特性類

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特性類 (とくせいるい、テンプレート:Lang-en-short) は、位相群を構造群とするファイバーバンドル不変量であり、(十分性質がよい)位相空間テンプレート:Mvarを底空間とするファイバーバンドル

π:EX

に対し、テンプレート:Mvarコホモロジー群の元を対応させる対応関係

c:ξ=(E,X,π)c(ξ)Hq(X;A)

で、「自然な」ものである。

原理的には任意のファイバーバンドルに対して特性類を定義できるが、研究が進んでいるのは主にベクトルバンドルに対する特性類である。ベクトルバンドルの特性類は以下の数学の分野に応用がある:


またテンプレート:Mvar可微分多様体であれば、テンプレート:Mvar接バンドルテンプレート:Mvarの特性類をテンプレート:Mvar自身の不変量とみなす事ができる。接バンドルテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarの可微分構造に依存しているので、ミルナーテンプレート:Mvarの特性類を利用する事により、テンプレート:仮リンクの存在を示した。


1935年の多様体上のベクトル場についてのエドゥアルト・シュティーフェル (Eduard Stiefel) とハスラー・ホイットニー (Hassler Whitney) の仕事より、特性類の考え方が発生した。

定義と基本的な性質

定義

以下、テンプレート:Mvarをファイバーに持つファイバーバンドルの事をテンプレート:Mvar-バンドルと呼ぶこととし、全空間テンプレート:Mvar、底空間テンプレート:Mvarおよび射影π:EXからなるテンプレート:Mvar-バンドルを(E,X,π)と表記する。特性類の概念を厳密に定義するには圏論の概念を使う必要があるので、まずは若干厳密性を犠牲にした定義を以下に述べる:

テンプレート:Math theorem

上の定義における記号の意味を説明すると、f*(c(ξ))=c(f*(ξ))における左辺のf*は、テンプレート:Mvarがコホモロジーに誘導する写像

f*:c(ξ)Hq(Y,A)f*(c(ξ))Hq(X,A)

の事であり、右辺のf*テンプレート:Mvar上のテンプレート:Mvar-バンドルξ=(E,X,π)テンプレート:Mvarによる引き戻しによって定義されるテンプレート:Mvar上のテンプレート:Mvar-バンドルの事である。

注意点

上の定義に関して2つの注意点を述べる。第一に、上の定義におけるバンドル写像テンプレート:Mvarは構造群テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarへの作用と両立するもののみを考えている。したがって例えばテンプレート:Mvar次元実ベクトルバンドルGLn()を構造群として持つn-バンドルとみなしたとき、各点xXのファイバーFx上にバンドル写像テンプレート:Mvarを制限したf|x:FxFyは線型同型写像でなければならず、行列式がテンプレート:Mvarになってはならない。逆に言えば、いずれかの点xXで行列式がテンプレート:Mvarになるテンプレート:Mvarに対してはf*(c(ξ))=c(f*(ξ))が成立する必要はないし、次元が異なるベクトルバンドル間の写像に関してもこの性質が成立する必要はない。

第二に、本項では多くの教科書と同様、ファイバーバンドルの底空間テンプレート:MvarCW複体である場合に限定して特性類を定義したが、より一般の空間、例えばパラコンパクトな位相空間に対しても特性類を定義できる[1]。ただしこの場合本項で述べる性質のいくつかは成立しない[1]。なお幾何学における多くの用途ではCW複体を対象にすれば十分である。実際、任意の可微分多様体は単体的複体、したがってCW複体と位相同型になる事が知られており[2]、(可微分とは限らない)位相多様体もコンパクトな場合はCW複体とホモトピー同型になる事が知られている[2]。さらにいえば任意の位相空間はCW複体とテンプレート:仮リンクである[3]

また本項では底空間テンプレート:Mvarに対してはCW複体である事を要求したものの、構造群G、ファイバーテンプレート:Mvar、全空間テンプレート:Mvarは(CW複体とは限らない)任意の位相群、位相空間でよい。

ホモトープな写像の特性類

構造群を持つファイバーバンドルの性質として以下が知られている:テンプレート:Math theorem

すなわち特性類を考える上では、底空間の間の写像はホモトピークラスのみを考慮すればよい。

厳密な定義

以上では特性類の定義に「対応関係」という未定義の言葉を使ったが、圏論の概念を使えばこうした未定義の語に頼らずに特性類の概念を定義できる:テンプレート:Math theoremなお、上述の特性類の定義において圏テンプレート:Mathの射は連続写像としたが、下記の定理より、これを胞体写像に変えても定義は同値になる:テンプレート:Math theorem

特性類に登場するコホモロジーとして、特異コホモロジーより簡便な(だが特異コホモロジーと同値である)胞体コホモロジーを用いる場合は議論に胞体写像を用いる必要があるのでこの定理は有用である。

ファイバーバンドルとその主バンドルの関係

以下の事実は特性類を具体的に定義する上で鍵となる重要な性質である:テンプレート:Math theorem

この定理と特例類の定義からファイバーバンドルの特性類と主バンドルの特性類が1対1対応するという重要な事実が明らかに従う:テンプレート:Math theorem

この事実からテンプレート:Anchorsファイバーバンドルに対して特性類を定義するには主バンドルに対して特性類が定義できる事が必要十分である事がわかる。そこで以下、おもに主バンドルにフォーカスして特性類の議論をすすめる事とする。

なお上の定理ではテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarに効果的に作用している事を仮定しているが、多くの場合この仮定は必須ではない。実際、テンプレート:Mvarが十分性質の良い空間、たとえはCW複体であれば、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarへの作用が連続である必要十分条件は、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarへ作用のから定まる写像ϕ:GHomeo(F)が(Homeo(F)コンパクト開位相を入れたとき)連続になる事である[4]。よってテンプレート:Mvarの作用が忠実ではない場合であっても、写像ϕカーネルで割った位相群G/kerϕテンプレート:Mvarへ忠実かつ連続に作用するので、テンプレート:Mvar-バンドルの特性類を定義するには主G/kerϕ-バンドルの特性類を定義すれば良い。

