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多項式の展開
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[[数学]]において'''多項式の展開'''(たこうしきのてんかい、{{lang-en-short|''polynomial expansion''}})とは、複数の[[多項式]]の積を一つの多項式で表すことをいう。これは[[因数分解]]と逆の操作である。式の見た目として括弧がなくなるため、展開することを俗に「括弧を外す」ということもある。因数分解には統一的な方法論が無いのに対し、展開は[[分配法則]]を用いて機械的に行うことができる。この法則は、[[コーシー積|級数に対するもの]]に自然に拡張される。 == 概要 == 分配法則 : {{math|1=''a''(''b'' + ''c'') = ''ab'' + ''ac''}} を用いることで、多項式の積を一つの多項式で表すことが可能。まず、[[数学的帰納法|帰納法]]により、第二因子が {{mvar|n}} 個の項の和である場合の分配法則を得る。 : {{math|1=''a''(''b''{{sub|1}} + ⋯ + ''b''{{sub|''n''}}) = ''ab''{{sub|1}} + ⋯ + ''ab''{{sub|''n''}}}} 第一因子も複数の項の和である場合、すなわち : {{math|(''a''{{sub|1}} + ⋯ + ''a''{{sub|''m''}})(''b''{{sub|1}} + ⋯ + ''b''{{sub|''n''}})}} については、次のように計算される。 #第一因子を {{mvar|A}} とおくと、{{math|''A''(''b''{{sub|1}} + ⋯ + ''b''{{sub|''n''}})}} となる #分配法則により、これは {{math|''Ab''{{sub|1}} + ⋯ + ''Ab''{{sub|''n''}}}} に等しい #この式の第 {{mvar|i}} 項は {{math|(''a''{{sub|1}} + ⋯ + ''a''{{sub|''m''}})''b''{{sub|''i''}}}} であり、再び分配法則を用いると、これは {{math|''a''{{sub|1}}''b''{{sub|''i''}} + ⋯ + ''a''{{sub|''m''}}''b''{{sub|''i''}}}} に等しい #よって、全体は {{math|(''a''{{sub|1}}''b''{{sub|1}} + ⋯ + ''a''{{sub|''m''}}''b''{{sub|1}}) + ⋯ + (''a''{{sub|1}}''b''{{sub|''n''}} + ⋯ + ''a''{{sub|''m''}}''b''{{sub|''n''}})}} に等しい この結果を記号 {{sum}} を用いて書くならば :<math>\Bigl( \sum_{i=1}^m a_i \Bigr)\Bigl( \sum_{j=1}^n b_j \Bigr) = \sum_{i=1}^m \sum_{j=1}^n a_i b_j</math> である。言葉で表現するならば、 {{Indent|第一因子の項と第二因子の項、全ての組み合わせについて積をとり、その和が展開の結果である}} ということである。第一因子が {{mvar|m}} 個の項の和、第二因子が {{mvar|n}} 個の項の和であれば、第一因子の項と第二因子の項の組み合わせは {{mvar|mn}} 通りであるから、展開した結果は {{mvar|mn}} 個の項の和になる。 3つ以上の多項式の積についても同様のことがいえる。すなわち、 {{Indent|それぞれの因子からひとつずつ項を選ぶ、その全ての組み合わせについて積をとり、その和が展開の結果である}} ことがしたがう。{{mvar|k}} 個の多項式の積であって、{{mvar|i}} 番目の多項式が {{mvar|n{{sub|i}}}} 個の項の和であれば、展開した結果は {{math|''n''{{sub|1}} ⋯ ''n''{{sub|''k''}}}} 個の項の和になる。 == 具体例 == {{math|(''a'' + ''b'' + ''c'')(''x'' + ''y'')}} を展開すると、{{math|''ax'' + ''ay'' + ''bx'' + ''by'' + ''cx'' + ''cy''}} となる。展開の様子は次の表のように表せる。 :<math>\begin{array}{c|cc} \times & a & b & c \\\hline x & ax & bx & cx \\ y & ay & by & cy \end{array}</math> 展開したのち、さらに簡単にできる場合もある。