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'''凝縮熱伝達'''(ぎょうしゅくねつでんたつ)とは、[[伝熱]]現象のうち、低温の固体表面で[[蒸気]]の[[凝縮]]を伴うものである。自然対流や強制対流による伝熱よりも[[熱伝達率]]が高くなるため、[[熱交換器]]など工業的に広く利用されている。 == 分類 == ; 膜状凝縮 :凝縮液が固体面上に薄膜状に広がり、重力によって連続的に流れるもの。液膜の厚さなどの状態が[[熱抵抗]]の大きさを支配し、鉛直面に水の膜ができる場合熱伝達率は3{{e|4}} W/(m<sup>2</sup> K)程度かそれ以下となる<ref name=aihara>{{cite|和書 |editor= |author=相原利雄 |title=エスプレッソ伝熱工学 |edition= |publisher=裳華房 |year=2009 |isbn=978-4-7853-6023-8 |page=148-159}}</ref>。 ; 滴状凝縮 :固体面上に[[液滴]]の形で付着し、合体を伴いながら滴の形のまま流れるもの。熱伝達率は高く、鉛直面に水の滴ができる場合、熱伝達率は3{{e|5}} W/(m<sup>2</sup> K)程度かそれ以下となる<ref name=aihara/>。そのため伝熱促進の点から望ましい形態であるが、滴状凝縮を長時間持続させることは一般に困難で、時間が経つと膜状凝縮に移行してしまうことが多い<ref name=mochizuki>{{cite|和書 |editor= |author=望月貞成|author2=村田章 |title=伝熱工学の基礎 |edition= |publisher=日新出版 |year=2000 |isbn=4-8173-0166-X |page=161-172}}</ref>。 == ヌセルトの水膜理論 == 膜状凝縮の理論的解析には、[[ヴィルヘルム・ヌセルト|ヌセルト]]の水膜理論(1916)が知られている。実際の熱伝達率は理論値より高くなることが多いが、この理論は良い近似を与える。 この理論では以下の仮定を置くことで現象をモデル化している<ref name=mochizuki/>。 * 冷却面温度{{math|''T''<sub>W</sub>}} は一定 * 気液界面の液温は飽和蒸気温度{{math|''T''<sub>S</sub>}} で一定 * 冷却面は平滑、気液界面も滑らか(波立ったりしない) * 液膜は通常薄いことから、凝縮液膜内の流れは[[層流]] * 液膜内の対流熱伝達は無視し、熱は[[熱伝導]]のみで伝わる * 蒸気流速は小さく、気液界面にせん断力は作用しない * 蒸気は純粋の乾き飽和蒸気 * 物性値は一定 鉛直な冷却面状で蒸気が凝縮し、液膜ができる状況を考える。液膜発生点を起点に、冷却面に平行下向きにx軸を、それに垂直にy軸を取る。位置{{math|''x''}} における液膜厚さ{{math|''δ''}} は次で表される。 :<math>\frac{\delta}{x}=\left(\frac{4H}{Pr\,Gr_x}\right)^{1/4}</math> ただし、右辺の各[[無次元数]]は * <math>H:=\frac{c_p(T_\mathrm{S}-T_\mathrm{W})}{L}</math>:顕潜熱比 * <math>Gr_x:=\frac{gx^3}{\nu^2}\left(\frac{\rho_l-\rho_v}{\rho_l}\right)</math>:[[グラスホフ数]] * <math>Pr:=\frac{c_p\mu}{\lambda}</math>:[[プラントル数]] であり、 * {{math|''ρ<sub>l</sub>, c<sub>p</sub>, λ, μ, ν, L''}} :液の[[密度]]、[[比熱]]、[[熱伝達率]]、[[粘度]]、[[動粘度]]、[[潜熱]] * {{math|''ρ<sub>v</sub>''}} :蒸気の密度 * {{math|''g''}} :重力加速度 である。 位置{{math|''x''}} における局所熱伝達率と、液膜上端から{{math|''x''}} までの平均熱伝達率は[[ヌセルト数]]の形で次のように表される。 :<math>\begin{align} &Nu_x=0.707\left(\frac{Pr\,Gr_x}{H}\right)^{1/4}, \\ &Nu_\mathrm{mean}=0.943\left(\frac{Pr\,Gr_x}{H}\right)^{1/4} \end{align}</math> また、水力直径{{math|4''δ''}} と平均流速{{math|''u''<sub>mean</sub>}} で定義される膜レイノルズ数 :<math>Re_\delta:=\frac{4\delta u_\mathrm{mean}}{\nu}</math> を用いると、平均熱伝達率{{math|''h''<sub>mean</sub>}} は次式で表される<ref name=aihara/><ref name=kikuchi>{{cite|和書 |editor= |author=菊池義弘|author2=松村幸彦 |title=伝熱学 |edition= |publisher=共立出版 |year=2006 |isbn=4-320-08156-0 |page=130-145}}</ref>。 :<math>\frac{h_\mathrm{mean}(\nu^2/g)^{1/3}}{\lambda}=\frac{1.47}{Re_\delta^{1/3}}</math> ここで左辺は'''凝縮数'''と呼ばれる無次元数である。 冷却面が鉛直から角度{{math|''θ''}} だけ傾いている場合は、以上の議論のうち重力加速度{{math|''g''}} を{{math|''g'' cos''θ''}} に置き換えればよい。 凝縮液密度{{math|''ρ<sub>l</sub>''}} が蒸気密度{{math|''ρ<sub>v</sub>''}} より十分大きい場合、グラスホフ数は次の[[ガリレイ数]]に置き換えることができる。 :<math>Ga_x:=\frac{gx^3}{\nu^2}</math> == 乱流膜状凝縮 == 膜レイノルズ数が50程度以上になると、膜の表面にさざ波が生じ、熱伝達率は高くなる<ref name=aihara/>。 :<math>\frac{h_\mathrm{mean}(\nu^2/g)^{1/3}}{\lambda}=\frac{1.77}{Re_\delta^{0.218}}\left(\frac{\nu^2}{gl_a^3}\right)^{0.046}</math> ただし :<math>l_a:=\sqrt{\frac{\sigma}{g(\rho_l-\rho_v)}}</math> は長さの[[量の次元|次元]]をもつパラメータで、{{math|σ}} は[[表面張力]]である。 膜レイノルズ数が1800以上<ref name=mochizuki/>、または{{math|''Re<sub>δ</sub>'' ~ 5200/''Pr<sub>l</sub>''<sup>1.04</sup>}} <ref name=aihara/>に達すると乱流に遷移すると言われている。乱流液膜の場合、層流とは逆に膜厚の増加に伴い平均熱伝達率は上昇する。実験式として以下がある。 *<math>\frac{h_m(\nu^2/g)^{1/3}}{\lambda}=0.0077 Re_l^{0.4}</math><ref name=mochizuki/> *一様熱流束冷却面上の、一部に乱流液膜を含む膜状凝縮において <math>\frac{h_m(\nu^2/g)^{1/3}}{\lambda}=0.035 Re_\delta^{1/6}Pr^{3/5}</math><ref name=aihara/><ref name=kikuchi/> == 滴状凝縮 == 滴状凝縮は膜状凝縮より高い伝熱性能が得られるが、現象が複雑であるため研究は発展途上であり、熱伝達率の整理式もまだ得られていない。 == 脚注 == {{reflist}} {{DEFAULTSORT:きようしゆくねつてんたつ}} [[Category:伝熱]] [[Category:相転移]]
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