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{{Probability fundamentals}} [[確率論]]における'''独立'''(どくりつ、{{lang-en-short|independent}})とは、2つの[[事象 (確率論)|事象]]が何れも起こる[[確率]]がそれぞれの確率の積に等しいことをいう。一方の事象が起こったことが分かっても、他方の事象の確率が変化しないことを意味する。 この「独立」の概念は、2個以上の事象、2個以上の[[確率変数]]、2個以上の[[試行 (確率論)|試行]]に対して定義される。 2つの[[確率変数]]が'''独立'''であるとは、「ある確率変数の値が一定範囲に入る事象」と「別の確率変数の値が別の一定範囲に入る事象」が、考えられるどのような「一定範囲」(「考えられる」とは通常[[ボレル集合]]族を指す)を定めても事象として独立であることをいう。2つの確率変数が独立である場合は、一方の変数が値をとっても、他方の変数の[[確率分布]]が変化しないことを意味する{{sfn|伏見|loc=第II章 確率論 9節 独立|p=67}}。 確率論における独立は、他の分野における独立性の概念と区別する意味で、'''確率論的独立'''(かくりつろんてきどくりつ、{{lang-en-short|stochastic independence}})あるいは'''統計的独立'''(とうけいてきどくりつ、{{lang-en-short|statistical independence}})などとも呼ばれる。 == 定義 == === 事象の独立 === 独立を定義するのに最も基本となるのは、[[事象 (確率論)|事象]]の独立{{efn|これは単に「事象の族が独立である」という定義(後述)の特殊な場合に過ぎない。}}である。2つの事象 {{mvar|A}} と {{mvar|B}} が'''独立'''であるとは :<math>P(A \cap B) = P(A)P(B)</math> が成り立つことである。ここで、左辺の {{math|''A'' ∩ ''B''}} は事象 {{mvar|A}} と {{mvar|B}} が何れも起こる事象([[積事象]])を表し、たとえば {{math|''P''(''A'')}} は事象 {{mvar|A}} の[[確率]]を表す。事象 {{mvar|A}} と {{mvar|B}} が独立であることを記号 {{math|''A'' ⫫ ''B''}} で表すこともある<ref>{{citation |author=杉浦誠 |title=確率統計学 I |year=2016 |url=http://www.math.u-ryukyu.ac.jp/~sugiura/2016/prob2016a.pdf |accessdate=2018-07-04 |page=6 <!-- 定義 1.4(1) --> }}</ref>。もし、{{math|''P''(''B'') ≠ 0}} であれば、[[条件付き確率]] {{math|''P''(''A'' {{!}} ''B'') {{coloneqq}} ''P''(''A'' ∩ ''B'')/''P''(''B'')}} を用いて定義式を :<math>P(A \mid B) = P(A)</math> と書き換えることもできる。これは事象 {{mvar|A}} と {{mvar|B}} が独立であるとは、事象 {{mvar|B}} が起こることが事象 {{mvar|A}} の[[確率]]に一切の影響を与えないことを意味する。上の定義は {{math|''P''(''B'') {{=}} 0}} のときにも対応しているので、通常は上の定義を用いる。事象が独立でないことを'''従属'''という{{sfn|西岡|loc=4.2 独立事象|p=8}}。 一般に、(有限とは限らない)事象の[[族 (数学)|族]] {{math|{{mset|''A{{sub|λ}}''}}}} が'''独立'''であるとは、その部分有限族 {{math|{{mset| ''A''{{sub|''λ''{{sub|1}}}}, ''A''{{sub|''λ''{{sub|2}}}},..., ''A{{sub|λ{{sub|n}}}}''}}}} に対して :<math>P(A_{\lambda_1} \cap A_{\lambda_2} \cap \dotsb \cap A_{\lambda_n}) = P(A_{\lambda_1})P(A_{\lambda_2}) \dotsm P(A_{\lambda_n})</math> が成立することをいう。 === 確率変数の独立 === まず基本となる、2つの[[確率変数]]が独立であることの定義を述べる{{efn|これは単に「確率変数の族が独立である」という定義(後述)の特殊な場合に過ぎない。