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'''自然変換'''（しぜんへんかん、{{lang-en-short|'''natural transformation'''}}）とは、数学における「自然な同型」という概念の定式化として生まれ、その後[[圏 (数学)|圏]]および[[関手]]とともに[[圏論]]の中核を構成した[[数学的対象|数学的な対象]]である。圏論において自然変換は「関手の間の射」<ref group="注">{{行内引用|map between functors|lang=en}}{{Harv|Leinster|2014|p=27|loc=§1.3}}</ref>とも表現され、圏の構造の中で関手の[[像 (数学)|像]]を別の関手の像へ変換させる対応として定義される。

関手 {{math|''F'', ''G'' : ''C'' → ''D''}} の間の自然変換 {{math|''τ'' : ''F'' ⇒ ''G''}} は、よい条件を満たす {{Mvar|C}} の各対象によってパラメータ付けられた射の族 {{math|{''τ''<sub>''x''</sub>: ''Fx'' → ''Gx''}<sub>''x'' ∈ ''C''</sub>}} によって構成される。逆に、{{Mvar|C}} の各対象によってパラメータ付けられた族 {{math|{''τ''<sub>''x''</sub>: ''S''<sub>''x''</sub> → ''T''<sub>''x''</sub>}<sub>''x'' ∈ ''C''</sub>}} が関手の間の自然変換を構成する場合<ref group="注">対象の族 {{math|{''S''<sub>''x''</sub>}<sub>''x'' ∈ ''C''</sub>}}、{{math|{''T''<sub>''x''</sub>}<sub>''x'' ∈ ''C''</sub>}} が関手を構成することも条件に含む</ref>、射の族 {{math|{''τ''<sub>''x''</sub>}<sub>''x'' ∈ ''C''</sub>}} は {{Mvar|x}} で自然である (natural in {{Mvar|x}}) とも表現される。

自然変換は圏や関手と並んで非常に基本的な構成物であり、[[随伴関手|随伴]]、[[極限 (圏論)|極限]]、[[モナド (圏論)|モナド]]、[[モノイド圏]]など多くの場面で自然変換、あるいは射の自然性は議論されている。
== 定義 ==
圏 {{Mvar|C}} と {{Mvar|D}} に対して、{{Mvar|F}} と {{Mvar|G}} を {{Mvar|C}} から {{Mvar|D}} への関手とするとき、{{Mvar|F}} から {{Mvar|G}} への自然変換 {{math|''η'' : ''F'' ⇒ ''G''}} (あるいは <math display="inline">\eta:F\stackrel{\scriptscriptstyle\bullet}{\to}G</math> と表記する<ref>{{Harvnb|Mac Lane|1998|p=16}}</ref>) とは、{{Mvar|C}} の対象でパラメータ付けられた {{Mvar|D}} の射の族 {{math|{''η''<sub>''X''</sub>: ''F''(''X'') → ''G''(''X'')}<sub>''X'' ∈ ''C''</sub>}} であって、任意の {{Mvar|C}} の射 {{math|''f'' : ''X'' → ''Y''}} に対して <math display="inline">\eta_Y \circ F(f) = G(f) \circ \eta_X</math> を満たすもの、すなわち次の[[図式 (圏論)|図式]]を[[可換図式|可換]]にするものである： [[File:Natural transformation.svg|175px|center|自然変換の成分]]自然変換 {{math|''η'' : ''F'' ⇒ ''G''}} を構成するそれぞれの射 {{math|''η''<sub>''X''</sub>: ''F''(''X'') → ''G''(''X'')}} は {{Mvar|η}} のコンポーネント ({{Lang-en-short|component}}) と呼ばれる。コンポーネントがすべて[[同型写像|同型射]]であるとき、{{Mvar|η}} は'''自然同型''' ({{Lang-en-short|natural isomorphism}}) あるいは'''自然同値''' ({{Lang-en-short|natural equivalence}}) であるという。

