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{{Expand English|nth root|date=2023-10}} {{Calculation results}} '''冪根'''<ref group="注">「冪」の字の代わりに[[略字]]の「巾」を用いることがある。</ref>(べきこん)、または'''累乗根'''(るいじょうこん)とは、[[冪乗]](累乗)を取る操作とは逆の操作で、冪乗すると与えられた数になる数のことである。数 {{mvar|x}} の冪根はしばしば <math>\sqrt[n]{x}</math> と書き表される。冪根 <math>\sqrt[n]{x}</math> は以下の関係を満たす。 :<math>\left(\sqrt[n]{x}\right)^n = x.</math> つまり、冪根 <math>\sqrt[n]{x}</math> の {{mvar|n}}乗は {{mvar|x}} に等しく、この意味で <math>\sqrt[n]{x}</math> を '''{{mvar|x}} の {{mvar|n}}乗根''' {{en|({{mvar|n}}th root of {{mvar|x}})}} と呼ぶ。 {{mvar|n}} は'''指数''' {{en|(index)}} と呼ばれ、記号 <math>\sqrt{}</math> は'''根号''' {{en|(radical sign, radix)}} と呼ばれる。また、根号の中に書かれた数 {{mvar|x}} は時に'''被開平数''' {{en|(radicand)}} と呼ばれる。 根号を用いて冪根を表す場合、それは非負の値を持つ[[多価関数|一価関数]]として扱われる。このような冪根を'''主要根''' {{en|(principal root)}} と呼び、特に {{math|2}}乗根の主要根を'''主平方根''' {{en|(principal square root)}} と呼ぶ。 数 {{mvar|x}} の主要根 <math>\sqrt[n]{x}</math> は[[指数関数]]と結び付けられ、 :<math>\sqrt[n]{x} = x^{\frac{1}{n}} = \exp\left(\frac{1}{n} \ln x\right)</math> という関係が成り立つ<ref group="注">{{math|exp(·)}} は[[自然指数関数]]、{{math|ln(·)}} は[[自然対数]]。</ref>。 == 定義 == {{mvar|n}} を {{math|2}} 以上の[[自然数]]とする。数 {{mvar|a}} に対して、[[代数方程式]] {{math|''x{{sup|n}}'' {{=}} ''a''}} の[[解]] {{mvar|x}} を、{{mvar|a}} の '''{{mvar|n}}乗根''' {{en|(root of {{mvar|n}}-th power, {{mvar|n}}-th root)}} という。また、 {{mvar|n}} を特に固定せずに'''冪根'''、'''累乗根'''と総称する。特に、{{math|2}}乗根、{{math|3}}乗根は、それぞれ[[平方根]] {{en|(square root)}}、[[立方根]] {{en|(cube root)}} ともいう。 {{mvar|a}} の {{mvar|n}}乗根のうち、{{mvar|n}}乗して初めて {{mvar|a}} となるようなもの、すなわち {{math2|''x{{sup|n}}'' {{=}} ''a''}} であって、{{math2|''m'' < ''n''}} となる任意の自然数 {{mvar|m}} に対して {{math2|''x{{sup|m}}'' ≠ ''a''}} を満たす {{mvar|x}} は、{{mvar|a}} の {{mvar|n}}乗根として'''原始的''' {{en|(primitive)}} である、または {{mvar|a}} の'''原始 {{mvar|n}}乗根''' {{en|(primitive {{mvar|n}}-th root)}} であるという。 どのような[[数]]の範囲で冪根を考えているかは意識しておかねばならない。考えている数の範囲によっては、{{mvar|n}} 乗根が複数存在する場合もあるし、1つも存在しない場合もある。[[複素数]]体のような[[代数的閉体]]では、{{mvar|n}}乗根は重複度も込めてちょうど {{mvar|n}}個存在する。初等的には[[実数]]の特に[[正の数と負の数|正数]]の冪根を扱うことが多い。正数の {{mvar|n}}乗根は、{{mvar|n}} が偶数ならば正と負の 2つが存在し、{{mvar|n}} が奇数ならば正のものがただ1つ存在する。負数の {{mvar|n}}乗根は、奇数乗根は実数でも定義できるが、偶数乗根は実数では定義できない。 ==開法== {{main|[[開平法|開平]]、[[開立法|開立]]}} 正の実数の冪根の近似値を求めることやその算法を、'''開法'''(あるいは'''開方'''、{{en|evolution}})という。特に、平方根や立方根を求めることを、それぞれ[[開平法|開平]]、[[開立法|開立]]という。 == 複素数の冪根 == [[複素数]] {{mvar|a}} に対して、その冪根は[[複素数#極形式|極形式]]を用いれば簡単に表すことができる。{{math2|''a'' {{=}} 0}} のときはその冪根は {{math|0}} のみであると定め、以下 {{math2|''a'' ≠ 0}} として、<math>a=re^{i\theta} \ (r>0,0\le\theta <2\pi)</math> をその極形式表示とする。 まず、{{math2|''r'' > 0}} に対して {{math2|''x{{sup|n}}'' {{=}} ''r''}} を満たす {{math2|''x'' > 0}} はただ一つ存在する。それは :<math>\sqrt[n]{r}</math> である。このとき、{{mvar|n}}個の複素数 :<math>\alpha_k = \sqrt[n]{r} \exp \left(\frac{\theta +2k\pi}{n} i\right), \qquad\left(k = 0,1,\cdots,n-1\,\right),</math> はすべて[[代数方程式]] {{math2|''α{{sub|k}}{{sup|n}}'' − ''a'' {{=}} 0}} を満たす。