分類空間

本節では位相群の分類空間のいう概念を導入し、分類空間の概念を用いて主バンドルの特性類の概念を全く別の角度から特徴づける。この分類空間を用いた特性類の定義は、後の節で特性類の具体例を構築する上で非常に有益である。

定義と性質

定義

分類空間の概念を定義するため、まず以下の概念を定義する。

テンプレート:Math theorem 弱可縮の概念を用いて、分類空間の概念は以下のように定義される:

テンプレート:Math theorem「分類空間」という名称の由来は次節に回すが、分類空間は必ず存在し、本質的に一意である:テンプレート:Math theoremテンプレート:Math theorem上述したように、分類空間はホモトピー同型を除いて一意ではあるものの、同一の位相群に対し位相同型ではない複数の分類空間が存在しうる。このため位相群に対する個々の分類空間の事を分類空間のモデルテンプレート:Lang-en-short)という[5]

分類定理

分類空間はその名称が示す通り、与えられた底空間上のテンプレート:Mvar-バンドルは、底空間から普遍テンプレート:Mvar-バンドル(PG,BG,πG)への写像のホモトピークラスにより完全に分類される:

テンプレート:Math theoremなお、上の定理において写像[f][X,B]f*(P)𝒫G,F(X)well-definedな事は、ホモトープな2つの写像が引き戻したバンドルは互いに同型な事だというすでに見た事実から従う。

上記の定理から、テンプレート:Mvar上の任意の主テンプレート:Mvar-バンドルテンプレート:Mvarに対し、写像f:XBがホモトピー同値を除いて一意に定まる。このテンプレート:Mvarの事をテンプレート:Mvar分類写像テンプレート:Lang-en-short)という[6]

構造群テンプレート:Mvarを持つファイバーバンドルと主テンプレート:Mvar-バンドルは1対1対応するので、上記の定理から一般のファイバーバンドルに対する分類定理が系として従う:テンプレート:Math theorem 分類定理の場合と同様、テンプレート:Mvar上のテンプレート:Mvar-バンドルテンプレート:Mvarに対応する写像f:XBテンプレート:Mvar分類写像テンプレート:Lang-en-short)という[6]

離散群の分類空間

テンプレート:Mvarが離散群である場合は、定義より明らかに次が成立する:

テンプレート:Math theoremこの意味において、分類空間とは離散群におけるアイレンベルグ・マックレーン空間の概念を位相群に拡張したものである。

準同型から誘導される写像

2つの位相群テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarの間の連続な準同型写像φ:GHが与えられたとき、テンプレート:Mvarから分類空間の間の写像Bφ:BGBHを定義できる。

この事を見るために主バンドルの一般論を簡単に復習する。π:PXを主テンプレート:Mvar-バンドルとし、φ:GHを連続準同型写像とするとき、

P×φH

PG×Hを同値関係

(ag,h)(a,φ(g)h) for somegG

で割った空間とする事で、バランス積テンプレート:Lang[7])と呼ばれるテンプレート:Mvar上の主テンプレート:Mvar-バンドル

[(a,h)]P×φHπ(a)X

を構成できる。そこでBφ:BGBHを次のように定義する: テンプレート:Math theorem

実はこの対応関係は関手になっている:テンプレート:Math theorem

分類空間の性質

本節では、後で特性類を計算するとき必要となる分類空間の性質を述べる。

分類空間の関手テンプレート:Mvarは直積に関して以下のように振る舞う。 テンプレート:Math theorem なお圏論的に言えば、「X×kY」はコンパクト生成位相空間の圏における圏論的な直積になっている[8]


テンプレート:Math theorem テンプレート:Math proof

分類空間による特性類の特徴づけ

分類空間の概念を用いる事により、主バンドルに対する特性類の概念を以下のように特徴づける事ができる:テンプレート:Math theorem 上述の定理の1対1関係は具体的に以下のようにかける。すでに述べたように構造群テンプレート:Mvarの忠実な作用を持つ任意のテンプレート:Mvar-バンドルの特性類は主テンプレート:Mvar-バンドルの特性類と主テンプレート:Mvar-バンドルの1対1対応するのでこの場合に話を限定する。 まず主テンプレート:Mvar-バンドルの任意の特性類テンプレート:Mvarに対し、

c(PG)H*(BG;A)

が対応する。逆にcGH*(BG;A)を任意に選ぶと、主テンプレート:Mvar-バンドルξ=(P,X,π)に対し、分類定理により分類写像fξ:XBGがホモトピーを除いて一意に定まるので、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarに対する特性類を

c(ξ):=fξ*(cG)H*(X;A)

により定義できる。

上の定理から、H*(BG;A)の元を普遍特性類(テンプレート:Lang-en-short)という事がある。上の定理は普遍特性類と特性類が1対1対応する事を意味している。

定理の証明は以下の通りである: テンプレート:Math proof

ベクトルバンドルの構造群の分類空間

特性類の概念は原理的には任意の位相群の主バンドルに対して定義できるが、研究が進んでいるのはベクトルバンドル(の主バンドル)に対する特性類である。

そこでベクトルバンドルの特性類について記述するための準備として、本節ではベクトルバンドルの構造群の分類空間を具体的に記述する。

すなわち本節ではK=,に対し、一般線型群GLn(K)の分類空間を記述する。さらにの場合にはベクトルバンドルに向き付けが定義可能なので、向き付け可能な上ベクトルバンドルの構造群であるGLn+()の分類空間についても記述する。ここでGLn+()行列式が正の上可逆行列のなす群である。


本節ではさらに、ユニタリ群Un直交群On回転群SOnの分類空間についても記述する。後述するようにGLn()GLn()GLn+()の分類空間は、実はそれぞれUnOnSOnの分類空間と等しい。

スティーフェル多様体とグラスマン多様体

テンプレート:Mathの分類空間を記述する為、本節ではテンプレート:仮リンクテンプレート:仮リンクを定義する。

後述するようにこれらはそれぞれ普遍テンプレート:Math-バンドルの全空間、分類空間になる。テンプレート:Math theoremテンプレート:Mvarが次元テンプレート:Mvarの有限次元ベクトル空間の場合は、VnWVnUWVnOWは集合として自然に

