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{{出典の明記|date=2012年4月12日 (木) 13:53 (UTC)}} '''分散関係'''(ぶんさんかんけい、{{Lang-en-short|dispersion relation}}<ref name="terminology" />)は、[[波動|波]]において、[[角周波数]](角振動数)と[[波数]]の間の[[等式|関係]]。特に角周波数 {{mvar|ω}} を波数 {{mvar|k}} の[[関数 (数学)|関数]]で表した[[式]]のことを言う。[[量子力学]]においては、[[波動関数]]の波数は[[粒子]]の[[運動量]]に、周波数は[[エネルギー]]に相当するので、運動量とエネルギーの間の関係式を粒子の分散関係と呼ぶことも多い。 == 概要 == 任意の波動は[[フーリエ変換]]により「特定の[[波数]] {{mvar|k}} のみを持つ[[単色光|単色波]] {{math|e<sup>''i''(''kx'' − ''ωt'')</sup>}} の集まり」に分解できる。このとき、波数 {{mvar|k}} と角周波数 {{mvar|ω}} が、[[系 (自然科学)|系]]の性質に応じて満たす関係 : <math> \omega =\omega(k) \, </math> を、'''分散関係''' {{en|(dispersion relation)}}、または'''分散式''' {{en|(dispersion formula)}} という。波数と角周波数の対応関係が複数存在する場合もあり、それぞれの関係を波の[[モード]]と呼ぶことがある。 ここで「分散」とは波が伝わるときに波形が変化することをいう。 波動の性質を示すいくつかの重要な指標が分散関係から導かれる。 また、量子力学においてはエネルギーと周波数は比例する(<math>E = \hbar \omega</math>)ため、系のエネルギー固有値と波数の関係<math display="block">E = E(k)</math>も分散関係と呼ばれる。 == 分散の有無 == 波数と角周波数が比例関係にない場合、成分ごとに位相速度が異なるため伝播の際に波形の変化を伴う。その系は'''分散的'''もしくは'''分散系'''であるという。 一方、波数と角周波数が比例関係 : <math>\omega =vk \, </math> で表されるとき、'''分散'''はない。 分散がない任意の波において、波を構成する各成分は : <math>e^{i(kx-\omega t)}=e^{ik(x- vt)} \,</math> となり、すべての成分が波数に依らず一定速度 {{mvar|v}} で進むため、それらによって構成される波は波形を変えずに伝播する。たとえば、室温の空気を伝わる音波はほとんど分散がないため、ある人が発した声はほとんど波形を変えずに聞き手の耳に届く。 == 位相速度と群速度 == 波の位相部分が一定 {{math|''kx'' − ''ωt'' {{=}} ''φ''<sub>o</sub>}} で伝わる速度 {{math|''v''<sub>p</sub>}} は、これを時間で微分して、 : <math> v_\mathrm{p} = \frac{dx}{dt} = \frac{\omega}{k} </math> で与えられる。これを'''[[位相速度]]'''という。また、一方で様々な波数を持つ波の集まりである波束において、その'''[[群速度]]'''は、 : <math> v_\mathrm{g} = \frac{d \omega(k)}{dk} </math> で与えられる。 分散がない場合には、 : <math>v_\mathrm{p} = v, \quad v_\mathrm{g} = v \,</math> であるから、「分散がない」という条件は「位相速度と群速度が一致する」ことと等価である。 通常の[[波動方程式]] : <math>\frac{1}{c^2}\frac{\partial^2 u}{\partial t^2}=\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}</math> に従う波動現象においては、{{math|e<sup>''i''(''kx'' − ''ωt'')</sup>}} を考えると、 : <math>\omega =c k \,</math> の関係が満たされており、分散がない波となる。 == 光学における分散 == {{main|分散 (光学)}} [[自然光]]などの[[白色光]]を[[プリズム]]に通すと、透過した光は虹のように各色ごとに[[分光]]される。この現象は光学においては'''[[分散 (光学)|分散]]'''と呼ばれる。これは、白色光が角振動数の異なる[[電磁場]]から構成されており、[[媒質]]となるプリズム中においてそれぞれの[[屈折率]] {{mvar|n}} が角振動数 {{mvar|ω}} によって異なることに起因する。このとき、媒質中を伝播する電磁波の位相速度は、角振動数に依存する屈折率 {{math|''n''(''ω'')}} と[[真空中の光速]] {{mvar|c}} を用いて、 : <math> c(\omega)= \frac{c}{n(\omega)} \,</math> と表される。このとき、対応する分散関係は : <math> \omega= c(\omega)k \,</math> となる。分散関係という語は、光学におけるこの分散現象に由来する。 == 例 == === 水面波 === 深さが {{mvar|h}} である水の層において、[[重力]]と[[表面張力]]を考慮した[[水面波]]の分散関係は以下を満たす<ref name ="tatsumi" />。 : <math>\omega=|k| \sqrt{ \biggl ( \frac{g}{k}+ \frac{\sigma k}{\rho} \biggr) \tanh{kh} }</math> ここで、{{mvar|g}} は[[重力加速度]]、{{mvar|σ}} は表面張力の強さ、{{mvar|ρ}} は[[水#水の性質|水の密度]]である。 === フォノン === 固体における[[フォノン]]のモデルとして、2 種類の原子から構成される一次元の格子の振動を考える。このとき、この格子系の[[周期]]を {{math|2''a''}} とし、2つの原子の質量を {{math|''m''<sub>1</sub>, ''m''<sub>2</sub>}}、結合の定数を {{mvar|f}} とすると、分散関係は : <math> \omega^2= \frac{f}{m_\mu} \left ( 1 \pm \sqrt{1-\frac{4m_\mu^{\, 2}}{m_1m_2} \sin^2{ka} } \right ), \quad \frac{1}{m_\mu}=\frac{1}{m_1} + \frac{1}{m_2} </math> となる<ref name="AMSSP" /><ref name="AMSSPja" />。符号が {{math|−}} の場合が音響モードに対応し、{{math|+}} の場合が光学モードに相当する。特に {{math|{{mabs|''q''}} → 0}} としたときの長波長極限において、音響モードでは、 : <math> \omega = \sqrt{ \frac{2f}{m_1+m_2}} a|k| </math> 光学モードでは : <math> \omega = \sqrt{ \frac{2f}{m_\mu}} = \sqrt{ \frac{2(m_1+m_2)f}{m_1m_2} } </math> となる。 === 相対論的な電子 === [[相対性理論|相対論]]な[[場の量子論]]において、[[電子]]は[[ディラック方程式]]で記述される。このとき、電子は以下の分散関係を満たす<ref name ="nishijima" />。 : <math> \omega= \sqrt{(ck)^2+\biggl ( \frac{mc^2}{\hbar} \biggr)^2} </math> ここで、{{mvar|m}} は電子質量、{{mvar|c}} は[[光速]]である。 == 脚注 == {{脚注ヘルプ}} {{Reflist|refs= <ref name="terminology">[[#学術用語集|学術用語集]] 物理学編 (1990)。</ref> <ref name="tatsumi">{{harvnb|巽|1995}}</ref> <ref name="AMSSP">{{harvnb|Ashcroft|Mermin|1976}}</ref> <ref name="AMSSPja">{{harvnb|アシュクロフト|マーミン|1982}}</ref> <ref name="nishijima">{{harvnb|西島|1973}}</ref>}} == 参考文献 == *{{Cite book|1 =和書|author=文部省|authorlink=文部省|coauthors =[[日本物理学会]]編|title =[[学術用語集]] 物理学編|url =http://sciterm.nii.ac.jp/cgi-bin/reference.cgi|date =1990|publisher =[[培風館]]|isbn =4-563-02195-4|page =|ref =学術用語集}}{{リンク切れ|date=2017年9月 |bot=InternetArchiveBot }} *{{Cite book|和書 |last=巽|first=友正 |title=流体力学 |series=新物理学シリーズ 21 |publisher=培風館 |date=1995 |isbn=978-4563024215 |ref=harv}} *{{Cite book |first1=Neil W. |last1= Ashcroft |first2=N. David |last2=Mermin |title=Solid State Physics |publisher=Thomson Learning |date=1976 |ref=harv}} **{{Cite book|和書 |first1=N. W. |last1=アシュクロフト |first2=N. D. |last2=マーミン |others=松原, 武生(訳)、町田, 一成(訳) |title=固体物理の基礎 (下・1) 固体フォノンの諸問題 |series=物理学叢書 48 |publisher=吉岡書店 |date=1982 |isbn=978-4842702025 |ref=harv}} *{{Cite book|和書 |last=西島 |first=和彦 |title=相対論的量子力学 |series=新物理学シリーズ 13 |publisher=培風館 |date=1973 |isbn=978-4563024130 |ref=harv}} == 関連項目 == * [[フーリエ変換]] * [[波動]] * [[位相速度]] * [[群速度]] * [[分散 (光学)|分散]] * [[分光]] * [[光学]] * [[固体物理学]] * [[流体力学]] {{Physics-stub}} {{デフォルトソート:ふんさんかんけい}} [[Category:振動と波動]] [[Category:光学]] [[Category:流体力学]] [[Category:固体物理学]]
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