特性類のソースを表示

{{Pathnavbox|
* {{Pathnav|[[数学]]|[[位相幾何学]]|[[代数的位相幾何学]]|[[コホモロジー]]、[[ファイバー束|ファイバーバンドル]]}}
}}

'''特性類''' (とくせいるい、{{Lang-en-short|Characteristic class}}) は、[[位相群]]を構造群とする[[ファイバー束|ファイバーバンドル]]の[[不変量]]であり、（十分性質がよい）[[位相空間]]{{Mvar|X}}を底空間とするファイバーバンドル

: <math>\pi~:~E \to X</math>

に対し、{{Mvar|X}}の[[コホモロジー]]群の元を対応させる対応関係

: <math>c~:~\xi=(E,X,\pi)\mapsto c(\xi)\in H^q(X;A)</math>

で、「自然な」ものである。

原理的には任意のファイバーバンドルに対して特性類を定義できるが、研究が進んでいるのは主に[[ベクトル束|ベクトルバンドル]]に対する特性類である。ベクトルバンドルの特性類は以下の数学の分野に応用がある：

* {{仮リンク|障害理論|en|Obstruction theory}}
* [[K理論]]
* [[チャーン・ヴェイユ準同型|チャーン・ヴェイユ理論]]
* [[コボルディズム|コボルディズム理論]]



また{{Mvar|X}}が[[可微分多様体]]であれば、{{Mvar|X}}の[[接束|接バンドル]]{{Mvar|TX}}の特性類を{{Mvar|X}}自身の不変量とみなす事ができる。接バンドル{{Mvar|TX}}は{{Mvar|X}}の可微分構造に依存しているので、[[ジョン・ウィラード・ミルナー|ミルナー]]は{{Mvar|TX}}の特性類を利用する事により、{{仮リンク|ミルナーの７次元球面|en|Milnor's sphere|label=7次元球面と位相同型だが微分位相同型ではない可微分多様体}}の存在を示した。


1935年の多様体上のベクトル場についての[[エドゥアルト・シュティーフェル]] (Eduard Stiefel) と[[ハスラー・ホイットニー]] (Hassler Whitney) の仕事より、特性類の考え方が発生した。

==定義と基本的な性質==

=== 定義 ===
以下、{{Mvar|F}}をファイバーに持つファイバーバンドルの事を{{Mvar|F}}'''-'''バンドルと呼ぶこととし、全空間{{Mvar|E}}、底空間{{Mvar|X}}および射影<math>\pi~:~E\to X</math>からなる{{Mvar|F}}'''-'''バンドルを<math>(E,X,\pi)</math>と表記する。特性類の概念を厳密に定義するには[[圏論]]の概念を使う必要があるので、まずは若干厳密性を犠牲にした定義を以下に述べる：

{{math theorem|定義|{{mvar|G}}を[[位相群]]とし、{{mvar|F}}を{{mvar|G}}が作用する位相空間とし、{{Mvar|A}}を[[アーベル群]]とし、さらに{{mvar|q}}を非負整数とする。このとき次数{{Mvar|q}}の{{Mvar|A}}係数[[特異コホモロジー]]群における{{mvar|G}}に関する'''特性類'''とは、[[CW複体]]を底空間とし構造群{{Mvar|G}}を持つ{{Mvar|F}}-バンドル<math>\xi=(E,X,\pi)</math>にコホモロジー群<math>H^q(X;A)</math>の元を対応させる「対応関係」
:<math>c~:~\xi=(E,X,\pi)\mapsto c(\xi)\in H^q(X;A)</math>
で、任意のCW複体{{mvar|X}}、{{mvar|Y}}、構造群{{mvar|G}}を持つ{{mvar|Y}}上の任意の{{mvar|F}}-バンドル<math>\xi=(E,Y,\pi)</math>、および任意の連続写像
:<math>f~:~X\to Y</math>
に対し、
: <math>f^*(c(\xi))=c(f^*(\xi))</math>
が成立するものの事をいう。また{{Mvar|F}}-バンドル<math>\xi</math>の{{mvar|c}}による像<math>c(\xi)</math>の事を{{mvar|ξ}}の({{mvar|c}}に関する)'''特性類'''と呼ぶ<ref name="名前なし-20230316125856">[[#Bruner]] p.21.</ref>。|note='''特性類'''{{Anchors|特性類の定義}}}}

上の定義における記号の意味を説明すると、<math>f^*(c(\xi))=c(f^*(\xi))</math>における左辺の<math>f^*</math>は、{{Mvar|f}}がコホモロジーに誘導する写像
:<math>f^*~:~c(\xi)\in H^q(Y,A)\mapsto f^*(c(\xi))\in H^q(X,A)</math>
の事であり、右辺の<math>f^*</math>は{{Mvar|X}}上の{{Mvar|F}}-バンドル<math>\xi=(E,X,\pi)</math>の{{Mvar|f}}による引き戻しによって定義される{{Mvar|Y}}上の{{Mvar|F}}-バンドルの事である。

==== 注意点 ====
上の定義に関して２つの注意点を述べる。第一に、上の定義におけるバンドル写像{{Mvar|f}}は構造群{{Mvar|G}}の{{Mvar|F}}への作用と両立するもののみを考えている。したがって例えば{{Mvar|n}}次元実[[ベクトル束|ベクトルバンドル]]を<math>\mathrm{GL}_n(\mathbb{R})</math>を構造群として持つ<math>\mathbb{R}^n</math>-バンドルとみなしたとき、各点<math>x\in X</math>のファイバー<math>F_x</math>上にバンドル写像{{Mvar|f}}を制限した<math>f|_x~:~F_x\to F_y</math>は線型同型写像でなければならず、行列式が{{Mvar|0}}になってはならない。逆に言えば、いずれかの点<math>x\in X</math>で行列式が{{Mvar|0}}になる{{Mvar|f}}に対しては<math>f^*(c(\xi))=c(f^*(\xi))</math>が成立する必要はないし、次元が異なるベクトルバンドル間の写像に関してもこの性質が成立する必要はない。

第二に、本項では多くの教科書と同様、ファイバーバンドルの底空間{{Mvar|B}}が[[CW複体]]である場合に限定して特性類を定義したが、より一般の空間、例えば[[パラコンパクト空間|パラコンパクト]]な位相空間に対しても特性類を定義できる<ref name=":0">[[#Mitchell]] pp.24-25.</ref>。ただしこの場合本項で述べる性質のいくつかは成立しない<ref name=":0" />。なお幾何学における多くの用途ではCW複体を対象にすれば十分である。実際、任意の可微分多様体は[[複体|単体的複体]]、したがってCW複体と位相同型になる事が知られており<ref name=":1">[[#Friedl]] p.10.</ref>、（可微分とは限らない）位相多様体もコンパクトな場合はCW複体とホモトピー同型になる事が知られている<ref name=":1" />。さらにいえば任意の位相空間はCW複体と{{仮リンク|弱ホモトピー同型|en|Weak homotopy equivalent}}である<ref>[[#Davis]] p.186.</ref>。

また本項では底空間{{Mvar|B}}に対してはCW複体である事を要求したものの、構造群''G''、ファイバー{{Mvar|F}}、全空間{{Mvar|E}}は（CW複体とは限らない）任意の位相群、位相空間でよい。

==== ホモトープな写像の特性類 ====

構造群を持つファイバーバンドルの性質として以下が知られている：{{math theorem|定理{{Anchors|同じホモトピークラスの写像は同じバンドルを誘導する}}|{{mvar|X}}、{{mvar|Y}}を位相空間とし、<math>\xi=(E,Y,\pi)</math>を位相群{{mvar|G}}を構造群として持つ{{mvar|F}}-バンドルとし、さらに2つの連続写像
:<math>f,g~:~X \to Y</math>
が[[ホモトピー|ホモトープ]]であるとする。このとき{{mvar|f}}、{{mvar|g}}による引き戻し<math>f^*(\xi)</math>、<math>g^*(\xi)</math>は自然に同型である。
よって特に任意の特性類{{mvar|c}}に対し、
:<math>c(f^*(\xi))=c(g^*(\xi))</math>}}

すなわち特性類を考える上では、底空間の間の写像はホモトピークラスのみを考慮すればよい。

==== 厳密な定義 ====
以上では特性類の定義に「対応関係」という未定義の言葉を使ったが、[[圏論]]の概念を使えばこうした未定義の語に頼らずに特性類の概念を定義できる：{{math theorem|定義|{{mvar|G}}、{{Mvar|A}}、{{Mvar|q}}を[[#特性類の定義|上の定義]]と同様に取る。対象をCW複体、射を連続写像のホモトピークラスとする圏{{math|{{mathbf|CW}}}}をとし、さらに{{math|{{mathbf|Set}}}}を集合の圏とし、
[[反変関手]]
: <math>b~:~\mathbf{CW}\to\mathbf{Set}</math>
を以下のように定義する：
* {{math|{{mathbf|CW}}}}の対象{{mvar|X}}に対し、{{mvar|X}}を底空間とする{{mvar|F}}-バンドル（で{{mvar|G}}を構造群に持つもの）のホモトピーによる同型類全体の集合<ref group="注">{{mvar|F}}-バンドルの定義によっては{{mvar|X}}上の{{mvar|F}}-バンドル全体は集合ではなく真のクラスになってしまうという問題を抱える。しかし例えば<math>\{U\times F\mid U \subset X,~U</math>は開集合<math>\}</math>から作る事ができる{{mvar|F}}-バンドルのみ考える定義を採用すれば、主{{mvar|F}}-バンドル全体は集合となり、したがってこのこの同型類も集合になるので問題が回避できる。</ref>を{{math|''b''(''X'')}}と定義する
* {{math|{{mathbf|CW}}}}の対象間の射<math>[f]~:~X\to Y</math>に対し、<math>b(f)=[f^*]</math>と定義する。ここで<math>[f]</math>はホモトピークラスであり、<math>f^*</math>はバンドルの引き戻し<math>f^*~:~\xi\in b(Y)\mapsto f^*(\xi)\in b(X)</math>である。

このとき、次数{{Mvar|q}}の{{Mvar|A}}係数コホモロジー群における構造群{{mvar|G}}を持つ{{mvar|F}}-バンドルに関する'''特性類'''とは、反変関手<math>b</math>から反変関手
:<math>H^q(-,A)~:~X\in\mathbf{CW}\mapsto H^q(X,A)\in\mathbf{Set}</math>
への[[自然変換]]の事である。また構造群{{Mvar|G}}を持つ{{Mvar|F}}-バンドル<math>\xi</math>（の同型類）の{{mvar|c}}による像<math>c(\xi)</math>の事を{{mvar|ξ}}の({{mvar|c}}に関する)'''特性類'''と呼ぶ。|note='''特性類の厳密な定義'''}}なお、上述の特性類の定義において圏{{Math|{{mathbf|CW}}}}の射は連続写像としたが、下記の定理より、これを胞体写像に変えても定義は同値になる：{{math theorem|定理|{{mvar|X}}、{{mvar|Y}}をCW複体とすると、
任意の連続写像<math>f~:~X \to Y</math>は胞体写像({{lang-en-short|cellular map}})とホモトープである<ref>[[#May]] p.76.</ref>。|note='''胞体近似定理'''（{{lang-en-short|cellular approximation theorem}}）}}

特性類に登場するコホモロジーとして、特異コホモロジーより簡便な（だが特異コホモロジーと同値である）胞体コホモロジーを用いる場合は議論に胞体写像を用いる必要があるのでこの定理は有用である。

=== ファイバーバンドルとその主バンドルの関係 ===

以下の事実は特性類を具体的に定義する上で鍵となる重要な性質である：{{math theorem|定理|構造群{{mvar|G}}のファイバー{{Mvar|F}}への作用が効果的であれば<ref name="名前なし-20230316125856-2">[[#Maxim]] p.2.</ref>、構造群{{mvar|G}}を持つ{{Mvar|F}}-バンドルと、構造群''G'' を持つ[[主束|主''G''-バンドル]]と1対1対応する<ref>[[#Maxim]] p.10.</ref>。}}

この定理と特例類の定義からファイバーバンドルの特性類と主バンドルの特性類が1対1対応するという重要な事実が明らかに従う：{{math theorem|定理|{{mvar|G}}が{{mvar|F}}に効果的に作用しているとき、以下が成立する
* 構造群{{mvar|G}}を持つ{{mvar|F}}-バンドル<math>\phi</math>に対応する主{{mvar|G}}-バンドルを<math>\rho_{\phi}</math>とし、{{mvar|c}}を主{{mvar|G}}-バンドルの特性類とすると、<math>c'(\phi):=c(\rho_{\phi})</math>は構造群{{mvar|G}}を持つ-{{mvar|F}}バンドルの特性類である。
* 逆に主{{mvar|G}}-バンドル<math>\rho</math>に対応する{{mvar|F}}-バンドルを<math>\phi_{\rho}</math>とすると、{{mvar|d}}を構造群{{mvar|G}}を持つ{{mvar|F}}-バンドルの特性類とすると、<math>d'(\rho):=d(\phi_{\rho})</math>は主{{mvar|G}}-バンドルの特性類である。}}

この事実から{{Anchors|主バンドルに対して特性類を定義できるのが必要十分}}'''ファイバーバンドルに対して特性類を定義するには主バンドルに対して特性類が定義できる事が必要十分である'''事がわかる。そこで以下、おもに主バンドルにフォーカスして特性類の議論をすすめる事とする。

なお上の定理では{{mvar|G}}が{{mvar|F}}に効果的に作用している事を仮定しているが、多くの場合この仮定は必須ではない。実際、{{Mvar|F}}が十分性質の良い空間、たとえはCW複体であれば、{{mvar|G}}の{{mvar|F}}への作用が連続である必要十分条件は、{{mvar|G}}の{{mvar|F}}へ作用のから定まる写像<math>\phi~:~G \to \mathrm{Homeo}(F)</math>が（<math>\mathrm{Homeo}(F)</math>に[[コンパクト開位相]]を入れたとき）連続になる事である<ref name="名前なし-20230316125856-2"/>。よって{{mvar|G}}の作用が忠実ではない場合であっても、写像<math>\phi</math>の[[核 (代数学)|カーネル]]で割った位相群<math>G/\mathrm{ker}\phi</math>は{{mvar|F}}へ忠実かつ連続に作用するので、{{mvar|F}}-バンドルの特性類を定義するには主<math>G/\mathrm{ker}\phi</math>-バンドルの特性類を定義すれば良い。

== 分類空間 ==
本節では位相群の'''分類空間'''のいう概念を導入し、分類空間の概念を用いて主バンドルの特性類の概念を全く別の角度から特徴づける。この分類空間を用いた特性類の定義は、後の節で特性類の具体例を構築する上で非常に有益である。

=== 定義と性質 ===

==== 定義 ====
分類空間の概念を定義するため、まず以下の概念を定義する。

{{math theorem|定義|位相空間{{mvar|X}}が'''{{仮リンク|弱可縮|en|weakly contractible}}'''であるとは、任意の自然数{{mvar|n}}に対し、{{mvar|n}}次の[[ホモトピー群]]<math>\pi_n(X)</math>が{{mvar|0}}になる事である。}}
弱可縮の概念を用いて、分類空間の概念は以下のように定義される：

{{math theorem|定義|{{mvar|G}}を位相群とする。<math>(P,B,\pi)</math>を主{{mvar|G}}-バンドルで{{mvar|P}}が弱可縮なものとするとき、{{mvar|B}}の事を{{mvar|G}}の'''[[分類空間]]'''（{{lang-en-short|classifying space}}）といい、<math>(P,B,\pi)</math>を（あるいは単に{{mvar|P}}を）'''普遍{{mvar|G}}-バンドル'''（{{lang-en-short|universal G-bundle}}）という<ref name="Mitchel13">[[#Mitchell]] pp.13-14.</ref>。}}「分類空間」という名称の由来は次節に回すが、分類空間は必ず存在し、本質的に一意である：{{math theorem|定理|任意の位相群{{mvar|G}}に対し、分類空間とその上の普遍{{mvar|G}}-バンドルが存在する。しかも分類空間はcanonicalなホモトピー同型を除いて一意であり、普遍{{mvar|G}}-バンドルも{{mvar|G}}-ホモトピー同型を除いて一意である。さらに分類空間としてCW複体を取る事が可能である<ref name="Mitchel13" />。|note='''普遍{{mvar|G}}-バンドルの存在性と本質的な一意性'''{{Anchors|普遍バンドルの存在一意性}}}}{{math theorem|記号の定義|{{mvar|G}}の（ホモトピー同型を除いて）一意に存在する分類空間、普遍{{mvar|G}}-バンドルをそれぞれ{{mvar|BG}}、{{mvar|PG}}と表記する。}}上述したように、分類空間はホモトピー同型を除いて一意ではあるものの、同一の位相群に対し位相同型ではない複数の分類空間が存在しうる。このため位相群に対する個々の分類空間の事を分類空間の'''モデル'''（{{Lang-en-short|model}}）という<ref name="Mitchel13" />。

==== 分類定理 ====
分類空間はその名称が示す通り、与えられた底空間上の{{mvar|G}}-バンドルは、底空間から普遍{{mvar|G}}-バンドル<math>(PG,BG,\pi_G)</math>への写像のホモトピークラスにより完全に分類される：

{{math theorem|定理|{{mvar|G}}を位相群とし、<math>(P,B,\pi_G)</math>を主{{mvar|G}}-バンドルとする。
さらに{{mvar|X}}を任意のCW複体とし、<math>[X,B]</math>を{{mvar|X}}から{{mvar|B}}への連続写像のホモトピークラス全体の集合とし、<math>\mathcal{P}_{G}(X)</math>を{{mvar|X}}上の主{{mvar|G}}-バンドルの同型類の集合とする。

このとき<math>(P,B,\pi_G)</math>が普遍{{mvar|G}}-バンドルである必要十分条件は任意のCW複体{{mvar|X}}に対し、
:<math>[f]\in[X,B]\mapsto f^*(P)\in \mathcal{P}_{G}(X)</math>
が全単射な事である<ref name="Mitchel13" />。ここで<math>f^*(P)</math>は<math>f~:~X\to B</math>による{{mvar|P}}の{{mvar|X}}への引き戻しである。|note='''分類定理'''{{Anchors|分類定理}}}}なお、上の定理において写像<math>[f]\in[X,B]\mapsto f^*(P)\in \mathcal{P}_{G,F}(X)</math>が[[well-defined]]な事は、ホモトープな２つの写像が引き戻したバンドルは互いに同型な事だという[[#同じホモトピークラスの写像は同じバンドルを誘導する|すでに見た事実]]から従う。

上記の定理から、{{Mvar|X}}上の任意の主{{Mvar|G}}-バンドル{{Mvar|ξ}}に対し、写像<math>f~:~X\to B</math>がホモトピー同値を除いて一意に定まる。この{{Mvar|f}}の事を{{Mvar|ξ}}の'''分類写像'''（{{Lang-en-short|classifying map}}）という<ref name=":4">[[#Bruner]] p.21.</ref>。

構造群{{Mvar|G}}を持つファイバーバンドルと主{{Mvar|G}}-バンドルは1対1対応するので、上記の定理から一般のファイバーバンドルに対する分類定理が系として従う：{{math theorem|系|{{mvar|G}}を位相群とし、<math>(P,B,\pi_G)</math>を普遍{{mvar|G}}-バンドルとし、{{mvar|F}}を{{mvar|G}}が忠実に作用する位相空間とし、<math>(E,B,\pi_G)</math>を<math>(P,B,\pi_G)</math>に随伴する{{mvar|F}}-バンドルとする。さらにCW複体{{mvar|X}}に対し、構造群{{mvar|G}}を持つ{{mvar|X}}上の{{mvar|F}}-バンドル全体の集合を<math>\mathcal{E}_{G,F}(X)</math>とする。

このとき、任意のCW複体{{mvar|X}}に対し、
:<math>[f]\in[X,B]\mapsto f^*(E)\in \mathcal{E}_{G,F}(X)</math>
が全単射である<ref>[[#Bruner]] p.19.</ref>。|note='''ファイバーバンドルに対する分類定理'''}}
分類定理の場合と同様、{{Mvar|X}}上の{{Mvar|F}}-バンドル{{Mvar|ξ}}に対応する写像<math>f~:~X\to B</math>を{{Mvar|ξ}}の'''分類写像'''（{{Lang-en-short|classifying map}}）という<ref name=":4" />。

==== 離散群の分類空間 ====
{{Mvar|G}}が離散群である場合は、定義より明らかに次が成立する：

{{math theorem|定理|[[離散群]]{{mvar|G}}に対し、{{mvar|G}}の{{仮リンク|アイレンベルグ・マックレーン空間|en|Eilenberg-Maclane space}}({{lang-en-short|Eilenberg-Maclane space}})<math>K(G,1)</math>、およびその[[被覆空間|普遍被覆空間]]<math>\pi~:~P\to K(G,1)</math>は{{mvar|G}}の分類空間、普遍{{mvar|G}}バンドルである<ref>[[#Mitchell]] p.15.</ref>。}}この意味において、分類空間とは離散群におけるアイレンベルグ・マックレーン空間の概念を位相群に拡張したものである。

==== 準同型から誘導される写像 ====
2つの位相群{{Mvar|G}}、{{Mvar|H}}の間の連続な準同型写像<math>\varphi~:~G\to H</math>が与えられたとき、{{Mvar|φ}}から分類空間の間の写像<math>B\varphi~:~BG\to BH</math>を定義できる。

