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{{For|{{仮リンク|幾何代数|en|geometric algebra}}([[クリフォード代数]])における外積 (outer product)|外積代数}} [[線型代数学]]における'''直積'''(ちょくせき、{{lang-en-short|''direct product''}}<ref>{{MathWorld|urlname=TensorDirectProduct|title=Tensor Direct Product|author=Rowland, Todd and Weisstein, Eric W.}}</ref>)あるいは'''外積'''(がいせき、{{lang-en-short|''outer product''}})は典型的には二つの[[ベクトル]]の[[テンソル積]]を言う。{{仮リンク|座標ベクトル|en|coordinate vector}}の外積をとった結果は[[行列]]になる。外積の名称は[[内積]]に対照するもので、内積はベクトルの対を[[スカラー (数学)|スカラー]]にする。外積は、[[クロス積]]の意味で使われることもあるため、どちらの意味で使われているか注意が必要である。 : <math>\boldsymbol{u}\otimes\boldsymbol{v} = \boldsymbol{u} \boldsymbol{v}^{\top} = \begin{pmatrix}u_1 \\ u_2 \\ u_3 \\ u_4\end{pmatrix} \begin{pmatrix}v_1 & v_2 & v_3\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}u_1v_1 & u_1v_2 & u_1v_3 \\ u_2v_1 & u_2v_2 & u_2v_3 \\ u_3v_1 & u_3v_2 & u_3v_3 \\ u_4v_1 & u_4v_2 & u_4v_3\end{pmatrix}.</math> ベクトル同士の外積は行列の[[クロネッカー積]]の特別な場合である。 「テンソルの外積」を「テンソル積」の同義語として用いる文献もある。外積は [[R言語|R]], [[APL]], [[Mathematica]] などいくつかの計算機プログラム言語では[[高階函数]]でもある。 == 定義 == === 行列表現 === {{main|行列の乗法}} ふたつのベクトル {{math|'''u''', '''v'''}} の外積 {{nowrap|'''u''' ⊗ '''v'''}} は、{{math|'''u'''}} を {{math|''m'' × 1}} [[列ベクトル]]、{{math|'''v'''}} を {{math|''n'' × 1}} 列ベクトル(従って {{math|'''v'''<sup>⊤</sup>}} は行ベクトル)としたときの行列の積 {{math|'''uv'''<sup>⊤</sup>}} に等価である<ref>Linear Algebra (4th Edition), S. Lipcshutz, M. Lipson, Schaum’s Outlines, McGraw Hill (USA), 2009, ISBN 978-0-07-154352-1</ref>。成分を用いて : <math>\boldsymbol{u} =(u_1, u_2, \dotsc, u_m),\quad \boldsymbol{v} = (v_1, v_2, \dotsc, v_n)</math> と書けば、外積 {{math|'''u''' ⊗ '''v'''}} は {{math|''m'' × ''n''}} 行列 {{math|'''A'''}} で各成分は {{math|'''u'''}} の各成分と {{math|'''v'''}} の各成分の積であたえられ<ref>{{MathWorld|urlname=KroneckerProduct|title=Kronecker Product}}</ref><ref>Encyclopaedia of Physics (2nd Edition), R.G. Lerner, G.L. Trigg, VHC publishers, 1991, (Verlagsgesellschaft) 3-527-26954-1, (VHC Inc.) 0-89573-752-3 </ref>、 :<math>\boldsymbol{u} \otimes \boldsymbol{v} = \boldsymbol{A} = \begin{pmatrix}u_1v_1 & u_1v_2 & \dots & u_1v_n \\ u_2v_1 & u_2v_2 & \dots & u_2v_n \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots\\ u_mv_1 & u_mv_2 & \dots & u_mv_n \end{pmatrix}.</math> と表される。 [[複素数|複素]]ベクトルの場合には、これを少し変えて、{{math|'''v'''}} の転置の代わりに[[共軛転置]] {{math|'''v'''<sup>∗</sup>}} を用い、 : <math>\boldsymbol{u} \otimes \boldsymbol{v} = \boldsymbol{u} \boldsymbol{v}^{*}</math> とする。