普遍係数定理

提供: testwiki
ナビゲーションに移動 検索に移動

テンプレート:Pathnav

普遍係数定理(ふへんけいすうていり、テンプレート:Lang-en-short)とは、単項イデアル整域テンプレート:Mvar上定義されたホモロジーコホモロジーから、テンプレート:Mvar-加群を係数とするホモロジーやコホモロジーを求める一連の定理の総称である。

定理はテンプレート:Mvar-加群として自由な任意のチェイン複体に対して成立し、したがって特に特異ホモロジー・コホモロジーのような位相幾何学的な背景を持つホモロジー・コホモロジーに対して成立する。

準備

本節では普遍係数定理を述べる準備として、チェイン複体とそのホモロジー、コチェイン複体とそのコホモロジーを復習し、さらに普遍係数定理を定式化するのに必要な概念であるテンプレート:Math関手、テンプレート:Math関手を定義する。

ホモロジー

テンプレート:Mvar可換環とするとき、整数テンプレート:Mvarを添え字として持つテンプレート:Mvar-加群Cnと写像n:CnCn1の組C*:=(Cn,n)nで、

n1n=0

となるものテンプレート:Mvar上のチェイン複体といい[1]

Hn(C*):=Ker(n)/Im(n+1)

C*テンプレート:Mvar次のホモロジー加群という[1]

コホモロジー

可換環テンプレート:Mvarに対し、C*=(Cn,δn)nD*:=(Cn,δn)nテンプレート:Mvar上のチェイン複体になるものをコチェイン複体といい[2]

Hn(C*):=Hn(D*)

C*テンプレート:Mvar次のコホモロジー加群という[2]

テンプレート:Main

テンプレート:Mvarを単項イデアル整域とし、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar-加群とする。さらに短完全系列

0AιBpM0

テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarが自由テンプレート:Mvar-加群であるものを選び[注 1]

0ARNιR1NBRNpR1NMRN0

を考えると必ずしも完全系列にならないテンプレート:Refn。そこで

TorR(M,N):=Ker(ιR1N)

と定義する[3]TorR(M,N)の定義はテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarの取り方に依存しているが、実はテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarを別のものに取り替えて定義したTorR(M,N)と自然に同型になる事が知られているのでwell-definedである[3]

TorR(,)の事をテンプレート:Math関手という。


なお、テンプレート:Mvarが単項イデアル整域とは限らない一般の環の場合にもテンプレート:Mathが定義できるが本項では割愛する。またTorR(M,N)の事をTorR1(M,N)と表記し、より一般にTorRn(M,N)テンプレート:Math)を定義する場合もあるが、これも本項では割愛する。これらに関する詳細はTor関手の項目を参照されたい。

テンプレート:Math関手は以下の性質を満たす。 テンプレート:Math theorem テンプレート:Math proof

テンプレート:Mvarが単項イデアル整域であるので、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarが有限生成である場合、有限生成加群の基本定理から、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarと複数のテンプレート:Mathの直和で書け、テンプレート:Mvarも同様である。上述の1., 2.からテンプレート:Mathは直和に関して分解できるので、上述の3., 5.を使うと、これらに対するテンプレート:Mathを容易に計算できる。

テンプレート:Mainテンプレート:Mathのときと同様、テンプレート:Mvarを単項イデアル整域とし、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar-加群とし、さらに短完全系列

0AιBpM0

テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarが自由テンプレート:Mvar-加群であるものを選ぶ[注 1]。そして

0HomR(M,N)p*HomR(B,N)ι*HomR(A)0

を考えると必ずしも完全系列にはならないテンプレート:Refn。そこで

ExtR(M,N):=CokerR(ι*)

と定義する[4]。ここでテンプレート:Math余核である。すなわち、f:XYに対し、Coker(f)=Y/Im(f)である。


ExtR(M,N)の定義はテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarの取り方に依存しているが、実はテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarを別のものに取り替えて定義したExtR(M,N)と自然に同型になる事が知られているのでwell-definedである[4]

ExtR(,)の事をテンプレート:Math関手という。


またExtR(M,N)に関してもTorR(M,N)と同様、テンプレート:Mvarが一般の環の場合に対しても定義できるし、ExtRn(M,N)が定義できてExtR(M,N)=ExtR1(M,N)であるが、本項では説明を割愛する。詳細はExt関手の項目を参照されたい。

テンプレート:Math関手は以下を満たす: テンプレート:Math theorem

テンプレート:Math proof

テンプレート:Mathの場合と同様、テンプレート:Mvarが有限生成テンプレート:Mvar-加群であれば、これらの性質からテンプレート:Mathを具体的に計算できる。

テンプレート:Mathに関する普遍係数定理

ホモロジーの場合

次の定理が成立することが知られている: テンプレート:Math theorem

上記の定理でテンプレート:Mvar[c]RmHn(C*)RM[cRm]Hn(C*RM)と具体的に書ける[5]


なお、係数環 テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar/pの場合は、上記の定理はテンプレート:仮リンクの特別な場合に相当する。