VnWGLm(K)/GLmn(K)VnUWU(m)/U(mn)when K=VnOWO(m)/O(mn)when K=

という同一視ができ[注 1]、上式右辺には多様体としての構造が入る事がリー群の一般論[注 2]から従うので、スティーフェル「多様体」と呼ぶ。テンプレート:Mvarが無限次元の場合はVnWVnUWVnOWは有限次元多様体にはならないが、言葉を混用してこの場合もスティーフェル「多様体」と呼ぶ。テンプレート:Math theoremスティーフェル多様体と同様、テンプレート:Mvarが次元テンプレート:Mvarの有限次元ベクトル空間であれば、

GnWGLm(K)/(GLn(K)×GLmn(K)){U(m)/(U(n)×U(mn))when K=O(m)/(O(n)×O(mn))when K=

および

G~nWGLm(K)/(GLn+(K)×GLmn(K))O(m)/(SO(n)×O(mn))when K=

という同一視ができ、この同一視により、GnWG~nWに多様体としての構造が入る。

テンプレート:Mathの分類空間の具体的記述

スティーフェル多様体VnWの元であるテンプレート:Mvar-フレームにそのフレームの貼る部分空間を対応させる事で商写像

πn:VnWGnW

を定義できる。πn:VnUWGnWπn:VnOWGnWπn:VnOWG~nWも同様に定義できる。テンプレート:Math theorem

上記の定理に関する留意点を述べる。K=,に対するテンプレート:Mathの分類空間はテンプレート:Mathの分類空間と同一な空間GnKである

これはCW複体上の任意のベクトルバンドルには必ず内積が定義でき、グラム・シュミットの正規直交化法によりテンプレート:Mathテンプレート:Mathに可縮である事が理由である[9]

普遍テンプレート:Mvar-平面バンドル

分類定理で述べたように、テンプレート:Mvar上の主テンプレート:Math-バンドルテンプレート:Mvarに随伴するテンプレート:Mvar次元ベクトルバンドルは、任意のCW複体テンプレート:Mvar上のテンプレート:Mvar次元ベクトルバンドルを分類する上で有益である。このためテンプレート:Mvarに随伴するテンプレート:Mvar次元ベクトルバンドルの事を普遍テンプレート:Mvar-平面バンドルテンプレート:Lang-en-short[10]と呼ぶ。

バンドルの一般論から、普遍テンプレート:Mvar-平面バンドルは(VnK×Kn)/GLn(K)と表記できるが、より具体的に表記する事も可能である。


グラスマン多様体テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar次元部分ベクトル空間全体のなす多様体なので、グラスマン多様体の元テンプレート:Mvar=ベクトル空間上のファイバーとして、テンプレート:Mvar自身を取ったベクトルバンドルを定義でき、これをグラスマン多様体のテンプレート:仮リンクと呼ぶが、テンプレート:Mvarのトートロジカル・バンドルが普遍テンプレート:Mvar-平面バンドルになっている。


具体的には

Enm:={(V,v)GnKm×KmvV}

とし、第一成分への射影πnm:(V,v)EnmVGnKmによりEnmテンプレート:Mvar上のベクトルバンドルとみなしたものがテンプレート:Mvarのトートロジカル・バンドルであり、テンプレート:Mathに関する帰納的極限をとった

πn:EnGnK

が普遍テンプレート:Mvar-平面バンドルになっている[10]

複素ベクトルバンドルの特性類:チャーン類

本章では、複素ベクトルバンドルの特性類であるチャーン類について述べる。これまでの議論からわかるように、複素ベクトルバンドルの整数係数の特性類とは分類空間

BGLn()=BU(n)=Gn

のコホモロジーH*(BU(n);)の元と1対1対応するので、H*(BU(n);)の具体的構成を調べる事で複素ベクトルバンドルの特性類を決定できる。チャーン類は、H*(BU(n);)の生成元である。

テンプレート:Mathの具体的記述

チャーン類について記述するため、まずH*(BU(n);)の具体的構成を調べる。n=1に対しては以下が成立する: テンプレート:Math theorem なお、上の補題においてαは偶数次のコホモロジーの元なので、[α]上カップ積は可換であるため、[α]が可換環であるという事実と矛盾しない。

一般のテンプレート:Mvarに対してH*(BU(n);)の具体的構造を求めるため、連続準同型写像[注 3]

ι:U(1)nU(n),(A1,,An)A1An

を考える。ここでA1AnA1,,Anテンプレート:Math行列の対角成分に配置したU(n)の元である。(なおリー群の観点からは、U(n)極大トーラスU(1)nである)。このとき以下が成立する。 テンプレート:Math theorem なお、上式においてコホモロジー環における積はカップ積である。また上式の値域における同型は直積に対する分類空間の振る舞いテンプレート:仮リンク、および上記の補題から従う。

以上の事実から、後はH*(BU(n);)ι*による像が[α1,,αn]のどのような部分集合に落ちるかを決定すれば、H*(BU(n);)を具体的に書きあらわす事ができる。

H*(BU(n);)の像を決定するため、主バンドル一般に対して成立する以下の事実を利用する: テンプレート:Math theorem テンプレート:Math proof

AU(n)に対しφA:BABA1U(n)上の内部自己同型とすると、上述の命題より、φAがコホモロジー群に誘導する写像

BφA*:H*(BU(n);)H*(BU(n);)

は恒等写像である。単射ιによりU(1)nU(n)の部分群とみなし、U(1)n正規化群

N={AU(n)φA(U(1)n)=U(1)n}

U(1)n中心化群

Z={AU(n)BU(1)n:φA(B)=B}

で割ったW=N/Zを考え、

H*(BU(1)n;)W:={uH*(BU(1)n;)[A]W:BφA|U(1)n*(u)=u}

と定義する[注 4]とこの定義はWell-definedである。ここで[A]W=N/Zは同値類を表す。 テンプレート:Math proof このとき次の事実が従う事が知られている:テンプレート:Math theorem一般に連結コンパクトリー群テンプレート:Mvarに対し、テンプレート:Mvarの極大トーラスをテンプレート:Mvarとするとき、テンプレート:Mvar正規化群N:={gGφg(T)=T}中心化群Z:={gGtT:φg(t)=t}で割った群