この事を見るために主バンドルの一般論を簡単に復習する。<math>\pi~:~P\to X</math>を主{{Mvar|G}}-バンドルとし、<math>\varphi~:~G\to H</math>を連続準同型写像とするとき、
:<math>P\times_{\varphi} H </math>
を<math>PG\times H </math>を同値関係
:<math>(ag,h)\sim (a,\varphi(g)h)~\text{ for some}~g\in G</math>
で割った空間とする事で、'''バランス積'''（{{Lang|en|balanced product}}<ref>[[#Mitchell]] p.4.</ref>）と呼ばれる{{Mvar|X}}上の主{{Mvar|H}}-バンドル
:<math>[(a,h)]\in P\times_{\varphi} H \mapsto \pi(a) \in X </math>
を構成できる。そこで<math>B\varphi~:~BG\to BH</math>を次のように定義する：
{{math theorem|記号の定義{{Anchors|分類空間への誘導写像}}|
{{Mvar|G}}、{{Mvar|H}}を位相群とし、<math>\varphi~:~G\to H</math>を連続準同型写像とする。
普遍{{Mvar|G}}-バンドル<math>\pi~:~PG\to BG</math>から主{{Mvar|H}}-バンドル<math>PG\times_{\varphi} H \to BG </math>を構成すると、[[#分類定理|分類定理]]よりこの主{{Mvar|H}}-バンドルに対応する（ホモトピー同値を除いて一意に定まる）分類写像を
:<math>B\varphi~:~BG\to BH </math>
と表記する<ref name="Mitchell15" />。}}

実はこの対応関係は関手になっている：{{math theorem|定理|以下のように{{mvar|B}}を定義すると、{{mvar|B}}は位相群の圏からCW空間のホモトピー同値類の圏への関手である<ref name="Mitchell15">[[#Mitchell]] p.15.</ref>：
* 位相群{{mvar|G}}に{{mvar|BG}}を対応させる
* 連続準同型写像<math>\varphi~:~G\to H</math>に<math>B\varphi~:~BG\to BH</math>を対応させる。}}

==== 分類空間の性質 ====

本節では、後で特性類を計算するとき必要となる分類空間の性質を述べる。

分類空間の関手{{mvar|B}}は直積に関して以下のように振る舞う。
{{math theorem|定理|{{mvar|G}}、{{mvar|H}}を位相群とするとき、
: <math>B(G \times H) \approx BG \times_k BH \approx_w BG \times BH</math>
が成立する<ref name="Mitchell17-18">[[#Mitchell]] pp.17-18.</ref>。

ここで「<math>BG \times BH</math>」は位相空間としての直積であり、「<math>BG \times_k BH</math>」は{{mvar|BG}}と{{mvar|BH}}の位相空間としての直積から誘導される{{仮リンク|コンパクト生成位相|en|Compactly generated space}}を入れた位相空間である。「<math>\approx</math>」は[[自然変換|自然]]なホモトピー同値であり、「<math>\approx_w</math>」は自然な{{仮リンク|弱ホモトピー同値|en|Weak equivalence (homotopy theory)}}である<ref name="Mitchell17-18" />。
ここで'''弱ホモトピー同値'''とは、任意の{{mvar|n}}に対しホモトピー群{{mvar|π{{sub|n}}}}が同型になる事を指す。
|note='''直積の分類空間'''{{Anchors|直積の分類空間}}}}
なお[[圏論|圏論的]]に言えば、「<math>X \times_k Y</math>」はコンパクト生成位相空間の圏における圏論的な直積になっている<ref name="Mitchell17-18" />。



{{math theorem|定理|{{mvar|G}}を位相群とし、{{mvar|H}}をその部分位相群とする。このとき{{mvar|BG}}、{{mvar|BH}}のモデルを適切に選ぶと、包含写像<math>\iota~:~H\hookrightarrow G</math>が誘導する写像<math>B\iota~:~BH\to BG</math>は各ファイバーが<math>G/H</math>と位相同型なファイバーバンドルになる<ref>[[#Cohen]] pp.59-60.</ref>。特に{{mvar|H}}が{{mvar|G}}の正規部分群であれば、<math>B\iota~:~BH\to BG</math>は<math>G/H</math>-主バンドルになる。
|note='''部分群の分類空間'''{{Anchors|部分群の分類空間}}}}
{{math proof|
一般に{{mvar|G}}-主バンドル<math>P \to X</math>には、{{mvar|P}}に対する{{mvar|G}}の自然な作用があり、この作用で{{mvar|P}}を割った空間<math>P/G</math>は{{mvar|X}}と位相同型であるので、普遍{{mvar|G}}バンドル<math>\pi_G~:~PG\to BG</math>をこの{{mvar|G}}の作用で割ると<math>PG/G\approx BG</math>が成立する。

{{mvar|H}}は{{mvar|G}}の部分群なので、{{mvar|H}}の作用で{{mvar|P}}を割った<math>PG/H</math>を考える事ができる。このとき<math>PG \to PG/H</math>は{{mvar|H}}-主バンドルであり、しかも{{mvar|PG}}の定義から{{mvar|PG}}は弱可縮なので、<math>PG \to PG/H</math>は{{mvar|H}}-普遍バンドルである。よって<math>PG/H</math>は{{mvar|BH}}のモデルの１つであり、{{mvar|PG}}は対応する{{mvar|H}}-普遍バンドルである。

そこで以下<math>PH=PG</math>、<math>BH=PG/H</math>とみなすと、可換図式
:<math>
\begin{array}{ccc}
PH=PG  & \overset{id}{\to} & PG\\
\downarrow & \circlearrowright & \downarrow \\
BH=PG/H &\to &BG=PG/G
\end{array}
</math>
が考えられ、この可換図式にバランス積を取ることで、
:<math>
\begin{array}{ccc}
PH=PG\times_H G  & \to & PG \times_G G\approx PG\\
\downarrow & \circlearrowright & \downarrow \\
BH=PG/H &\to &BG=PG/G
\end{array}
</math>
と書ける。<math>B\iota</math>の定義から<math>B\iota~:~BH\to BG</math>はバランス積<math>PH \times_{\iota} G \to BH=PG/H</math>の分類写像であったので、上述の議論から<math>B\iota</math>は商写像
: <math>BH=PG/H \to BG=PG/G</math>
に一致する。<math>BH=PG/H \to BG=PG/G</math>は<math>G/H</math>をファイバーとするバンドルであり、特に{{mvar|H}}が正規部分群であれば<math>G/H</math>-主バンドルであるので定理が示された。
|drop=yes}}

=== 分類空間による特性類の特徴づけ ===

分類空間の概念を用いる事により、主バンドルに対する特性類の概念を以下のように特徴づける事ができる：{{math theorem|定理|<math>BG</math>を位相群{{mvar|G}}の分類空間とし、{{mvar|F}}を{{mvar|G}}が効果的に作用する位相空間とし、さらに{{mvar|A}}をアーベル群とする。

このとき構造群{{mvar|G}}を持つ{{mvar|F}}-バンドルの特性類と{{mvar|BG}}のコホモロジー群<math>H^*(BG;A)</math>の元は1対1対応する<ref name="名前なし-20230316125856"/>。
|note='''分類空間による特性類の特徴づけ'''{{Anchors|分類空間による特性類の定義}}}}
上述の定理の1対1関係は具体的に以下のようにかける。すでに述べたように構造群{{mvar|G}}の忠実な作用を持つ任意の{{mvar|F}}-バンドルの特性類は主{{mvar|G}}-バンドルの特性類と主{{mvar|G}}-バンドルの1対1対応するのでこの場合に話を限定する。
まず主{{mvar|G}}-バンドルの任意の特性類{{Mvar|c}}に対し、
: <math>c(PG)\in H^*(BG;A)</math>
が対応する。逆に<math>c_G\in H^*(BG;A)</math>を任意に選ぶと、主{{mvar|G}}-バンドル<math>\xi=(P,X,\pi)</math>に対し、[[#分類定理|分類定理]]により分類写像<math>f_{\xi}~:~X\to BG</math>がホモトピーを除いて一意に定まるので、{{Mvar|X}}の{{Mvar|c}}に対する特性類を
:<math>c(\xi):=f_{\xi}{}^*(c_G)\in H^*(X;A)</math>
により定義できる。

上の定理から、<math>H^*(BG;A)</math>の元を'''普遍特性類'''({{lang-en-short|universal characteristic class}})という事がある。上の定理は普遍特性類と特性類が1対1対応する事を意味している。

定理の証明は以下の通りである：
{{math proof|
まずコホモロジーの元<math>f_{\xi}{}^*(c_G)</math>はホモトピーに依存せずに定まるので、<math>c(\xi)=f_{\xi}{}^*(c_G)</math>は[[well-defined]]である。

次に、<math>c(\xi)=f_{\xi}{}^*(c_G)</math>が[[#特性類の定義|前の節で述べた特性類の定義]]を満たす事を示す。CW複体{{mvar|X}}、{{mvar|Y}}の間の任意の連続写像<math>g~:~X\to Y</math>と{{mvar|Y}}上の任意の主{{mvar|G}}-バンドル<math>\eta=(P,Y,\pi)</math>に対し、{{mvar|η}}の分類写像を<math>f_{\eta}~:~Y \to BG</math>とし、{{mvar|X}}上のバンドル<math>\xi:=g^*(\eta)</math>の分類写像を<math>f_{\xi}~:~X \to BG</math>とすると、<math>f_{\xi}{}^*(PG)\approx \xi=g^*(\eta)</math>と<math>g^*(f_{\eta}{}^*(PG))\approx g^*(\eta)</math>は同型なバンドルを定めるので、分類定理より<math>f_{\xi}</math>と<math>f_{\eta}\circ g</math>はホモトープである。よって
:<math>c(g^*(\eta))=c(\xi)=f_{\xi}{}^*(c_G)=g^*(f_{\eta}{}^*(c_G))=g^*(c(\eta))</math>
が成立する。

定理の対応関係が1対1である事は明らかである。
|drop=yes}}

== ベクトルバンドルの構造群の分類空間 ==
特性類の概念は原理的には任意の位相群の主バンドルに対して定義できるが、研究が進んでいるのはベクトルバンドル（の主バンドル）に対する特性類である。

そこでベクトルバンドルの特性類について記述するための準備として、本節ではベクトルバンドルの構造群の分類空間を具体的に記述する。

すなわち本節では<math>K=\mathbb{C},\mathbb{R}</math>に対し、[[一般線型群]]<math>GL_n(K)</math>の分類空間を記述する。さらに<math>\mathbb{R}</math>の場合にはベクトルバンドルに向き付けが定義可能なので、向き付け可能な<math>\mathbb{R}</math>上ベクトルバンドルの構造群である<math>GL_n^+(\mathbb{R})</math>の分類空間についても記述する。ここで<math>GL_n^+(\mathbb{R})</math>は[[行列式]]が正の<math>\mathbb{R}</math>上可逆行列のなす群である。


本節ではさらに、[[ユニタリ群]]<math>U_n</math>、[[直交群]]<math>O_n</math>、[[回転群]]<math>SO_n</math>の分類空間についても記述する。後述するように<math>GL_n(\mathbb{C})</math>、<math>GL_n(\mathbb{R})</math>、<math>GL_n^+(\mathbb{R})</math>の分類空間は、実はそれぞれ<math>U_n</math>、<math>O_n</math>、<math>SO_n</math>の分類空間と等しい。

=== スティーフェル多様体とグラスマン多様体 ===
{{Math|''GL{{sub|n}}''(''K'')}}の分類空間を記述する為、本節では{{仮リンク|スティーフェル多様体|en|Stiefel manifold}}と{{仮リンク|グラスマン多様体|en|Grassmannian}}を定義する。

後述するようにこれらはそれぞれ普遍{{Math|''GL{{sub|n}}''(''K'')}}-バンドルの全空間、分類空間になる。{{math theorem|定義|<math>K=\mathbb{C}, \mathbb{R}</math>とし、<math>W</math>を{{mvar|K}}上[[計量ベクトル空間]]とする。

<math>W</math>の{{mvar|n}}個の一次独立なベクトルの組を<math>W</math>上の{{mvar|n}}-'''フレーム'''という。さらに{{mvar|n}}個のベクトルがすべて長さ1で互いに直交しているものを{{mvar|n}}-'''正規直交フレーム'''という。

: <math>V_nW:=\{W</math>上{{mvar|n}}-のフレーム<math>\}</math>
とし、さらに
: <math>\{W</math>上の{{mvar|n}}-正規直交フレーム<math>\}</math>
を<math>V^U_nW</math>（<math>K=\mathbb{C} </math>の場合）、もしくは<math>V^O_nW</math>（<math>K=\mathbb{R} </math>の場合）と書く事にする。

<math>V_nW</math>、<math>V^U_nW</math>、<math>V^O_nW</math>の事を{{mvar|W}}上の{{mvar|n}}次元'''{{仮リンク|スティーフェル多様体|en|Stiefel manifold}}'''（{{lang-en-short|Stiefel manifold}}）という<ref name="Bruner17">[[#Bruner]] p.17、[[#Mitchell]] pp.14</ref><ref group="注">文献により<math>V_nW</math>の事をスティーフェル多様体と呼ぶもの、<math>V^U_nW</math>、<math>V^O_nW</math>の事をスティーフェル多様体と呼ぶもの、双方をスティーフェル多様体と呼ぶものがある。</ref>。|note='''スティーフェル多様体'''}}{{Mvar|W}}が次元{{Mvar|m}}の有限次元ベクトル空間の場合は、<math>V_nW</math>、<math>V^U_nW</math>、<math>V^O_nW</math>は集合として自然に
:<math>\begin{align}
V_nW&\simeq \mathrm{GL}_m(K)/\mathrm{GL}_{m-n}(K)\\
V_n^UW&\simeq U(m)/U(m-n)~~\text{when }K=\mathbb{C}\\
V^O_nW&\simeq O(m)/O(m-n)~~\text{when }K=\mathbb{R}
\end{align}</math>
という同一視ができ<ref group="注"><math>V_n W</math>に対するこの同一視の詳細は下記の通り。<math>V^U_n W</math>、<math>V^O_n W</math>も同様。

{{Mvar|W}}の基底<math>e=(e_1,\ldots,e_m)</math>を1つfixすると、写像<math>M~:~A\in \mathrm{GL}_m(K) \mapsto Ae</math>、<math>\mathrm{GL}_m(K)</math>の元と{{Mvar|W}}の{{Mvar|m}}-フレーム（すなわち{{Mvar|W}}のの基底）が1対1に対応する。

写像{{Mvar|m}}-フレームの後ろ{{Mvar|m-n}}本のベクトルを「忘れる」写像<math>F~:~(f_1,\ldots,f_m)\mapsto (f_1,\ldots,f_n)</math>により、{{Mvar|m}}-フレームに{{Mvar|n}}-フレームを対応させる事ができる。

この２つを合成した<math>F\circ H</math>を考える事で、<math>\mathrm{GL}_m(K)</math>が{{Mvar|n}}-フレーム全体の集合<math>V_n W</math>に推移的に[[群作用|作用]]するが、この作用のkernelは<math>\mathrm{GL}_n(K)</math>であるので、<math>V_n W</math>は<math>\mathrm{GL}_m(K)/\mathrm{GL}_n(K)</math>と同一視できる。</ref>、上式右辺には[[多様体]]としての構造が入る事が[[リー群]]の一般論<ref group="注">一般に、リー群{{Mvar|G}}を閉部分リー群{{Mvar|H}}で割った[[等質空間]]{{Mvar|G/H}}には{{Mvar|G}}から多様体としての構造が誘導される。</ref>から従うので、スティーフェル「多様体」と呼ぶ。{{Mvar|W}}が無限次元の場合は<math>V_nW</math>、<math>V^U_nW</math>、<math>V^O_nW</math>は有限次元多様体にはならないが、言葉を混用してこの場合もスティーフェル「多様体」と呼ぶ。{{math theorem|定義|<math>K</math>、<math>W</math>を上と同様に取り、{{mvar|W}}の{{mvar|n}}次元部分ベクトル空間全体の集合<math>G_nW</math>を{{mvar|W}}上の{{mvar|n}}次元'''{{仮リンク|グラスマン多様体|en|Grassmannian}}'''（{{lang-en-short|Grassmannian}}）という<ref name="Bruner17" />。
また、<math>K=\mathbb{R}</math>のとき、{{mvar|W}}の向きづけられた{{mvar|n}}次元部分ベクトル空間全体の集合<math>\tilde{G}_nW</math>を{{mvar|W}}上の{{mvar|n}}次元'''向きづけられたグラスマン多様体'''（{{lang-en-short|oriented Grassmannian}}）という<ref name="Bruner17" />。
|note='''グラスマン多様体'''}}スティーフェル多様体と同様、{{Mvar|W}}が次元{{Mvar|m}}の有限次元ベクトル空間であれば、
:<math>G_nW\simeq \mathrm{GL}_m(K)/(\mathrm{GL}_{n}(K)\times \mathrm{GL}_{m-n}(K))\simeq
\begin{cases}
U(m)/(U(n)\times U(m-n))~&~\text{when }K=\mathbb{C}\\
O(m)/(O(n)\times O(m-n))~&~\text{when }K=\mathbb{R}
\end{cases}
</math>
および
:<math>\tilde{G}_nW \simeq \mathrm{GL}_m(K)/(\mathrm{GL}^+_{n}(K)\times \mathrm{GL}_{m-n}(K)) \simeq O(m)/(SO(n)\times O(m-n))~~\text{when }K=\mathbb{R}

</math>
という同一視ができ、この同一視により、<math>G_nW</math>、<math>\tilde{G}_nW</math>に多様体としての構造が入る。

=== {{Math|''GL{{sub|n}}''(''K'')}}の分類空間の具体的記述 ===
スティーフェル多様体<math>V_nW</math>の元である{{mvar|n}}-フレームにそのフレームの貼る部分空間を対応させる事で商写像

: <math>\pi_n~:~V_nW \to G_nW</math>

を定義できる。<math>\pi_n~:~V^U_nW \to G_nW</math>、<math>\pi_n~:~V^O_nW \to G_nW</math>、<math>\pi_n~:~V^O_nW \to \tilde{G}_nW</math>も同様に定義できる。{{math theorem|定理|<math>K=\mathbb{C},\mathbb{R}</math>とし、<math>W</math>を{{mvar|K}}上の任意の計量ベクトル空間とする。このとき、
: <math>\pi_n~:~V_nW \to G_nW</math>、<math>\pi_n~:~V^U_nW \to G_nW</math>、<math>\pi_n~:~V^O_nW \to G_nW</math>、<math>\pi_n~:~V^O_nW \to \tilde{G}_nW</math>
はそれぞれ主{{math|''GL''{{sub|''n''}}(''K'')}}-バンドル、主{{math|''U''(''n'')}}-バンドル、主{{math|''O''(''n'')}}-バンドル、主{{math|''SO''(''n'')}}-バンドルである。
さらに[[包含写像]]
:<math>K^1\subset K^2\subset K^3 \subset \cdots</math>
の[[帰納極限|帰納的極限]]を
:<math>K^{\infty}:=\lim_{m\to\infty}K^m</math>
とし、{{mvar|W}}が{{mvar|K{{sup|∞}}}}の場合を考えると、これらはそれぞれ普遍{{math|''GL''{{sub|''n''}}(''K'')}}-バンドル、普遍{{math|''U''(''n'')}}-バンドル、普遍{{math|''O''(''n'')}}-バンドル、普遍{{math|''SO''(''n'')}}-バンドル（のモデルの1つ）である<ref>[[#Bruner]] p.18.</ref>。|note={{math|''GL''{{sub|''n''}}(''K'')、''U''(''n'')、''O''(''n'')、''SO''(''n'')}}の分類空間}}

上記の定理に関する留意点を述べる。<math>K=\mathbb{C}, \mathbb{R}</math>'''に対する'''{{Math|''GL{{sub|n}}''(''K'')}}'''の分類空間は'''{{Math|''U''(''n'')、''O''(''n'')}}'''の分類空間と同一な空間'''<math>G_nK^{\infty}</math>'''である'''。

これはCW複体上の任意のベクトルバンドルには必ず[[内積]]が定義でき、[[グラム・シュミットの正規直交化法]]により{{Math|''GL{{sub|n}}''(''K'')}}が{{Math|''U''(''n'')、''O''(''n'')}}に可縮である事が理由である<ref name=":2">[[#Mitchell]] pp.14,19.</ref>。

=== 普遍{{Mvar|n}}-平面バンドル ===
[[#分類定理|分類定理]]で述べたように、{{Mvar|G{{sub|n}}K{{sup|∞}}}}上の主{{Math|''GL{{sub|n}}''(''K'')}}-バンドル{{Mvar|V{{sub|n}}K{{sup|∞}}}}に随伴する{{Mvar|n}}次元ベクトルバンドルは、任意のCW複体{{Mvar|X}}上の{{Mvar|n}}次元ベクトルバンドルを分類する上で有益である。このため{{Mvar|V{{sub|n}}K{{sup|∞}}}}に随伴する{{Mvar|n}}次元ベクトルバンドルの事を'''普遍{{Mvar|n}}-平面バンドル'''（{{Lang-en-short|universal ''n''-plane bundle}}）<ref name=":3">[[#May]] pp.188-189.</ref>と呼ぶ。

バンドルの一般論から、普遍{{Mvar|n}}-平面バンドルは<math>(V_nK^{\infty} \times K^n)/GL_n(K)
</math>と表記できるが、より具体的に表記する事も可能である。



グラスマン多様体{{Mvar|G{{sub|n}}K{{sup|m}}}}は{{Mvar|K{{sup|m}}}}の{{Mvar|n}}次元部分ベクトル空間全体のなす多様体なので、グラスマン多様体の元{{Mvar|V}}＝ベクトル空間上のファイバーとして、{{Mvar|V}}自身を取ったベクトルバンドルを定義でき、これをグラスマン多様体の'''{{仮リンク|トートロジカル・バンドル|en|Tautological bundle}}'''と呼ぶが、{{Mvar|G{{sub|n}}K{{sup|∞}}}}のトートロジカル・バンドルが普遍{{Mvar|n}}-平面バンドルになっている。