つまり得られる行列 {{math|'''A'''}} は {{math|'''u'''}} の各成分と {{math|'''v'''}} の各成分の複素共軛との積を成分とするものになる。 ; 内積との対比 : {{math|1=''m'' = ''n''}} のときは別な仕方で行列の積を施してスカラー({{math|1 × 1}} 行列)が得られる。つまり、[[数ベクトル空間]]の標準[[内積]]([[点乗積]]){{math|⟨'''u''', '''v'''⟩ {{=}} '''u'''{{sup|⊤}}'''v'''}} である。内積は外積の[[蹟 (線型代数学)|トレース]]に等しい。 ; 行列としての階数 : {{math|'''u''', '''v'''}} がともに非零ならば、外積 {{math|'''uv'''<sup>⊤</sup>}} の行列としての[[行列の階数|階数]]は常に {{math|1}} である。このことを見るにはベクトル {{math|'''x'''}} に掛けて {{math|('''uv'''{{sup|⊤}})'''x''' {{=}} '''u'''('''v'''{{sup|⊤}}'''x''')}} とすればよい。これはベクトル {{math|'''u'''}} のスカラー {{math|'''v'''<sup>⊤</sup>'''x'''}}-倍に他ならない。 : ("行列の階数" を[[テンソル|テンソルの階数]] ("order" / "degree") と混同してはならない)。 === テンソルの外積 === テンソルに対する外積はふつう[[テンソル積]]と呼ばれる。[[テンソル]] {{math|'''a'''}} は階数 {{mvar|q}} で各次元 {{math|(''i''<sub>1</sub>, …, ''i''<sub>''q''</sub>)}}, {{math|'''b'''}} は階数 {{mvar|r}} で各次元が {{math|(''j''<sub>1</sub>, …, ''j''<sub>''r''</sub>)}} とすれば、これらの外積 {{math|'''c'''}} は階数 {{math|''q'' + ''r''}} で各次元 {{math|(''k''<sub>'''1'''</sub>, …, ''k''<sub>''q''+''r''</sub>)}} は先に {{mvar|i}} の次元を並べた後に {{mvar|j}} の次元を並べたものになる。これを {{math|⊗}} を用いた座標に依存しない表記で書き、その成分を添字表記で書けば : <math>\boldsymbol{c}=\boldsymbol{a}\otimes\boldsymbol{b}, \quad c_{ij}=a_ib_j </math> となる<ref>Mathematical methods for physics and engineering, K.F. Riley, M.P. Hobson, S.J. Bence, Cambridge University Press, 2010, ISBN 978-0-521-86153-3</ref>。高階テンソルの場合も同様で、例えば : <math>\boldsymbol{T}=\boldsymbol{a}\otimes\boldsymbol{b}\otimes\boldsymbol{c}, \quad T_{ijk}=a_ib_jc_k </math> などと書ける。 例えば {{math|'''A'''}} が三階で各次元が {{math|(3, 5, 7)}}, {{math|'''B'''}} が二階で各次元が {{math|(10, 100)}} ならば、それらの外積 {{math|'''C'''}} は五階で各次元は {{math|(3, 5, 7, 10, 100)}} となる。また例えば {{math|'''A'''}} の成分 {{nowrap|1= ''a''<sub>2,2,4</sub> = 11}} および {{math|'''B'''}} の成分 {{math|1= ''b''<sub>8,88</sub> = 13}} に対応する外積 {{math|'''C'''}} の成分として {{math|1= ''c''<sub>2,2,4,8,88</sub> = 11*13 = 143}} が決まる。 外積の行列としての定義をテンソル積の言葉で理解するには: {{ordered list |1= ベクトル {{math|'''v'''}} は一階の {{mvar|M}}-次元テンソルとして解釈できる。同様に {{math|'''u'''}} が一階の {{mvar|N}}-次元テンソルである。これらのテンソル積の結果は二階の {{math|(''M'', ''N'')}}-テンソルになる。 |2= {{mvar|q}}-階および {{mvar|r}}-階の二つのテンソルの[[テンソルの縮約|内積]]の結果は、階数が {{math|''q'' + ''r'' − 2}} または {{math|0}} の大きい方になる。二つの行列の内積は二つのベクトルの外積(テンソル積)と階数が一致する。 |3= テンソルの構造を変えることなくテンソルの先頭または末尾にひとつずついくらでも次元を追加することができる。これら追加された次元によってテンソルに対する演算の型も変わるため、得られる式の間の同値性は明示的に述べる必要がある。 |4= ふたつの行列 {{math|'''V'''}} は次元 {{math|(''d'', ''e'')}}, {{math|'''U'''}} は次元 {{math|(''e'', ''f'')}} とするとこれらの内積は : <math>\sum_{j = 1}^e V_{ij} U_{jk}\quad \left({i = 1, 2, \ldots, d\atop k = 1, 2, \ldots, f}\right)</math> である。{{math|1= ''e'' = 1}} の場合にはこの和は自明である(一つの項しかない)。 |5= 次元 {{math|(''m'', ''n'')}}の行列 {{math|'''V'''}} と次元 {{math|(''p'', ''q'')}} の行列 {{math|'''U'''}} の外積は : <math> C_{st} = V_{ij} U_{hk}, \quad \left({s = 1, 2, \ldots, mp - 1, mp\atop t = 1, 2, \ldots, nq - 1, nq}\right)</math> }} === 抽象的な定義 === [[ベクトル空間]] {{math|''V'', ''W''}} と {{math|''W''<sup>∗</sup>}} は {{mvar|W}} の[[双対空間]]とする。 ベクトル {{math|''x'' ∈ ''V''}} および {{math|''y''<sup>∗</sup> ∈ ''W''<sup>∗</sup>}} に対してテンソル積 {{math|''y''<sup>∗</sup> ⊗ ''x''}} は : <math>w \mapsto y^*(w)x</math> で与えられる写像 {{math|''A'': W → ''V''}} に対応する。ここで {{math|''y''<sup>∗</sup>(''w'')}} は[[線型汎函数]] {{math|''y''<sup>∗</sup>}}(これは {{mvar|W}} の双対空間の元)をベクトル {{math|''w'' ∈ ''W''}} において評価した値である。これはスカラーであり、これを最終的に {{mvar|V}} の元である {{mvar|x}} に掛けたものがテンソル積の値である。 ベクトル空間 {{math|''V'', ''W''}} が有限次元ならば、{{mvar|W}} から {{mvar|V}} への線型変換全体の成す空間 {{math|Hom(''W'', ''V'')}} は外積で生成される。実は行列の階数は、外積を和として表すために必要な項の最小数(行列のテンソル階数)に一致する。今の場合、{{math|Hom(''W'', ''V'')}} は {{math|''W''<sup>∗</sup> ⊗ ''V''}} に線型同型である。 ; 双対性内積との対比 : {{math|1=''W'' = ''V''}} のとき、余ベクトル {{math|''w''<sup>∗</sup> ∈ ''V''<sup>∗</sup>}} とベクトル {{math|''v'' ∈ ''V''}} とを写像 {{math|(''w''<sup>∗</sup>, ''v'') ↦ ''w''<sup>∗</sup>(''v'')}} を通して対にすることができる。これは {{mvar|V}} とその双対空間との間に定まる[[双対対|双対性を表す内積]]である。 == 応用 == 外積は物理量(例えば[[慣性モーメント|慣性テンソル]]など)の計算や、[[デジタル信号処理]]や[[デジタル画像処理]]における変形操作を行うのに有用である。また[[統計学|統計的解析]]においても、二つの[[確率変数]]の[[共分散行列|共分散]]および自己共分散行列の計算に有用である。 == 関連項目 == * [[線型代数学]] * [[ノルム]] * {{仮リンク|スカッター行列|en|Scatter matrix}} * {{仮リンク|リッチ計算法|en|Ricci calculus}}{{refn|group="注"|{{Cite journal|和書|author=矢野健太郎 |year=1971 |url=https://doi.org/10.11429/sugaku1947.23.101 |title=幾何学部門報告 |journal=数学 |ISSN=0039470X |publisher=日本数学会 |volume=23 |issue=2 |pages=101-106 |doi=10.11429/sugaku1947.23.101 |CRID=1390001205067286016}}に「リッチ計算法」と書かれているためこの訳を採用}} === 乗法 === * [[交叉積]] * [[外積]] * [[デカルト積]] === 双対性 === * [[複素共軛]] * [[随伴行列]] * [[転置行列]] * {{仮リンク|ブラケット記法|label=ベクトルの直積のブラケット記法|en|Bra–ket notation#Outer products|preserve=1}} == 出典 == {{reflist}} ==注釈== {{reflist|group="注"}} {{Linear algebra}} {{DEFAULTSORT:ちよくせき}} [[Category:双線型演算]] [[Category:二項演算]] [[Category:ベクトル解析]] [[Category:物理数学]] [[Category:数学に関する記事]] [[Category:高階関数]]
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