上記の図式を考慮しない、単なる射の[[族 (数学)|族]] {{math|{''&varphi;''<sub>''x''</sub>: ''Fx'' → ''Gx''}<sub>''x'' ∈ ''C''<sub>0</sub></sub>}} ({{math|''C''<sub>0</sub>}} は {{Mvar|C}} の対象からなる部分集合) を、{{Mvar|F}} から {{Mvar|G}} への infranatural transformation と呼ぶことがある<ref>{{Harvnb|Heller|1990|p=1260}}</ref>。このとき、{{Mvar|F}} から {{Mvar|G}} への自然変換とは {{Mvar|C}} の対象すべてをパラメータとする {{Mvar|F}} から {{Mvar|G}} への infranatural transformation {{math|{''τ''<sub>''x''</sub>: ''Fx'' → ''Gx''}<sub>''x'' ∈ ''C''</sub>}} であって、任意の {{math|''f'' : ''x'' → ''y''}} に対して<math display="inline">\tau_y \circ F(f) = G(f) \circ \tau_x</math> であるものと言い換えられる。infranatural transformation {{math|{''&varphi;''<sub>''x''</sub>: ''Fx'' → ''Gx''}<sub>''x'' ∈ ''C''<sub>0</sub></sub>}} に対して、コンポーネントに {{math|{''&varphi;''<sub>''x''</sub>: ''Fx'' → ''Gx''}<sub>''x'' ∈ ''C''<sub>0</sub></sub>}} を含むような自然変換を持つ最大の {{Mvar|C}} の[[部分圏]]を {{math|nat&nbsp;''&varphi;''}} と書いて {{Mvar|&varphi;}} のnaturalizerという<ref group="注">{{Harvtxt|Heller|1990|p=1260}} より。文献によって {{math|1=''C''<sub>0</sub> = ''C''}} の場合のみを指すこともある {{Harv|Lengyel|2002|p=7}}。</ref>。

== 例 ==

=== 直積の結合性 ===
[[集合]] {{Mvar|X}}, {{Mvar|Y}} に対して、[[直積集合|集合の直積]] {{math|''X'' × ''Y''}} とはそれぞれの要素を成分に持つ[[順序対]]からなる集合 <math display="inline">\{(x,y)\mid x\in X, y\in Y\}</math> である。ここで、3つの集合 {{Mvar|X}}, {{Mvar|Y}}, {{Mvar|Z}} に対して、{{math|(''X'' × ''Y'') × ''Z''}} と {{math|''X'' × (''Y'' × ''Z'')}} の2つの集合を考える。2つの集合は明らかに順序対のつけ方を変えただけのものであるため、同型<math display="block">\alpha_{X,Y,Z}\colon(X\times Y)\times Z\cong X\times(Y\times Z)</math>を得る。この同型はさらに、{{Mvar|X}}, {{Mvar|Y}}, {{Mvar|Z}} のそれぞれに対して自然である。すなわち、写像 {{math|ξ : ''X'' → ''X{{'}}''}}, {{math|η : ''Y'' → ''Y{{'}}''}}, {{math|ζ : ''Z'' → ''Z{{'}}''}} に対して等式 <math display="inline">\alpha_{X',Y',Z'}\circ((\xi\times\eta)\times\zeta)=(\xi\times(\eta\times\zeta))\circ\alpha_{X,Y,Z}</math> が成り立つ。このことは[[位相空間の圏]] {{math|'''Top'''}}<ref>{{Harvnb|Eilenberg|MacLane|1945|pp=251–252}}</ref>、[[群の圏]] {{math|'''Grp'''}}、[[小さい圏の圏]] {{math|'''Cat'''}} など、[[積 (圏論)|直積]]を持つ圏一般<ref>{{Harvnb|Awodey|2010|pp=163–164|loc=Example 7.8}}</ref>に成立する。