具体的には
:<math>E^m_n:=\{(V,v)\in G_nK^m \times K^m \mid v\in V\}
</math>
とし、第一成分への射影<math>\pi^m_n~:~(V,v)\in E^m_n\mapsto V\in G_nK^m
</math>により<math>E^m_n
</math>を{{Mvar|G{{sub|n}}K{{sup|m}}}}上のベクトルバンドルとみなしたものが{{Mvar|G{{sub|n}}K{{sup|m}}}}のトートロジカル・バンドルであり、{{Math|''m''→∞}}に関する帰納的極限をとった
:<math>\pi_n~:~ E_n\to  G_nK^{\infty}
</math>
が普遍{{Mvar|n}}-平面バンドルになっている<ref name=":3" />。

== 複素ベクトルバンドルの特性類：チャーン類 ==
本章では、複素ベクトルバンドルの特性類である'''[[チャーン類]]'''について述べる。これまでの議論からわかるように、複素ベクトルバンドルの整数係数の特性類とは分類空間
:<math>BGL_n(\mathbb{C})=BU(n)=G_n\mathbb{C}^{\infty}</math>
のコホモロジー<math>H^*(BU(n);\mathbb{Z}) </math>の元と1対1対応するので、<math>H^*(BU(n);\mathbb{Z}) </math>の具体的構成を調べる事で複素ベクトルバンドルの特性類を決定できる。チャーン類は、<math>H^*(BU(n);\mathbb{Z}) </math>の生成元である。

=== {{math|1=''H''{{sup|*}}(''BU''(''n'');{{Unicode|ℤ}})}}の具体的記述 ===
チャーン類について記述するため、まず<math>H^*(BU(n);\mathbb{Z}) </math>の具体的構成を調べる。<math>n=1</math>に対しては以下が成立する：
{{math theorem|補題|{{Anchors|チャーン類の1次元の同型}}
<math>H^*(BU(1);\mathbb{Z})</math>を[[カップ積]]に関して[[次数付き環]]とみなしたとき、ある<math>\alpha\in H^2(BU(1);\mathbb{Z})</math>が存在し、
:<math>H^*(BU(1);\mathbb{Z}) =\mathbb{Z}[\alpha]</math>
が成立する<ref group="注">より厳密に言うと、多項式環<math>\mathbb{Z}[X]</math>から<math>H^*(BU(1);\mathbb{Z})</math>への写像で<math>X\mapsto \alpha</math>を満たすものがあり、しかもそれが環同型写像であるという事である。</ref>。ここで<math>\mathbb{Z}[\alpha]</math>は変数<math>\alpha</math>に関する<math>\mathbb{Z}</math>に関する多項式環である。}}
なお、上の補題において<math>\alpha</math>は偶数次のコホモロジーの元なので、<math>\mathbb{Z}[\alpha]</math>上カップ積は可換であるため、<math>\mathbb{Z}[\alpha]</math>が可換環であるという事実と矛盾しない。

一般の{{mvar|n}}に対して<math>H^*(BU(n);\mathbb{Z})</math>の具体的構造を求めるため、連続準同型写像<ref group="注">埋め込み<math>\iota~:~U(1)^n\to U(n)</math>の取り方は<math>\mathbb{C}^n</math>の基底の取り方に依存する。しかしこれらの埋め込みは<math>U(n)</math>上の内部自己同型で互いに移り合う関係にある（これは極大トーラスが内部自己同型を除いて一意だというリー群の一般論からも従う）ので、[[#内部自己同型の誘導する写像|後述する補題]]により、どの埋め込みもコホモロジー間に同一の写像<math>H^*(BU(n);\mathbb{Z}) \to H^*(BU(1)^n;\mathbb{Z})</math>を誘導する。よって特に、後述するチャーン類の定義は<math>\mathbb{C}^n</math>の基底の取り方によらず[[well-defined]]である。</ref>
:<math>\iota~:~U(1)^n \hookrightarrow U(n), ~~(A_1,\ldots,A_n)\mapsto A_1\oplus\cdots\oplus A_n</math>
を考える。ここで<math>A_1\oplus \cdots\oplus A_n</math>は<math>A_1,\ldots,A_n</math>を{{Math|''n''×''n''}}行列の対角成分に配置した<math>U(n)</math>の元である。（なお[[リー群]]の観点からは、<math>U(n)</math>の[[極大トーラス]]<math>U(1)^n</math>である）。このとき以下が成立する。
{{math theorem|補題|
<math>\iota</math>が誘導する写像
:<math>\iota^*~:~H^*(BU(n);\mathbb{Z}) \to H^*(BU(1)^n;\mathbb{Z})\approx H^*(BU(1);\mathbb{Z})\otimes\cdots \otimes H^*(BU(1);\mathbb{Z})=\mathbb{Z}[\alpha_1,\ldots,\alpha_n]</math>
は単射環準同型である。ここで{{Mvar|α{{sub|i}}}}は{{Mvar|i}}番目の<math>H^*(BU(1);\mathbb{Z})</math>の生成元である。
|note='''Splitting Principle'''}}
なお、上式においてコホモロジー環における積はカップ積である。また上式の値域における同型は[[#直積の分類空間|直積に対する分類空間の振る舞い]]と{{仮リンク|Künnethの公式|en|Künneth theorem}}、および[[#チャーン類の1次元の同型|上記の補題]]から従う。

以上の事実から、後は<math>H^*(BU(n);\mathbb{Z}) </math>の<math>\iota^*</math>による像が<math>\mathbb{Z}[\alpha_1,\ldots,\alpha_n] </math>のどのような部分集合に落ちるかを決定すれば、<math>H^*(BU(n);\mathbb{Z}) </math>を具体的に書きあらわす事ができる。

<math>H^*(BU(n);\mathbb{Z}) </math>の像を決定するため、主バンドル一般に対して成立する以下の事実を利用する：
{{math theorem|命題|{{Anchors|内部自己同型の誘導する写像}}
任意の位相群{{Mvar|G}}、および任意の<math>g\in G</math>に対し、{{Mvar|G}}上の[[内部自己同型]]<math>\varphi_g~:~h\mapsto ghg^{-1}</math>が{{Mvar|BG}}に誘導する写像
: <math>B\varphi_g~:~BG\to BG</math>
は[[恒等写像]]とホモトープである。
|}}
{{math proof|
命題を示すため、まず任意の{{Math|''u'' ∈ ''G''}}に対し、バランス積<math>P\times_{\varphi_u} G</math>は{{Mvar|G}}-主バンドルとして{{Mvar|P}}と同型である事を示す。実際、<math>P\times_{\varphi_u} G</math>は{{Math|''P'' × ''G''}}を同値関係<math>(a,h) \simeq (ag^{-1},\varphi_{u}(g)h)</math>で割ったものとして定義されるので、写像<math>\mu~:~P\to P\times_{\varphi_u} G</math>を<math>a \mapsto [(au,1)]</math>により定義すると、任意の<math>[(a,h)] \in P\times_{\varphi_u} G</math>は<math>(a,h)= (a,\varphi_u(\varphi_{u^{-1}}(h)))\simeq (a\varphi_{u^{-1}}(h),1)</math>を満たすので{{Mvar|μ}}は全射である。また明らかに<math>\mu(a)=\mu(b) \iff [(a,1)]=[(b,1)] \iff a=b</math>なので、{{Mvar|μ}}は単射でもある。{{Mvar|μ}}と{{Mvar|μ{{sup|-1}}}}の連続性の証明は省略する。


以上の事実を用いて命題を示す。定義より<math>B\varphi_g~:~BG \to BG</math>は主バンドル<math>PB \times_{\varphi_g} G \to BG </math>に対応する分類写像であり、上記の議論によりこの主バンドルは<math>PG  \to BG </math>自身に等しいので、分類定理より<math>B\varphi_A</math>は恒等写像とホモトープである。
|drop=yes}}

<math>A\in U(n)</math>に対し<math>\varphi_A~:~B\mapsto ABA^{-1}</math>を<math>U(n)</math>上の[[内部自己同型]]とすると、上述の命題より、<math>\varphi_{A} </math>がコホモロジー群に誘導する写像
:<math>B\varphi_{A}{}^*~:~ H^*(BU(n);\mathbb{Z})\to H^*(BU(n);\mathbb{Z}) </math>

は恒等写像である。単射<math>\iota</math>により<math>U(1)^n</math>を<math>U(n)</math>の部分群とみなし、<math>U(1)^n</math>の[[中心化群と正規化群|正規化群]]

:<math>N=\{A\in U(n)\mid \varphi_A(U(1)^n)= U(1)^n\}</math>

を<math>U(1)^n</math>の[[中心化群と正規化群|中心化群]]
:<math>Z=\{A\in U(n)\mid \forall B\in U(1)^n ~:~ \varphi_A(B)= B\}</math>

で割った<math>W=N/Z</math>を考え、
:<math>H^*(BU(1)^n;\mathbb{Z})^{W}:=\{u\in H^*(BU(1)^n ;\mathbb{Z})\mid \forall [A]\in W ~:~B\varphi_A|_{U(1)^n}{}^*(u)=u\} </math>

と定義する<ref group="注" name=":0"><math>\varphi_A</math>の<math>U(1)^n</math>への制限<math>\varphi_A|_{U(1)^n}~:~U(1)^n\to U(1)^n</math>は<math>U(1)^n</math>上の（自己同型ではあるが）内部自己同型ではないので、<math>\varphi_A|_{U(1)^n}</math>が<math>H^*(BU(1)^n;\mathbb{Z})\approx \mathbb{Z}[\alpha_1,\ldots,\alpha_n]</math>に誘導する写像

: <math>B\varphi_{A}|_{U(1)^n}{}^*~:~ H^*(BU(1)^n;\mathbb{Z})\to H^*(BU(1)^n;\mathbb{Z}) </math>
は恒等写像ではない事に注意されたい。
</ref>とこの定義は[[Well-defined]]である。ここで<math>[A]\in W=N/Z</math>は同値類を表す。
{{math proof|
{{Mvar|Z}}の元{{Mvar|A}}による内部自己同型写像<math>\varphi_A</math>は<math>U(1)^n</math>上の恒等写像なので条件式<math>\varphi_A{}^*(u)=u</math>は<math>[A]\in N/Z</math>の代表元の取り方によらない。

また図式
: <math>\begin{array}{lll}
 H^*(BU(n);\mathbb{Z}) & \overset{\iota^*}{\to} & H^*(BU(1)^n;\mathbb{Z})\\
 B\varphi_A{}^* \downarrow & & B\varphi_A|_{U(1)^n}{}^* \downarrow \\
 H^*(BU(n);\mathbb{Z}) & \overset{\iota^*}{\to} & H^*(BU(1)^n;\mathbb{Z})
\end{array} </math>
が可換である事から、<math>\iota^*</math>の像は確かに

: <math>H^*(BU(1)^n;\mathbb{Z})^{W} </math>
に落ちる事がわかる。
|drop=yes|title=well-definedである事の証明}}
このとき次の事実が従う事が知られている：{{math theorem|定理|写像
:<math>\iota^*~:~H^*(BU(n);\mathbb{Z}) \to H^*(BU(1)^n;\mathbb{Z})^W \approx \mathbb{Z}[\alpha_1,\ldots,\alpha_n]^W</math>
は環同型である<ref name="Bruner35">[[#Bruner]] p.35.</ref>。
}}一般に[[連結空間|連結]]な[[コンパクト空間|コンパクト]]リー群{{Mvar|G}}に対し、{{Mvar|G}}の極大トーラスを{{Mvar|T}}とするとき、{{Mvar|T}}の[[中心化群と正規化群|正規化群]]<math>N := \{g\in G\mid \varphi_g(T)=T \}</math>を[[中心化群と正規化群|中心化群<math>Z := \{g\in G\mid \forall t\in T ~:~\varphi_g(t)=t \}</math>]]で割った群
:<math>W(G) := N/Z</math>

の事を{{Mvar|G}}の'''[[ワイル群]]'''という。なお極大トーラスは共役を除いて一意に定まる事が知られているので、ワイル群は極大トーラスの取り方によらず同型になる。また{{Mvar|T}}の極大性から中心化群{{Math|''Z''(''G'')}}は実は{{Mvar|T}}自身に等しい。

明らかに前述の{{Mvar|W}}は<math>U(n)</math>のワイル群に相当する。後は<math>U(n)</math>のワイル群を決定しさえすれば、<math>H^*(BU(n);\mathbb{Z}) \approx H^*(BU(1)^n;\mathbb{Z})^W</math>の構造が決定できる。

=== チャーン類 ===
<math>P_{ij}~:~\mathbb{C}^n \to \mathbb{C}^n </math>を第{{Mvar|i}}成分と第{{Mvar|j}}成分を入れ替える行列とすると、明らかに<math>[P_{ij}]\in W </math>である。この事実を利用すると、以下の事実が示せる：
{{math theorem|定理|<math>U(n)</math>のワイル群<math>W=W(U(n))</math>は[[置換群]]と群同型であり、{{mvar|W}}は<math>U(1)^n</math>の成分の入れ替えとして<math>U(1)^n</math>に作用する。
|}}
{{math proof|
定理を示すために<math>U(1)^n</math>の<math>U(n)</math>における正規化群{{mvar|N}}から<math>A\in N</math>を任意に選び、{{mvar|A}}の形を決定する。

そのために<math>u_1,\ldots,u_n\in \mathbb{C}</math>を<math>|u_i|=1</math>を満たす相異なる複素数とし、<math>U=u_1\oplus\cdots\oplus u_n\in U(n)</math>を<math>u_1,\ldots,u_n\in \mathbb{C}</math>を対角成分に置いた行列とする。{{math|''e''{{sub|1}}、...、''e''{{sub|n}}}}を<math>\mathbb{C}</math>の標準的な基底とし、{{mvar|e{{sub|i}}}}が張る複素1次元部分空間を{{mvar|E{{sub|i}}}}とすると、{{mvar|U}}が対角行列である事から、{{mvar|E{{sub|i}}}}は{{mvar|U}}の固有値{{mvar|u{{sub|i}}}}に関する固有空間である。

{{mvar|A}}が正規化群{{mvar|N}}の元である事から、<math>AUA^{-1}\in U(1)^n</math>である。すなわち<math>|c_i|=1</math>を満たす<math>c_1,\ldots,c_n\in \mathbb{C}</math>が存在し、<math>C=c_1\oplus\cdots\oplus c_n</math>とすると、<math>AUA^{-1}=C</math>が成立する。{{mvar|C}}も対角行列である事から、<math>v_i=e_iA</math>として{{mvar|v{{sub|i}}}}が張る複素1次元部分空間を{{mvar|V{{sub|i}}}}とすると、{{mvar|V{{sub|i}}}}は{{mvar|C}}の固有値{{mvar|v{{sub|i}}}}に関する固有空間である。

固有値分解の一意性より、ある[[置換 (数学)|置換]]<math>\sigma~:~\{1,\ldots,n\}\to\{1,\ldots,n\}</math>が存在し、<math>v_i=u_{\sigma(i)}</math>かつ<math>V_i=E_{\sigma(i)}</math>が成立する。{{mvar|V{{sub|i}}}}、{{mvar|E{{sub|σ(i)}}}}はそれぞれ{{mvar|v{{sub|i}}}}、{{mvar|e{{sub|σ(i)}}}}が張る複素1次元部分空間なので、ある<math>a_i\in\mathbb{C}</math>が存在し、<math>v_i=a_ie_{\sigma(i)}</math>が成立する。

よって<math>P_{\sigma}</math>を[[置換行列]]<math>P_{\sigma}=(\delta_{i,\sigma(j)})_{i,j}</math>とする（<math>\delta_{i,j}</math>は[[クロネッカーのデルタ]]）とき、{{mvar|v{{sub|i}}}}の定義より
: <math>A=(a_1\oplus\cdots\oplus a_n)P_{\sigma}</math>
が成立する。

<math>A\in N\subset U(n)</math>はユニタリ行列なので、<math>|a_i|=1,~~i=1,\ldots,n</math>が成立する。すなわち<math>(a_1\oplus\cdots\oplus a_n)\in U(1)^n</math>である。よってワイル群<math>W=N/U(1)^n</math>においては、
: <math>[A]=[(a_1\oplus\cdots\oplus a_n)P_{\sigma}]=[P_{\sigma}] \in W=N/U(1)^n</math>
が成立する。

{{mvar|A}}は{{mvar|N}}の任意の元だったので、{{mvar|Σ{{sub|n}}}}を{{mvar|n}}次の置換群とするとき、以上の議論から
:<math>\Sigma_n\to W, ~~\sigma\mapsto [P_{\sigma}]</math>
は全射である。

またこの写像は単射でもある。実際<math>I</math>を{{mvar|n}}次の単位行列とする時、<math>[P_{\sigma}]=[I]</math>であれば、<math>P_{\sigma}\in U(1)^n</math>が成立する必要がある。しかし<math>U(1)^n</math>の元は各{{mvar|e{{sub|i}}}}を定数倍する行列なので、そのような形の<math>P_{\sigma}</math>は明らかに<math>\sigma=\mathrm{id}</math>のケースに限る。

以上のことからワイル群{{mvar|W}}が置換群に群同型な事が示せた。定理の後半も以上の議論から明らかに従う。
|drop=yes}}
位相群に分類空間を対応させる関手{{mvar|B}}と位相空間にコホモロジー環を対応させる関手{{mvar|H{{sup|*}}}}が直積を保つので、上述の定理から{{mvar|W}}は<math>H^*(BU(1)^n;\mathbb{Z}) \approx \mathbb{Z}[\alpha_1,\ldots,\alpha_n] </math>の<math>\alpha_1,\ldots,\alpha_n</math>を入れ替える形で<math>H^*(BU(1)^n;\mathbb{Z})</math>に作用する。よって

:<math>H^*(BU(1)^n;\mathbb{Z})^W\subset H^*(BU(1)^n;\mathbb{Z}) \approx \mathbb{Z}[\alpha_1,\ldots,\alpha_n] </math>

は[[対称式|対称多項式]]全体の集合に一致する。よく知られているように、任意の対称多項式は[[基本対称式]]の多項式として書けるので、以上の事実からチャーン類を以下のように定義する：
{{math theorem|定義|
<math>H^*(BU(1)^n;\mathbb{Z}) \approx \mathbb{Z}[\alpha_1,\ldots,\alpha_n] </math>上の第{{Mvar|i}}基本多項式
:<math>\sigma_i(\alpha_1,\ldots,\alpha_n) = \sum_{A \sub \{1,\ldots,n\} ,| A |=i} \left(\ \prod_{k \in A} \alpha_k\right)</math>
の
:<math>\iota^*~:~H^*(BU(n);\mathbb{Z}) \to H^*(BU(1)^n;\mathbb{Z})</math>
による逆像
:<math>c^{(n)}_i=(\iota^*)^{-1}(\sigma_i(\alpha_1,\ldots,\alpha_n)) \in H^{2i}(BU(n);\mathbb{Z}) </math>
を'''第{{mvar|i}}チャーン類'''（{{lang-en-short|{{mvar|i}}-th Chern class}}）と呼ぶ<ref name="Bruner35" />。

紛れがなければ添字を省略し、<math>c^{(n)}_i</math>を単に<math>c_i</math>と書く。
|note=チャーン類}}

[[#分類空間による特性類の定義|分類空間<math>H^*(BU(n);\mathbb{Z})</math>の元と特性類は1対1でする]]ので、第{{mvar|i}}チャーン類<math>c_i</math>に対応する特性類
: <math>c_i(\xi)</math>
をベクトルバンドル{{mvar|ξ}}の'''第{{mvar|i}}チャーン類'''という。分類空間の元<math>c_i</math>を<math>c_i(\xi)</math>と区別したいときは、<math>c_i</math>を'''第{{mvar|i}}普遍チャーン類'''（{{lang-en-short|{{mvar|i}}-th universal Chern class}}）という。

なお、<math>1\in H^*(BU(1)^n;\mathbb{Z})</math>を「{{mvar|0}}次の基本対象式」とみなし、<math>c^{(n)}_0:=(\iota^*)^{-1}(1)=1</math>を第{{mvar|0}}チャーン類と呼ぶ。また<math>n+1</math>次以上の基本対称式は存在しないので、<math>m>n</math>に対しては、第{{mvar|m}}チャーン類を<math>c^{(n)}_m:=0</math>と定義する<ref group="注">すなわち、{{Math|''m''>''n''}}のときは基本対象式の定義<math>\sigma_i(\alpha_1,\ldots,\alpha_n) = \sum_{A \sub \{1,\ldots,n\} ,| A |=i} \left(\ \prod_{k \in A} \alpha_k\right)</math>における和が空和になるので、{{Mvar|m}}次の基本対象式を{{Mvar|0}}とみなすという事である。

</ref>。

またチャーン類は埋め込み<math>\iota~:~U(1)^n\to U(n)</math>を使って定義されており、この埋め込みは<math>\mathbb{C}^n</math>の正規直交基底の取り方に依存している。しかし正規直交基底の取り替えにより、<math>\iota</math>は<math>U(n)</math>の内部自己同型<math>\varphi_{A} </math>との合成<math>\iota\circ\varphi_{A} </math>に置き換わるだけなので、[[#内部自己同型の誘導する写像|前述した命題]]から、チャーン類は正規直交基底の取り方によらず[[well-defined]]である。

以上で見たように各{{Mvar|α{{sub|1}},...,α{{sub|n}}}}は対称多項式の[[多項式の根|根]]に相当するものなので、{{Mvar|α{{sub|1}},...,α{{sub|n}}}}の事を'''チャーン根'''{{訳語疑問点|date=2022年5月|}}（{{Lang|en|Chern root}}<ref name=":5">[[#Walton]] p.8.</ref>）という。