W(G):=N/Z

の事をテンプレート:Mvarワイル群という。なお極大トーラスは共役を除いて一意に定まる事が知られているので、ワイル群は極大トーラスの取り方によらず同型になる。またテンプレート:Mvarの極大性から中心化群テンプレート:Mathは実はテンプレート:Mvar自身に等しい。

明らかに前述のテンプレート:MvarU(n)のワイル群に相当する。後はU(n)のワイル群を決定しさえすれば、H*(BU(n);)H*(BU(1)n;)Wの構造が決定できる。

チャーン類

Pij:nnを第テンプレート:Mvar成分と第テンプレート:Mvar成分を入れ替える行列とすると、明らかに[Pij]Wである。この事実を利用すると、以下の事実が示せる: テンプレート:Math theorem テンプレート:Math proof 位相群に分類空間を対応させる関手テンプレート:Mvarと位相空間にコホモロジー環を対応させる関手テンプレート:Mvarが直積を保つので、上述の定理からテンプレート:MvarH*(BU(1)n;)[α1,,αn]α1,,αnを入れ替える形でH*(BU(1)n;)に作用する。よって

H*(BU(1)n;)WH*(BU(1)n;)[α1,,αn]

対称多項式全体の集合に一致する。よく知られているように、任意の対称多項式は基本対称式の多項式として書けるので、以上の事実からチャーン類を以下のように定義する: テンプレート:Math theorem

分類空間H*(BU(n);)の元と特性類は1対1でするので、第テンプレート:Mvarチャーン類ciに対応する特性類

ci(ξ)

をベクトルバンドルテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarチャーン類という。分類空間の元cici(ξ)と区別したいときは、ciテンプレート:Mvar普遍チャーン類テンプレート:Lang-en-short)という。

なお、1H*(BU(1)n;)を「テンプレート:Mvar次の基本対象式」とみなし、c0(n):=(ι*)1(1)=1を第テンプレート:Mvarチャーン類と呼ぶ。またn+1次以上の基本対称式は存在しないので、m>nに対しては、第テンプレート:Mvarチャーン類をcm(n):=0と定義する[注 5]

またチャーン類は埋め込みι:U(1)nU(n)を使って定義されており、この埋め込みはnの正規直交基底の取り方に依存している。しかし正規直交基底の取り替えにより、ιU(n)の内部自己同型φAとの合成ιφAに置き換わるだけなので、前述した命題から、チャーン類は正規直交基底の取り方によらずwell-definedである。

以上で見たように各テンプレート:Mvarは対称多項式のに相当するものなので、テンプレート:Mvarの事をチャーン根テンプレート:訳語疑問点テンプレート:Lang[11])という。


これまでの議論とチャーン類の定義から明らかに以下の事実が従う:テンプレート:Math theorem

規約

チャーン類の定義において、テンプレート:Mvarの代わりに単元u, s.t. |u|=1をこれらに掛けたβ1:=uα1,,βn:=uαnをチャーン根とするようにチャーン類を定義する事もできるため、チャーン類の定義には単元テンプレート:Mvarの選び方だけ自由度がある事になる。

そこで何らかの規約を置くことでこの自由度を消す必要があるが、どのような規約を置くかは分野による。代数的位相幾何学では普遍1-平面バンドルξU=(EU(1),BU(1),π)に対し、c1(1)(ξU)H2(BU(1),)のcanonicalな生成元になるという規約を置く事が多いが[12]代数幾何学ではξUの双対ベクトルバンドルξU*に対してc1(1)(ξU*)H2(BU(1),)のcanonicalな生成元になるという規約を置く事が多い[12]

区別のため代数幾何学の方のチャーン類をck(n)と書くことにすると、代数的位相幾何学のチャーン類とは

ck(n)=(1)kck(n)

という関係を満たす[12]。本稿では以下、特に断りがない限り、代数的位相幾何学の規約を採用するものとする。

チャーン類の公理的特徴づけ

テンプレート:Math theorem 前節で定義したチャーン類が次元公理と正規化公理を満たすのは明らかである。ホイットニー和の公式の証明は下記のとおりである。

テンプレート:Math proof

一方、上記の公理を満たす特性類の一意性は数学的帰納法により容易に示せる。

チャーン多項式

チャーン類を取り扱う上で、下記のチャーン多項式を考えると便利である:テンプレート:Math theorem

なお、チャーン類の定義より、チャーン多項式はチャーン根を使って形式的に

c(ξ,t)=i(t+αi)

と因数分解できる。

チャーン多項式を用いると、ホイットニー和の公式は以下のように言い換えられる:テンプレート:Math theorem

チャーン多項式の性質

チャーン多項式は以下の性質を満たす。なお文献によっては以下の性質をチャーン類の公理として入れているものもあるが[13]、実は他の公理から従うので[14]、公理に入れる必要はない。

テンプレート:Math theorem

テンプレート:Math proof

実ベクトルバンドルの特性類

本節以降、実ベクトルバンドルの特性類を記述していくが、その記述は複素ベクトルバンドルのそれと比べかなり複雑であるので、詳細は次節以降に譲り、本節では実ベクトルバンドルの特性類の概要を述べる。

実ベクトルバンドルの特性類が複雑になる理由は2つある:

  1. 実ベクトルバンドルの主バンドルの分類空間H*(BO(n),)は複素ベクトルバンドルの主バンドルのH*(BU(n),)と違い、2-捩れ部分群を持つ。この捩れ部分群が「悪さ」をするため、H*(BO(n),)を簡単に記述する事ができない。
  2. 実ベクトルバンドルの場合は複素ベクトルバンドルと違い、向き付けの概念がある。このため向き付けのない場合の分類空間H*(BO(n),)と向き付けのある場合の分類空間H*(BSO(n),)の両方を考察しなければならない。


1つ目の問題を回避するために、以下ではH*(BO(n),)を直接考察するのを諦め、H*(BO(n),2)H*(BO(n),Λ)の2つを別々に考察することにする。ここでテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarの逆元を持つ任意の可換環[注 6]である。テンプレート:仮リンクを使う事でH*(BO(n),2)H*(BO(n),Λ)からH*(BO(n),)を計算できるので、実用上はこの2つに対する特性類が把握できていれば十分である。