=== ベクトル空間の二重双対 ===

[[可換体|体]] {{Mvar|K}} 上の[[ベクトル空間]] {{Mvar|V}} に対して、[[双対ベクトル空間|双対空間]] {{math|''V''<sup>*</sup>}}とは {{Mvar|V}} から {{Mvar|K}} への[[線型写像|線形写像]]全体からなるベクトル空間である。このとき、{{Mvar|V}} から二重双対空間 {{math|''V''<sup>**</sup>}} (すなわち、{{math|''V''<sup>*</sup>}}から {{Mvar|K}} への線形写像からなる空間) への[[単射]]線形写像 {{math|Ψ<sub>''V''</sub>: ''V'' → ''V''<sup>**</sup>}}が<math display="block">\begin{alignat}{2}
\Psi_V(x)\colon{}&V^*&\longrightarrow{}&K\\
&\varphi&\longmapsto{}&\varphi(x)
\end{alignat}</math>によって定まる。さらに {{Mvar|V}} が[[次元 (ベクトル空間)|有限次元]]であるとき、{{math|Ψ<sub>''V''</sub>}} は同型となる。明らかに {{math|Ψ<sub>''V''</sub>}} は {{Mvar|V}} の[[基底 (線型代数学)|基底]]に依らずに定まるため、[[逆写像]]である {{math|Ψ{{Su|p=-1|b=''V''}}}} も {{math|''V''<sup>**</sup>}}の基底に依らない。この意味で {{math|Ψ<sub>''V''</sub>}} は特別な線形写像であり、また有限次元の場合について{{行内引用|全ての有限次元ベクトル空間に対して同時に与えられるという意味で『自然』}}<ref group="注">{{行内引用|... “natural” in that it is given ''simultaneously'' for ''all'' finite-dimensional vector spaces {{Mvar|L}}.}}{{Harv|Eilenberg|MacLane|1945|p=232}}</ref>である。

線形写像 {{math|''f'' : ''V'' → ''W''}} に対して、{{math|''f''<sup>*</sup>: ''W''<sup>*</sup> → ''V''<sup>*</sup>}}が <math display="inline">f^*\varphi(x)=\varphi(f(x))</math> によって定まる。もう一度同じ操作を取ることで、{{math|''f''<sup>**</sup>: ''V''<sup>**</sup> → ''W''<sup>**</sup>}}が <math display="inline">f^{**}X(\varphi)=X(f^*\varphi)</math> と定まる。定義から、準同型の合成に対して <math display="inline">(g\circ f)^{**}=g^{**}\circ f^{**}</math>が成り立つため、これによって二重双対はベクトル空間と線形写像のなす圏 ([[加群の圏|ベクトル空間の圏]] {{math|'''Vect'''<sub>''K''</sub>}}) 上の自己関手であることがわかる。

さらに、定義に沿って計算することで<math display="inline">f^{**}(\Psi_V(x))(\varphi)=\varphi(f(x))</math> を得るため、<math display="inline">f^{**}(\Psi_V(x))=\Psi_W(f(x))</math> が成り立つ。以上のことから、{{math|Ψ<sub>''V''</sub>}} は[[恒等写像|恒等]]関手と二重双対関手の間の自然変換 (有限次元に制限した場合は自然同型) のコンポーネントとなることがわかる。

=== 開集合と閉集合 ===
[[位相空間]] {{Mvar|X}} に対して、{{Mvar|X}} の[[開集合]]すべてからなる集合 {{math|''O''(''X'')}} と[[閉集合]]すべてからなる集合 {{math|''C''(''X'')}} を取る操作について考える。[[連続写像]] {{math|''f'': ''X'' → ''Y''}} の (互いに同値な) 定義から、{{Mvar|f}} に対して開集合の[[逆像]]は開集合に、閉集合の逆像は閉集合に写る。ここから、2つの操作 {{math|''X'' &mapsto; ''O''(''X'')}} と {{math|''X'' &mapsto; ''C''(''X'')}} は反変関手 {{math|''O'', ''C'': '''Top'''<sup>op</sup> → '''Set'''}} と見なせる<ref>{{Harvnb|Riehl|2016|p=18|loc=Example 1.3.7 (ⅲ)}}</ref>。