例えば {{math|(''a'' + ''b'')(''a'' − ''b'')}} を展開する場合の表は :<math>\begin{array}{c|cc} \times & a & b \\\hline a & a^2 & ab \\ -b & -ab & -b^2 \end{array}</math> であるが、{{mvar|ab}} と {{math|-''ab''}} が打ち消しあうため、{{math|''a''{{exp|2}} − ''b''{{exp|2}}}} となる。通常はこのような計算も含めて「多項式の展開」と呼ぶ。数学教育においては、こういう場合の展開式、例えば次のような式を[[公式]]として教授することが多い。 * {{math|1=(''a'' + ''b'')(''a'' − ''b'') = ''a''{{exp|2}} − ''b''{{exp|2}}}} * {{math|1=(''a'' + ''b'')(''a''{{exp|2}} − ''ab'' + ''b''{{exp|2}}) = ''a''{{exp|3}} + ''b''{{exp|3}}}} * {{math|1=(''a'' + ''b''){{exp|2}} = ''a''{{exp|2}} + 2''ab'' + ''b''{{exp|2}}}} 右辺を左辺に変形することは因数分解であるから、これらは展開の公式であるとともに因数分解の公式ともみなせる。 == 冪級数への拡張 == {{main|コーシー積}} 多項式は有限個の項の和であるが、無限個の項の和である(形式的)[[冪級数]]に対する積が定義され、多項式の展開の自然な拡張とみなせる。以下、簡単のために1[[変数 (数学)|変数]]の冪級数 :<math>\sum_{i=0}^\infty a_i x^i = a_0+a_1 x+a_2 x^2+\dotsb</math> についてのみ考える。ふたつの冪級数の積は :<math>\Bigl( \sum_{i=0}^\infty a_i x^i \Bigr) \Bigl( \sum_{j=0}^\infty b_j x^j \Bigr)=\sum_{k=0}^\infty \Bigl( \sum_{i+j=k}a_i b_j \Bigr) x^k</math> と定義される。冪級数をその[[冪級数#概要|収束域]]に対する[[関数 (数学)|関数]]とみなした場合、これは関数の積に対応する。 === 例 === [[指数関数]]の[[テイラー展開]] :<math>e^x=1+x+\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{6}+\dotsb</math> の右辺の平方を上記の法則で「展開」すると、 :<math>\biggl( 1+x+\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{6}+\dotsb \biggr)^{\!2}=1+2x+2x^2+\frac{4}{3}x^3+\dotsb</math> となるが、この右辺は {{math|(''e''{{exp|''x''}}){{exp|2}}}} すなわち {{math|''e''{{exp|2''x''}}}} のテイラー展開に等しい。これらの冪級数は、{{mvar|x}} にいかなる[[複素数]]を代入しても[[極限|収束]]するが、収束域が限られたものも存在する。例えば、 :<math>(1-x)(1+x+x^2+x^3+\dotsb)=1</math> であるが、{{math|1 + ''x'' + ''x''{{exp|2}} + ''x''{{exp|3}} + ⋯}} は {{math|{{abs|''x''}} < 1}} の範囲でのみ収束する。表現を変えるならば、[[複素関数]] {{math|1 + ''x'' + ''x''{{exp|2}} + ''x''{{exp|3}} + ⋯}} の[[解析接続]]は {{math|1/(1 − ''x'')}} であり、これは {{math|1=''x'' = 1}} のみを1位の[[極 (複素解析)|極]]に持ち、その他の点で[[正則関数|正則]]である。 == 関連項目 == *[[展開]] *[[二項定理]] *[[因数分解]] == 外部リンク == * {{ProofWiki|urlname=Definition:Multiplication_of_Polynomials|title=Definition:Multiplication of Polynomials}} * {{ProofWiki|urlname=Coefficients_of_Polynomial_Product|title=Coefficients of Polynomial Product}} {{polynomials}} {{DEFAULTSORT:たこうしきのてんかい}} [[Category:初等数学]] [[Category:多項式]] [[Category:数学に関する記事]]
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