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[[数学]]における'''リースの拡張定理'''(リースのかくちょうていり、{{Lang-en-short|M. Riesz extension theorem}})は、{{仮リンク|モーメント問題|en|moment problem}}の研究の際に[[リース・マルツェル]]によって証明された定理である<ref>{{harvtxt|Riesz|1923}}</ref><ref>{{harvtxt|Akhiezer|1965}}</ref>。 == 定理の内容 == ''E'' を[[実数|実]][[ベクトル空間]]とし、''F'' ⊂ ''E'' をその[[線型部分空間|部分ベクトル空間]]とする。また ''K'' ⊂ ''E'' を[[凸錐]]とする。 [[線型汎函数]] ''φ'': ''F'' → '''R''' が ''K''-正(''K''-positive)であるとは、錐 ''K'' 内のすべての点に対してそれが 0 以上の値を返すこと、すなわち、次を満たすことを言う: :<math>\phi(x) \geq 0 \quad \text{for} \quad x \in F \cap K.</math> 線型汎函数 ''ψ'': ''E'' → '''R''' が ''φ'' の ''K''-正拡張(''K''-positive extension)であるとは、それが ''φ'' の定義域においては ''φ'' に等しく、錐 ''K'' 内のすべての点に対して 0 以上の値を返すこと、すなわち、次を満たすことを言う: :<math>\psi|_F = \phi \quad \text{and} \quad \psi(x) \geq 0\quad \text{for} \quad x \in K.</math> 一般に ''F'' 上の ''K''-正線型汎函数は、''E'' 上の ''K''-正線型汎函数に拡張できるとは限らない。二次元の場合、そのような反例として、''x''-軸の負の開区間を除いた上半平面として ''K'' を取る場合が挙げられる。このとき ''F'' が実軸であるなら、正の線型汎函数 ''φ''(''x'', 0) = ''x'' はその平面上の正の汎函数へ拡張することは出来ない。 しかし、次の仮定の下ではそのような拡張は存在する:すべての ''y'' ∈ ''E'' に対して、''y'' − ''x'' ∈''K'' を満たすある ''x''∈''F'' が存在する。すなわち、''E'' = ''K'' + ''F'' である。 == 証明 == [[超限帰納法]]により、dim ''E''/''F'' = 1 の場合のみを考えれば十分である。 ある ''y'' ∈ ''E''/''F'' を選ぶ。汎函数 :<math> \psi|_F = \phi, \quad \psi(y) = \sup \left\{ \phi(x) \, \mid \, x \in F, \, y - x \in K \right\} </math> を定め、線型性によって ''ψ'' を ''E'' へ拡張する。''ψ'' は ''K''-正であることを示す。 ''K'' 内のすべての点 ''z'' は、''x'' ∈ ''F'' に対し、''x'' + ''y'' あるいは ''x'' − ''y'' のいずれかの正の線型倍である。一つ目の場合、''z'' = ''a''(''y'' + ''x'') となるので、''y''− ''(''−''x)'' = ''z''/''a'' は ''K'' に属するとともに −''x'' は ''F'' に属する。したがって :<math> \psi(y) \geq \psi(-x) = - \psi(x) </math> となり、''ψ''(''z'') ≥ 0 である。二つ目の場合、''z'' = ''a''(''x'' − ''y'') なので、''y'' = ''x'' − ''z''/''a'' となる。今、''z''<sub>1</sub> = ''y'' − ''x''<sub>1</sub> ∈ ''K'' および ''ψ''(''x''<sub>1</sub>) ≥ ψ(''y'') − ''ε'' を満たすものとして ''x''<sub>1</sub> ∈ ''F'' を定める。このとき :<math> \psi(x) - \psi(x_1) = \psi(x-x_1) = \psi(z_1 + z/a) = \phi(z_1 + z/a) \geq 0</math> であり、したがって ''ψ''(''z'') ≥ −''a'' ''ε'' である。これは任意の ''ε'' > 0 に対して成立するため、''ψ''(''z'') ≥ 0 となる。 == 系:クレインの拡張定理 == ''E'' を[[実数|実]][[線型空間]]とし、''K'' ⊂ ''E'' を[[凸錐]]とする。'''R''' ''x'' + ''K'' = ''E'' を満たすものとして ''x'' ∈ ''E''/(−''K'') を定める。このとき、ある ''K''-正線型汎函数 ''φ'': ''E'' → '''R''' が存在して ''φ''(''x'') > 0 となる。 == ハーン=バナッハの定理との関係 == {{main|ハーン-バナッハの定理}} ハーン=バナッハの定理は、リースの拡張定理より導出することが出来る。 ''V'' を線型空間とし、''N'' を ''V'' 上の劣線型函数とする。''φ'' は部分空間 ''U'' ⊂ ''V'' 上の汎函数で ''N'' によって支配されるもの、すなわち :<math> \phi(x) \leq N(x), \quad x \in U </math> が成立するものとする。ハーン=バナッハの定理では、この ''φ'' が ''N'' によって支配される ''V'' 上のある線型汎函数へ拡張できることが主張されている。 この事実をリースの拡張定理より導くために、凸錐 ''K'' ⊂ '''R'''×''V'' を次のように定める。 :<math> K = \left\{ (a, x) \, \mid \, N(x) \leq a \right\}.</math> '''R'''×''U'' 上の汎函数 ''φ''<sub>1</sub> を次で定める。 :<math> \phi_1(a, x) = a - \phi(x).</math> ''φ''<sub>1</sub> は ''K''-正であり、''K'' + ('''R''' × ''U'') = '''R''' × ''V'' となることが分かる。したがって ''φ''<sub>1</sub> は '''R'''×''V'' 上の ''K''-正汎函数 ''ψ''<sub>1</sub> に拡張することが出来る。このとき :<math> \psi(x) = - \psi_1(0, x) </math> が求める ''φ'' の拡張である。実際、''ψ''(''x'') > ''N''(''x'') であるなら (''N''(''x''), ''x'') ∈ ''K'' が得られるが、これは :<math> \psi_1(N(x), x) = N(x) - \psi(x) < 0 </math> となり、矛盾が生じる。 == 注釈 == {{Reflist}} == 参考文献 == * {{Citation|last=Castillo|first=Reńe E.|title=A note on Krein’s theorem|url=http://www.scm.org.co/aplicaciones/revista/Articulos/767.pdf|journal=Lecturas Matematicas|volume=26|year=2005}} * {{Citation|jfm=49.0195.01|last=Riesz|first=M.|title=Sur le problème des moments. III.|language=French|journal=Ark. F. Mat. Astr. O. Fys.|volume=17|issue=16|year=1923}} * {{Citation|mr=0184042|first=N.I.|last=Akhiezer|title=The classical moment problem and some related questions in analysis|publisher=Hafner Publishing Co.|location=New York|year=1965}} {{DEFAULTSORT:りいすのかくちようていり}} [[Category:関数解析学]] [[Category:リース・マルツェル]] [[Category:数学に関する記事]] [[Category:数学のエポニム]]
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