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[[Image:Slope Field.png|thumb|250px|微分方程式 {{math|1=''dy''/''dx'' = ''x''{{sup|2}} − ''x'' − 2}} に対応する {{仮リンク|slope field|en|slope field}} に対する3つの積分曲線.]] [[数学]]において,'''積分曲線'''(せきぶんきょくせん,{{lang-en-short|integral curve}})は[[常微分方程式]]あるいは方程式系の特定の解を表す[[パラメトリック方程式|パラメトリック曲線]]である.微分方程式が[[ベクトル場]]あるいは {{仮リンク|slope field|en|slope field}} として表されているとき,対応する積分曲線は各点で場に[[接線|接する]]. 積分曲線は,微分方程式やベクトル場の性質や解釈に応じて,様々な他の名前で呼ばれる.[[物理学]]では,[[電場]]や[[磁場]]に対する積分曲線は {{仮リンク|field line|en|field line}} と呼ばれ,[[流体]]の{{仮リンク|速度場|en|velocity field}}に対する積分曲線は[[流線]]と呼ばれる.{{仮リンク|力学系理論|label=力学系|en|dynamical systems theory}}では,[[力学系|系]]を記述する微分方程式の積分曲線は[[軌道 (力学系)|軌道]]と呼ばれる. ==定義== {{mathbf|F}} を[[ベクトル場]]とする,つまり,[[デカルト座標]]の[[ベクトル値関数]] {{math|(''F''<sub>1</sub>, ''F''<sub>2</sub>, ..., ''F''<sub>''n''</sub>)}} とする.{{math|'''x'''(''t'')}} をデカルト座標 {{math|(''x''<sub>1</sub>(''t''), ''x''<sub>2</sub>(''t''), ..., ''x''<sub>''n''</sub>(''t''))}} の[[パラメトリック曲線]]とする.このとき {{math|'''x'''(''t'')}} が {{mathbf|F}} の'''積分曲線''' (integral curve) であるとは,それが次の常微分方程式の[[自励系]]の解であることをいう: :<math>\begin{align} \frac{dx_1}{dt} &= F_1(x_1,\ldots,x_n) \\ &\vdots \\ \frac{dx_n}{dt} &= F_n(x_1,\ldots,x_n). \end{align} </math> そのような系は1つのベクトルの方程式として書ける: :<math>\mathbf{x}'(t) = \mathbf{F}(\mathbf{x}(t)).\!\,</math> この方程式は曲線に沿った任意の点 {{math|'''x'''(''t'')}} において曲線に接するベクトルはちょうどベクトル {{math|'''F'''('''x'''(''t''))}} であり,したがって曲線 {{math|'''x'''(''t'')}} はベクトル場 {{mathbf|F}} に各点で接するということを言っている. 与えられたベクトル場が[[リプシッツ連続]]ならば,{{仮リンク|ピカール・リンデレフの定理|en|Picard–Lindelöf theorem}}により,小さい時間に対して一意的なフローが存在する. ==可微分多様体への一般化== ===定義=== {{mvar|M}} を {{mvar|C{{sup|r}}}} 級,{{math|''r'' ≥ 2}} の{{仮リンク|バナッハ多様体|en|Banach manifold}}とする.通常通り,{{mvar|TM}} で {{mvar|M}} の[[接束]]を表す.自然な[[射影]]を {{math|''π''<sub>''M''</sub>: ''TM'' → ''M''}} は :<math>\pi_{M} : (x, v) \mapsto x</math> で与えられる.{{mvar|M}} 上のベクトル場は接束 {{mvar|TM}} の[[ファイバー束#切断|切断]],すなわち,多様体 {{mvar|M}} の各点にその点での {{mvar|M}} の接ベクトルを割り当てる写像である.{{mvar|X}} を {{math|''C''<sup>''r''−1</sup>}} 級の {{mvar|M}} 上のベクトル場とし,{{math|''p'' ∈ ''M''}} とする.