<ref>{{Cite journal |last=Zhang |first=Wenbin |date=14 September 2023 |title=Edge learning using a fully integrated neuro-inspired メモリスタ chip |url=https://www.science.org/doi/10.1126/science.ade3483|journal=Science |volume=381 |issue=6663 |pages=1205–1211 |language=en |doi=10.1126/science.ade3483|pmid=37708281 |bibcode=2023Sci...381.1205Z |s2cid=261736380 }}</ref>。

== 関連項目 ==
{{Portal|エレクトロニクス}}
*{{ill2|電気素子|en|Electrical element}}
**[[受動素子]]
***[[ユニバーサル・メモリ]]
****[[相変化メモリ]]
*****[[3D XPoint]]([[Optane]])
******[[スタンフォード・ロバート・オブシンスキー]]
*******[[ニューロモルフィック・エンジニアリング]]
****[[FeRAM]](強誘電体メモリ)
*****[[FFRAM]](強誘電体浮遊ゲートメモリ)
****[[MRAM]](磁気抵抗メモリ)
*****[[STT-RAM]](スピン注入メモリ)
****[[ReRAM]](抵抗変化型メモリ)
**[[ヒステリシス]]
***[[パラメトロン]]
*{{ill2|新興技術の一覧|en|List of emerging technologies}} 
**{{ill2|ハイブリッド・メモリ・キューブ|en|Hybrid Memory Cube}} 
**{{ill2|トランシター|en|Trancitor}}

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist|30em|refs=
*<ref name="Pershin_2018">{{cite journal|last1=Pershin|first1=Y. V.|last2=Di Ventra|first2=M.|date=2019|title=A simple test for ideal memristors|journal=Journal of Physics D: Applied Physics|volume=52|issue=1|pages=01LT01|arxiv=1806.07360|doi=10.1088/1361-6463/aae680|bibcode=2019JPhD...52aLT01P|s2cid=53506924}}</ref>
*<ref name="Kim_2019">{{cite journal|last1=Kim|first1=J.|last2=Pershin|first2=Y. V.|last3=Yin|first3=M.|last4=Datta|first4=T.|last5=Di Ventra|first5=M.|date=2019|title=An experimental proof that resistance-switching memories are not memristors| journal=Advanced Electronic Materials|doi=10.1002/aelm.202000010|arxiv=1909.07238|s2cid=202577242}}</ref>
*<ref name="Meuffels_2012">{{cite arXiv|last1=Meuffels|first1=P.|last2=Soni|first2=R.|date=2012|title=Fundamental Issues and Problems in the Realization of Memristors|eprint=1207.7319|class=cond-mat.mes-hall}}</ref>
*<ref name="DiVentra_2013">{{Citation|last1=Di Ventra|first1=M. |last2=Pershin |first2=Y. V.|title=On the physical properties of memristive, memcapacitive and meminductive systems|journal=[[Nanotechnology (journal)|Nanotechnology]]|date=2013|volume=24|issue=25|pages=255201|doi=10.1088/0957-4484/24/25/255201|pmid=23708238|arxiv=1302.7063 |bibcode=2013Nanot..24y5201D|citeseerx=10.1.1.745.8657 |s2cid=14892809 }}</ref>