2つ目の問題に関しては、H*(BO(n))H*(BSO(n))とは環構造が異なるので、この2つを両方とも考察する必要がある。

係数環がテンプレート:Mathの場合

係数環が2の場合の特性類の記述は比較的簡単であり、H*(BO(n))H*(BSO(n))の差はさほど大きくなく、

H*(BO(n),2)=2[w1,,wn]H*(BSO(n),2)=2[w2,,wn],w1=0

という形で両者を記述できる。ここでw1,,wnスティーフェル・ホイットニー類と呼ばれる特性類で、このようなw1,,wnの存在はチャーン類の場合と類似した方法で証明できる。ただし第テンプレート:Mvarチャーン類がテンプレート:Mvarのコホモロジー群に属するのに対し、第テンプレート:Mvarスティーフェル・ホイットニー類はテンプレート:Mvarのコホモロジー群に属するので注意が必要である。

係数環がテンプレート:Mathを満たすテンプレート:Mvarの場合

それに対し係数環が21Λを満たすテンプレート:Mvarの場合はより複雑である。H*(BO(n),Λ)に関しては、

H*(BO(n),Λ)=Λ[p1,,pn/2]

の形で記述でき、p1,,pnポントリャーギン類という。(piテンプレート:Mvarのコホモロジー群に属する)。ここで床関数である。 具体的にはポントリャーギン類は実ベクトルバンドルを複素化する事で得られる複素ベクトルバンドルのチャーン類を使って

pi=(1)ic2i

と書ける。(なお、実ベクトルバンドルの複素化の場合、奇数次のチャーン類c2i+12c2i+1=0を満たし、よって係数環がテンプレート:Mvarの場合は必ずc2i+1=0になる)。

一方、H*(BSO(n),Λ)テンプレート:Mvarが偶数か奇数で形が異なり、

H*(BSO(n),Λ)={Λ[p1,,pn/2] if n is oddΛ[p1,,pn/2,χ]/(χ2=pn/2) if n is even

と書ける。ここでp1,,pn/2は前述のポントリャーギン類であり、テンプレート:Mvarオイラー類と呼ばれる特性類である。またΛ[p1,,pn/2,χ]/(χ2=pn/2)は多項式環Λ[p1,,pn/2,χ]においてテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarと同一視して得られる環を表す。すなわちΛ[p1,,pn,χ]を単項イデアル(χ2pn/2)で割った環である。


以上をまとめると、実ベクトルバンドルの分類空間のコホモロジーは以下のように記述できる:

係数環 分類空間 コホモロジー
2 BO(n) 2[w1,,wn]
BSO(n) 2[w2,,wn]w1=0
21Λを満たすテンプレート:Mvar BO(n) Λ[p1,,pn/2]
BSO(n)s.t. テンプレート:Mvarは奇数
BSO(n)s.t. テンプレート:Mvarは偶数 Λ[p1,,pn/2,χ]/(χ2=pn/2)

スティーフェル・ホイットニー類

本節ではH2(BO(n);)の構造を具体的に決定し、それをもとにスティーフェル・ホイットニー類を定義する。

H2(BO(n);)の構造の決定方法やスティーフェル・ホイットニー類の定義は、基本的にはH2(BU(n);)の構造の決定方法やチャーン類の定義と同様である。一点大きく違うのは、チャーン類の場合はH*(BU(1);)=[α]を満たすαが2次のコホモロジー群H2(BU(1);)に属していたのに対し、スティーフェル・ホイットニー類の場合はそのような元が1次のコホモロジー群に属する事である: テンプレート:Math theorem この違いが原因でチャーン類は偶数次のコホモロジー群にしか登場しなかったが、スティーフェル・ホイットニー類は奇数次のコホモロジーにも登場する。

なお、コホモロジーの係数が2なので、カップ積は奇数次のコホモロジーにおいても可換である。

テンプレート:Mathの具体的記述

自然数n1に対しH2(BO(n);2)の具体的形を調べるため、チャーン類のときと同様、連続準同型写像

ι:O(1)nO(n),(A1,,An)A1An

によりO(1)nO(n)の部分群とみなす。ここで「」は対角線上に行列を並べる演算である。


φA:BABA1を内部自己同型とする。チャーン類の時と同様、O(1)nの正規化群

N={AO(n)φA(O(1)n)=O(1)n}

O(1)n中心化群

Z={AO(n)BO(1)n:φA(B)=B}

で割ったΣ=N/Zを考え[注 7]

H*(BO(1)n;)Σ:={uH*(BO(1)n;)[A]Σ:BφA*(u)=u}

と定義するとこの定義はWell-definedである。ここで[A]Σ=N/Zは同値類を表す。このとき次の事実が従う:テンプレート:Math theoremここでテンプレート:MvarH*(BO(1)n;2)H*(BO(1);2)H*(BO(1);2)テンプレート:Mvar番目のH*(BO(1);2)の生成元である。テンプレート:Math theorem

スティーフェル・ホイットニー類の定義

スティーフェル・ホイットニー類を以下のように定義する:テンプレート:Math theorem

分類空間H*(BO(n);2)の元と特性類は1対1でするので、第テンプレート:Mvarスティーフェル・ホイットニー類wiに対応する特性類

wi(ξ)

をベクトルバンドルテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarスティーフェル・ホイットニー類という。分類空間の元wiwi(ξ)と区別したいときは、wiテンプレート:Mvar普遍スティーフェル・ホイットニー類テンプレート:Lang-en-short)という。