これまでの議論とチャーン類の定義から明らかに以下の事実が従う：{{math theorem|定理{{Anchors|HBUの構造}}|:<math>H^*(BU(n);\mathbb{Z}) =\mathbb{Z}[c_1^{(n)},\ldots,c_n^{(n)}]</math>
}}

==== 規約 ====
チャーン類の定義において、{{Mvar|α{{sub|1}},...,α{{sub|n}}}}の代わりに単元<math>u\in \mathbb{C}, \text{ s.t. } |u|=1</math>をこれらに掛けた<math>\beta_1:=u\alpha_1,\ldots,\beta_n:=u\alpha_n</math>をチャーン根とするようにチャーン類を定義する事もできるため、チャーン類の定義には単元{{Mvar|u}}の選び方だけ自由度がある事になる。

そこで何らかの規約を置くことでこの自由度を消す必要があるが、どのような規約を置くかは分野による。[[代数的位相幾何学]]では普遍1-平面バンドル<math>\xi_U=(EU(1),BU(1),\pi)</math>に対し、<math>c^{(1)}_1(\xi_U)</math>が<math>H^2(BU(1),\mathbb{Z})</math>のcanonicalな生成元になるという規約を置く事が多いが<ref name=":8">[[#May]] p.199.</ref>、[[代数幾何学]]では<math>\xi_U</math>の双対ベクトルバンドル<math>\xi^*_U</math>に対して<math>c^{(1)}_1(\xi^*_U)</math>が<math>H^2(BU(1),\mathbb{Z})</math>のcanonicalな生成元になるという規約を置く事が多い<ref name=":8" />。

区別のため代数幾何学の方のチャーン類を<math>c'{}^{(n)}_k</math>と書くことにすると、代数的位相幾何学のチャーン類とは
:<math>c'{}^{(n)}_k=(-1)^kc^{(n)}_k </math>

という関係を満たす<ref name=":8" />。本稿では以下、特に断りがない限り、代数的位相幾何学の規約を採用するものとする。

=== チャーン類の公理的特徴づけ ===
{{math theorem|定理・定義|特性類の組<math>(c^{(n)}_i)_{i,n}</math>で{{mvar|n}}次元複素ベクトルバンドル<math>\xi=(\pi,E,B)</math>に<math>H^{2i}(B,\mathbb{Z})</math>の元を対応させるもの
: <math>c^{(n)}_i~:~\xi=(\pi,E,B) \mapsto H^{2i}(B,\mathbb{Z})</math>
で以下の性質を満たすものが一意に存在する。<math>c^{(n)}_i</math>を{{mvar|n}}次元ベクトルバンドルの第{{mvar|i}}'''チャーン類'''と呼ぶ<ref>[[#Bruner]] p.33. [[#Behrens]] p.1. [[#Walton]] p.6.</ref>。

以下で{{mvar|X}}は任意のCW複体、{{mvar|ξ}}、{{mvar|η}}は{{mvar|X}}上の任意の複素ベクトルバンドル、{{mvar|n}}、{{mvar|m}}はそれぞれ{{mvar|ξ}}、{{mvar|η}}のファイバー（であるベクトル空間）の次元であり、「<math>\oplus</math>」はベクトルバンドルのホイットニー和である：
* '''{{訳語疑問点範囲|次元公理|dimension axiom|date=2021年6月|cand_prefix=原文}}'''（{{lang-en-short|dimension axiom}}<ref name="名前なし-20230316125856-3">[[#Behrens]] p.1.</ref>）：<math>c_0^{(n)}(\xi)=1</math>、<math>c_i^{(n)}(\xi)=0~~\text{ for } i>n</math>。
*'''ホイットニー和の公式'''({{lang-en-short|Whitney sum formula}}<ref name="Walton6">[[#Walton]] p.6.</ref>)： <math>c_k^{(n+m)}(\xi \oplus \eta) =\sum_{i=0}^k c_i^{(n)}(\xi)\smile c_{k-i}^{(m)}(\eta)</math>
* '''{{訳語疑問点範囲|正規化公理|normalization axiom|date=2021年6月|cand_prefix=原文}}'''（{{lang-en-short|normalization axiom}}<ref name="Walton6" />）：普遍1-平面バンドル<math>\xi_U=(EU(1),BU(1),\pi)</math>に対し、<math>c^{(1)}_1(\xi_U)</math>は<math>H^2(BU(1),\mathbb{Z})</math>のcanonicalな生成元である。|note=チャーン類の公理的特徴づけ}}
前節で定義したチャーン類が次元公理と正規化公理を満たすのは明らかである。ホイットニー和の公式の証明は下記のとおりである。

{{math proof|
写像<math>U(n)\times U(m) \to U(n+m)</math>、<math>(A,B)\mapsto A\oplus B</math>が分類空間に誘導する写像<math>BU(n)\times BU(m) \to BU(n+m)</math>を考えると、<math>H^*(BU(n);\mathbb{Z})</math>[[#HBUの構造|の構造]]と{{仮リンク|Künnethの公式|en|Künneth theorem}}から
:<math>H^{2i}(BU(n+m);\mathbb{Z})\hookrightarrow H^{2i}(BU(n)\times BU(m);\mathbb{Z})
\simeq \sum_{k=0}^i H^{2k}(BU(n);\mathbb{Z})\times H^{2(i-k)}(BU(m);\mathbb{Z}) </math>


が成立する。よって<math>\alpha_1,\ldots,\alpha_{n+m}</math>をチャーン根とすると、
:<math>c^{(n+m)}_i=\sigma_i(\alpha_1,\ldots,\alpha_{n+m})=\sum_{k=0}^i\sigma_k(\alpha_1,\ldots,\alpha_n)\sigma_{i-k}(\alpha_{n+1},\ldots,\alpha_{n+m})\approx \sum_{k=0}^ic^{(n+m)}_k\smile c^{(n+m)}_{i-k}</math>

が成立する。なお上式の２つ目の等号は、対称多項式に関する簡単な計算により従う。
ホイットニー和の公式は上式を<math>\xi \oplus \eta</math>、{{mvar|ξ}}、{{mvar|η}}に関する分類写像で引き戻す事で従う。
|drop=yes}}

一方、上記の公理を満たす特性類の一意性は[[数学的帰納法]]により容易に示せる。

=== チャーン多項式 ===

チャーン類を取り扱う上で、下記のチャーン多項式を考えると便利である：{{math theorem|定義|上と同様に記号を定義するとき、変数{{mvar|t}}に対し、
: <math>c(\xi,t)=c_0(\xi)+c_1(\xi)t+\cdots +c_n(\xi)t^n</math>
を{{mvar|ξ}}の'''チャーン多項式'''（{{lang-en-short|Chern polynomial}}）といい<ref>{{Cite web|url=https://encyclopediaofmath.org/wiki/Chern_class|title=Chern class|accessdate=2021/06/04|website=The Encyclopedia of Mathematics}}</ref>、特に
: <math>c(\xi):=c(\xi,1)=c_0(\xi)+c_1(\xi)+\cdots c_n(\xi)</math>
を'''全チャーン類'''<ref>[[#森田]] p.237.</ref>（{{lang-en-short|total Chern class}}）という。
|note=チャーン多項式、全チャーン類}}

なお、チャーン類の定義より、チャーン多項式はチャーン根を使って形式的に
: <math>c(\xi,t)=\prod_i(t+\alpha_i)</math>
と因数分解できる。

チャーン多項式を用いると、ホイットニー和の公式は以下のように言い換えられる：{{math theorem|定義|上と同様に記号を定義するとき、以下が成立する：
* <math>c(\xi\oplus\eta,t)=c(\xi,t)\smile c(\eta,t)</math>}}

==== チャーン多項式の性質 ====
チャーン多項式は以下の性質を満たす。なお文献によっては以下の性質をチャーン類の公理として入れているものもあるが<ref name=":6">[[#Bruner]] p.33. [[#Behrens]] p.1.</ref>、実は他の公理から従うので<ref name=":7">[[#Walton]] p.6.</ref>、公理に入れる必要はない。

{{math theorem|命題|CW複体{{mvar|X}}上の自明な直線バンドル{{mvar|ε}}と任意のベクトルバンドル{{mvar|η}}に対して以下が成立する：
* <math>c(\epsilon,t)=1</math>
* '''安定性'''（{{lang-en-short|stability}}<ref name="名前なし-20230316125856-3"/>）：<math>c(\eta\oplus \epsilon,t)=c(\eta,t)</math>
}}

{{math proof|
後者の性質は前者の性質とホイットニー和の公式から従う。また前者に関しては次元公理から<math>c(\epsilon,t)=1+c_1(\epsilon)t</math>とかけるので、<math>c_1(\epsilon)=0</math>のみ示せば良い。

<math>\{x\}</math>を任意の一点集合とし、<math>p~:~X\to \{x\}</math>を<math>\{x\}</math>への唯一の写像とし、{{mvar|ε{{sub|x}}}}を<math>\{x\}</math>上の自明な直線バンドルとし、さらに<math>f_x~:~\{x\}\to BU(1)</math>を<math>\{x\}</math>の分類写像とする。明らかに<math>\varepsilon=p^*(\varepsilon_x)</math>なので、分類定理より、{{mvar|ε}}の分類写像は<math>f_x\circ p</math>とホモトープである。<math>H^2(\{x\};\mathbb{Z})=0</math>なので、<math>c_1\in H^2(BU(1);\mathbb{Z})</math>の引き戻し<math>c_1(\varepsilon)=(f_x\circ p)^*(c_1)=0</math>である。
|drop=yes}}

== 実ベクトルバンドルの特性類 ==
本節以降、実ベクトルバンドルの特性類を記述していくが、その記述は複素ベクトルバンドルのそれと比べかなり複雑であるので、詳細は次節以降に譲り、本節では実ベクトルバンドルの特性類の概要を述べる。

実ベクトルバンドルの特性類が複雑になる理由は２つある：

# 実ベクトルバンドルの主バンドルの分類空間<math>H^*(BO(n),\mathbb{Z})</math>は複素ベクトルバンドルの主バンドルの<math>H^*(BU(n),\mathbb{Z})</math>と違い、<math>\mathbb{Z}_2</math>-[[捩れ部分群]]を持つ。この捩れ部分群が「悪さ」をするため、<math>H^*(BO(n),\mathbb{Z})</math>を簡単に記述する事ができない。
# 実ベクトルバンドルの場合は複素ベクトルバンドルと違い、向き付けの概念がある。このため向き付けのない場合の分類空間<math>H^*(BO(n),\mathbb{Z})</math>と向き付けのある場合の分類空間<math>H^*(BSO(n),\mathbb{Z})</math>の両方を考察しなければならない。


1つ目の問題を回避するために、以下では<math>H^*(BO(n),\mathbb{Z})</math>を直接考察するのを諦め、<math>H^*(BO(n),\mathbb{Z}_2)</math>と<math>H^*(BO(n), \Lambda)</math>の２つを別々に考察することにする。ここで{{Mvar|Λ}}は{{Mvar|2}}の逆元を持つ任意の可換環<ref group="注">例えば{{Math|p≠2}}に対する<math>\mathbb{Z}_p</math>や、有理数体<math>\mathbb{Q}</math>など。なお、[[普遍係数定理]]があるので、<math>\Lambda=\mathbb{Z}[1/2]=\{a/2^n| a\in \mathbb{Z}, n\in \mathbb{Z}_{\ge 0} \}</math>の場合だけ考えれば十分である。</ref>である。{{仮リンク|ボックシュタインスペクトル系列|en|Bockstein spectral sequence}}を使う事で<math>H^*(BO(n),\mathbb{Z}_2)</math>と<math>H^*(BO(n), \Lambda)</math>から<math>H^*(BO(n),\mathbb{Z})</math>を計算できるので、実用上はこの２つに対する特性類が把握できていれば十分である。


2つ目の問題に関しては、<math>H^*(BO(n))</math>と<math>H^*(BSO(n))</math>とは環構造が異なるので、この２つを両方とも考察する必要がある。

===係数環が{{math|1={{Unicode|ℤ}}{{sub|''2''}}}}の場合 ===
係数環が<math>\mathbb{Z}_2</math>の場合の特性類の記述は比較的簡単であり、<math>H^*(BO(n))</math>と<math>H^*(BSO(n))</math>の差はさほど大きくなく、
:<math>\begin{align}
H^*(BO(n),\mathbb{Z}_2)&=\mathbb{Z}_2[w_1,\ldots,w_n] \\
H^*(BSO(n),\mathbb{Z}_2)&=\mathbb{Z}_2[w_2,\ldots,w_n],~~w_1=0  \\
\end{align}</math>
という形で両者を記述できる。ここで<math>w_1,\ldots,w_n </math>は'''スティーフェル・ホイットニー類'''と呼ばれる特性類で、このような<math>w_1,\ldots,w_n</math>の存在はチャーン類の場合と類似した方法で証明できる。ただし第{{Mvar|i}}チャーン類が'''{{Mvar|2i}}次'''のコホモロジー群に属するのに対し、第{{Mvar|i}}スティーフェル・ホイットニー類は'''{{Mvar|i}}次'''のコホモロジー群に属するので注意が必要である。

=== 係数環が{{math|2{{sup|-1}}∈''Λ''}}を満たす{{Mvar|Λ}}の場合 ===
それに対し係数環が<math>2^{-1}\in \Lambda </math>を満たす{{Mvar|Λ}}の場合はより複雑である。<math>H^*(BO(n), \Lambda)</math>に関しては、
:<math>H^*(BO(n), \Lambda)=\Lambda[p_1,\ldots,p_{\lfloor n/2\rfloor}] 
</math>
の形で記述でき、<math>p_1,\ldots,p_n</math>を'''ポントリャーギン類'''という。（<math>p_i</math>は'''{{Mvar|4i}}次'''のコホモロジー群に属する）。ここで<math>\lfloor\cdot\rfloor</math>は[[床関数]]である。
具体的にはポントリャーギン類は実ベクトルバンドルを複素化する事で得られる複素ベクトルバンドルのチャーン類を使って
:<math>p_i=(-1)^ic_{2i}
</math>
と書ける。（なお、実ベクトルバンドルの複素化の場合、奇数次のチャーン類<math>c_{2i+1}
</math>は<math>2c_{2i+1}=0
</math>を満たし、よって係数環が{{Mvar|Λ}}の場合は必ず<math>c_{2i+1}=0
</math>になる）。

一方、<math>H^*(BSO(n), \Lambda)</math>は{{Mvar|n}}が偶数か奇数で形が異なり、
:<math>H^*(BSO(n), \Lambda)=
\begin{cases}
\Lambda[p_1,\ldots,p_{\lfloor n/2\rfloor}] & \text{ if }n \text{ is odd}\\
\Lambda[p_1,\ldots,p_{\lfloor n/2\rfloor},\chi]/(\chi^2= p_{\lfloor n/2\rfloor})& \text{ if }n \text{ is even}\\
\end{cases}
</math>
と書ける。ここで<math>p_1,\ldots,p_{\lfloor n/2\rfloor}</math>は前述のポントリャーギン類であり、{{Mvar|χ}}は'''オイラー類'''と呼ばれる特性類である。また<math>\Lambda[p_1,\ldots,p_{\lfloor n/2\rfloor},\chi]/(\chi^2= p_{\lfloor n/2\rfloor})</math>は多項式環<math>\Lambda[p_1,\ldots,p_{\lfloor n/2\rfloor},\chi]</math>において{{Mvar|χ{{sup|2}}}}を{{Mvar|p{{sub|n}}}}と同一視して得られる環を表す。すなわち<math>\Lambda[p_1,\ldots,p_n,\chi]</math>を単項イデアル<math>(\chi^2- p_{\lfloor n/2\rfloor})</math>で割った環である。


以上をまとめると、実ベクトルバンドルの分類空間のコホモロジーは以下のように記述できる：
{| class="wikitable"
|+
!係数環
!分類空間
!コホモロジー
|-
| rowspan="2" |<math>\mathbb{Z}_2</math>
|<math>BO(n)</math>
|<math>\mathbb{Z}_2[w_1,\ldots,w_n]</math>
|-
|<math>BSO(n)</math>
|<math>\mathbb{Z}_2[w_2,\ldots,w_n]</math>、<math>w_1=0</math>
|-
| rowspan="3" |<math>2^{-1}\in \Lambda </math>を満たす{{Mvar|Λ}}
|<math>BO(n)</math>
| rowspan="2" |<math>\Lambda[p_1,\ldots,p_{\lfloor n/2\rfloor}]</math>
|-
|<math>BSO(n)</math>s.t. {{Mvar|n}}は奇数
|-
|<math>BSO(n)</math>s.t. {{Mvar|n}}は偶数
|<math>\Lambda[p_1,\ldots,p_{\lfloor n/2\rfloor},\chi]/(\chi^2=p_{\lfloor n/2\rfloor})
</math>
|}

== スティーフェル・ホイットニー類 ==

本節では<math>H^2(BO(n);\mathbb{Z})</math>の構造を具体的に決定し、それをもとにスティーフェル・ホイットニー類を定義する。

<math>H^2(BO(n);\mathbb{Z})</math>の構造の決定方法やスティーフェル・ホイットニー類の定義は、基本的には<math>H^2(BU(n);\mathbb{Z})</math>の構造の決定方法やチャーン類の定義と同様である。一点大きく違うのは、チャーン類の場合は<math>H^*(BU(1);\mathbb{Z}) =\mathbb{Z}[\alpha]</math>を満たす<math>\alpha</math>が2次のコホモロジー群<math>H^2(BU(1);\mathbb{Z})</math>に属していたのに対し、スティーフェル・ホイットニー類の場合はそのような元が1次のコホモロジー群に属する事である：
{{math theorem|補題|
ある<math>\beta\in H^1(BO(1);\mathbb{Z}_2)</math>が存在し、以下が成立する：
:<math>H^*(BO(1);\mathbb{Z}_2) =\mathbb{Z}_2[\beta]</math>
}}
この違いが原因でチャーン類は偶数次のコホモロジー群にしか登場しなかったが、スティーフェル・ホイットニー類は奇数次のコホモロジーにも登場する。

なお、コホモロジーの係数が<math>\mathbb{Z}_2</math>なので、[[カップ積]]は奇数次のコホモロジーにおいても可換である。

=== {{math|1=''H''{{sup|*}}(''BO''(''n'');{{Unicode|ℤ}}{{sub|''2''}})}}の具体的記述 ===

自然数<math>n\ge 1</math>に対し<math>H^2(BO(n);\mathbb{Z}_2)</math>の具体的形を調べるため、チャーン類のときと同様、連続準同型写像

: <math>\iota~:~O(1)^n\hookrightarrow O(n),~(A_1,\ldots,A_n)\mapsto A_1\oplus\cdots\oplus A_n</math>

により<math>O(1)^n</math>を<math>O(n)</math>の部分群とみなす。ここで「<math>\oplus</math>」は対角線上に行列を並べる演算である。


<math>\varphi_A~:~B\mapsto ABA^{-1}</math>を内部自己同型とする。チャーン類の時と同様、<math>O(1)^n</math>の正規化群
:<math>N=\{A\in O(n)\mid \varphi_A(O(1)^n)= O(1)^n\}</math>

を<math>O(1)^n</math>の[[中心化群と正規化群|中心化群]]
:<math>Z=\{A\in O(n)\mid \forall B\in O(1)^n ~:~\varphi_A(B)= B\}</math>

で割った<math>\Sigma=N/Z</math>を考え<ref group="注"><math>O(1)^n</math>は<math>O(n)</math>の極大トーラスではないので、チャーン類のときと違い、<math>\Sigma</math>はワイル群ではない。
</ref>、
:<math>H^*(BO(1)^n;\mathbb{Z})^{\Sigma}:=\{u\in H^*(BO(1)^n;\mathbb{Z})\mid \forall [A]\in \Sigma ~:~B\varphi_A{}^*(u)=u\} </math>

と定義するとこの定義は[[Well-defined]]である。ここで<math>[A]\in \Sigma=N/Z</math>は同値類を表す。このとき次の事実が従う：{{math theorem|定理|写像
:<math>\iota^*~:~H^*(BO(n);\mathbb{Z}_2) \to H^*(BO(1)^n;\mathbb{Z}_2)^\Sigma \approx \mathbb{Z}_2[\beta_1,\ldots,\beta_n]^{\Sigma}</math>
は全単射である<ref name="May197">[[#May]] p.197.</ref><ref>[[#Cohen]] p.107</ref>。
}}ここで{{Mvar|β{{sub|i}}}}は<math>H^*(BO(1)^n;\mathbb{Z}_2)\approx H^*(BO(1);\mathbb{Z}_2)\otimes \cdots \otimes H^*(BO(1);\mathbb{Z}_2)</math>の{{Mvar|i}}番目の<math>H^*(BO(1);\mathbb{Z}_2)</math>の生成元である。{{math theorem|定理|{{mvar|Σ}}は[[置換群]]と群同型であり、{{mvar|Σ}}は<math>O(1)^n</math>の成分の入れ替えとして<math>O(1)^n</math>に作用する。
|}}

=== スティーフェル・ホイットニー類の定義 ===
スティーフェル・ホイットニー類を以下のように定義する：{{math theorem|定義|
<math>H^*(BD;\mathbb{Z}_2) \approx \mathbb{Z}[\beta_1,\ldots,\beta_n] </math>上の第{{Mvar|i}}基本多項式
:<math>\sigma_i(\beta_1,\ldots,\beta_n) = \sum_{A \sub \{1,\ldots,n\} ,| A |=i} \left(\ \prod_{k \in A} \beta_k\right)</math>
の
:<math>\iota^*~:~H^*(BO(n);\mathbb{Z}_2) \to H^*(BO(1)^n;\mathbb{Z}_2)</math>
による逆像
:<math>w^{(n)}_i=(\iota^*)^{-1}(\sigma_i(\beta_1,\ldots,\beta_n))\in H^{i}(BO(n),\mathbb{Z}_2)</math>
を'''第{{mvar|i}}スティーフェル・ホイットニー類'''（{{lang-en-short|{{mvar|i}}-th Stiefel–Whitney class class}}）と呼ぶ<ref name="May197" />。