位相空間 {{Mvar|X}} の開集合 {{math|''U'' ∊ ''O''(''X'')}} に対して、その[[補集合]] {{Overline|{{Mvar|U}}}} は閉であり、また {{Overline|{{Mvar|U}}}} の補集合は {{Mvar|U}} 自身である。これにより、各 {{math|''O''(''X'')}} と {{math|''C''(''X'')}} の間に全単射を定められる。この全単射は {{Mvar|X}} について自然であり、さらにコンポーネントはいずれも同型であるため、{{Mvar|U}} と {{Mvar|C}} の間に自然同型が存在するとわかる<ref>{{Harvnb|Riehl|2016|p=25|loc=Example 1.4.3 (ⅴ)}}</ref>。

=== 群拡大と因子団 ===
[[アーベル群]]の[[群の拡大|拡大]]  {{math|0 → ''G'' → ''E'' {{overset|β|→}} ''H'' → 0}} を考える。各 {{math|''h'' ∊ ''H''}} に対して、{{math|''u''(''h'') ∊ ''E''}} を {{math|1=β(''u''(''h'')) = ''h''}} を満たすような[[同値類|代表元]]として選ぶ。このとき、{{Mvar|E}} の各要素は {{math|''g'' + ''u''(''h'')}} ({{math|''g'' ∊ ''G''}}) の形で表すことができ、特に {{math|''u''(''h'') + ''u''(''k'')}} について<math display="block">u(h)+u(k)=u(h+k)+f(h,k)\qquad(\exists f(h,k)\in G)</math>という形で表せる。このとき、{{math|''h'', ''k'' ∊ ''H''}} からの対応 {{Mvar|f}} は、アーベル群における群演算の[[交換法則|可換性]]および[[結合法則|結合性]]から、次の2条件を満たす。
# <math display="inline">f(h,k)=f(k,h)</math>
# <math display="inline">f(h,k)+f(h+k,l)=f(h,k+l)+f(k,l)</math>

逆に、写像 {{math|''f'': ''H'' × ''H'' → ''G''}} が上記2条件を満たすとき、これを {{Mvar|H}} の {{Mvar|G}} における factor set (因子団<ref>名称は{{Harvnb|平井|2013}} (p.129) による。</ref>) という。因子団について、次の2つの事実が成り立つ。

* ある {{Mvar|H}} の {{Mvar|G}} における因子団 {{Mvar|f}} は、群の拡大 {{math|(''E'', β)}} を1つ定める<ref>{{Harvnb|Eilenberg|MacLane|1942a|p=768|loc=Theorem 7.1}}</ref>。
* 点ごとの加算 <math display="inline">(f_1+f_2)(h,k)=f_1(h,k)+f_2(h,k)</math> によって、因子団の集合 {{math|Fact(''G'', ''H'')}} はアーベル群をなす<ref>{{Harvnb|Eilenberg|MacLane|1942a|p=770}}</ref>。

因子団によって定まる群の拡大は1対1対応ではないが、同値な群の拡大を定める因子団の集合は {{math|Fact(''G'', ''H'')}} 上の[[剰余類]]をなし、結果として群の拡大たちの群 {{math|Ext(''G'', ''H'')}} を {{math|Fact(''G'', ''H'')}} のある[[商群]]として与える。

以下、{{Mvar|H}} はある[[自由群]] {{Mvar|F}} の商群 {{math|1=''H'' = ''F''/''R''}} とする。前段と同様に、{{math|''h'' ∊ ''H''}} に対して代表元 {{math|''u''<sub>0</sub>(''h'') ∊ ''F''}} を選び、それによって定まる {{Mvar|H}} の {{Mvar|R}} における因子団を {{math|''f''<sub>0</sub>}} で表す。このとき、[[準同型]] {{math|''θ'': ''R'' → ''G''}} に対して <math display="inline">f_\theta(h,k)=\theta(f_0(h,k))</math> とすると、{{Mvar|f<sub>θ</sub>}} は {{Mvar|H}} の {{Mvar|G}} における因子団である。この対応はさらに、{{math|Hom(''R'', ''G'')}} から {{math|Ext(''G'', ''H'')}} への群準同型をなす<ref>{{Harvnb|Eilenberg|MacLane|1942a|p=772}}</ref>。