チャーン類のときと同様、w0(n):=(ι*)1(1)=1wm(n):=0 for m>nと定義する。


明らかに以下の事実が従う[15]テンプレート:Math theorem

公理的特徴づけ

チャーン類と同様スティーフェル・ホイットニー類も公理的に特徴づける事ができる:テンプレート:Math theorem

性質

全チャーン類と同様、全スティーフェル・ホイットニー類を定義でき、全チャーン類と同様の性質を示す事ができる[注 8]テンプレート:Math theorem

自然な写像ν:SO(1)U(1)が誘導する写像H*(U(1);2)H*(SO(1);2)は単射であり、H*(U(1);2)の生成元テンプレート:Mvarの自乗テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarに移る事が知られている[16]。したがって σi(α12,,αn2)H*(U(1)n;2)wiσi(β1,,βn)H*(U(1)n;2)に移るが、2上ではσi(α12,,αn2)=σi(α1,,αn)2=ciになので、以下が成立する: テンプレート:Math theorem

逆に複素ベクトルバンドルωから複素構造をテンプレート:仮リンク実ベクトルバンドルとみなしたものをξ脱複素化テンプレート:Lang-en-shortテンプレート:Lang-en-short)と呼び、ωと書くと任意の非負整数テンプレート:Mvarに対して以下が成立する事が知られている: テンプレート:Math theorem

ポントリャーギン類とオイラー類

本節では21Λを満たす可換環テンプレート:Mvarに対し、H*(BSO(n),Λ)H*(BO(n),Λ)の構造を決定し、これをもとにポントリャーギン類とオイラー類を定義する。

定義

本節ではコホモロジー環

H*(BSO(n),Λ)

H*(BO(n),Λ)

の構造し、これをもとにポントリャーギン類とオイラー類を定義する。そのために利用するのは、チャーン類のときと同様、ワイル群に関する議論である。そこでテンプレート:Mathの極大トーラスを記述するため、テンプレート:Mvarが偶数であるか奇数であるかに応じてテンプレート:Mathテンプレート:Mathとして

μ:SO(2)mSO(n)

μ:SO(2)mSO(n),(R(θ1),,R(θm)){R(θ1)R(θm)if n=2mR(θ1)R(θm)1if n=2m+1

により定義する[17]。ここで「」は対角線上に行列を並べる演算であり、テンプレート:Mathは2次元の回転行列

R(θ):=(cosθsinθsinθcosθ)

である。μによるテンプレート:Mathの像はテンプレート:Mathの極大トーラスである事が知られている。さらに自然な埋め込みι:SO(n)O(n)を考える。

そしてこれら2つの写像が分類空間のコホモロジーに誘導する写像を考える:

H*(BO(n),Λ)Bι*H*(BSO(n),Λ)Bμ*H*(BSO(2)m,Λ)Λ[γ1,,γm]

上式の最後の同型「」は、リー群としてSO(2)U(1)である事からチャーン類のときの議論により従う。ここで「」は環としての同型であり、H*(BSO(2)m,Λ)の積はカップ積である。

またテンプレート:MvarH*(BSO(2)m;Λ)jH*(BSO(2);Λ)テンプレート:Mvar番目のH*(BSO(2);Λ)の生成元であり、テンプレート:Mvarは次数テンプレート:MvarのコホモロジーγjH2(BSO(2);Λ)に属している。(これらもチャーン類のときの議論により従う)。

なお、H*(BSO(2);Λ)Λ[γ]の生成元テンプレート:Mvarの選び方は、テンプレート:Mvarの単元倍の自由度があるので、この自由度をなくす為、以下の規約を置く: テンプレート:Math theorem 上で自然な同型SO(2)U(1)を用いた。このように規約を決めると、チャーン類の定義からγ=c1整数係数のコホモロジーH*(BSO(2);)=H*(BU(1);)に属する事になるのが利点である。

本項の目標は、H*(BSO(2)m,Λ)Λ[γ1,,γm]を用いる事でH*(BSO(n),Λ)H*(BO(n),Λ)の構造を特定し、これをもとにポントリャーギン類とオイラー類を定義する事である。

詳細は後回しにし、先に結論を述べる。 テンプレート:Math theorem

ポントリャーギン類とオイラー類を以下のように定義する: テンプレート:Math theorem

紛れがなければ、pi(n)e(n)を単にpieと書く。

分類空間H*(BO(n);Λ)H*(O(n);Λ)の元と特性類は1対1でするので、第テンプレート:Mvarポントリャーギン類piやオイラー類テンプレート:Mvarに対応する特性類

pi(ξ)e(ξ)

をそれぞれベクトルバンドルテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarポントリャーギン類オイラー類という。分類空間の元piテンプレート:Mvarpi(ξ)e(ξ)と区別したいときは、piテンプレート:Mvarをそれぞれテンプレート:Mvar普遍ポントリャーギン類テンプレート:Lang-en-short)、普遍オイラー類テンプレート:Lang-en-short)という。


なぜ上述の定理が成立するのかについては後述する。

定理の証明のアイデア

テンプレート:Anchors

本節では、[[#実ベクトルバンドルの分類空間の構造|前述したテンプレート:Mathテンプレート:Mathの構造を記述した定理]]がなぜ成立するかを次の3つの場合に分けて説明する:

準備

定理を示すにはチャーン類の場合と同様、ワイル群を用いる事でテンプレート:Mathの構造を決定する。そのためにBorelによる以下の一般的な定義を用いる: テンプレート:Math theorem

H*(SO(n);Λ)p2のねじれ元を持たない事を利用して、以下の命題を示せる: テンプレート:Math theorem

上述の命題ではBorelの定理で「p」であったところが「テンプレート:Mvar」に代わっているが、普遍係数定理を用いる事で「テンプレート:Mvar」に代えてよい事が容易に示せる。

テンプレート:Math proof


以上の事からテンプレート:Mathのワイル群テンプレート:Mathの具体的な形と

H*(BSO(2)m,)WΛH*(BSO(2)m,)Λ[γ1,,γm]

の具体的な形を決定すればH*(BSO(n),Λ)の具体的な形が決定できる事になる。

テンプレート:Mathとし、ワイル群W=W(SO(n))の具体的な形を決定するため、実ベクトル空間としてn=(2)mという同一視をし、以下の2種類の行列を考える[17][18]テンプレート:Anchors

テンプレート:Mvarの方はテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarがセットになって置換されるのでn=(2)m上の空間の向きを保ち、テンプレート:Mathに属するが、テンプレート:Mvarの方は空間の向きを反転するのでテンプレート:Mathには属するもののテンプレート:Mathには属さない。しかしテンプレート:Mvar偶数個かけ合わせたものテンプレート:Mathに属する[17]