紛れがなければ添字を省略し、<math>w^{(n)}_i</math>を単に<math>w_i</math>と書く。|note=スティーフェル・ホイットニー類}}

[[#分類空間による特性類の定義|分類空間<math>H^*(BO(n);\mathbb{Z}_2)</math>の元と特性類は1対1でする]]ので、第{{mvar|i}}スティーフェル・ホイットニー類<math>w_i</math>に対応する特性類
: <math>w_i(\xi)</math>
をベクトルバンドル{{mvar|ξ}}の'''第{{mvar|i}}スティーフェル・ホイットニー類'''という。分類空間の元<math>w_i</math>を<math>w_i(\xi)</math>と区別したいときは、<math>w_i</math>を'''第{{mvar|i}}普遍スティーフェル・ホイットニー類'''（{{lang-en-short|{{mvar|i}}-th universal Stiefel–Whitney class class}}）という。



チャーン類のときと同様、<math>w^{(n)}_0:=(\iota^*)^{-1}(1)=1</math>、<math>w^{(n)}_m:=0</math> for <math>m>n</math>と定義する。


明らかに以下の事実が従う<ref>[[#Cohen]] p.95.</ref>：{{math theorem|定理|:<math>H^*(BO(n);\mathbb{Z}) =\mathbb{Z}[w_1^{(n)},\ldots,w_n^{(n)}]</math>
}}

=== 公理的特徴づけ ===
チャーン類と同様スティーフェル・ホイットニー類も公理的に特徴づける事ができる：{{math theorem|定理・定義|特性類の組<math>(w^{(n)}_i)_{i,n}</math>で{{mvar|n}}次元実ベクトルバンドル<math>\xi=(\pi,E,B)</math>に<math>H^{i}(B,\mathbb{Z}_2)</math>の元を対応させるもの
: <math>w^{(n)}_i~:~\xi=(\pi,E,B) \mapsto H^{i}(B,\mathbb{Z}_2)</math>
で以下の性質を満たすものが一意に存在する。<math>w^{(n)}_i</math>を{{mvar|n}}次元ベクトルバンドルの第{{mvar|i}}'''スティーフェル・ホイットニー類'''と呼ぶ<ref>[[#Selick]] pp.50-51.</ref><ref>[[#Milnor]] pp.37-38</ref>。

以下で{{mvar|X}}は任意のCW複体、{{mvar|ξ}}、{{mvar|η}}は{{mvar|X}}上の任意の実ベクトルバンドル、{{mvar|n}}、{{mvar|m}}はそれぞれ{{mvar|ξ}}、{{mvar|η}}のファイバー（であるベクトル空間）の次元であり、「<math>\oplus</math>」はベクトルバンドルのホイットニー和である：
* '''{{訳語疑問点範囲|次元公理|dimension axiom|date=2021年6月|cand_prefix=原文}}'''：<math>w_0^{(n)}(\xi)=1</math>
*'''ホイットニー和の公式'''： <math>w_k^{(n+m)}(\xi \oplus \eta) =\sum_{i=0}^k w_i^{(n)}(\xi)\smile w_{k-i}^{(m)}(\eta)</math>
* '''{{訳語疑問点範囲|正規化公理|normalization axiom|date=2021年6月|cand_prefix=原文}}'''：1次元実射影空間<math>\mathbb{R}P^1\approx S^1</math>上の普遍1-平面バンドル<math>\xi_U</math>に対し、<math>w^{(1)}_1(\xi_U)\neq 0</math>。|note=スティーフェル・ホイットニー類の公理的特徴づけ}}

===性質===
全チャーン類と同様、全スティーフェル・ホイットニー類を定義でき、全チャーン類と同様の性質を示す事ができる<ref group="注">チャーン類の場合と同様、原理的には全スティーフェル・ホイットニー類のみならず、スティーフェル・ホイットニー多項式が定義できるはずだが、スティーフェル・ホイットニー多項式を定義している文献がほとんどなかったため、説明を省いた。

</ref>：{{math theorem|定義・定理|: <math>w(\xi)=w_0(\xi)+w_1(\xi)+\cdots +w_n(\xi)</math>
を{{mvar|ξ}}の'''全スティーフェル・ホイットニー類'''（{{lang-en-short|total Stiefel Whitney polynomial}}）といい<ref>[[#Milnor]] pp.39-40.</ref>、以下が成立する：
* <math>w(\xi\oplus\eta)=w(\xi)\smile w(\eta)</math>
* （'''安定性'''、{{lang-en-short|stability}}<ref name="名前なし-20230316125856-3"/>）<math>w(\eta\oplus \epsilon)=w(\eta)</math>|note=全スティーフェル・ホイットニー類}}

自然な写像<math>\nu~:~SO(1)\to U(1)</math>が誘導する写像<math>H^*(U(1);\mathbb{Z}_2) \to H^*(SO(1);\mathbb{Z}_2)</math>は単射であり、<math>H^*(U(1);\mathbb{Z}_2)</math>の生成元{{mvar|α}}の自乗{{mvar|α{{sup|2}}}}が{{mvar|β}}に移る事が知られている<ref>[[#Bruner]] p.47.</ref>。したがって
<math>\sigma_i(\alpha_1{}^2,\ldots,\alpha_n{}^2) \in H^*(U(1)^n;\mathbb{Z}_2)</math>は<math>w_i\in\sigma_i(\beta_1,\ldots,\beta_n) \in H^*(U(1)^n;\mathbb{Z}_2)</math>に移るが、<math>\mathbb{Z}_2</math>上では<math>\sigma_i(\alpha_1{}^2,\ldots,\alpha_n{}^2)=\sigma_i(\alpha_1,\ldots,\alpha_n)^2=c_i</math>になので、以下が成立する：
{{math theorem|定理{{Anchors|複素化におけるスティーフェルホイットニー類}}|
実ベクトルバンドル<math>\xi=(\pi,X,E)</math>に対しその複素化を<math>\xi_{\mathbb{C}}</math>とすると、任意の非負整数{{mvar|i}}に対して以下が成立する<ref name="名前なし-20230316125856-4">[[#Bruner]] p.45.</ref>：
: <math>c_i(\xi_{\mathbb{C}})=w_i(\xi)^2</math> in <math>H^*(X;\mathbb{Z}_2)</math>
}}

逆に複素ベクトルバンドル<math>\omega</math>から複素構造を{{仮リンク|忘却関手|label=忘れて|en|Forgetful functor}}実ベクトルバンドルとみなしたものを<math>\xi</math>の'''脱複素化'''（{{lang-en-short|decomplexification}}、{{lang-en-short|realification}}）と呼び、<math>\omega_{\mathbb{R}}</math>と書くと任意の非負整数{{mvar|i}}に対して以下が成立する事が知られている：
{{math theorem|定理|
複素ベクトルバンドル<math>\xi=(\pi,X,E)</math>に対し、以下が成立する<ref name="名前なし-20230316125856-4"/>：
: <math>w_{2i}(\omega_{\mathbb{C}})=c_i(\xi)</math>、<math>w_{2i+1}(\omega_{\mathbb{C}}))=0</math> in <math>H^*(X;\mathbb{Z}_2)</math>
}}

== ポントリャーギン類とオイラー類 ==

本節では<math>2^{-1} \in \Lambda</math>を満たす可換環{{Mvar|Λ}}に対し、<math>H^*(BSO(n),\Lambda)</math>、<math>H^*(BO(n),\Lambda)</math>の構造を決定し、これをもとにポントリャーギン類とオイラー類を定義する。

===定義===
本節ではコホモロジー環<math>H^*(BSO(n),\Lambda)</math>、<math>H^*(BO(n),\Lambda)</math>の構造し、これをもとにポントリャーギン類とオイラー類を定義する。そのために利用するのは、チャーン類のときと同様、ワイル群に関する議論である。そこで{{Math|''SO''(''n'')}}の極大トーラスを記述するため、{{Mvar|n}}が偶数であるか奇数であるかに応じて{{Math|1=''n''=''2m''}}、{{Math|1=''n''=''2m''+''1''}}として<math>\mu~:~SO(2)^m \hookrightarrow  SO(n)</math>を{{Equation box 1 |indent=: |equation=<math>\mu~:~SO(2)^m\hookrightarrow SO(n), ~~ (R(\theta_1),\ldots,R(\theta_m)) \mapsto 
\begin{cases}
R(\theta_1)\oplus\cdots\oplus R(\theta_m) &\text{if }n=2m\\
R(\theta_1)\oplus\cdots\oplus R(\theta_m)\oplus 1 & \text{if }n=2m+1
\end{cases} </math>
|cellpadding = 6 |border = 1 |border colour = black|background colour=white}}

により定義する<ref name=":9">[[#Bruner]] pp.57-61.</ref>。ここで「<math>\oplus</math>」は対角線上に行列を並べる演算であり、{{math|''R''(''θ'')}}は2次元の回転行列
: <math>R(\theta):=
\begin{pmatrix}
 \cos \theta & -\sin \theta\\
 \sin \theta & \cos \theta
\end{pmatrix}
</math>
である。<math>\mu</math>による{{Math|''SO''(''2''){{sup|m}}}}の像は{{Math|''SO''(''n'')}}の極大トーラスである事が知られている。さらに自然な埋め込み<math>\iota~:~SO(n)\hookrightarrow O(n)</math>を考える。

そしてこれら２つの写像が分類空間のコホモロジーに誘導する写像を考える：
{{Equation box 1 |indent=: |equation=<math>H^*(BO(n),\Lambda) \overset{B\iota^*}{\to}
H^*(BSO(n),\Lambda) \overset{B\mu^*}{\to}
H^*(BSO(2)^m,\Lambda) \approx \Lambda[\gamma_1,\ldots,\gamma_m]</math>
|cellpadding = 6 |border = 1 |border colour = black|background colour=white}}
上式の最後の同型「<math>\approx</math>」は、リー群として<math>SO(2)\approx U(1)</math>である事からチャーン類のときの議論により従う。ここで「<math>\approx</math>」は環としての同型であり、<math>H^*(BSO(2)^m,\Lambda)</math>の積はカップ積である。

また{{Mvar|γ{{sub|j}}}}は<math>H^*(BSO(2)^m;\Lambda)\approx \otimes_j H^*(BSO(2);\Lambda)</math>の{{Mvar|j}}番目の<math>H^*(BSO(2);\Lambda)</math>の生成元であり、{{Mvar|γ{{sub|j}}}}は次数{{mvar|2}}のコホモロジー<math>\gamma_j\in H^{2}(BSO(2);\Lambda)</math>に属している。（これらもチャーン類のときの議論により従う）。

なお、<math>H^*(BSO(2);\Lambda)\approx \Lambda[\gamma]</math>の生成元{{mvar|γ}}の選び方は、{{mvar|Λ}}の単元倍の自由度があるので、この自由度をなくす為、以下の規約を置く：
{{math theorem|規約|
<math>H^*(BSO(2);\Lambda)=H^*(BU(1);\Lambda)</math>の生成元{{mvar|γ}}として、第一チャーン類<math>c_1</math>を選ぶ。
}}
上で自然な同型<math>SO(2) \approx U(1)</math>を用いた。このように規約を決めると、チャーン類の定義から<math>\gamma=c_1</math>は'''整数係数の'''コホモロジー<math>H^*(BSO(2);\mathbb{Z})=H^*(BU(1);\mathbb{Z})</math>に属する事になるのが利点である。

本項の目標は、<math>H^*(BSO(2)^m,\Lambda) \approx \Lambda[\gamma_1,\ldots,\gamma_m]</math>を用いる事で<math>H^*(BSO(n),\Lambda)</math>と<math>H^*(BO(n),\Lambda)</math>の構造を特定し、これをもとにポントリャーギン類とオイラー類を定義する事である。

詳細は後回しにし、先に結論を述べる。
{{math theorem|定理|
<math>B\iota^*</math>、<math>B\mu^*</math>は単射であり、<math>\gamma_1{}^2,\ldots,\gamma_m{}^2</math>の基本対称式を
: <math>p^{(n)}_j:=\sigma_j(\gamma_1{}^2,\ldots,\gamma_m{}^2)</math>
とし、
: <math>e^{(n)}:=\gamma_1\cdots\gamma_m</math>
とするとき、以下が成立する<ref>[[#May]] p.200.</ref><ref name=":9" /><ref>[[#Milnor]] pp.179-180</ref>：
: <math>H^*(BSO(n);\Lambda)\overset{B\mu^*}{\overset{\sim}{\to}}
\begin{cases}
 \Lambda[p^{(n)}_1,\ldots,p^{(n)}_m]& \text{ if }n=2m+1\\
 \Lambda[p^{(n)}_1,\ldots,p^{(n)}_m,e^{(n)}]& \text{ if }n=2m\\
\end{cases}
</math>
: <math>H^*(BO(n);\Lambda)\overset{B\mu^*\circ B\iota^*}{\overset{\sim}{\to}}
 \Lambda[p^{(n)}_1,\ldots,p^{(n)}_m]
</math>
|note=<math>H^*(BSO(n);\Lambda)</math>、<math>H^*(BO(n);\Lambda)</math>の構造{{Anchors|実ベクトルバンドルの分類空間の構造}}}}

ポントリャーギン類とオイラー類を以下のように定義する：
{{math theorem|定義|
上の定理と同様に記号を定めるとき、
: <math>p^{(n)}_i\in H^{4i}(BO(n);\Lambda)</math>
を第{{mvar|i}}'''ポントリャーギン類'''（{{lang-en-short|{{mvar|i}}-th Pontryagin class}}）といい、<math>n=2m</math>のとき、
: <math>e^{(n)}\in H^n(BSO(n);\Lambda)</math>
を'''オイラー類'''（{{lang-en-short|Euler class}}）という。
|note=ポントリャーギン類、オイラー類}}

紛れがなければ、<math>p^{(n)}_i</math>、<math>e^{(n)}</math>を単に<math>p_i</math>、<math>e</math>と書く。

[[#分類空間による特性類の定義|分類空間<math>H^*(BO(n);\Lambda)</math>や<math>H^*(O(n);\Lambda)</math>の元と特性類は1対1でする]]ので、第{{mvar|i}}ポントリャーギン類<math>p_i</math>やオイラー類{{mvar|e}}に対応する特性類
: <math>p_i(\xi)</math>、<math>e(\xi)</math>
をそれぞれベクトルバンドル{{mvar|ξ}}の'''第{{mvar|i}}ポントリャーギン類'''、'''オイラー類'''という。分類空間の元<math>p_i</math>、{{mvar|e}}を<math>p_i(\xi)</math>、<math>e(\xi)</math>と区別したいときは、<math>p_i</math>、{{mvar|e}}をそれぞれ'''第{{mvar|i}}普遍ポントリャーギン類'''（{{lang-en-short|{{mvar|i}}-th universal Pontryagin class}}）、'''普遍オイラー類'''（{{lang-en-short|universal Euler class}}）という。


なぜ[[#実ベクトルバンドルの分類空間の構造|上述の定理]]が成立するのかについては[[#実ベクトルバンドルの分類空間の構造の証明|後述]]する。

===定理の証明のアイデア===
{{Anchors|実ベクトルバンドルの分類空間の構造の証明}}

本節では、[[#実ベクトルバンドルの分類空間の構造|前述した{{math|''H''{{sup|*}}(''BSO''(''n'');''Λ'')}}と{{math|''H''{{sup|*}}(''BO''(''n'');''Λ'')}}の構造を記述した定理]]がなぜ成立するかを次の３つの場合に分けて説明する：
* {{mvar|n}}が偶数の場合の{{math|''H''{{sup|*}}(''BSO''(''n'');''Λ'')}}の構造
* {{mvar|n}}が奇数の場合の{{math|''H''{{sup|*}}(''BSO''(''n'');''Λ'')}}の構造
* {{math|''H''{{sup|*}}(''BO''(''n'');''Λ'')}}の構造

====準備====

[[#実ベクトルバンドルの分類空間の構造|定理]]を示すにはチャーン類の場合と同様、ワイル群を用いる事で{{math|''H''{{sup|*}}(''BSO''(''n'');''Λ'')}}の構造を決定する。そのためにBorelによる以下の一般的な定義を用いる：
{{math theorem|定理|
{{mvar|p}}を[[素数]]とし、{{mvar|G}}を[[連結空間|連結]]な[[コンパクト空間|コンパクト]][[リー群]]で整数係数コホモロジー<math>H^*(G,\mathbb{Z})</math>が{{mvar|p}}-[[捩れ (代数学)|捻れ部分群]]を持たないものとする。

さらに{{mvar|T}}を{{mvar|G}}の[[極大トーラス]]とし、{{mvar|W}}を{{mvar|G}}のワイル群とし、<math>H^*(BT,\mathbb{Z})^W</math>を<math>H^*(BT,\mathbb{Z})</math>の元で{{mvar|W}}に関して不変なもの全体の集合とする。<math>H^*(BT,\mathbb{Z})^W\otimes \mathbb{Z}_p\subset H^*(BT,\mathbb{Z}_p)</math>とみなすと<ref group="注">一般には<math>H^*(BT,\mathbb{Z})^W\otimes \mathbb{Z}_p</math>と<math>H^*(BT,\mathbb{Z}_p)^W</math>は等しくなく、前者が後者に包含される事しか言えない。例えば<math>\mathbb{Z}[\gamma_1,\gamma_2]</math>上の「90度回転」<math>R~:~a\gamma_1+b\gamma_2\mapsto -b\gamma_1+a\gamma_2</math>によって生成される群がワイル群であった場合、<math>R(\gamma_1+\gamma_2) = -\gamma_1+\gamma_2 \neq \gamma_1+\gamma_2</math>なので<math>\gamma_1+\gamma_2</math>は<math>H^*(BT,\mathbb{Z})^W</math>には属さず、よって<math>H^*(BT,\mathbb{Z})^W\otimes \mathbb{Z}_2</math>にも属さないが、<math>R(\gamma_1+\gamma_2) = -\gamma_1+\gamma_2 = \gamma_1+\gamma_2 \mod 2</math>なので、<math>H^*(BT,\mathbb{Z}_2)^W</math>には属する。</ref>、包含写像<math>\iota~:~ T\hookrightarrow G</math>がコホモロジーに誘導する写像
: <math>B\iota^*~:~H^*(BG,\mathbb{Z}_p) \to H^*(BT,\mathbb{Z})^W\otimes \mathbb{Z}_p</math>
は環同型である<ref>[[#Borel]] p. 411.</ref>。
|note=Borelの定理{{Anchors|Borelの定理}}}}

<math>H^*(SO(n);\Lambda)</math>が<math>p\neq 2</math>のねじれ元を持たない事を利用して、以下の命題を示せる：
{{math theorem|命題|写像
:<math>\mu^*~:~H^*(BSO(n);\Lambda) \to H^*(BSO(2)^m;\mathbb{Z})^W \otimes \Lambda </math>
は環同型である。
|note={{math|''H{{sup|*}}(BSO''(''n''),''Λ'')}}のワイル群による表現{{Anchors|SO(n)のワイル群による表現}}}}

上述の命題ではBorelの定理で「<math>\mathbb{Z}_p</math>」であったところが「{{mvar|Λ}}」に代わっているが、[[普遍係数定理]]を用いる事で「{{mvar|Λ}}」に代えてよい事が容易に示せる。

{{math proof|
命題の証明には[[普遍係数定理]]を使うので、まずこの定理を復習する：
{{math theorem|定理|
{{mvar|X}}を[[位相空間]]とし、{{mvar|M}}を<math>\mathbb{Z}</math>-加群とする。全ての{{mvar|k}}に対して<math>H_k(X;\mathbb{Z})</math>が<math>\mathbb{Z}</math>上有限生成であれば、任意の{{mvar|k}}に対して以下が成立する<ref>[[#Dieck]] p.297.</ref>:
: <math>H^k(X;M) \approx H^k(X;\mathbb{Z})\otimes M \oplus \mathrm{Tor}(H^{k+1}(X;\mathbb{Z}),M)</math>.
|note=普遍係数定理}}

すでに述べたように{{math|''BSO''(''n'')}}や{{math|''BSO''(''2'')}}はグラスマン多様体として表す事ができる。そしてグラスマン多様体をCW複体であって各{{mvar|k}}に対して{{mvar|k}}包体が有限個のもので表せる事が知られている<ref>[[#Milnor]] p.73-83</ref>。よって<math>H_k(BSO(n);\mathbb{Z})</math>、<math>H^k(BSO(n);\mathbb{Z})</math>、<math>H_k(BSO(2)^m;\mathbb{Z})</math>、<math>H^k(BSO(2)^m;\mathbb{Z})</math>は全て有限生成であり、上述の普遍係数定理の前提条件が満たされる。

以下、<math>\Lambda=\mathbb{Z}[1/2]=\{a/2^n \mid a\in\mathbb{Z},n\in \mathbb{Z}_{\ge 0}\}</math>の場合に対してのみ定理を証明する。それ以外の場合に関しては普遍係数定理から従う。なお<math>\Lambda=\mathbb{Z}[1/2]</math>は単項イデアル整域であり、<math>\Lambda</math>上のイデアルは素数<math>p\neq 2</math>により生成される単項イデアルのみである事を容易に示せる。

