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[[Image:Group homomorphism ver.2.svg|right|thumb|250px|{{mvar|h}} は、群 {{mvar|G}}(左) から群 {{mvar|H}}(右) への'''群準同型'''。{{mvar|H}} 内の楕円は {{mvar|h}} の'''[[値域|像]]'''。{{mvar|N}} は {{mvar|h}} の'''[[核 (代数学)|核]]'''。{{mvar|aN}} は {{mvar|h}} の属する'''[[剰余類]]''']] {{groups}} [[数学]]、特に[[群論]]における'''群の準同型写像'''(じゅんどうけいしゃぞう、{{lang-en-short|''group homomorphism''}})は群の構造を保つ[[写像]]である。準同型写像を単に準同型とも呼ぶ。 == 定義と注意 == ふたつの群 {{math|(''G'', ∗)}} と {{math|(''H'', ⋅)}} が与えられたとする。{{math|(''G'', ∗)}} から {{math|(''H'', ⋅)}} への'''群準同型'''とは、[[写像]] {{math|''h'': ''G'' → ''H''}} で、<math display="block"> h(u*v) = h(u) \cdot h(v)\qquad(\forall u,v\in G)</math> を満たすものである。ここで、左辺は {{mvar|G}} の元に対して {{mvar|G}} の群演算を施したものを {{mvar|h}} で写した先の {{mvar|H}} の元を意味し、右辺は {{mvar|G}} の各元を {{mvar|h}} で {{mvar|H}} の元に写したものに {{mvar|H}} の群演算を施したものである。 定義から、準同型写像 {{mvar|h}} は、{{mvar|G}} の[[単位元]] {{mvar|e{{sub|G}}}} を {{mvar|H}} の単位元 {{mvar|e{{sub|H}}}} に写し、また <math display="block"> h(u^{-1}) = h(u)^{-1}</math> が成り立つという意味で[[逆元]]を逆元に写すということが示せる。このとき、「{{mvar|h}} は群構造と両立する(compatible with)」とも言う。 ;注意: 古い記法では、{{math|''h''(''x'')}} は {{mvar|x{{sub|h}}}} や {{mvar|x{{sup|h}}}} と表記されていた。ただしこの記法では、何らかの指数や一般の添字などと混同しやすい。なお、より最近の記法では準同型を引数の右側から作用させるときは括弧を書かないというようなものもある。この場合 {{math|''h''(''x'')}} は単に {{mvar|xh}} と書ける。これは特に、オートマトンによる機械処理を行う分野で一般的である。オートマトンは左から右へ順番に読めばいいので処理しやすいためである。 群に何か別の構造が付加されている場合には、「準同型」という言葉は(上記のような)群構造だけではなくて、付加された構造についてもよく振舞うをこと意味していることもある。たとえば、[[位相群]]の準同型といえば、しばしば連続性も要求される。 群 {{mvar|G}} から {{mvar|H}} への群準同型全体のなす集合は {{math|Hom(''G'', ''H'')}} と表記される。 == 像と核 == 準同型 {{math|''h'': ''G'' → ''H''}} の'''[[核 (代数学)|核]]''' {{math|ker(''h'')}} を、{{mvar|h}} によって {{mvar|H}} の単位元にうつる {{mvar|G}} の元全体の集合 <math display="block">\ker(h) := \{u \in G : h(u) = e_H\}</math> と定義し、また準同型 {{math|''h'': ''G'' → ''H''}} の'''[[像 (数学)|像]]'''を <math display="block">\operatorname{im}(h) := \{h(u) : u \in G\}</math> で定義する。核は {{mvar|G}} の[[正規部分群]]である(実際、{{math|''u'' ∈ ker(''h'')}} とすれば、任意の {{math|''g'' ∈ ''G''}} に対し <math display="block">h(g^{-1}ug) = h(g)^{-1}h(u)h(g) = h(g)^{-1}e_Hh(g) = h(g)^{-1}h(g) = e_H</math> が成立するから、<math display="inline">g^{-1}\ker(h)g = \ker(h)</math> はすぐにわかる)。また、像は {{mvar|H}} の[[部分群]]である。準同型 {{mvar|h}} が[[単射]](しばしば '''群単準同型''' {{lang|en|(group monomorphism)}} と呼ばれる)になることと {{math|1=ker(''h'') = {{mset|''e{{sub|G}}''}}}} となることとは同値である。 準同型の核と像は、その準同型がどのくらい同型に近いかを測るものと解釈することができる。[[同型定理|第一同型定理]]によれば、準同型 {{math|''h'': ''G'' → ''H''}} の像 {{math|im ''h''}} は、[[余像]]と呼ばれる商群 {{math|''G''/ker ''h''}} に同型である。 == 例 == * [[巡回群]] {{math|1='''Z'''/3'''Z''' = {{mset|0, 1, 2}}}} と、整数全体の成す加法群 {{mathbf|Z}} を考える。 {{math|''h''(''u'') {{coloneqq}} ''u'' [[合同式|mod]] 3}} によって定義される写像 {{math|''h'': '''Z''' → '''Z'''/3'''Z'''}} は群準同型である。これは[[全射]]であり、核は3の倍数全体の成す集合である。 * [[指数関数]]は、[[実数]]全体の成す加法群 {{mathbf|R}} から、非零実数全体の成す乗法群 {{math|'''R'''*}} への準同型 {{math|exp: '''R''' → '''R'''*}} を与える。核は {{math|{{mset|0}}}} であり、像は正の実数全体 {{math|'''R'''{{sub|+}}}} である。 * 指数関数はまた、[[複素数]]全体の成す加法群 {{mathbf|C}} から、非零複素数全体の成す乗法群 {{math|'''C'''*}} への準同型をも与える。この写像は全射であり、核は[[オイラーの公式]]から明らかなように {{math|{{mset| 2''πki'' {{!}} ''k'' ∈ '''Z''' }}}} となる。{{mathbf|R}} や {{mathbf|C}} のように、その加法群から乗法群への準同型を持つ体を[[指数体]]と言う。 * 有限集合 {{math|{{mset|1, …, ''n''}}}} 上の[[置換 (数学)|置換]] {{mvar|σ}} に対して[[置換の符号|符号]] {{math|sgn(''σ'')}} を対応させる写像 {{math|sgn: ''S''{{sub|''n''}} → {{mset|±1}}}} は群準同型である。ここで {{math|''S''{{sub|''n''}}}} は {{mvar|n}} 次[[対称群]]である。この群準同型は {{math|''n'' > 1}} のとき全射であり、その核は {{mvar|n}} 次[[交代群]] {{math|''A''{{sub|''n''}}}} と呼ばれる。 * 複素成分の {{mvar|n}} 次[[正則行列]] {{mvar|A}} に対して[[行列式]] {{math|det(''A'')}} を対応させる写像 {{math|det: ''GL''{{sub|''n''}}('''C''') → '''C'''*}} は群準同型である。ここで {{math|''GL''{{sub|''n''}}('''C''')}} は複素数体上の {{mvar|n}} 次[[一般線型群]]である。この群準同型は全射であり、その核は {{mvar|n}} 次[[特殊線型群]] {{math|''SL''{{sub|''n''}}('''C''')}} と呼ばれる。 * 実成分の {{mvar|n}} 次正則行列 {{mvar|A}} に対して[[逆行列]]の[[転置行列|転置]] {{math|''θ''(''A'') {{=}} {{sup|''t''}}''A''{{sup|−1}}}} を対応させる写像 {{math|''θ'': ''GL''{{sub|''n''}}('''R''') →''GL''{{sub|''n''}}('''R''')}} は群(準)同型である<!-- Cartan involution -->。このとき {{mvar|θ}} で固定される行列の全体 {{math|{{mset| ''A'' {{!}} ''θ''(''A'') {{=}} ''A'' }}}} は[[直交群]] {{math|''O''(''n'')}} となる。 * 零でない複素数 {{math|''z'' {{=}} ''re''{{sup|''iθ''}}}} に対して[[絶対値]] {{math|{{!}}''z''{{!}} {{=}} ''r''}} を対応させる写像 {{math|'''C'''* → '''R'''*}} は群準同型である。この写像の像は正の実数の全体 {{math|{{mset| ''r'' {{!}} ''r'' > 0 }}}} であり、核は複素平面の[[単位円]]に属する複素数の全体 {{math|{{mset| ''e''{{sup|''iθ''}} {{!}} 0 ≤ ''θ'' < 2''π'' }}}} である。 * 奇素数 {{mvar|p}} について[[ルジャンドル記号]]は {{math|('''Z'''/''p'''''Z''')* {{=}} {{mset|1, …, ''p'' − 1}}}} から {{math|{{mset|±1}}}} への群準同型 {{math|''a'' ↦ ''a''{{sup|{{sfrac|''p'' − 1|2}}}} mod ''p''}} を定める。 == 群の圏 == {{math|''h'': ''G'' → ''H''}} および {{math|''k'': ''H'' → ''K''}} が群準同型ならば、それらの[[写像の合成|合成]] {{math|''k'' ∘ ''h'': ''G'' → ''K''}} もまた群準同型である。これにより、群全体の成す(圏論的な意味での)[[類 (集合論)|類]]に群準同型を[[射 (圏論)|射]]としてあわせて考えたものは、[[群の圏]] {{mathbf|Grp}} と呼ばれる[[圏 (数学)|圏]]を成す。 === 準同型写像の種類 === 準同型 {{math|''h'': ''G'' → ''H''}} が[[全単射]]ならば、その[[逆写像]]もまた準同型になることが示せる。