テンプレート:Math theorem テンプレート:Math proof よってPσCiH*(BSO(2)m;)[γ1,,γm]上に誘導する写像を特定すれば、H*(BSO(n);Λ)の構造が決定できるが、これらの写像は以下の通りである: テンプレート:Math theorem テンプレート:Math proof

よって、以下が成立する: テンプレート:Math theorem

これらの事実を用いると、基本対称式pi=σi(γ12,,γm2)e=γ1γmを用いて、

H*(BSO(n);Λ)Λ[p1,,pm,e]

と書ける事がわかる。

テンプレート:Math proof

テンプレート:Mathとし、ワイル群W=W(SO(n))を具体的に求めるため、実ベクトル空間としてn=(2)m×という同一視をし、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarが偶数の場合と同様に取るテンプレート:Refn。さらに以下の行列を考える:

テンプレート:Mvarは明らかに位数テンプレート:Mvarの元であり、しかもテンプレート:Mvarと可換である。そして埋め込みμ:SO(2)mSO(n)の定義からテンプレート:Mvarによる共役はSO(2)m上恒等写像になる。


テンプレート:Mathが偶数の場合と同様の議論により、ワイル群の任意の元はC1,,Cm,Mの偶数個の積とテンプレート:Mvarとの積により書ける事がわかるが、テンプレート:Mvarに着目するとさらに簡単な表現も得られる。

実際、テンプレート:Mvarによる共役はSO(2)m上恒等写像なので、変換に影響するのはテンプレート:Mvar以外のC1,,Cm(とテンプレート:Mvar)のみである。そしてこれらの積C1ε1Cmεmが偶数個の積であっても奇数個の積であっても、

C¯i:=CiM

とすると、C¯1ε1C¯mεm=C1ε1CmεmMε1++εmは必ず偶数個の元C1,,Cm,Mの積である。よって以下が成立する:

テンプレート:Math theorem テンプレート:Math proof

テンプレート:Mvarが偶数の場合と同様、PσCiH*(BSO(2);)[γ1,,γm]上に誘導する写像は、それぞれγ1,,γmγσ(1),,γσ(m)に写す写像、γiγiに代える写像である。またテンプレート:Mvarによる共役は恒等写像なので、C¯i=CiMH*(BSO(2);)[γ1,,γm]上に誘導する写像もγiγiに代える写像である。よって以下が成立する。

テンプレート:Math theorem

これらの写像で不変な元はγi2の対称式なので、基本対称式pi=σi(γ12,,γm2)を用いて、

H*(BSO(n);Λ)Λ[p1,,pm]

と書ける事がわかる。

O(n)/SO(n)=2である事から、部分群の分類空間に関する定理より、包含写像ι:SO(n)O(n)が誘導する写像

Bι:BSO(n)BO(n)

2-主バンドルである[17]

2テンプレート:Mathへの作用は、2H*(BSO(n);Λ)への作用を誘導する。2の作用により不変なH*(BSO(n);Λ)の元の集合をH*(BSO(n);Λ)2とすると以下が成立する事が知られている: テンプレート:Math theorem

テンプレート:Math proof

上述の定理から特に、

H*(BO(n);Λ)H*(BSO(n);Λ)Λ[γ1,,γm]

は単射である事が従う。この単射におけるH*(BO(n);Λ)の像は、前述テンプレート:Mvarの(偶数個または奇数個の)積が作用が誘導する写像、テンプレート:Mvarが誘導する写像で不変でなければならないので、テンプレート:Mathのときと同様の議論により、

H*(BO(n);Λ)Λ[p1,,pm]

が従う。

性質

前述の定理が成り立つ理由の説明は後回しにし、本節ではポントリャーギン類とオイラー類の性質を述べる。

ポントリャーギン類はチャーン類との間に以下の関係を満たす: テンプレート:Math theorem

テンプレート:Math proof

上の定理がテンプレート:Mvar係数のコホモロジーに関するものである事に注意されたい。チャーン類は整数係数のコホモロジーに属するが、整数係数の場合はc2j+1(ξ)=0が成立するとは限らない。しかし2c2j+1(ξ)=0である事は言えるテンプレート:Refn。実際、一般に複素ベクトルバンドルηの複素共役バンドルη¯とすると、ck(η¯)=(1)kck(η)が成立し、しかも実ベクトルバンドルの複素化ξはその複素共役バンドルξ¯と同型なので、

2c2j+1(ξ)=0

が成立する。

またチャーン類は整数係数のコホモロジーに属している事から、以下の系も従う: テンプレート:Math theorem

H*(BO(n);)H*(BO(n);Λ)は単射ではない(位数2の元が0に移る為)が、この写像によるpiの逆像として(1)jc2j(E)を選べば、c2j(E)が整数係数のコホモロジーに属するというのが上記の定理の意味である。以下、整数係数のコホモロジーにおけるポントリャーギン類pi:=(1)jc2j(E)によって定義する。

チャーン類の場合と同様以下の定義をする: テンプレート:Math theorem

チャーン類に対するホイットニー和の公式からポントリャーギン類のホイットニー和の公式が従う: テンプレート:Math theorem 上の定理では整数係数のコホモロジーを考えているので、両辺についている「テンプレート:Mvar」を消すことはできない[注 9]21Λを満たす可換環テンプレート:Mvarを係数とするコホモロジーにおいては両辺にテンプレート:Mvarの逆元をかける事で、

p(ξη)=p(ξ)p(η) in H*(BO(n);Λ)

が成立する事がわかる。

また複素ベクトルバンドルωから複素構造をテンプレート:仮リンク実ベクトルバンドルとみなしたものをξ脱複素化テンプレート:Lang-en-shortテンプレート:Lang-en-short)と呼び、ωと書く。ωを再び複素化したベクトルバンドル(ω)ωω¯と同型になる事が知られている[19]。ここでω¯テンプレート:Mvarの共役バンドルである。 よって、チャーン類のホイットニー和の公式からチャーン多項式がc((ω),1)=c(ω,1)c(ω¯,1)=c(ω,1)c(ω,1)を満たす事がわかる。成分で書くと、

j=02ncj((ω))=k=0nck(ω)=0n(1)c(ω)=j=02ns=0j(1)scjs(ω)cs(ω)