<math>\mu~:~SO(2)^m\to SO(n)</math>が誘導する写像
: <math>B\mu{}^*_{\Lambda}~:~H^k(BSO(n),\Lambda)\approx H^k(BSO(n),\mathbb{Z})\otimes\Lambda \to H^k(BSO(2)^m,\mathbb{Z})^W\otimes \Lambda</math> ...(1)
を考えるとき、まず(1)式の右辺について、
: <math>H^k(BSO(2)^m,\mathbb{Z})^W \otimes \Lambda \approx \Lambda^{r_k}</math>  ...(2)
となる非負整数{{mvar|r{{sub|k}}}}が存在する事が言える。

実際、<math>SO(2)\approx U(1)</math>であるので、チャーン類のところで述べた議論から、<math>H^*(BSO(2)^m;\mathbb{Z})\approx \mathbb{Z}[\gamma_1,\ldots,\gamma_m]</math>であり、よって特に各{{mvar|k}}に対し、<math>H^k(BSO(2)^m;\mathbb{Z})</math>は自由アーベル群であり、したがってその部分群である<math>H^k(BSO(2)^m,\mathbb{Z})^W</math>も自由アーベル群であるので(2)がしたがう。

<math>\Lambda=\mathbb{Z}[1/2]</math>は単項イデアル整域なので、[[主イデアル整域上の有限生成加群の構造定理|有限生成加群の基本定理]]を使って<math>H^k(BSO(n);\mathbb{Z})\approx \Lambda^{t_k}\oplus S^{(k)}</math>と自由{{mvar|Λ}}-加群部分<math>\Lambda^{t_k}</math>と捩れ部分群部分<math>S^{(k)}</math>の直和として表すと、(2)式より(1)式は
: <math>B\mu{}^*_{\Lambda}~:~H^k(BSO(n),\Lambda)\approx\Lambda^{t_k}\oplus S^{(k)}  \to H^k(BSO(2)^m,\mathbb{Z})^W\otimes \Lambda\approx\Lambda^{r_k}</math>   ...(3)
と書ける。

<math>H^*(SO(n);\mathbb{Z})</math>は素数<math>p\neq 2</math>に対し、{{mvar|p}}-捩れ部分群を持たないので、<math>G=SO(n)</math>、<math>T=SO(2)^m</math>に対してBorelの定理を使う事ができ、
:<math>B\mu{}^*_{\mathbb{Z}_p}~:~H^*(BSO(n),\mathbb{Z}_p) \overset{\sim}{\to} H^*(BSO(2)^m,\mathbb{Z})^W\otimes \mathbb{Z}_p</math> for <math>p\neq 2</math>   
である。上式と(3)式と普遍係数定理を使って書き換える事で、
:<math>B\mu{}^*_{\mathbb{Z}_p}~:~\mathbb{Z}_p{}^{t_k}\oplus (S^{(k)}\otimes \mathbb{Z}_p) \oplus (S^{(k+1)}\otimes \mathbb{Z}_p)\overset{\sim}{\to} \mathbb{Z}_p{}^{r_k}</math> for <math>p\neq 2</math>   ...(4)
が言える。

有限生成加群の基本定理から<math>S^{(k)}</math>、<math>S^{(k+1)}</math>は有限集合なので、<math>S^{(k)}</math>、<math>S^{(k+1)}</math>には位数{{mvar|q}}の元が存在しない素数<math>q \neq 2</math>を取る事ができる。(4)式で<math>p=q</math>とすると、{{mvar|q}}の取り方から<math>S^{(k)} \otimes \mathbb{Z}_q= S^{(k+1)} \otimes \mathbb{Z}_q=0</math>が成立する。よって(4)式から
: <math>r_k=t_k</math> ...(5)
が成立する。すなわち<math>H^k(BSO(n);\Lambda)</math>の自由アーベル群部分のランクは<math>H^k(BSO(2)^m,\mathbb{Z})^W\oplus\Lambda</math>のランクに等しい。

また任意の<math>p\neq 2</math>に対し(4)式の両辺で<math>\mathbb{Z}_p</math>上の次元が同じでなければならないので、(5)式から<math>S^{(k)}\otimes \mathbb{Z}_p=S^{(k+1)}\otimes \mathbb{Z}_p=0</math>である。よって<math>S^{(k)}</math>も<math>S^{(k+1)}</math>も<math>p\neq 2</math>に対し{{mvar|p}}-捩れ元を持たない。{{mvar|Λ}}の定義から{{mvar|2}}-捩れ元はそもそも存在しないので、結局(4)式は同ランクの自由加群の間の写像
: <math>B\mu{}^*_{\Lambda}~:~H^k(BSO(n),\Lambda)\approx \Lambda^{r_k} \to H^k(BSO(2)^m,\mathbb{Z})^W\otimes \Lambda \approx \Lambda^{r_k}</math> ...(6)
として書ける。

<math>B\mu{}^*_{\Lambda}</math>を行列として表してその行列式
<math>|B\mu{}^*_{\Lambda}|\in\Lambda</math>を考えると、(5)式が同型である事から<math>p\neq 2</math>に対し<math>|B\mu{}^*_{\Lambda}| \bmod p\neq 0</math>であり、したがって<math>|B\mu{}^*_{\Lambda}|\in\Lambda</math>は<math>p\neq 2</math>を約数に持たない。{{mvar|Λ}}の定義からこれは<math>|B\mu{}^*_{\Lambda}|</math>が{{mvar|Λ}}内で逆数を持つことを意味しており、よって<math>B\mu{}^*_{\Lambda}</math>は逆行列を持つ。したがって(6)は同型写像である。
|title=[[#SO(n)のワイル群による表現|命題]]の証明|drop=yes}}


以上の事から{{Math|1=''SO''(''n'')}}のワイル群{{Math|1=''W''=''W''(''SO''(''n''))}}の具体的な形と
: <math>H^*(BSO(2)^m,\mathbb{Z})^W\otimes \Lambda\subset H^*(BSO(2)^m,\mathbb{Z})\approx \Lambda[\gamma_1,\ldots,\gamma_m]</math>
の具体的な形を決定すれば<math>H^*(BSO(n),\Lambda)</math>の具体的な形が決定できる事になる。

===={{Math|1=''n''}}が偶数の場合の{{math|''H''{{sup|*}}(''BSO''(''n''),Λ)}}の構造====
{{Math|1=''n''=''2m''}}とし、ワイル群<math>W=W(SO(n))</math>の具体的な形を決定するため、実ベクトル空間として<math>\mathbb{R}^{n}=(\mathbb{R}^2)^m</math>という同一視をし、以下の２種類の行列を考える<ref name=":9" /><ref name=":10">[[#Conrad]] pp.1-4.</ref>{{Anchors|C_i、P_σの定義}}：
* {{Mvar|P{{sub|σ}}}}：<math>(\mathbb{R}^2)^m </math>の成分を置換<math>\sigma</math>に従って入れ替える置換行列。すなわち<math>(x_j,y_j)_{j=1,\ldots,m}\in (\mathbb{R}^2)^m</math>を<math>(x_{\sigma(i)},y_{\sigma(i)})_{i=1,\ldots,m}\in (\mathbb{R}^2)^m</math>に写す行列。
* {{Mvar|C{{sub|i}}}}：{{mvar|y{{sub|i}}}}の符号を反転する写像。すなわち<math>(x_j,y_j)_{j=1,\ldots,m}\in(\mathbb{R}^2)^m </math>を<math>(x_j,(-1)^{\delta_{i,j}}y_j)_{j=1,\ldots,m}\in(\mathbb{R}^2)^m </math>に写す行列{{refn|group="注"|なお、{{Mvar|x{{sub|i}}}}の方の符号を反転する行列<math>(x_j,y_j)_{j=1,\ldots,m}\mapsto ((-1)^{\delta_{i,j}}x_j,y_j)_{j=1,\ldots,m}</math>は、{{Mvar|C{{sub|i}}}}と90度回転の組み合わせで書く事ができるので、ワイル群の生成元を議論する際には{{Mvar|C{{sub|i}}}}の方だけあれば十分である。なお本項では<ref name=":10" />に合わせて{{Mvar|C{{sub|i}}}}を用いる事にしたが、<ref name=":9" />では{{Mvar|C{{sub|i}}}}の代わりに<math>
\begin{pmatrix}
 0 &1\\
 1 & 0
\end{pmatrix}
</math>を用いている。しかしこれもワイル群上では{{Mvar|C{{sub|i}}}}と同一の元を表すので、どちらを用いても問題ない。}}。ここで{{mvar|δ{{sub|i,j}}}}は[[クロネッカーのデルタ]]である。

{{Mvar|P{{sub|σ}}}}の方は{{Mvar|x{{sub|i}}}}と{{Mvar|y{{sub|i}}}}がセットになって置換されるので<math>\mathbb{R}^{n}=(\mathbb{R}^2)^m</math>上の空間の向きを保ち、{{Math|''SO''(''n'')}}に属するが、{{Mvar|C{{sub|i}}}}の方は空間の向きを反転するので{{Math|''O''(''n'')}}には属するものの{{Math|''SO''(''n'')}}には属さない。しかし{{Mvar|C{{sub|i}}}}を'''偶数個かけ合わせたもの'''は{{Math|''SO''(''n'')}}に属する<ref name=":9" />。

{{math theorem|命題|
ワイル群の任意の元は{{Mvar|C{{sub|i}}}}を'''偶数個'''かけ合わせたものと{{Mvar|P{{sub|σ}}}}を使って書ける<ref name=":10" />。
}}
{{math proof|
まず示すべき命題を厳密に記述する：
{{math theorem|命題|
{{Math|1=''n''=''2m''}}のとき、{{Math|''W''{{=}}''W''(''SO''(''n''))}}の任意の元は、
: <math>[C_{1}{}^{\varepsilon_1}\cdots C_{m}{}^{\varepsilon_m} P_{\sigma}]</math>  s.t. <math>\varepsilon_1+\cdots+\varepsilon_m=0 \bmod 2</math>
という形で書ける。ここで<math>[\cdot]</math>は（ワイル群は正規化群を中心化群で割ったものであったので）中心化群による同値類を表し、{{mvar|σ}}は置換である。
}}
ワイル群の元<math>[A]\in W</math>の具体的な形が定理に書かれた形である事を示す。

そのために相異なる値<math>\kappa_1,\ldots,\kappa_m\in [0,2\pi)</math>を選び、<math>K:=R(\kappa_1)\oplus \cdots \oplus R(\kappa_m)</math>とする。

さらに<math>e_1,f_1,e_2,f_2,\ldots,e_m,f_m</math>を<math>\mathbb{R}^n=(\mathbb{R}^2)^{m}</math>の基底とし、<math>E_i</math>を{{mvar|e{{sub|i}}}}、{{mvar|f{{sub|i}}}}が張る<math>(\mathbb{R}^2)^{m}</math>の部分ベクトル空間とする。

ワイル群の定義から、<math>[A]\in W</math>と上記の{{mvar|G}}に対し、<math>\varphi_A(G)\in SO(2)^m</math>なので、ある<math>\kappa'_1,\ldots,\kappa'_m\in[0,2\pi)</math>が存在し、
: <math>\varphi_A(G)=R(\kappa'_1)\oplus \cdots \oplus R(\kappa'_m)</math>
が成立する。

<math>e'_i:=e_iA</math>、<math>f'_i:=f_iA</math>とし、{{mvar|e'{{sub|i}}}}、{{mvar|f'{{sub|i}}}}が張る<math>\mathbb{R}^{2m}</math>の部分ベクトル空間を{{mvar|E'{{sub|i}}}}とすると、直交行列{{mvar|K}}の標準形の一意性より、ある置換<math>\sigma~:~\{1,\ldots,m\}\to \{1,\ldots,m\}</math>が存在し、
:<math>E'_i=E_{\sigma(i)}</math>
が成立する。これは<math>E'_i=E_{\sigma(i)}</math>の二組の基底<math>(e_i,f_i)</math>、<math>(e'_i,f'_i)</math>が2次元の可逆行列で移り合う事を意味する。

よってある2次元の可逆行列<math>A_1,\ldots,A_m</math>が存在し、
: <math>A=(A_1\oplus\cdots\oplus A_m) \cdot P_{\sigma}</math>
が成立する。{{mvar|A}}が向きを保つ直交行列であり、<math>\mathbb{R}^n=(\mathbb{R}^2)^m</math>上の置換行列<math>P_{\sigma}</math>も向きを保つ直交行列なので、<math>A_1\oplus\cdots\oplus A_m</math>も向きを保つ直交行列でなければならない。したがって<math>A_1,\ldots,A_m</math>はすべて直交行列であり、しかも<math>|A_1|\cdot\cdots\cdot |A_m|=1</math>が成立する。ここで<math>|\cdot|</math>は行列式である。

{{mvar|A{{sub|i}}}}は直交行列なので、
: <math>A_i=C{}^{\varepsilon_i}R(\theta_i)</math>
となる<math>\theta_i\in[0,2\pi)</math>、<math>\varepsilon_i\in\{0,1\}</math>が存在する。ここで<math>C~:~\mathbb{R}^2\to \mathbb{R}^2</math>は<math>(x,y)\in\mathbb{R}^2</math>を<math>(x,-y)\in\mathbb{R}^2</math>に写す写像であり、<math>\varepsilon_i</math>は{{mvar|A{{sub|i}}}}が向きを保つときは{{mvar|0}}、そうでないときは{{mvar|1}}である。

よって
: <math>
A
=(A_1\oplus\cdots\oplus A_m)\cdot P_{\sigma}
=((C{}^{\varepsilon_1}R(\theta_1))\oplus\cdots\oplus (C{}^{\varepsilon_m}R(\theta_m)))\cdot P_{\sigma}
=(C{}^{\varepsilon_1}\oplus\cdots\oplus C{}^{\varepsilon_m})\cdot (R(\theta_1)\oplus\cdots\oplus R(\theta_m))\cdot P_{\sigma}
=(C_1{}^{\varepsilon_1}\cdots C_m{}^{\varepsilon_m})\cdot (R(\theta_1)\oplus\cdots\oplus R(\theta_m))\cdot P_{\sigma}
</math>
であり、<math>R(\theta_1)\oplus \cdots \oplus R(\theta_m)\in SO(2)^m</math>であるので、
:<math>[A]=(C_1{}^{\varepsilon_1}\cdots C_m{}^{\varepsilon_m}) P_{\sigma}</math>
が成立する。また<math>|A_1|\cdot\cdots\cdot |A_m|=1</math>であった事から<math>|C{}^{\varepsilon_1}| \cdots |C{}^{\varepsilon_m}|=1</math>が成立し、したがって
: <math>\varepsilon_1+\cdots+\varepsilon_m=0 \bmod 2</math>
も成立する。
|drop=yes}}
よって<math>P_{\sigma}</math>、<math>C_i</math>が<math>H^*(BSO(2)^m;\mathbb{Z})\approx \mathbb{Z}[\gamma_1,\ldots,\gamma_m]</math>上に誘導する写像を特定すれば、<math>H^*(BSO(n);\Lambda)</math>の構造が決定できるが、これらの写像は以下の通りである：
{{math theorem|補題|
<math>P_{\sigma}</math>、<math>C_i</math>が<math>H^*(BSO(2)^m;\mathbb{Z})\approx \mathbb{Z}[\gamma_1,\ldots,\gamma_m]</math>上に誘導する写像は、それぞれ<math>\gamma_i</math>を<math>\gamma_{\sigma(i)}</math>に写す写像、<math>\gamma_i</math>を<math>-\gamma_i</math>に代える写像である<ref name=":9" />。
}}
{{math proof|
<math>P_{\sigma}</math>が誘導する写像が<math>\gamma_i</math>を<math>\gamma_{\sigma(i)}</math>に写す写像な事はチャーン類のときの議論と場合と同様、分類空間は[[#直積の分類空間|直積に対して自然に振る舞う]]事から従うので、補題の後半のみを示す。

証明は{{math|1=''m''=''1''}}の場合のみ示せば良い。実際、{{math|1=''m''=''1''}}の場合に<math>C_1</math>が誘導する写像が<math>\gamma_i</math>を<math>-\gamma_i</math>に代える写像であれば、<math>H^*(BSO(2)^m;\mathbb{Z})</math><math>\approx \otimes_{i=1,\ldots,m}H^*(BSO(2);\mathbb{Z})</math><math>\approx \otimes_{i=1,\ldots,m}\Lambda[\gamma_i]</math>である事から一般の場合が従う。

すでに述べたように<math>\pi~:~PSO(2)\to BSO(2)</math>（のモデルの一つ）は、無限次元の正規直交スティーフェル多様体<math>V^O_2\mathbb{R}^{\infty}</math>と向きづけられた無限次元グラスマン多様体<math>\tilde{G}_2\mathbb{R}^{\infty}</math>により、
: <math>\pi~:~(e_1,e_2)\in PSO(2)=V^O_2\mathbb{R}^{\infty} \to [e_1,e_2]\in BSO(2)=\tilde{G}_2\mathbb{R}^{\infty}</math>
と表現できた。ここで<math>[e_1,e_2]</math>は<math>(e_1,e_2)</math>が張る向きづけられた平面である。

[[#分類空間への誘導写像|分類空間への誘導写像の定義]]より、<math>B\varphi_{C_1}~:~BSO(2)\to BSO(2)</math>は、<math>PSO(2)\times_{\varphi_{C_1}}SO(2)</math><math>=V^O_2\mathbb{R}^{\infty}\times_{\varphi_{C_1}}SO(2)</math><math> \to BSO(2)</math><math>=\tilde{G}_2\mathbb{R}^{\infty}</math>の分類写像であった。<math>C_1</math>による共役<math>\varphi_{C_1}~:~SO(2)\to SO(2)</math>は<math>R(\theta)</math>を<math>R(-\theta)</math>に写す写像なので、バランス積<math>PSO(2)\times_{\varphi_{C_1}}SO(2)</math>は
: <math>((e_1,e_2),R(\theta))\sim (R(-\theta)(e_1,e_2),1)</math>
という同値関係で<math>PSO(2)\times SO(2)</math>を割る事により定義される。ここで<math>R(-\theta)(e_1,e_2)</math>は<math>(e_1,e_2)</math>を含む平面上で<math>(e_1,e_2)</math>を<math>-\theta</math>だけ回転させたものである。この同値類による同値関係を以下<math>[\cdot]_{\varphi_{C_1}}</math>と表す。

写像<math>\xi</math>を
:<math>\xi~:~[e_1,e_2]\in BSO(2)=\tilde{G}_2\mathbb{R}^{\infty} \mapsto [e_1,-e_2]\in BSO(2)=\tilde{G}_2\mathbb{R}^{\infty}</math>
により定義すると、下記の[[可換図式|図式が可換]]になる：
:<math>
\begin{array}{ccc}
 [((e_1,e_2),R(\theta))]_{\varphi_{C_1}}\in V^O_2\mathbb{R}^{\infty}\times_{\varphi_{C_1}}SO(2) & \to & R(\theta)(e_1,-e_2)\in V^O_2\mathbb{R}^{\infty}\\
\downarrow & \circlearrowright & \downarrow \\[] 
 [e_1,e_2]\in \tilde{G}_2\mathbb{R}^{\infty} & \overset{\xi}{\to} & [e_1,-e_2]\in \tilde{G}_2\mathbb{R}^{\infty}\\
\end{array}
</math>
よって、<math>B\varphi_{C_1}</math>の定義より、<math>B\varphi_{C_1}</math>は{{mvar|ξ}}と一致し、{{mvar|ξ}}の定義から<math>B\varphi_{C_1}=\xi</math>が<math>H^*(BSO(2);\mathbb{Z})</math>上に誘導する写像は、生成元<math>\gamma_1</math>を<math>-\gamma_1</math>に写す。
|drop=yes}}

よって、以下が成立する：
{{math theorem|命題|
{{mvar|n}}が偶数のとき、<math>H^*(BSO(2)^m;\mathbb{Z})\approx \mathbb{Z}[\gamma_1,\ldots,\gamma_m]</math>上のワイル群の作用は、<math>\gamma_1,\ldots,\gamma_m</math>を置換する写像と、偶数個の<math>\gamma_i</math>を符号反転する写像で生成される<ref name="名前なし-20230316125856-5">[[#Borel]] p.413.</ref>。
}}

これらの事実を用いると、基本対称式<math>p_i=\sigma_i(\gamma_1{}^2,\ldots,\gamma_m{}^2)</math>と<math>e=\gamma_1\cdots\gamma_m</math>を用いて、
:<math>H^*(BSO(n);\Lambda)\approx \Lambda[p_1,\ldots,p_m,e]</math> 
と書ける事がわかる。

{{math proof|
{{mvar|n}}が奇数の場合は上述の命題から自明に定理が従うので、{{mvar|n}}が偶数の場合のみ定理を示す。<math>n=2m</math>とする。

{{math|''m''{{=}}''1''}}の場合は、変数{{mvar|γ{{sub|i}}}}が1つしかないため「{{Mvar|λ{{sub|i}}}}の偶数回の符号反転」は恒等写像のみであるので、定理は自明に従う。

{{math|''m''≧''2''}}に対し、任意の<math>f(\gamma_1,\ldots,\gamma_m)\in\Lambda[\gamma_1,\gamma_2]^W</math>は
: <math>f(\gamma_1,\ldots,\gamma_m)=\sum_{\varepsilon_1,\ldots,\varepsilon_m\in\{0,1\}}f_{\varepsilon_1,\ldots,\varepsilon_m}(\gamma_1{}^2,\ldots,\gamma_m{}^2)\gamma_1{}^{\varepsilon_1}\cdots\gamma_m{}^{\varepsilon_m}</math>
という形で書きあらわせる。ここで<math>f_{\varepsilon_1,\ldots,\varepsilon_m}(\gamma_1{}^2,\ldots,\gamma_m{}^2)\gamma_1{}^{\varepsilon_1}\cdots\gamma_m{}^{\varepsilon_m}</math>は各{{math|''i''{{=}}''1'',''2''}}に対し、{{mvar|λ{{sub|i}}}}の次数を<math>\bmod 2</math>したものが<math>\varepsilon_i</math>になる項の和である。