[[代数学の基本定理]]より、複素数係数の {{mvar|n}}次方程式の解は {{mvar|n}}個であるから、{{mvar|a}} の {{mvar|n}}乗根は以上ですべて得られている。 ここで注意すべき点は、'''根号''' {{en|(radical sign, radix)}} <math>\sqrt[n]{\;}</math> は元となる複素数 {{mvar|a}} の[[複素数の絶対値|絶対値]] {{math2|''r'' {{=}} {{!}}''a''{{!}}}} 以外に対しては一意な意味を持たないことである。つまり、一般の複素数 {{mvar|a}} に対して <math>\sqrt[n]{a}</math> などと書いても、それだけではこの記号に何の意味も発生しないということである。もう少し別な言い方をすれば、根号関数 <math>\sqrt[n]{\;} : \mathbb R_+ \rightarrow \mathbb R </math> (ここで <math>\mathbb R_+</math> は正の実数全体)は定義可能だが、<math>\sqrt[n]{\;} : \mathbb C_+ \rightarrow \mathbb C</math> を定める方法は無条件には存在しないというような形で述べることもできる。 しかしながら、例えば[[二次方程式]] {{math2|''ax''{{sup|2}} + ''bx'' + ''c'' {{=}} 0}} の[[判別式|解の公式に現れる根号付きの数]]<math>\sqrt{D}(D=b^2-4ac)</math> を、その中に現れる複素数 {{mvar|D}} の平方根の任意に選んだ 1 つと解釈することにすれば、もう一方の解は <math>-\sqrt{D}</math> に対応し、根の公式はそのまま任意の二次方程式に通用する。このことは 2つの冪根同士は [[1の冪根|{{math|1}} の原始冪根]]を掛ける違いしか持たないことに起因する。そういった背景により、「どれなのかは論理的に区別して指定できない」のだけれども、ある規約の下で根号 <math>\sqrt[n]{\;}</math> を用いることは少なくない。[[虚数単位]]である <math>\sqrt{-1}</math> はその最も簡単な例である。 数の範囲を実数に限るのであれば、別な意味づけをすることもある。{{mvar|n}} が奇数のときは、負の実数 {{mvar|x}} の {{mvar|n}}乗根は実数の範囲にただ1つだけ存在することから、これを <math>\sqrt[n]{x}</math> と記すのである([[立方根]]を参照)。 == 有限体 == [[有限体]] {{mvar|F}} について、その[[可換体#諸概念|位数]]は素数 {{mvar|p}} の冪 {{math|''q'' {{=}} ''p<sup>f</sup>''}} であるとする。このとき、有限体 {{mvar|F}} の[[零元]] {{math|0}} 以外の[[元 (数学)|元]]は[[単位元]] {{math|1}} の {{math|''q'' − 1}} 乗根として得られる。すなわち :<math>F \smallsetminus \{0\} = \{x \in \overline{\mathbb{F}_p} \mid x^{q-1} - 1 = 0\}</math> が成り立つ。ここで <math>\overline{\mathbb{F}_p}</math> は位数 {{mvar|p}} の有限体 <math>\mathbb{F}_p</math> の代数的閉包である。あるいは :<math>F = \{x \in \overline{\mathbb{F}_p} \mid x^q - x = 0\}</math> と記しても同じことである。 == 冪根拡大 == {{mvar|K}} を[[可換体|体]]とし、{{math|''a'' ∈ ''K''}} の任意の 1 つの冪根 {{math|''α'' {{=}} {{radic|''a''|''n''}}}} を添加する[[体の拡大|拡大]] {{math|''K''(''α'')/''K''}} を {{mvar|K}} の'''冪根拡大''' {{en|(radical extension)}} という。 もし {{mvar|K}} が [[1の冪根|{{math|1}} の原始 {{mvar|n}} 乗根]]を含むなら拡大体 {{math|''K''(''α'')}} は二項多項式 {{math|''x<sup>n</sup>'' − ''a''}} の最小[[分解体]]となり、この二項多項式は[[重根 (多項式)|重根]]を持たないので拡大は[[ガロア拡大]]となる。これを'''[[クンマー理論#クンマー拡大|クンマー拡大]]''' {{en|(Kummer extension)}} と呼ぶ。クンマー拡大は巡回拡大でその拡大次数は {{mvar|n}} の[[約数]]である。逆に {{mvar|n}} の約数 {{mvar|d}} に対し、拡大次数が {{mvar|d}} であるような巡回拡大 {{math|''L''/''K''}} は、{{mvar|K}} が {{math|1}} の原始 {{mvar|n}} 乗根を含むという仮定の下で、クンマー拡大である。このことから、ある方程式が係数に対して[[四則演算]]と冪根を添加する操作を有限回繰り返すことで解ける(代数的に可解である)ならば、[[ガロア群]]は[[巡回群]]のみからなる組成列を持たなければならないことになる。この性質は、抽象群に対して[[可解群]]の概念として定式化される。 == 脚注 == {{脚注ヘルプ}} {{reflist|group="注"}} == 関連項目 == * [[冪乗]] * [[1の冪根]] * [[代数方程式]] * [[体論]] * [[クンマー理論]] * [[ガロア理論]] * [[求根アルゴリズム]] == 外部リンク == * {{Kotobank|累乗根}} {{DEFAULTSORT:へきこん}} [[Category:代数的数]] [[Category:体論]] [[Category:数学に関する記事]]
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