凝縮熱伝達
凝縮熱伝達(ぎょうしゅくねつでんたつ)とは、伝熱現象のうち、低温の固体表面で蒸気の凝縮を伴うものである。自然対流や強制対流による伝熱よりも熱伝達率が高くなるため、熱交換器など工業的に広く利用されている。
分類
- 膜状凝縮
- 凝縮液が固体面上に薄膜状に広がり、重力によって連続的に流れるもの。液膜の厚さなどの状態が熱抵抗の大きさを支配し、鉛直面に水の膜ができる場合熱伝達率は3テンプレート:E W/(m2 K)程度かそれ以下となる[1]。
- 滴状凝縮
- 固体面上に液滴の形で付着し、合体を伴いながら滴の形のまま流れるもの。熱伝達率は高く、鉛直面に水の滴ができる場合、熱伝達率は3テンプレート:E W/(m2 K)程度かそれ以下となる[1]。そのため伝熱促進の点から望ましい形態であるが、滴状凝縮を長時間持続させることは一般に困難で、時間が経つと膜状凝縮に移行してしまうことが多い[2]。
ヌセルトの水膜理論
膜状凝縮の理論的解析には、ヌセルトの水膜理論(1916)が知られている。実際の熱伝達率は理論値より高くなることが多いが、この理論は良い近似を与える。
この理論では以下の仮定を置くことで現象をモデル化している[2]。
- 冷却面温度テンプレート:Math は一定
- 気液界面の液温は飽和蒸気温度テンプレート:Math で一定
- 冷却面は平滑、気液界面も滑らか(波立ったりしない)
- 液膜は通常薄いことから、凝縮液膜内の流れは層流
- 液膜内の対流熱伝達は無視し、熱は熱伝導のみで伝わる
- 蒸気流速は小さく、気液界面にせん断力は作用しない
- 蒸気は純粋の乾き飽和蒸気
- 物性値は一定
鉛直な冷却面状で蒸気が凝縮し、液膜ができる状況を考える。液膜発生点を起点に、冷却面に平行下向きにx軸を、それに垂直にy軸を取る。位置テンプレート:Math における液膜厚さテンプレート:Math は次で表される。
ただし、右辺の各無次元数は
であり、
- テンプレート:Math :液の密度、比熱、熱伝達率、粘度、動粘度、潜熱
- テンプレート:Math :蒸気の密度
- テンプレート:Math :重力加速度
である。
位置テンプレート:Math における局所熱伝達率と、液膜上端からテンプレート:Math までの平均熱伝達率はヌセルト数の形で次のように表される。
また、水力直径テンプレート:Math と平均流速テンプレート:Math で定義される膜レイノルズ数
を用いると、平均熱伝達率テンプレート:Math は次式で表される[1][3]。
ここで左辺は凝縮数と呼ばれる無次元数である。
冷却面が鉛直から角度テンプレート:Math だけ傾いている場合は、以上の議論のうち重力加速度テンプレート:Math をテンプレート:Math に置き換えればよい。
凝縮液密度テンプレート:Math が蒸気密度テンプレート:Math より十分大きい場合、グラスホフ数は次のガリレイ数に置き換えることができる。
乱流膜状凝縮
膜レイノルズ数が50程度以上になると、膜の表面にさざ波が生じ、熱伝達率は高くなる[1]。
ただし
は長さの次元をもつパラメータで、テンプレート:Math は表面張力である。
膜レイノルズ数が1800以上[2]、またはテンプレート:Math [1]に達すると乱流に遷移すると言われている。乱流液膜の場合、層流とは逆に膜厚の増加に伴い平均熱伝達率は上昇する。実験式として以下がある。
滴状凝縮
滴状凝縮は膜状凝縮より高い伝熱性能が得られるが、現象が複雑であるため研究は発展途上であり、熱伝達率の整理式もまだ得られていない。
脚注
- ↑ 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 テンプレート:Cite
- ↑ 2.0 2.1 2.2 2.3 テンプレート:Cite
- ↑ 3.0 3.1 テンプレート:Cite