<math>k,\ell\in\{1,\ldots,m\}</math>に対し<math>\gamma_k,\gamma_{\ell}</math>の符号を反転すると、
: <math>
f(\gamma_1,\ldots,-\gamma_k\ldots,-\gamma_{\ell},\ldots,\gamma_m)
=\left(
\sum_{\varepsilon_k=0,\varepsilon_{\ell}=0}
-\sum_{\varepsilon_k=1,\varepsilon_{\ell}=0}
-\sum_{\varepsilon_k=0,\varepsilon_{\ell}=1}
+\sum_{\varepsilon_k=1,\varepsilon_{\ell}=1}
\right)
f_{\varepsilon_1,\ldots,\varepsilon_m}(\gamma_1{}^2,\ldots,\gamma_m{}^2)\gamma_1{}^{\varepsilon_1}\cdots\gamma_m{}^{\varepsilon_m} 
</math>
となる。{{mvar|f}}は偶数回の符号反転に関して不変でなければならない事から、<math>f(\gamma_1,\ldots,\gamma_m)=
f(\gamma_1,\ldots,-\gamma_k\ldots,-\gamma_{\ell},\ldots,\gamma_m)</math>なので、
<math>\varepsilon_k=\varepsilon_{\ell}</math>となる項以外は{{mvar|0}}でなければならない。
<math>k,\ell</math>の任意性から<math>\varepsilon_1=\cdots=\varepsilon_m</math>となる項のみが生き残る事になるので、{{mvar|f}}は
: <math>f(\gamma_1,\ldots,\gamma_m)=
f_{0,\ldots,0}(\gamma_1{}^2,\ldots,\gamma_m{}^2)
+f_{1,\ldots,1}(\gamma_1{}^2,\ldots,\gamma_m{}^2)\gamma_1\cdots\gamma_m</math>
であり、{{mvar|f}}が<math>\gamma_1{}^2,\ldots,\gamma_m{}^2,\gamma_1\cdots\gamma_m</math>の多項式で書ける事がわかる。
{{mvar|f}}は変数の入れ替えに対しても不変でなければならないので、以上の議論から{{mvar|f}}は<math>\gamma_1{}^2,\cdots,\gamma_m{}^2</math>の基本対象式と<math>\tau=\gamma_1\cdots\gamma_m</math>の多項式として書く事ができ、定理が示された。
|drop=yes}}

===={{Math|1=''n''}}が奇数の場合の{{math|''H''{{sup|*}}(''BSO''(''n''),Λ)}}の構造====
{{Math|1=''n''=''2m''+''1''}}とし、ワイル群<math>W=W(SO(n))</math>を具体的に求めるため、実ベクトル空間として<math>\mathbb{R}^{n}=(\mathbb{R}^2)^m\times \mathbb{R}</math>という同一視をし、{{Mvar|P{{sub|σ}}}}、{{Mvar|C{{sub|i}}}}を{{mvar|n}}が偶数の場合と同様に取る{{refn|group=注|すなわち、{{Mvar|P{{sub|σ}}}}は<math>((x_j,y_j)_j,z)\in(\mathbb{R}^2)^m\times\mathbb{R}</math>に<math>((x_{\sigma(j)},y_{\sigma(j)})_j,z)</math>を対応させ、{{Mvar|C{{sub|i}}}}は<math>((x_j,(-1)^{\delta_{i,j}}y_j)_j,z)</math>を対応させる。}}。さらに以下の行列を考える：
*{{Mvar|M}}：<math>((x_i,y_i)_i,z)\in(\mathbb{R}^2)^m\times\mathbb{R}</math>に<math>((x_i,y_i)_i,-z)</math>を対応させる写像。
{{Mvar|M}}は明らかに位数{{Mvar|2}}の元であり、しかも{{Mvar|C{{sub|i}}}}と可換である。そして埋め込み<math>\mu~:~SO(2)^m\hookrightarrow SO(n)</math>の定義から{{Mvar|M}}による共役は<math>SO(2)^m</math>上恒等写像になる。


{{Math|1=''n''}}が偶数の場合と同様の議論により、ワイル群の任意の元は<math>C_1,\ldots,C_m,M</math>の偶数個の積と{{Mvar|P{{sub|σ}}}}との積により書ける事がわかるが、{{Mvar|M}}に着目するとさらに簡単な表現も得られる。

実際、{{Mvar|M}}による共役は<math>SO(2)^m</math>上恒等写像なので、変換に影響するのは{{Mvar|M}}以外の<math>C_1,\ldots,C_m</math>（と{{Mvar|P{{sub|σ}}}}）のみである。そしてこれらの積<math>C_{1}{}^{\varepsilon_1}\cdots C_{m}{}^{\varepsilon_m}</math>が偶数個の積であっても奇数個の積であっても、
:<math>\bar{C}_i:=C_iM</math>
とすると、<math>\bar{C}_1{}^{\varepsilon_1}\cdots\bar{C}_m{}^{\varepsilon_m}=C_{1}{}^{\varepsilon_1}\cdots C_{m}{}^{\varepsilon_m}M^{\varepsilon_1+\cdots+\varepsilon_m} </math>は必ず偶数個の元<math>C_1,\ldots,C_m,M</math>の積である。よって以下が成立する：

{{math theorem|命題|
ワイル群の元は<math>\bar{C}_1,\ldots,\bar{C}_m</math>を'''偶数個または奇数個'''かけ合わせたものと{{Mvar|P{{sub|σ}}}}を使って書ける<ref name=":10" />。
}}
{{math proof|
まず示すべき命題を厳密に記述する：
{{math theorem|命題|
{{Math|1=''n''=''2m''+''1''}}のとき{{Math|''W''{{=}}''W''(''SO''(''n''))}}の任意の元は、
: <math>[\bar{C}_{1}{}^{\varepsilon_1}\cdots \bar{C}_{m}{}^{\varepsilon_m}P_{\sigma}]</math>
という（'''偶数個または奇数個の'''）積の形で書ける。
ここで<math>[\cdot]</math>は（ワイル群は正規化群を中心化群で割ったものであったので）中心化群による同値類を表し、{{mvar|σ}}は置換である。}}


{{math|''n''}}が偶数の場合と同様の議論により、
ワイル群の任意の元が
: <math>[C_{1}{}^{\varepsilon_1}\cdots C_{m}{}^{\varepsilon_m}M^{\delta}P_{\sigma}]</math>  s.t.  <math>\varepsilon_1+\cdots+\varepsilon_m+\delta=0 \bmod 2</math>
という形で書ける事を示せる。
よって、
: <math>
[C_{1}{}^{\varepsilon_1}\cdots C_{m}{}^{\varepsilon_m}M^{\delta}P_{\sigma}]
\underset{(1)}{=}
[C_{1}{}^{\varepsilon_1}\cdots C_{m}{}^{\varepsilon_m}M^{\varepsilon_1+\cdots+\varepsilon_m}P_{\sigma}]
\underset{(2)}{=}
[(C_{1}M){}^{\varepsilon_1}\cdots (C_{m}M){}^{\varepsilon_m}P_{\sigma}]
\underset{(3)}{=}
[\bar{C}_{1}{}^{\varepsilon_1}\cdots \bar{C}_m{}^{\varepsilon_m}P_{\sigma}]
</math>
が成立する。ここで
* (1)は<math>\varepsilon_1+\cdots+\varepsilon_m+\delta=0 \bmod 2</math>と{{mvar|M}}の位数が{{mvar|2}}な事から従う。
* (2)は{{mvar|M}}が{{mvar|C{{sub|i}}}}と可換な事から従う。
* (3)は<math>\bar{C}_i</math>の定義から従う。
|drop=yes}}

{{mvar|n}}が偶数の場合と同様、<math>P_{\sigma}</math>、<math>C_i</math>が<math>H^*(BSO(2);\mathbb{Z})\approx \mathbb{Z}[\gamma_1,\ldots,\gamma_m]</math>上に誘導する写像は、それぞれ<math>\gamma_1,\ldots,\gamma_m</math>を<math>\gamma_{\sigma(1)},\ldots,\gamma_{\sigma(m)}</math>に写す写像、<math>\gamma_i</math>を<math>-\gamma_i</math>に代える写像である。また{{mvar|M}}による共役は恒等写像なので、<math>\bar{C}_i=C_iM</math>が<math>H^*(BSO(2);\mathbb{Z})\approx \mathbb{Z}[\gamma_1,\ldots,\gamma_m]</math>上に誘導する写像も<math>\gamma_i</math>を<math>-\gamma_i</math>に代える写像である。よって以下が成立する。

{{math theorem|命題|
{{mvar|n}}が奇数のとき、<math>H^*(BSO(2)^m;\mathbb{Z})\approx \mathbb{Z}[\gamma_1,\ldots,\gamma_m]</math>上のワイル群の作用は、<math>\gamma_1,\ldots,\gamma_m</math>を置換する写像と、任意個の<math>\gamma_i</math>を符号反転する写像で生成される<ref name="名前なし-20230316125856-5"/>。
}}

これらの写像で不変な元は<math>\gamma_i{}^2</math>の対称式なので、基本対称式<math>p_i=\sigma_i(\gamma_1{}^2,\ldots,\gamma_m{}^2)</math>を用いて、
:<math>H^*(BSO(n);\Lambda)\approx \Lambda[p_1,\ldots,p_m]</math> 
と書ける事がわかる。

===={{math|''H''{{sup|*}}(''BO''(''n''),Λ)}}の構造====

<math>O(n)/SO(n)=\mathbb{Z}_2</math>である事から、[[#部分群の分類空間|部分群の分類空間に関する定理]]より、包含写像<math>\iota~:~SO(n)\subset O(n)</math>が誘導する写像
:<math>B\iota~:~BSO(n)\to BO(n)</math>
は<math>\mathbb{Z}_2</math>-主バンドルである<ref name=":9" />。

<math>\mathbb{Z}_2</math>の{{math|''BSO''(''n'')}}への作用は、<math>\mathbb{Z}_2</math>の<math>H^*(BSO(n);\Lambda)</math>への作用を誘導する。<math>\mathbb{Z}_2</math>の作用により不変な<math>H^*(BSO(n);\Lambda)</math>の元の集合を<math>H^*(BSO(n);\Lambda)^{\mathbb{Z}_2}</math>とすると以下が成立する事が知られている：
{{math theorem|定理|
: <math>B\iota^*~:~H^*(BO(n);\Lambda)\to H^*(BSO(n);\Lambda)^{\mathbb{Z}_2}</math>
は環同型である<ref name=":9" />。
|}}

{{math proof|
[[#部分群の分類空間|部分群の分類空間に関する定理]]の証明からもわかるように、<math>B\iota~:~BSO(n)\to BO(n)</math>は{{math|''BO''(''n'')}}の[[被覆空間|二重被覆]]で、<math>\mathbb{Z}_2</math>はそのデッキ変換として{{math|''BSO''(''n'')}}に作用する。

<math>C_*(BO(n);\Lambda)</math>を[[特異ホモロジー]]の{{mvar|Λ}}-係数チェイン複体とするとき、<math>\sum_ia_is_i\in C_*(BO(n);\Lambda)</math>の各チェイン単体{{mvar|s{{sub|i}}}}は二重被覆{{math|''BSO''(''n'')}}に２つのリフト<math>s'_i</math>、<math>s''_i</math>を持ち、この２つのリフトはデッキ変換で移り合う。そこで写像{{math|''p''{{sub|!}}}}を
:<math>p_{!}~:~C_*(BO(n);\Lambda)\to C_*(BSO(n);\Lambda),~~ \sum_ia_is_i \mapsto \sum_ia_i(s'_i+s''_i)</math>
により定義し<ref group="注">ここで添字の「!」は通常期待されるのと逆向きの写像である事を表す。[[:en:Shriek map]]を参照。</ref>、<math>g~:~BSO(n)\to BSO(n)</math>を（唯一の）非自明なデッキ変換とすると、
: <math>
\begin{array}{rcll}
B\iota \circ p_!(t)&=&2t  &\text{ for } \forall t\in C_*(BO(n);\Lambda)\\
p_! \circ B\iota(s)&=&s+g(s) &\text{ for } \forall s\in C_*(BSO(n);\Lambda) 
\end{array}
</math>
が成立する。よってこれらがコホモロジーに誘導する写像は、
: <math>
\begin{array}{rcll}
p_!{}^*\circ B\iota{}^*  (v)&=&2v  &\text{ for } \forall v\in H^*(BO(n);\Lambda)\\
B\iota{}^* \circ p_!{}^* (u)&=&u+g^*(u) &\text{ for } \forall u\in H^**(BSO(n);\Lambda) 
\end{array}
</math>
を満たす。

{{math|''2''{{sup|-1}}∈Λ}}であった事から<math>p_!{}^*\circ B\iota{}^* (v)=2v</math>は逆写像を持つので、<math>B\iota{}^*</math>は単射である。
また<math>u\in H^*(BSO(n);\Lambda)^{\mathbb{Z}_2}</math>であれば、<math>g^*(u)=u</math>であるので、<math>u=2^{-1}u+g^*(2^{-1}u)=B\iota{}^* (p_!{}^* (u))</math>となり、{{mvar|u}}は<math>B\iota{}^*</math>に関する逆像<math>p_!{}^* (u)</math>を持つ。
以上から<math>B\iota^*~:~H^*(BO(n);\Lambda)\to H^*(BSO(n);\Lambda)^{\mathbb{Z}_2}</math>が環同型な事が証明された。
|title=証明<ref name=":9" />|drop=yes}}

上述の定理から特に、
: <math>H^*(BO(n);\Lambda) \to H^*(BSO(n);\Lambda) \to \Lambda[\gamma_1,\ldots,\gamma_m]</math>
は単射である事が従う。この単射における<math>H^*(BO(n);\Lambda)</math>の像は、[[#C_i、P_σの定義|前述]]の{{mvar|C{{sub|i}}}}の（偶数個または奇数個の）積が作用が誘導する写像、{{mvar|P{{sub|σ}}}}が誘導する写像で不変でなければならないので、{{math|''H''{{sup|*}}(''BSO''(''n''),Λ)}}のときと同様の議論により、
: <math>H^*(BO(n);\Lambda)\approx \Lambda[p_1,\ldots,p_m]</math>
が従う。

===性質 ===
[[#実ベクトルバンドルの分類空間の構造|前述の定理]]が成り立つ理由の説明は[[#実ベクトルバンドルの分類空間の構造の証明|後回し]]にし、本節ではポントリャーギン類とオイラー類の性質を述べる。

ポントリャーギン類はチャーン類との間に以下の関係を満たす：
{{math theorem|定理|
実ベクトルバンドル<math>\xi=(\pi,E,X)</math>に対し、{{mvar|ξ}}の複素化を<math>\xi_{\mathbb{C}}</math>
とすると、任意の非負整数<math>j</math>に対し、以下が成立する<ref name=":9" />：
: <math>p_j(\xi)=(-1)^j c_{2j}(\xi_{\mathbb{C}})</math>、<math>c_{2j+1}(\xi_{\mathbb{C}})=0</math> in <math>H^*(X;\Lambda)</math>
|note='''チャーン類との関係'''}}

{{math proof|
定理を示すには、包含写像
:<math>\iota~:~O(n) \subset U(n)</math>
が誘導する写像
: <math>\iota^*~:~H^*(BU(n);\mathbb{Z})\to H^*(BO(n);\mathbb{Z})</math>
によって
: <math>B\iota^*(c_{k})=
\begin{cases}
(-1)^jp_j & \text{if } k= 2j\\
0 & \text{if } k= 2j+1
\end{cases}
</math>
となる事を任意の非負整数{{mvar|k}}に対して示せば良い。

これまで同様
:<math>\mu~:~O(2)^m\hookrightarrow O(n), ~~ (A_1,\ldots,A_m) \mapsto 
\begin{cases}
R(\theta_1)\oplus\cdots\oplus R(\theta_m) &\text{if }n=2m\\
R(\theta_1)\oplus\cdots\oplus R(\theta_m)\oplus 1 & \text{if }n=2m+1
\end{cases} </math>
を考え、可換図式
:<math>
\begin{matrix}
O(2)^m                    &\overset{\mu}{\hookrightarrow} &O(n)                      &\overset{\iota}{\hookrightarrow}& U(n)  \\
\rho\downarrow&\circlearrowright              &\varphi_{\hat{U}}|_{SO(n)}\downarrow&\circlearrowright        & \varphi_{\hat{U}}\downarrow \\
U(1)^n                     &\overset{\nu}{\hookrightarrow}  &U(n)                       &                  =              & U(n)                        
\end{matrix}
</math>、
を考える。ここで<math>\rho</math>は
: <math>(R(\theta_j))_{j=1,\ldots,m}\mapsto 
\begin{cases}
(e^{i\theta_j},e^{-i\theta_j})_{j=1,\ldots,m} &\text{if }n=2m\\
((e^{i\theta_j},e^{-i\theta_j})_{j=1,\ldots,m},1) & \text{if }n=2m+1
\end{cases}
</math>
であり、<math>\varphi_{\hat{U}}</math>は回転行列を
: <math>UR(\theta)U^{-1}=\begin{pmatrix}
\mathrm{e}^{i\theta} & 0\\
0 & \mathrm{e}^{-i\theta}
\end{pmatrix}.</math>
と対角化する行列
:<math>
U=
{i \over \sqrt{2}}
\begin{pmatrix}
i & 1\\
1 & i
\end{pmatrix}
</math>
を並べてできる行列
:<math>
\hat{U}:=
\begin{cases}
\overbrace{U\oplus\cdots\oplus U}^m &\text{if }n=2m\\
\overbrace{U\oplus\cdots\oplus U}^m\oplus 1 & \text{if }n=2m+1
\end{cases}
</math>
による内部自己同型
: <math>\varphi_{\hat{U}}~:~U(n) \to U(n), ~R \to \hat{U}R\hat{U}^{-1}</math>
であり、<math>\nu</math>は対角線への埋め込み
:<math>\nu~:~U(1)^n\hookrightarrow U(n), ~~ (a_1,\ldots,a_n) \mapsto 
a_1\oplus\cdots\oplus a_n
</math>
である。

{{math|1=''n''=''2m''}}の場合に元の動きを図示すると、以下の通りである：
:<math>
\begin{matrix}
(R(\theta_j))_{j=1,\ldots,m} &\overset{\mu}{\hookrightarrow} &R(\theta_1)\oplus \cdots \oplus R(\theta_m) &\overset{\iota}{\hookrightarrow}& R(\theta_1)\oplus \cdots \oplus R(\theta_m)  \\
\rho\downarrow&\circlearrowright              &\varphi_{\hat{U}}\downarrow&\circlearrowright        & \varphi_{\hat{U}}\downarrow \\
(e^{i\theta_j},e^{-i\theta_j})_{j=1,\ldots,m}   &\overset{\nu}{\hookrightarrow}  &e^{i\theta_1}\oplus e^{-i\theta_1}\oplus\cdots\oplus e^{i\theta_m}\oplus e^{-i\theta_m}                       &                  =              &e^{i\theta_1}\oplus e^{-i\theta_1}\oplus\cdots\oplus e^{i\theta_m}\oplus e^{-i\theta_m}.
\end{matrix}
</math>

よって非負整数{{mvar|k}}に対し、
: <math>B\iota^*(c_k)\underset{(1)}{=}B\iota^*B\varphi_{\hat{U}}{}^*(c_k)
</math><math>=B(\varphi_{\hat{U}}|_{SO(n)}){}^*(c_k)
</math><math>\underset{(2)}{=}B(\varphi_{\hat{U}}|_{SO(n)}){}^* (B\nu^*{}^{-1}(\sigma_k(\alpha_1,\ldots,\alpha_n)))
</math><math>=B\mu^*{}^{-1}(B\rho^*(\sigma_k(\alpha_1,\ldots,\alpha_n)))
</math><math>\underset{(3)}{=}
\begin{cases}
B\mu^*{}^{-1}(\sigma_k(\gamma_1,-\gamma_1,\ldots,\gamma_m,-\gamma_m))&\text{if }n=2m\\
B\mu^*{}^{-1}(\sigma_k(\gamma_1,-\gamma_1,\ldots,\gamma_m,-\gamma_m,0)) & \text{if }n=2m+1
\end{cases}
</math>
が成立する。ここで<math>\alpha_s</math>、<math>\gamma_t</math>はそれぞれ<math>H^*(U(1)^m;\mathbb{Z})\approx \otimes_{u}H^*(U(1);\mathbb{Z})</math>、<math>H^*(O(2)^m;\mathbb{Z})\approx \otimes_{v}H^*(O(2);\mathbb{Z})</math>の{{mvar|s}}番目、{{mvar|j}}番目の<math>H^*(U(1);\mathbb{Z})</math>、<math>H^*(O(2);\mathbb{Z})</math>の生成元を表し、(1)は[[#内部自己同型の誘導する写像|内部自己同型は分類空間に恒等写像を誘導する]]事から従い、(2)はチャーン類の定義から従い、(3)は{{mvar|ρ}}の定義から従い、それ以外の等号は可換図式を追う事で従う。

<math>\sigma_k(\gamma_1,-\gamma_1,\ldots,\gamma_m,-\gamma_m,0)=\sigma_k(\gamma_1,-\gamma_1,\ldots,\gamma_m,-\gamma_m)</math>である事が対象多項式の定義から容易に従うので結局{{mvar|n}}によらず
: <math>B\iota^*(c_k)=
B\mu^*{}^{-1}(\sigma_k(\gamma_1,-\gamma_1,\ldots,\gamma_m,-\gamma_m))</math>
が成立する。