}}

== 参考文献 ==
* {{cite journal|editor1-last=Chen|editor1-first=Dongmin|editor2-last=Chua|editor2-first=Leon O.|editor3-last=Hwang|editor3-first=Cheol Seong|editor4-last=Wang|editor4-first=Shih-Yuan|editor5-last=Waser|editor5-first=Rainer|editor6-last=Williams|editor6-first=R. Stanley|editor7-last=Yang|editor7-first=Jianhua|title=Special Issue: Memristive and Resistive Devices and Systems|journal=[[Applied Physics A]]|date=March 2011|volume=102|issue=4}}
* {{cite journal|editor1-last=Mazumder|editor1-first=P.|editor2-last=Kang|editor2-first=S. M.|editor3-last=Waser|editor3-first=R.|title=Special Issue: MEMRISTORS: DEVICES, MODELS, AND APPLICATIONS|journal=[[Proceedings of the IEEE]]|date=June 2012|volume=100|issue=6|pages=1905{{endash}}2092|doi=10.1109/JPROC.2012.2197452}}
* {{cite book|editor1-last=Tetzlaff|editor1-first=Ronald|title=Memristors and Memristive Systems |date=2013|publisher=[[Springer Science & Business Media]]|isbn=978-1-4614-9068-5|url=https://books.google.com/books?id=OOW5BAAAQBAJ|doi=10.1007/978-1-4614-9068-5}}
* {{cite book|editor1-last=Adamatzky|editor1-first=Andrew|editor2-last=Chua|editor2-first=Leon|title=Memristor Networks|date=2013|publisher=[[Springer Science & Business Media]]|isbn=978-3-319-02630-5|url=https://books.google.com/books?id=Mxu4BAAAQBAJ|doi=10.1007/978-3-319-02630-5|s2cid=39739718}}
* {{cite journal |last1=Atkin |first1=Keith |title=An introduction to the memristor |journal=Physics Education |date=May 2013 |volume=48 |issue=3 |pages=317–321 |doi=10.1088/0031-9120/48/3/317 |bibcode=2013PhyEd..48..317A |s2cid=121268844 }}
* {{cite journal |last1=Gale |first1=Ella |title=TiO<sub>2</sub>-based memristors and ReRAM: materials, mechanisms and models (a review) |journal=Semiconductor Science and Technology |date=1 October 2014 |volume=29 |issue=10 |pages=104004 |doi=10.1088/0268-1242/29/10/104004 |arxiv=1611.04456 |bibcode=2014SeScT..29j4004G |s2cid=5686212 }}
* {{cite journal |last1=Traversa |first1=Fabio Lorenzo |last2=Di Ventra |first2=Massimiliano |title=Universal Memcomputing Machines |journal=IEEE Transactions on Neural Networks and Learning Systems |date=November 2015 |volume=26 |issue=11 |pages=2702–2715 |doi=10.1109/TNNLS.2015.2391182 |pmid=25667360 |arxiv=1405.0931 |citeseerx=10.1.1.747.5690 |s2cid=1406042 }}
* {{cite journal |last1=Caravelli |first1=Francesco |last2=Carbajal |first2=Juan Pablo |title=Memristors for the curious outsiders |journal=Technologies |date=January 2019 |volume=6 |issue=4 |pages=118 |doi=10.3390/technologies6040118|arxiv=1812.03389|s2cid=54464654 |doi-access=free }}
* {{cite journal |last1=Maan |first1=Akshay Kumar |last2=Jayadevi |first2=Deepthi Anirudhan |last3=James |first3=Alex Pappachen |title=A Survey of Memristive Threshold Logic Circuits |journal=IEEE Transactions on Neural Networks and Learning Systems |date=August 2017 |volume=28 |issue=8 |pages=1734–1746 |doi=10.1109/TNNLS.2016.2547842 |pmid=27164608 |arxiv=1604.07121 |s2cid=1798273 }}
* {{cite journal | vauthors=((Ghosh, M.)), ((Singh, A.)), ((Borah, S. S.)), ((Vista, J.)), ((Ranjan, A.)), ((Kumar, S.)) | journal=IEEE Transactions on Electron Devices | title=MOSFET-based memristor for high-frequency signal processing | volume=69 | issue=5 | pages=2248–2255 | date= 2022 | url=http://dx.doi.org/10.1109/ted.2022.3160940 | issn=0018-9383 | doi=10.1109/ted.2022.3160940| bibcode=2022ITED...69.2248G | s2cid=247889089 }}
* {{Citation | vauthors=((Singh, A.)), ((Borah, S. S.)), ((Ghosh, M.)) | year=2021 | title=Simple grounded meminductor emulator using transconductance amplifier | publisher=IEEE}}

== 外部リンク ==
{{Commonscat|Memristors}}
* [https://web.archive.org/web/20090929083938/http://eetimes.jp/article/20775/ 抵抗、コンデンサ、インダクタに次ぐ「第4の受動素子」をHP社が実現 2008年5月2日 EE Times Japan]
以下全部英語
* {{youTube|id=n3XzuBt54ig |title= 失われたメモリスタを探して}}
* [http://memlinks.eu メモリスタ論文の対話型データベース (2013年)]
* {{cite news |title=Machine Dreams |first=Tom |last=Simonite |date= 21 April 2015 |access-date=5 December 2017 |url=http://www.technologyreview.com/featuredstory/536786/machine-dreams |publisher=Technology Review}}
* [https://www.sztucznainteligencja.org.pl/leon-chua-a-bulb-versus-google-go-player/ 「蔡少棠: 電球vs.グーグル(謹製・囲)碁選手」]{{snd}}(ポーランド語版) メモリスタの創造主、蔡少棠とのインタビュー
* [https://www.sztucznainteligencja.org.pl/en/leon-chua-a-bulb-versus-google-go-player/ 「蔡少棠: 電球vs.グーグル(謹製・囲)碁選手」]{{snd}}(英語版) メモリスタの創造主、蔡少棠とのインタビュー

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