このとき {{mvar|h}} は[[群同型|群同型写像]] {{lang|en|(group isomorphism)}} であるといい、群 {{mvar|G}} と {{mvar|H}} は互いに'''同型''' {{lang|en|(isomorphic)}} であるという。互いに同型な群というのは、その元の記述の仕方が違うだけで、実用上は同一視できる。 定義域と[[終域]]が同じ群準同型写像 {{math|''h'': ''G'' → ''G''}} は {{mvar|G}} の'''[[自己準同型|自己準同型写像]]'''という。さらに、{{mvar|h}} が全単射、すなわち同型になるとき、'''[[自己同型]]'''という。{{mvar|G}} のすべての自己同型からなる集合は、[[写像の合成]]を演算として群をなす。これを、{{mvar|G}} の'''自己同型群'''と言い、{{math|Aut(''G'')}} と表記する。たとえば、群 {{math|('''Z''', +) }}の自己同型群は、恒等変換と {{math|−1}} 倍写像の二つの元のみからなり、{{math|'''Z'''/2'''Z'''}} に同型である。 [[全射]]準同型(つまり、上への写像となっているような準同型)を'''全準同型''' {{lang|en|(epimorphism)}} という。また、[[単射]]準同型(つまり、一対一写像となっていうような準同型)を'''単準同型''' {{lang|en|(monomorphism)}} という。 ==アーベル群の準同型== {{mvar|G}} と {{mvar|H}} を[[アーベル群]](つまり、演算が可換な群)とすると、{{mvar|G}} から {{mvar|H}} への群準同型全体の成す集合 {{math|Hom(''G'', ''H'')}} をそれ自身ひとつのアーベル群とすることができる。ただし準同型 {{mvar|h}} と {{mvar|k}} の和 {{math|''h'' + ''k''}} を[[点ごと]]の和、すなわち <math display="block">(h + k)(u) := h(u) + k(u)\qquad(\forall u\in G)</math> を満たすものとして定める。{{mvar|H}} の可換性は、{{math|''h'' + ''k''}} がふたたび群準同型となることを示すのに必要である。 準同型の加法は、準同型の合成と以下の意味で'''両立する''': : {{math|Hom(''K'', ''G'')}} の任意の元 {{mvar|f}} および {{math|Hom(''G'', ''H'')}} の任意の元 {{mvar|h, k}} および {{math|Hom(''H'', ''L'')}} の任意の元 {{mvar|g}} に対して <math display="block">(h + k)\circ f = (h\circ f) + (k\circ f)</math> および <math display="block">g\circ (h + k) = (g\circ h) + (g\circ k)</math> が成り立つ。 これはアーベル群 {{mvar|G}} の自己準同型全体の成す集合 {{math|End(''G'')}} は(準同型の和と合成に関して)[[環 (数学)|環]]を成すことを示している。環 {{math|End(''G'')}} をアーベル群 {{mvar|G}} の[[自己準同型環]] と言う。たとえば、[[巡回群]] {{math|'''Z'''/{{mvar|n}}'''Z'''}} の {{mvar|m}} 個の[[群の直積|直和]]として得られるアーベル群 {{mvar|G}} の自己準同型環 {{math|End(''G'')}} は {{math|'''Z'''/{{mvar|n}}'''Z'''}} に成分を持つ {{mvar|m}}-次[[正方行列]]全体の成す[[行列環|環]]に[[環同型|同型]]である。上記の和と合成に関する両立性は[[アーベル群の圏|アーベル群(と群準同型)の圏]] {{mathbf|Ab}} が[[前加法圏]]を成すことをも示している。直和の存在や核がよく振舞うことから、圏 {{mathbf|Ab}} は[[アーベル圏]]の原型的な例となっている。 == 関連項目 == * [[準同型定理]] == 参考資料 == Lang, Serge (2002), Algebra, Graduate Texts in Mathematics, 211 (Revised third ed.), New York: Springer-Verlag, MR1878556, ISBN 978-0-387-95385-4 == 外部リンク == * {{MathWorld|urlname=GroupHomomorphism|title=Group Homomorphism}} * {{nlab|urlname=group+homomorphism|title=group homomorphism}} * {{PlanetMath|urlname=grouphomomorphism|title=group homomorphism}} * {{ProofWiki|urlname=Definition:Group_Homomorphism|title=Group Homomorphism}} * {{SpringerEOM|urlname=Homomorphism|title=Homomorphism}} {{デフォルトソート:くんしゆんとうけい}} [[Category:群論]] [[Category:圏論]] [[Category:射]] [[Category:数学に関する記事]]
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