時間 {{math|''t''<sub>0</sub>}} で {{mvar|p}} を通る {{mvar|X}} の'''積分曲線'''とは,次のような {{math|''C''<sup>''r''−1</sup>}} 級曲線 {{math|''α'': ''J'' → ''M''}} である:{{math|''t''<sub>0</sub>}} を含む[[実数直線]] {{mathbf|R}} の[[開区間]] {{mvar|J}} 上で定義されていて, :<math>\alpha (t_{0}) = p;\,</math> :<math>\alpha' (t) = X (\alpha (t)) \text{ for all } t \in J</math> を満たす. ===常微分方程式との関係=== 時間 {{math|''t''<sub>0</sub>}} で {{mvar|p}} を通るベクトル場 {{mvar|X}} の'''積分曲線''' {{mvar|α}} の上記の定義は,{{mvar|α}} が次の常微分方程式の初期値問題の局所的な解であるということと同じである: :<math>\alpha (t_{0}) = p;\,</math> :<math>\alpha' (t) = X (\alpha (t)).\,</math> それは {{mvar|J}} 内の時間に対してのみ定義されていて,すべての {{math|''t'' ≥ ''t''<sub>0</sub>}}(もちろん {{math|''t'' ≤ ''t''<sub>0</sub>}} も)に対して定義されている必要はないという意味で局所的である.したがって,積分曲線の存在と一意性を証明する問題は常微分方程式・初期値問題の解を見つけそれが一意であることを示す問題と同じである. ===時間微分についての注意=== 上で {{math|''α''′(''t'')}} は時刻 {{mvar|t}} での {{mvar|α}} の微分,時刻 {{mvar|t}} で「{{mvar|α}} が指している方向」を表す.より抽象的な視点からは,これは[[フレシェ微分]]である: :<math>(\mathrm{d}_t f) (+1) \in \mathrm{T}_{\alpha (t)} M.</math> {{mvar|M}} が {{math|'''R'''<sup>''n''</sup>}} の[[開部分集合]]という特別な場合には,これはよく知っている微分 :<math>\left( \frac{\mathrm{d} \alpha_{1}}{\mathrm{d} t}, \dots, \frac{\mathrm{d} \alpha_{n}}{\mathrm{d} t} \right)</math> である,ただし {{math|''α''<sub>1</sub>, ..., ''α''<sub>''n''</sub>}} は通常の座標方向についての {{mvar|α}} の座標である. 同じことは{{仮リンク|誘導準同型|label=誘導写像|en|induced homomorphism}}のことばでさらに抽象的に述べることができる.{{mvar|J}} の接束 {{math|T''J''}} は[[自明束]] {{math|''J'' × '''R'''}} であり,すべての {{math|''t'' ∈ ''J''}} に対して {{math|1=''ι''(''t'') = 1}}(より正確には {{math|1=''ι''((''t'', 1)) = 1}})なるこの束の自然な切断 {{mvar|ι}} が存在する.曲線 {{mvar|α}} は次の図式が可換になるような[[束写像]] {{math|''α''<sub>∗</sub>: T''J'' → T''M''}} を誘導する: :[[Image:CommDiag TJtoTM.png]] このとき時間微分 {{math|''α''′}} は[[写像の合成|合成]] {{math|1=''α''′ = ''α''<sub>∗</sub> ∘ ''ι''}} であり,{{math|''α''′(''t'')}} は点 {{math|''t'' ∈ ''J''}} におけるその値である. ==参考文献== * {{cite book | authorlink=Serge Lang | last=Lang | first=Serge | title=Differential manifolds | publisher=Addison-Wesley Publishing Co., Inc. | location=Reading, Mass.–London–Don Mills, Ont. | year=1972 }} {{DEFAULTSORT:せきふんきよくせん}} [[Category:微分幾何学]] [[Category:常微分方程式]] [[Category:数学に関する記事]]
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