R=で各Hn(C*)が有限生成加群である場合はホモロジーをより具体的に書ける。有限生成加群の基本的定理より、Hn(C*)は自由加群部分テンプレート:Mathと素数テンプレート:Mvarに対するTn,p={xHn(C*)m>0:pmx=0}の和で書ける。(有限個の素数テンプレート:Mvarを除いてTn,p=0である)。ここで前述したTorの性質を利用すると、以下がわかる:テンプレート:Math theorem

コホモロジーの場合

チェイン複体とコチェイン複体は添字の向きが違うだけなので、コチェイン複体に関しても同様の事実が従う: テンプレート:Math theorem この短完全系列がC*テンプレート:Mvarに関して自然である事や分裂する事も前述の定理と同様である。


またR=で各Hn(C*)が有限生成加群である場合は、ホモロジー場合と同様の形で具体的に書ける。

テンプレート:Mvar係数のホモロジー・コホモロジーに対する普遍係数定理

上述のコチェイン複体関する普遍係数定理をテンプレート:Mvarを係数に持つコホモロジー(例えばテンプレート:Mvarを係数にもつ特異コホモロジー)に適用する場合は注意が必要である。

定義

これまで同様テンプレート:Mvarが単項イデアル整域とし、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar-加群する。テンプレート:Mvar上のチェイン複体C*:=(Cn,n)nに対し、

n*:HomR(Cn,M)HomR(Cn+1,M),ccn+1

と定義すると

n+1*n*=0

であるのでHomR(C*,M):=(HomR(C*,M),n*)nはコチェイン複体である。HomR(C*,M)テンプレート:Mvarに関するC*双対コチェイン複体テンプレート:Lang-en-short)という[6]

テンプレート:Math theorem

ホモロジーの場合

テンプレート:Mvarに係数を持つホモロジー加群の方はその定義により、

Hn(C*;M)=Hn(C*RM)
Hn(C*;R)=Hn(C*RR)=Hn(C*)

なので、前述のホモロジーに関する普遍係数定理Hn(C*RM)Hn(C*)を単純に置き換える事で、以下の系が従う:テンプレート:Math theorem

コホモロジーの場合

一方、テンプレート:Mvarを係数を持つコホモロジー加群の場合は若干の注意が必要である。実際、C*:=HomR(C*,R)としてやると、

Hn(C*;R)=Hn(Hom(C*,R))=Hn(C*)

であるが、Hn(C*;M)の方は

Hn(C*;M)=Hn(Hom(C*,M))

であり、コホモロジーの普遍係数定理における

Hn(C*RM)=Hn(Hom(C*,R)RM)

とは異なるので単純に置き換える事ができない。しかし適切な条件下ではこれら2つが等しくなり、テンプレート:Mvarを係数に持つコホモロジー加群の普遍係数定理を示す事ができる:

テンプレート:Math theorem

テンプレート:Mathに関する普遍係数定理

テンプレート:Math関手を使う事で、ホモロジーとコホモロジーの関係性を示す以下の普遍係数定理を示す事ができる。

前に述べたように、チェイン複体C*の双対コチェイン複体HomR(C*,M):=(HomR(C*,M),n*)nに対し、テンプレート:Mvarを係数に持つコホモロジー加群をHn(C*;M)=Hn(HomR(C*;M))により定義する。

このとき以下の定理がしたがう: テンプレート:Math theorem

上述の定理においてテンプレート:Mvar[φ]Hn(C*;M)=Hn(HomR(C*,M))に対し、[c]Hn(C*)φ(c)MというHomR(Hn(C*),M)の元を対応させる写像である[7]


R=で各Hn(C*)が有限生成加群である場合はコホモロジーをより具体的に書ける。有限生成加群の基本的定理より、Hn(C*)は自由加群部分テンプレート:Mathと捩れ部分群部分Tnの和で書ける。この事実と[[#Extの性質|テンプレート:Mathの性質]]を利用すると、以下がわかる:テンプレート:Math theorem

上記により-係数コホモロジーさえ分かってしまえば、後はテンプレート:Mathに関する普遍係数定理により他の係数のコホモロジーも求まる。

Hn(C*)が有限生成であれば、上述の普遍係数定理でホモロジーとコホモロジーの役割を反転させた定理も成立する: テンプレート:Math theorem

上述の定理において、テンプレート:Mvar[z]mHn(C*RM)=Hn(C*;M)に対し、[f]Hn(C*)f(z)mMというHom(Hn(C*),M)の元を対応させる写像である[8]


関連項目

脚注

出典

テンプレート:Reflist

注釈

テンプレート:Reflist

参考文献

その他

外部リンク

  1. 1.0 1.1 #河田 pp.55-56.
  2. 2.0 2.1 #河田 p.69.
  3. 3.0 3.1 #Dieck p.292.
  4. 4.0 4.1 #Dieck p.294.
  5. 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「Dieck295」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  6. 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「Diek297」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  7. #Dieck p.296.
  8. #Davis p.48.


引用エラー: 「注」という名前のグループの <ref> タグがありますが、対応する <references group="注"/> タグが見つかりません