いま、自由群の間の準同型 {{math|''T'': ''F{{'}}'' → ''F''}} は {{math|''T''(''R{{'}}'') &subset; ''R''}} を満たすとする。このとき、{{Mvar|T}} は {{math|1=''H{{'}}'' = ''F{{'}}''/''R{{'}}''}} から {{math|1=''H'' = ''F''/''R''}} への準同型を誘導して、さらにこれは準同型 {{math|''T''{{Su|p=*|b=e}}: Ext(''G'', ''H'') → Hom(''G'', ''H{{'}}'')}} を導く。また、{{Mvar|T}} の事前合成 <math display="inline">\theta\mapsto \theta\circ T</math> は準同型 {{math|''T''{{Su|p=*|b=h}}: Hom(''R'', ''G'') → Hom(''R{{'}}'', ''G'')}} を定める。

以上の設定の下で、{{math|''θ'' &mapsto; ''f''<sub>''θ''</sub>}} が定める因子団の対応 {{math|''η'': Hom(''R'', ''G'') → Ext(''G'', ''H'')}} および {{math|''η{{'}}'': Hom(''R{{'}}'', ''G'') → Ext(''G'', ''H{{'}}'')}} は<math display="block">\eta'T_h^*=T_e^*\eta</math>を満たす<ref>{{Harvnb|Eilenberg|MacLane|1942a|p=777|loc=Theorem 12.1}}</ref>。この意味で {{Mvar|η}} は自然な対応である。

=== ブール代数のウルトラフィルター ===
補元 {{math|&not;''a''}} を持つ分配[[束 (束論)|束]] {{math|(''B'', &le;, 0, 1, &and;, &or;, &not;)}} を[[ブール代数]]という。二点集合 {{math|1=2 = {0, 1}}} に適切な演算を入れたものは最小のブール代数の構成となる。ブール代数の準同型 {{math|''f'' : ''A'' → ''B''}} とは写像 {{math|''f'' : ''A'' → ''B''}} であって、各演算の結果を保つものをいう。

ブール代数 {{math|(''B'', &le;, 0, 1, &and;, &or;, &not;)}} の[[超フィルター|ウルトラフィルター]]とは、{{Mvar|B}} の[[部分集合|真部分集合]] {{math|''U'' ⊂ ''B''}} であって、

* 空でない (特に、1 を含む)
* [[結びと交わり|ミート]] ∧ について閉じている ({{math|''x'', ''y'' ∈ ''U''}} ならば {{math|''x'' &and; ''y'' ∈ ''U''}} である)
* {{math|''x'' ∈ ''U''}} の[[上方集合]]は {{Mvar|U}} の部分をなす ({{math|''x'' ∈ ''U''}} かつ {{math|''x'' &le; ''y''}} ならば {{math|''y'' ∈ ''U''}} である)
* {{Mvar|U}} は[[極大]]である (上記3条件を満たす {{math|''U'' ⊂ ''U{{'}}''}} が存在するならば、{{math|1=''U{{'}}'' = ''B''}} である)

を満たすものである<ref group="注">定義は {{Harvtxt|Awodey|2010}} の p.37 および p.158 に基づく。</ref>。このとき、{{Mvar|B}} のウルトラフィルターは {{Mvar|B}} から 2 への準同型と1対1対応する<ref>{{Harvnb|Awodey|2010|p=37}}</ref>。

ブール代数とその間の準同型からなる圏を {{math|'''BA'''}} で表す。このとき、対応 <math display="inline">B\mapsto\mathop{\mathrm{Hom}_{\mathbf{BA}}}(B,2)</math> は {{math|'''BA'''}} から[[集合の圏]]への反変関手 <math display="inline">\mathop{\mathrm{Hom}_{\mathbf{BA}}}(\_,2):\mathbf{BA}^{\mathrm{op}}\to\mathbf{Set}</math> を構成する。他方、ブール代数の準同型 {{math|''h'' : ''A'' → ''B''}} と {{Mvar|B}} のウルトラフィルター {{Mvar|U}} に対して、[[逆像]] {{math|''h''<sup>-1</sup>''U'' ⊂ ''A''}} は {{Mvar|A}} のウルトラフィルターであるため、これによって写像 {{math|Ult(''h''): Ult(''B'') → Ult(''A'')}} を得る ({{math|Ult(''B'')}} で {{Mvar|B}} のウルトラフィルターの集合を表す)。これは {{math|'''BA'''}} から {{math|'''Set'''}} への反変関手であり、さらに同型<math display="inline">\mathop{\mathrm{Ult}}(B)\cong\mathop{\mathrm{Hom}_{\mathbf{BA}}}(B,2)</math> は {{Mvar|B}} について自然となる<ref>{{Harvnb|Awodey|2010|p=63}}</ref>。