任意の[[不定元]]{{mvar|a{{sub|u}}}}、{{mvar|b{{sub|v}}}}、{{mvar|X}}に対し、
:<math>(1+a_1X)\cdots(1+a_{2m}X)=\sum_k\sigma_k(a_1,\ldots,a_{2m})X^k</math>
なので、
:<math>\sum_{k=1}^{2m}\sigma_k(b_1,-b_1,\ldots,b_m,-b_m)X^k
</math><math>=(1+b_1X)(1-b_1X)\cdots (1+b_mX)(1-b_mX)
</math><math>=(1-b_1{}^2X^2)\cdots (1-b_m{}^2X^2)
</math><math>=\sum_{j=1}^m(-1)^j\sigma_j(b_1{}^2,\ldots,b_m{}^2)X^{2j}</math>
が成立する。両辺の次数を比較する事により、
:<math>\sigma_k(b_1,-b_1,\ldots,b_m,-b_m)=
\begin{cases}
(-1)^j\sigma_j(b_1{}^2,\ldots,b_m{}^2) &\text{if }k=2j\\
0 & \text{if }k=2j+1
\end{cases}
</math>
である。以上の議論とポントリャーギン類の定義
: <math>p_i=B\mu^*{}^{-1}(\sigma_j(\gamma_1{}^2,\ldots,\gamma_m{}^2))</math>
から定理が従う。
|title=証明<ref name=":9" />|drop=yes}}

上の定理が{{mvar|Λ}}係数のコホモロジーに関するものである事に注意されたい。チャーン類は整数係数のコホモロジーに属するが、'''整数係数の場合は<math>c_{2j+1}(\xi_{\mathbb{C}})=0</math>が成立するとは限らない'''。しかし<math>2c_{2j+1}(\xi_{\mathbb{C}})=0</math>である事は言える{{refn|group="注"|name="2-torsion"|<math>H^*(BO(n);\mathbb{Z})</math>は2-捻れ元を持つので、<math>2x=0</math>であっても<math>x=0</math>であるとは限らない。}}。実際、一般に複素ベクトルバンドル<math>\eta</math>の複素共役バンドル<math>\bar{\eta}</math>とすると、<math>c_k(\bar{\eta})=(-1)^kc_k(\eta)</math>が成立し、しかも実ベクトルバンドルの複素化<math>\xi_{\mathbb{C}}</math>はその複素共役バンドル<math>\bar{\xi}_{\mathbb{C}}</math>と同型なので、
: <math>2c_{2j+1}(\xi_{\mathbb{C}})=0</math>
が成立する。

またチャーン類は整数係数のコホモロジーに属している事から、以下の系も従う：
{{math theorem|系|
ポントリャーギン類は整数係数コホモロジーに属する。すなわち任意の{{mvar|i}}に対し、
: <math>H^*(BO(n);\mathbb{Z})\hookrightarrow H^*(BO(n);\Lambda)</math>
の像に<math>p_i</math>は属している。
|}}

<math>H^*(BO(n);\mathbb{Z})\hookrightarrow H^*(BO(n);\Lambda)</math>は単射ではない（位数2の元が0に移る為）が、この写像による<math>p_i</math>の逆像として<math>(-1)^jc_{2j}(E_{\mathbb{C}})</math>を選べば、<math>c_{2j}(E_{\mathbb{C}})</math>が整数係数のコホモロジーに属するというのが上記の定理の意味である。以下、'''整数係数のコホモロジーにおけるポントリャーギン類'''を<math>p_i:=(-1)^jc_{2j}(E_{\mathbb{C}})</math>によって定義する。

チャーン類の場合と同様以下の定義をする：
{{math theorem|{{mvar|n}}次元実ベクトルバンドル{{mvar|ξ}}に対し、{{mvar|ξ}}の'''ポントリャーギン多項式'''を
: <math>p(\xi,t):=p_0 + p_1t + \cdots p_{\lfloor n/2 \rfloor}t^{\lfloor n/2 \rfloor}</math>
により定義し、'''全ポントリャーギン類'''を
: <math>p(\xi):=p(\xi,1)</math>
により定義する。
}}

チャーン類に対するホイットニー和の公式からポントリャーギン類のホイットニー和の公式が従う：
{{math theorem|定理|{{mvar|X}}上の実ベクトルバンドル<math>\xi</math>、<math>\eta</math>に対し、整数係数のコホモロジーにおけるポントリャーギン類は
: <math>2 p(\xi\oplus \eta) = 2 p(\xi)\smile p(\eta)</math> in <math>H^*(X;\mathbb{Z})</math>
を満たす<ref>[[#Milnor]] p.175.</ref>。
|note='''ホイットニー和の公式'''}}
上の定理では整数係数のコホモロジーを考えているので、両辺についている「{{mvar|2}}」を消すことはできない<ref group="注" name="2-torsion" />。<math>2^{-1}\in\Lambda</math>を満たす可換環{{mvar|Λ}}を係数とするコホモロジーにおいては両辺に{{mvar|2}}の逆元をかける事で、
: <math>p(\xi\oplus \eta) = p(\xi)\smile p(\eta)</math> in <math>H^*(BO(n);\Lambda)</math>
が成立する事がわかる。

また複素ベクトルバンドル<math>\omega</math>から複素構造を{{仮リンク|忘却関手|label=忘れて|en|Forgetful functor}}実ベクトルバンドルとみなしたものを<math>\xi</math>の'''脱複素化'''（{{lang-en-short|decomplexification}}、{{lang-en-short|realification}}）と呼び、<math>\omega_{\mathbb{R}}</math>と書く。<math>\omega_{\mathbb{R}}</math>を再び複素化したベクトルバンドル<math>(\omega_{\mathbb{R}})_{\mathbb{C}}</math>は<math>\omega \oplus \bar{\omega}</math>と同型になる事が知られている<ref name="Milnor176-177">[[#Milnor]] pp.176-177.</ref>。ここで<math>\bar{\omega}</math>は{{mvar|ω}}の共役バンドルである。
よって、チャーン類のホイットニー和の公式からチャーン多項式が<math>c((\omega_{\mathbb{R}})_{\mathbb{C}},1)</math><math>=c(\omega,1)c(\bar{\omega},1)</math><math>=c(\omega,1)c(\omega,-1)</math>を満たす事がわかる。成分で書くと、
: <math>\sum_{j=0}^{2n}c_j((\omega_{\mathbb{R}})_{\mathbb{C}})=\sum_{k=0}^nc_k(\omega)\sum_{\ell=0}^n(-1)^{\ell}c_{\ell}(\omega)=\sum_{j=0}^{2n}\sum_{s=0}^j(-1)^sc_{j-s}(\omega)c_s(\omega)</math>
である。ここで{{mvar|n}}は{{mvar|ω}}のファイバーの次元である。

右辺の形から、右辺の（{{mvar|4}}の倍数{{math|1=+''2''}}）次のコホモロジーは{{mvar|0}}になるので、左辺も（4の倍数{{math|1=+''2''}}）のコホモロジーは{{mvar|0}}で{{mvar|4}}の倍数次のみ生き残る。よって整数係数のポントリャーギン類の定義から以下が結論付けられる：
{{math theorem|定理|
{{mvar|ω}}を複素ベクトルバンドルとし、{{mvar|n}}をそのファイバーの次元とすると、以下が成立する<ref name="Milnor176-177" />：
: <math>\sum_{i=0}^{n}p_i(\omega_{\mathbb{R}})=\sum_{k=0}^nc_k(\omega)\sum_{\ell=0}^n(-1)^{\ell}c_{\ell}(\omega)</math>
}}

前節で述べたようにオイラー類は<math>\mu~:~SO(2)^m\to SO(n)</math>により誘導される写像を使って<math>\chi=B\mu^*(\gamma_1\cdots\gamma_m)</math>と定義されていた。よって明らかに以下が成立する：
{{math theorem|定理{{Anchors|Λに関する直和のオイラー類}}|同じ底空間{{mvar|X}}を持つ{{mvar|X}}上の実ベクトルバンドル<math>\xi</math>、<math>\eta</math>に対し、以下が成立する<ref>[[#Bruner]] p.57.</ref>：
: <math>e(\xi\oplus \eta)=e(\xi)e(\eta)</math> in <math>H^*(X;\Lambda)</math>
}}

[[#複素化におけるスティーフェルホイットニー類|すでに述べたように]]、実ベクトルバンドル<math>\xi=(\pi,X,E)</math>に対し、<math>H^*(X;\mathbb{Z}_2)</math>において<math>c_i(\xi_{\mathbb{C}})=w_i(\xi)^2</math>が成立する。よってポントリャーギン類の定義より以下が成立する。
{{math theorem|定理|<math>\xi=(\pi,X,E)</math>を実ベクトルバンドルとするとき、任意の非負整数{{mvar|i}}に対し、以下が成立する：
: <math>p_i(\xi)=w_{2i}(\xi)^2</math> in <math>H^*(X;\mathbb{Z}_2)</math>
}}

オイラー類の満たす式「<math>p_i(\xi)=e(\xi)^2</math> in <math>H^*(X;\Lambda)</math>」と上記の「<math>p_i(\xi)=w_{2i}(\xi)^2</math> in <math>H^*(X;\mathbb{Z}_2)</math>」から、整数係数コホモロジー<math>H^*(X;\mathbb{Z})</math>の元<math>\bar{e}(\xi)</math>で、
: <math>\bar{e}(\xi)=e(\xi)</math> in <math>H^*(X;\Lambda)</math>、<math>\bar{e}(\xi)=w_n(\xi)</math> in <math>H^*(X;\mathbb{Z}_2)</math>、
を満たす元が一意に存在する。ここで{{mvar|n}}は<math>\xi</math>のファイバーの次元である。このような<math>\bar{e}(\xi)</math>を'''整数係数コホモロジーにおけるオイラー類'''と呼ぶ。以下、紛れがなければ<math>\bar{e}(\xi)</math>の事を単に<math>e(\xi)</math>と書く。

本項では、{{mvar|Λ}}係数のコホモロジーからスタートしてオイラー類を定義したため、整数係数コホモロジーにおけるオイラー類は上記のように人工的なもののになったが、{{仮リンク|トムの同型定理|en|Thom space#The Thom isomorphism}}を使って整数係数コホモロジーにおけるオイラー類を直接的に定義する事もできる。詳細は[[オイラー類]]の項目を参照。

{{mvar|X}}上の実ベクトルバンドル<math>\xi</math>、<math>\eta</math>に対し、それぞれのファイバーの次元を{{mvar|n}}、{{mvar|m}}とすると、ホイットニー和の公式から<math>w_{n+m}(\xi\oplus \eta)=w_n(\xi)\oplus w_m(\eta)</math> in <math>H^*(X;\mathbb{Z}_2)</math>なので、[[#Λに関する直和のオイラー類|前述したΛ係数のオイラー類の直和に対する振る舞い]]と合わせて、整数係数コホモロジーにおけるオイラー類に対しても下記の定理が成り立つことが分かる：
{{math theorem|定理|同じ底空間{{mvar|X}}を持つ実ベクトルバンドル<math>\xi</math>、<math>\eta</math>に対し、以下が成立する<ref>[[#Bruner]] p.77.</ref>：
: <math>e(\xi\oplus \eta)=e(\xi)e(\eta)</math> in <math>H^*(X;\mathbb{Z})</math>
}}

==歴史==

特性類は、反変性を持ち、本質的に[[コホモロジー論]]的な現象である。ベクトル束の切断は空間上の函数の一種で、変更を必要とする切断の存在から反変性を導く。[[ホモロジー (数学)|ホモロジー論]]や[[ホモトピー|ホモトピー論]]は空間への写像を基礎とする共変な理論であり、反変な理論である[[コホモロジー論]]はその後に発見された。{{仮リンク|障害理論|en|obstruction theory}}(obstruction theory)の一部として特性類の理論が生まれた1930年代において、ホモロジー論の「双対」な理論を構築しようとする大きな理由として特性類の理論がある。[[曲率]]不変量に対する特性類のアプローチは、[[一般ガウス・ボネの定理|一般化されたガウス・ボネの定理]]を証明するための理論を作ることが目的であった。

特性類の基礎が確立した1950年ごろ、当時知られていた基本的な特性類（[[スティーフェル・ホイットニー類]]や[[チャーン類]]や[[ポントリャーギン類]]）は、古典線型群や[[極大トーラス]](maximal torus)の構造を反映していることが明らかとなった。さらには、{{仮リンク|グラスマン多様体|en|Grassmannian}}(Grassmannian)の{{仮リンク|シューベルトの計算|en|Schubert calculus}}(Schubert calculus)や、{{仮リンク|代数幾何学のイタリア学派|en|Italian school of algebraic geometry}}(Italian school of algebraic geometry)の業績の中にすでにチャーン類により記述されるべきものが存在することがわかった。

このような経緯で、特性類の基本的な構造は次のように認識された。空間 X とその上のベクトル束が与えられると、適切な線型群 G に対して、[[CW複体|ホモトピーカテゴリ]](homotopy category)の中で、X から[[分類空間]] BG への写像が存在する。コホモロジー H*(BG) が計算することで、反変性により同じ次数の H*(X) の中にバンドルの特定類が定義される。ホモトピー論に対し、適切な情報は ''G'' の[[直交群]](orthogonal group)や[[ユニタリ群]]のようなコンパクトな部分群によりもたらされる。例えば、[[チャーン類]]は偶数次元の次数付きの成分を持った一つの類である。

幾何学においてさらなる構造を理論に組み込むこと有益である。1955年以降、[[K-理論]]や{{仮リンク|コボルディズム論|en|cobordism theory}}といった新たなコホモロジー理論に対しても、特性類の定義において文字 H を適切に変更するだけでそれらの理論における特性類を定義できる。

特性類は、後日、多様体の{{仮リンク|葉層構造|en|foliation}}(foliation)の中でも発見された。（葉層に対してはある特異点を許容するように意味を変更すると）特性類はホモトピー論の中に分類空間の理論を持っている。

さらに20世紀後半における数学と物理学の再接近の結果として、[[サイモン・ドナルドソン|ドナルドソン]]とコチックにより新しい特性類が{{仮リンク|インスタントン|en|instanton}}(instanton)の理論の中で発見された。またチャーン(S. S. Chern)の観点と業績も重要であると認識された。[[チャーン・サイモンズ形式]]や[[チャーン・サイモンズ理論]]を参照のこと。

==参照項目==
*[[チャーン類]]
*{{仮リンク|セグレ類|en|Segre class}}(Segre class)
*[[スティーフェル・ホイットニー類]]
*[[ポントリャーギン類]]
*[[オイラー類]]
*[[オイラー標数]]

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}

=== 出典 ===
{{reflist|20em}}

=== 注釈 ===
{{reflist|30em|group="注"}}

== 文献 ==

=== 参考文献 ===

==== 特性類関連 ====
* レクチャーノート
** {{Cite web|url=https://math.mit.edu/~mbehrens/18.906spring10/prin.pdf|title=Notes on principal bundles and classifying spaces|accessdate=2021/05/20|author=Stephen A. Mitchell|ref=Mitchell|date=2001/8}}
** {{Cite web |url=https://math.uchicago.edu/~may/CHAR/charclasses.pdf |title=Characteristic classes |accessdate=2021/05/24 |publisher=The university of Chicago |author=Robert R. Bruner, Michael Catanzaro, J. Peter May |ref=Bruner}}
**{{Cite web|url=https://math.mit.edu/~mbehrens/18.906/notes/lec32.pdf|title=LECTURE 32: PROPERTIES OF CHERN CLASSES, THESPLITTING PRINCIPLE|accessdate=2021/05/24|publisher=Massachusetts Institute of Technology|author=Mark Behrens|ref=Behrens}}
**{{Cite web|url=https://math.stanford.edu/~ralph/fiber.pdf|title=The Topology of Fiber Bundles Lecture Notes|accessdate=2022/09/16|publisher=Department of Mathematics, Stanford University|author=Ralph L. Cohen|ref=Cohen}}
**{{Cite web|url=https://math.mit.edu/~mbehrens/18.906spring10/prin.pdf|title=Notes on principal bundles and classifying spaces|accessdate=2021/05/20|author=Stephen A. Mitchell|ref=Mitchell|date=2001/8}}
**{{Cite web|url=https://people.math.wisc.edu/~maxim/bundle.pdf|title=Math 754Chapter III: Fiber bundles. Classifying spaces.Applications|accessdate=2021/05/19|publisher=University of Wisconsin|author=Laurenţiu Maxim|date=2018/4/18|ref=Maxim}}
**{{Cite web |url=https://math.uchicago.edu/~may/CONCISE/ConciseRevised.pdf |title=A Concise Course in Algebraic Topology |accessdate=2021/05/20 |author=J. P. May |ref=May}}
**{{Cite web |url=https://math.uchicago.edu/~may/PAPERS/Split.pdf |title=A NOTE ON THE SPLITTING PRINCIPLE |access-date=2022/05/30 |author=J. P. May |ref=May_splitting}}
**{{Cite web |url=https://www.math.toronto.edu/selick/fibre.pdf |title=Fibre Bundles; Characteristic Classes; K-theory |accessdate=2021/06/04 |author=Paul Selick |ref=Selick}}
**{{Cite web|url=https://www.maths.gla.ac.uk/~jwalton/maths_notes/Characteristic_classes.pdf|title=CHARACTERISTIC  CLASSES  AND  THE  CHERN  CHARACTER|accessdate=2021/06/04|author=Jamie Walton|ref=Walton}}
* 論文
** {{Cite web|url=https://www.ams.org/journals/bull/1955-61-05/S0002-9904-1955-09936-1/S0002-9904-1955-09936-1.pdf|title=Topology of Lie Groups and Characteristic Classes|accessdate=2022/11/25|publisher=[[:en:Bulletin of the American Mathematical Society|Bulletin of the American Mathematical Society]]|author=Armand Borel|date=2018/4/18|ref=Borel}}
* 書籍
** {{cite book|title=微分形式の幾何学2|date=2001/05/23|publisher=[[岩波書店]]|ref=森田|author=森田茂之|series=岩波講座 現代数学の基礎|volume=14|isbn=9784000110143|url=https://www.iwanami.co.jp/book/b480194.html}}
** 森田茂之, 特性類と幾何学. 現代数学の展開, 岩波書店 ISBN 978-4-00-006292-3
** {{cite book|title=微分形式と代数トポロジー|date=1996/10/1|publisher=シュプリンガーフェアラーク東京|ref=ボット|author=R．ボット|isbn=978-4431707073|和書|author2=L．W．トゥー|translator=三村護}}
*** 原著：{{cite book|title=Differential Forms in Algebraic Topology|date=1982/5/24|publisher=Springer|ref=Bott|author=Raoul Bott|series=[[Graduate Texts in Mathematics]]|volume=82|isbn=978-0387906133|洋書|author2=Loring W. Tu}}
** {{Cite book|洋書|title=Fibre Bundles Third Edition|publisher=[[シュプリンガー・サイエンス・アンド・ビジネス・メディア|Springer]]|author=Date Husemoller|series=[[Graduate Texts in Mathematics]] 20|date=2014/5/14|isbn=978-1475722635|ref=Husemoller}}
**{{cite book|first1=John W.|last1=Milnor|authorlink1=John Milnor|first2=Jim|last2=Stasheff|authorlink2=James D. Stasheff|title=Characteristic classes|series=Annals of Mathematics Studies|volume=76|publisher=[[Princeton University Press]], Princeton, NJ; [[University of Tokyo Press]], Tokyo|year=1974|isbn=0-691-08122-0|ref=Milnor}}
**{{Cite book|洋書|title=Topics in the Homology Theory of Fibre Bundles|year=1967|publisher=Springer|isbn=978-3540039075|author=[[アルマン・ボレル|Armand Borel]]|ref=Borel-Book|series={{仮リンク|Lecture Notes in Mathematics|en|Lecture Notes in Mathematics}}}}
**{{cite book|first=Shiing-Shen|last=Chern|authorlink=Shiing-Shen Chern|title=Complex manifolds without potential theory|publisher=Springer-Verlag Press|year=1995|isbn=0-387-90422-0}} {{ISBN|3-540-90422-0}}.
:この書籍のappendix "Geometry of Characteristic Classes" には、特性類の考え方の発展について非常に整理された深い入門が記載されている。



==== その他 ====
* レクチャーノート
**{{Cite web|url=https://arxiv.org/abs/1910.07372|title=A survey of the foundations of four-manifold theory in the topological category|accessdate=2021/05/20|website=arXive|author=Stefan Friedl, Matthias Nagel, Patrick Orson, Mark Powell|format=pdf|date=2020/6/9|ref=Friedl}}
**{{Cite web |url=https://math.uchicago.edu/~may/MISC/SpecSeqPrimer.pdf |title=A PRIMER ON SPECTRAL SEQUENCES |access-date=2022/05/30 |ref=May_spectral |author=J. P. May}}
** {{Cite web |url=https://math.stanford.edu/~conrad/210CPage/handouts/Weylcompute.pdf|title=Math 210C. Weyl group computations|access-date=2022/12/15 |ref=Conrad|author=Brian Conrad}}
* 書籍
** {{cite book|title=Algebraic Topology|date=2008/9/15|publisher=[[ヨーロッパ数学会|European Mathematical Society]]|ref=Dieck|author=Tammo tom Dieck|series=Ems Textbooks in Mathematics|isbn=978-3037190487|洋書}}
** {{Cite book|洋書|title=Lecture Notes in Algebraic Topology|date=2001/8/1|publisher=American Mathematical Society|author=James F. Davis, Paul Kirk|isbn=978-0821821602|series=Graduate Studies in Mathematics|ref=Davis}}



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[[Category:代数的位相幾何学]]
[[Category:特性類|*]]
[[Category:数学に関する記事]]