である。ここでテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarのファイバーの次元である。

右辺の形から、右辺の(テンプレート:Mvarの倍数テンプレート:Math)次のコホモロジーはテンプレート:Mvarになるので、左辺も(4の倍数テンプレート:Math)のコホモロジーはテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarの倍数次のみ生き残る。よって整数係数のポントリャーギン類の定義から以下が結論付けられる: テンプレート:Math theorem

前節で述べたようにオイラー類はμ:SO(2)mSO(n)により誘導される写像を使ってχ=Bμ*(γ1γm)と定義されていた。よって明らかに以下が成立する: テンプレート:Math theorem

すでに述べたように、実ベクトルバンドルξ=(π,X,E)に対し、H*(X;2)においてci(ξ)=wi(ξ)2が成立する。よってポントリャーギン類の定義より以下が成立する。 テンプレート:Math theorem

オイラー類の満たす式「pi(ξ)=e(ξ)2 in H*(X;Λ)」と上記の「pi(ξ)=w2i(ξ)2 in H*(X;2)」から、整数係数コホモロジーH*(X;)の元e¯(ξ)で、

e¯(ξ)=e(ξ) in H*(X;Λ)e¯(ξ)=wn(ξ) in H*(X;2)

を満たす元が一意に存在する。ここでテンプレート:Mvarξのファイバーの次元である。このようなe¯(ξ)整数係数コホモロジーにおけるオイラー類と呼ぶ。以下、紛れがなければe¯(ξ)の事を単にe(ξ)と書く。

本項では、テンプレート:Mvar係数のコホモロジーからスタートしてオイラー類を定義したため、整数係数コホモロジーにおけるオイラー類は上記のように人工的なもののになったが、テンプレート:仮リンクを使って整数係数コホモロジーにおけるオイラー類を直接的に定義する事もできる。詳細はオイラー類の項目を参照。

テンプレート:Mvar上の実ベクトルバンドルξηに対し、それぞれのファイバーの次元をテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarとすると、ホイットニー和の公式からwn+m(ξη)=wn(ξ)wm(η) in H*(X;2)なので、前述したΛ係数のオイラー類の直和に対する振る舞いと合わせて、整数係数コホモロジーにおけるオイラー類に対しても下記の定理が成り立つことが分かる: テンプレート:Math theorem

歴史

特性類は、反変性を持ち、本質的にコホモロジー論的な現象である。ベクトル束の切断は空間上の函数の一種で、変更を必要とする切断の存在から反変性を導く。ホモロジー論ホモトピー論は空間への写像を基礎とする共変な理論であり、反変な理論であるコホモロジー論はその後に発見された。テンプレート:仮リンク(obstruction theory)の一部として特性類の理論が生まれた1930年代において、ホモロジー論の「双対」な理論を構築しようとする大きな理由として特性類の理論がある。曲率不変量に対する特性類のアプローチは、一般化されたガウス・ボネの定理を証明するための理論を作ることが目的であった。

特性類の基礎が確立した1950年ごろ、当時知られていた基本的な特性類(スティーフェル・ホイットニー類チャーン類ポントリャーギン類)は、古典線型群や極大トーラス(maximal torus)の構造を反映していることが明らかとなった。さらには、テンプレート:仮リンク(Grassmannian)のテンプレート:仮リンク(Schubert calculus)や、テンプレート:仮リンク(Italian school of algebraic geometry)の業績の中にすでにチャーン類により記述されるべきものが存在することがわかった。

このような経緯で、特性類の基本的な構造は次のように認識された。空間 X とその上のベクトル束が与えられると、適切な線型群 G に対して、ホモトピーカテゴリ(homotopy category)の中で、X から分類空間 BG への写像が存在する。コホモロジー H*(BG) が計算することで、反変性により同じ次数の H*(X) の中にバンドルの特定類が定義される。ホモトピー論に対し、適切な情報は G直交群(orthogonal group)やユニタリ群のようなコンパクトな部分群によりもたらされる。例えば、チャーン類は偶数次元の次数付きの成分を持った一つの類である。

幾何学においてさらなる構造を理論に組み込むこと有益である。1955年以降、K-理論テンプレート:仮リンクといった新たなコホモロジー理論に対しても、特性類の定義において文字 H を適切に変更するだけでそれらの理論における特性類を定義できる。

特性類は、後日、多様体のテンプレート:仮リンク(foliation)の中でも発見された。(葉層に対してはある特異点を許容するように意味を変更すると)特性類はホモトピー論の中に分類空間の理論を持っている。

さらに20世紀後半における数学と物理学の再接近の結果として、ドナルドソンとコチックにより新しい特性類がテンプレート:仮リンク(instanton)の理論の中で発見された。またチャーン(S. S. Chern)の観点と業績も重要であると認識された。チャーン・サイモンズ形式チャーン・サイモンズ理論を参照のこと。

参照項目

脚注

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出典

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注釈

テンプレート:Reflist

文献

参考文献

特性類関連

この書籍のappendix "Geometry of Characteristic Classes" には、特性類の考え方の発展について非常に整理された深い入門が記載されている。


その他

  1. 1.0 1.1 #Mitchell pp.24-25.
  2. 2.0 2.1 #Friedl p.10.
  3. #Davis p.186.
  4. 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「名前なし-20230316125856-2」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  5. 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「Mitchel13」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  6. 6.0 6.1 #Bruner p.21.
  7. #Mitchell p.4.
  8. 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「Mitchell17-18」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  9. #Mitchell pp.14,19.
  10. 10.0 10.1 #May pp.188-189.
  11. #Walton p.8.
  12. 12.0 12.1 12.2 #May p.199.
  13. #Bruner p.33. #Behrens p.1.
  14. #Walton p.6.
  15. #Cohen p.95.
  16. #Bruner p.47.
  17. 17.0 17.1 17.2 17.3 #Bruner pp.57-61.
  18. #Conrad pp.1-4.
  19. #Milnor pp.176-177.


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