}}。2つの確率変数 {{mvar|X}} と {{mvar|Y}} が'''独立'''であるとは、任意の[[実数]] {{mvar|a, b}} に対して :<math>P(X<a,Y<b) = P(X<a)P(Y<b)</math> が成り立つことである。つまり、確率変数の同時[[累積分布関数]]が周辺累積分布関数の積に分解されるとき、独立であるという。確率変数 {{mvar|X}} と {{mvar|Y}} が独立であることを記号 {{math|''X'' ⫫ ''Y''}} で表すこともある<ref>{{citation |last1=Drton |first1=M. |last2=Sturmfels |first2=B. |last3=Sullivant |first3=S. |publisher=Springer |title=Lectures on Algebraic Statistics |year=2009 |page={{google books quote|id=Pg7HBAAAQBAJ|page=2|2}} |isbn=978-3-7643-8904-8 }}</ref>。 一般に、(共通の[[確率空間]]上の実)確率変数の族 {{math|{{mset| ''X{{sub|λ}}'' | ''λ'' ∈ Λ }}}} が'''独立'''であるとは、任意の[[実数]] {{mvar|a{{sub|λ}}}} に対して、事象の族 :<math>\bigl\{ \{\, X_\lambda < a_\lambda \} \mathrel{\big|} \lambda \in \Lambda \, \bigr\}</math> が独立であることをいう{{efn|ここで事象 {{math|{{mset|''X'' < ''a''}}}} とは、確率空間を <math>(\Omega, \mathcal{F}, P)</math>、実確率変数を {{math|''X'' : Ω → '''R'''}} とするとき、事象 <math>X^{-1}([-\infty, a)) = \{\, \omega \in \Omega \mid X(\omega) < a \,\} \in \mathcal{F}</math> の略記である。}}。つまり、任意の実数 {{mvar|a{{sub|λ}}}} と添字集合 {{math|Λ}} の任意の有限部分族 {{math|{{mset|''λ''{{sub|1}}, …, ''λ{{sub|n}}''}}}} に対して :<math>P(X_{\lambda_1} < a_{\lambda_1}, X_{\lambda_2} < a_{\lambda_2}, \dotsc, X_{\lambda_n} < a_{\lambda_n}) = P(X_{\lambda_1} < a_{\lambda_2})P(X_{\lambda_2} < a_{\lambda_1}) \dotsm P(X_{\lambda_n} < a_{\lambda_n})</math> が成り立つことをいう。 === 完全加法族の独立 === [[完全加法族]]の場合は、完全加法族の族 {{math|{{mset|''F{{sub|λ}}''}}}} が'''独立'''であるとは、その任意の有限部分族 :<math>\{ \mathcal{F}_{\lambda_1}, \mathcal{F}_{\lambda_2}, \dotsc, \mathcal{F}_{\lambda_n} \}</math> に対して、 :<math>P(A_1 \cap A_2 \cap \dotsb \cap A_n) = P(A_1)P(A_2) \dotsm P(A_n),\quad {}^\forall A_1 \in \mathcal{F}_{\lambda_1}, {}^\forall A_2 \in \mathcal{F}_{\lambda_2}, \dotsc, {}^\forall A_n \in \mathcal{F}_{\lambda_n}</math> が成立することをいう。事象 {{mvar|A}} に対しては事象の生成する完全加法族 {{math|''σ''(''A'')}} とし、確率変数 {{mvar|X}} に対しては確率変数の生成する完全加法族 {{math|''σ''(''X'')}} とすると、完全加法族による定義は上に挙げた[[#事象の独立|事象の]]また[[#確率変数の独立|確率変数の]]定義と一致する。またこれら3種類の対象の混ざった独立性も定義できる。 === 日本産業規格 === [[日本産業規格]]では、「確率変数 {{mvar|X}} と {{mvar|Y}} が独立であるための必要十分条件は,その同時分布関数が,{{math|''F''(''x'', ''y'') {{=}} ''F''(''x'', ∞) ⋅ ''F''(∞, ''y'') {{=}} ''G''(''x'') ⋅ ''H''(''y'')}} と表されることである。