因数定理のソースを表示

[[画像:Polynomialdeg3.svg|250px|thumb|多項式 {{math2|''f''(''x'') {{=}} {{sfrac|1|4}}(''x''{{sup|3}} + 3''x''{{sup|2}} &minus; 6x &minus; 8)}} は {{math2|''x'' {{=}} &minus;4, &minus;1, 2}} を[[多項式の根|根]]（[[関数の零点|零点]]）に持つ。このことから、因数定理より {{math|''f''(''x'') {{=}} {{sfrac|1|4}}(''x'' + 4)(''x'' + 1)(''x'' &minus; 2)}} と因数分解される。]]
'''因数定理'''（いんすうていり、{{lang-en-short|''factor theorem''}}）とは、[[多項式の根]]から元の[[多項式]]を[[因数分解]]することができるという定理である。因数定理は[[剰余の定理]]の特別の場合になっている<ref>{{Citation |first=Michael |last=Sullivan |title=Algebra and Trigonometry |page=381 |publisher=Prentice Hall |year=1996 |isbn=0-13-370149-2}}</ref>。

; 定理 ({{要検証範囲|[[パオロ・ルフィニ|Ruffini]]|date=2017-06-24|title=Stillwell (2010, p.103) を見る限り（少なくとも部分的には）デカルト？}})
: 多項式 {{math|''f''(''x'')}} が一次式 {{math|''x'' &minus; ''α''}} を因子に持つ[[同値#必要十分条件|必要十分条件]]は {{math|1=''f''(''α'') = 0}}、すなわち {{mvar|α}} が多項式 {{math|''f''(''x'')}} の根となることである<ref>{{Citation |first1=V K |last1=Sehgal |first2=Sonal |last2=Gupta |title=Longman ICSE Mathematics Class 10 |page=119 |publisher=Dorling Kindersley (India) |isbn=978-81-317-2816-1}}</ref>。

== 概要 ==
=== 多項式の因数分解 ===
{{Main|多項式の因数分解}}
多項式を一次式の積に因数分解するのは、「多項式の根を求めること」と本質的に等価な問題であることが分かる。

多項式の根が1つ求まれば、因数分解により、未知の根からなる多項式は次数は下がるため、根をより求めやすくなる。多項式の全ての根を求める手順は以下の通りである<ref>{{Citation |first=R. K.|last=Bansal |title=Comprehensive Mathematics IX |page=142 |publisher=Laxmi Publications |isbn=81-7008-629-9}}</ref>：
# 多項式 {{mvar|f}} の根 {{mvar|α}} を「推測する」。（一般にはこれは「非常に困難」である。ただし、係数体が[[有理数]]の場合は、'''[[有理根定理]]'''により、有理根の候補が有限個に絞れる。係数体が[[実数]]の場合は、[[グラフ (関数)|グラフ]]から根の近似値を求めることができる）
# 因数定理により {{math|''x'' &minus; ''α''}} は {{mvar|f}} の因子である。
# {{math|1=(''x'' &minus; ''α'')''g''(''x'') = ''f''(''x'')}} となる多項式 {{mvar|g}} を、実際に {{math|''f''(''x'')}} を {{math|''x'' &minus; ''α''}} で多項式として（{{ill2|多項式の長除法|en|polynomial long division}}、{{ill2|組立除法|en|synthetic division}}などにより）割ることで求める。
# {{mvar|f}} の {{mvar|α}} 以外の根は、{{mvar|g}} の根である。{{mvar|g}} の[[多項式の次数|次数]]は {{mvar|f}} より一つ下がるから、{{mvar|f}} の {{mvar|α}} 以外の根を求めることは、簡単になる。

=== 多変数多項式の因数定理 ===
{{mvar|f}} を {{mvar|n}} 個の変数 {{math|''X''{{sub|1}}, ''X''{{sub|2}}, …, ''X{{sub|n}}''}} の多項式、{{mvar|g}} を {{math|''X''{{sub|1}}}} 以外の {{math|''n'' &minus; 1}} 個の変数 {{math|''X''{{sub|2}}, …, ''X{{sub|n}}''}} の多項式とする。

;定理
:{{math|''f''(''X''{{sub|1}}, ''X''{{sub|2}}, …, ''X{{sub|n}}'')}} が {{math|''X''{{sub|1}} &minus; ''g''(''X''{{sub|2}}, …, ''X{{sub|n}}'')}} を因子に持つための必要十分条件は、{{math|1=''f''(''g''(''X''{{sub|2}}, …, ''X''{{sub|''n''}}), ''X''{{sub|2}}, …, ''X{{sub|n}}'') = 0}} となることである。
これは {{mvar|f, g}} を {{math|''X''{{sub|1}}}} の多項式と見れば {{mvar|g}} は {{math|''X''{{sub|1}}}} に関して定数であるから、一変数の場合の因数定理から従う<ref>{{kotobank|剰余定理|世界大百科事典}}</ref>。注目する変数を変えれば、各変数について同様の主張が成り立つ。

例えば {{mvar|f}} を[[ヴァンデルモンドの行列式]]
:<math>f(X_1,X_2,\ldots,X_n) := \begin{vmatrix}
1      &X_1    &{X_1}^2 &\cdots &{X_1}^{n-1} \\
1      &X_2    &{X_2}^2 &\cdots &{X_2}^{n-1} \\
\vdots &\vdots &\vdots  &\ddots &\vdots \\
1      &X_n    &{X_n}^2 &\cdots &{X_n}^{n-1}
\end{vmatrix}</math>
とするとき {{math|''f''(''X''{{sub|2}}, ''X''{{sub|2}}, …, ''X{{sub|n}}'') {{=}} 0}} が明らかに成り立つから、{{math|''g''(''X''{{sub|2}}, …, ''X{{sub|n}}'') {{coloneqq}} ''X''{{sub|2}}}} として因数定理を適用すれば、{{mvar|f}} は {{math|''X''{{sub|1}} &minus; ''X''{{sub|2}}}} で割り切れると分かる。同様の議論により、{{mvar|f}} は[[差積]] {{math|''⊿''(''X''{{sub|1}}, ''X''{{sub|2}}, …, ''X{{sub|n}}'')}} で割り切れると分かる。

== 例 ==
:{{math|1=''f''(''x'') = ''x''{{sup|3}} + 4''x''{{sup|2}} + 3''x'' &minus; 2}}
を[[有理数]]の範囲で因数分解する。

[[有理根定理]]より、{{math|''f''(''x'')}} の根の候補は
:{{math|1=''x'' = ±{{sfrac|2|1}}, ±{{sfrac|1|1}}}}
このうち根として適するのは {{math2|''x'' {{=}} &minus;2}} のみである。

因数定理より、{{math|''f''(''x'')}} は {{math|''x'' &minus; (&minus;2)}} を因数に持つ。

組立除法などにより
:{{math|1=''x''{{sup|3}} + 4''x''{{sup|2}} + 3''x'' &minus; 2 = (''x'' + 2)(''x''{{sup|2}} + 2''x'' &minus; 1)}}

== 出典 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}

== 外部リンク ==
* {{Kotobank|因数定理}}
* {{高校数学の美しい物語|1050|因数定理の意味と因数分解への応用・重解バージョンの証明}}
* {{MathWorld|title=Polynomial Factor Theorem|urlname=PolynomialFactorTheorem|author=Hudson, Mark}}

{{多項式}}

{{DEFAULTSORT:いんすうていり}}
[[Category:初等数学]]
[[Category:代数学の定理]]
[[Category:多項式]]
[[Category:数学に関する記事]]