ただし,{{math|''G''(''x'') {{=}} ''F''(''x'', ∞)}} 及び {{math|''H''(''y'') {{=}} ''F''(∞, ''y'')}} は,それぞれ {{mvar|X}} 及び {{mvar|Y}} の周辺分布関数である。」と定義している{{sfn|JIS Z 8101-1 : 1999|loc=1.7 独立}} 。 == 定理 == 独立性を満たす場合に成立する定理や、独立性の十分条件の代表例を挙げる。 2つの[[確率変数]] {{mvar|X}} と {{mvar|Y}} が互いに独立である場合 * [[関数 (数学)|関数]] {{mvar|f}} と {{mvar|g}} に対して、{{math|''f''(''X'')}} と {{math|''g''(''Y'')}} も独立になる。 * [[積]]と[[期待値]]は[[交換法則|可換]]である。つまり :<math>E[XY] = E[X]E[Y]</math> * 同時[[累積分布関数]]と同時[[確率密度関数]]が積に分かれる :<math>F_{X,Y}(x,y) = F_X(x) F_Y(y),\quad f_{X,Y}(x,y) = f_X(x) f_Y(y)</math> * [[加法|和]]と[[分散 (確率論)|分散]]は可換である。つまり :<math>V(X+Y) = V(X) + V(Y)</math> 次を満たすとき確率変数 {{mvar|X}} と {{mvar|Y}} は独立になる。 * 任意の有界関数 {{mvar|f}} と {{mvar|g}} に対して :<math>E[f(X)g(Y)] = E[f(X)]E[g(Y)]</math> * [[特性関数 (確率論)|特性関数]]が積に分かれる :<math>E[\exp(i(\xi X + \eta Y))] = E[\exp(i\xi X)] E[\exp(i\eta Y)]</math> == 独立性の検定 == {{See also|カイ二乗検定|分割表}} 独立性を判断するには、独立性を仮定した上で対象の振る舞いを調べ、独立性を仮定したことによる矛盾が引き出せるかどうかを確認する必要がある。独立性(あるいは従属性)を判別する手段として[[分割表]]を用いた独立性の[[仮説検定|検定]]がある。独立性の検定に用いられる手法には例えば[[カイ二乗検定]]などがある。独立性の検定によって2つの事象の間の従属性を判断することができるが、独立であるかどうか積極的に決定することは難しい。 == 脚注 == ===注釈=== {{Notelist}} ===出典=== {{Reflist|2}} == 参考文献 == * {{Cite book|和書 |author=西岡康夫 |year=2013 |title=数学チュートリアル やさしく語る 確率統計 |publisher=[[オーム社]] |isbn=9784274214073 |ref={{sfnref|西岡}}}} * {{Cite book|和書 |author=伏見康治|authorlink=伏見康治 |year=1942 |title=確率論及統計論|publisher=[[河出書房]] |isbn=9784874720127 |url=https://hdl.handle.net/10787/00033830 |access-date=2022-05-01| ref={{sfnref|伏見}}}} * {{Citation |year=1999 |title=JIS Z 8101-1:1999 統計 − 用語と記号 − 第1部:確率及び一般統計用語 | publisher=[[日本規格協会]] |publisherlink=kikakurui.com |url=http://kikakurui.com/z8/Z8101-1-1999-01.html |ref={{sfnref|JIS Z 8101-1 : 1999}}}} * {{Cite book|和書 |author=日本数学会|authorlink=日本数学会 |year=2007 |title=数学辞典 |publisher=[[岩波書店]] |isbn=9784000803090}} == 関連項目 == * [[確率論]] ** [[確率]] ** [[条件付き独立]] * [[統計学]] {{確率論}} {{DEFAULTSORT:とくりつ}} [[Category:確率論]] [[Category:試行 (確率論)]] [[Category:数学に関する記事]]
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