=== (反例) 双対ベクトル空間 ===
双対ベクトル空間を取る操作は、ふつう反変関手 {{math|'''Vect'''{{Su|p=op|b=''K''}} → '''Vect'''<sub>''K''</sub>}} と見なされる (このとき {{math|''f'' : ''V'' → ''W''}} に対して {{math|''f''<sup>*</sup>: ''W''<sup>*</sup> → ''V''<sup>*</sup>}} は先述の <math display="inline">f^*\varphi(x)=\varphi(f(x))</math> で与えられる線形写像である) ため、恒等関手 {{math|Id : '''Vect'''<sub>''K''</sub> → '''Vect'''<sub>''K''</sub>}} との間の自然変換は定義上存在しえない。

別の考え方として、双対との間の「自然な」同型 {{math|γ<sub>''V''</sub> : ''V'' → ''V''<sup>*</sup>}} が存在するならば、その満たすべき条件は、任意の線形写像 {{math|''f'' : ''V'' → ''W''}} に対して <math display="inline">f^*\circ\gamma_W\circ f=\gamma_V</math> であると考えることができる ([[自然変換#超自然変換|超自然変換]]節も参照)。これは自然性を示す可換図式のうち、{{math|''F''(''f'')}} に相当する射の向きを反転させたものになる。{{math|γ<sub>''V''</sub>}} が同型であることから、等式の左辺も同型にならなければならないが、左辺の示す射が任意の線形写像に対して同型になるということはないため、この意味で双対ベクトル空間との間の「自然な」同型は存在しない<ref>{{Harvnb|Eilenberg|MacLane|1945|pp=233–234}}</ref>。

== 歴史 ==
自然変換は、1940年代初頭の数学者が非形式的に使っていた「自然な」同型あるいは「自然な」[[位相同型|同相]]射という概念の定式化として、1942年に[[サミュエル・アイレンベルグ|アイレンベルグ]]と[[ソーンダース・マックレーン|マックレーン]]によって導入された<ref>{{Harvnb|Eilenberg|MacLane|1942b|p=537}}</ref><ref group="注">{{行内引用|By the early 1940s, researchers in algebraic topology had started to use the phrase ‘natural transformation’, but only in an informal way. Two mathematicians, Samuel Eilenberg and Saunders Mac Lane, saw that a precise definition was needed.|lang=en}}{{Harv|Leinster|2014|p=9}}</ref>。1945年にはこの2人によって "General Theory of Natural Equivalences" ({{Lit|自然同値の一般理論}}) が発表され、これによって自然変換の理論が定式化された。1940年代後半には[[ホモロジー代数学|ホモロジー論]]や[[抽象代数学|抽象代数]]の分野においてこの概念が適用されはじめ、その後[[アレクサンドル・グロタンディーク|グロタンディーク]]らによって[[代数幾何学|代数幾何]]に、[[ウィリアム・ローヴェア|ローヴェア]]などによって[[数理論理学|論理学]]に、その後も[[計算機科学]]、[[言語学]]、[[認知科学]]、[[哲学]]などの様々な分野において応用が見られるようになった<ref>{{Harvnb|Awodey|2010|p=2}}</ref>。

自然変換および自然性は圏論における基礎的な概念の1つである。マックレーンは『[[圏論の基礎]]』の中で{{行内引用|『圏』は『函手』を定義可能にするために定義され，『函手』は『自然変換』を定義可能にするために定義されてきたのである．|style=|lang=ja}}{{Harv|Mac Lane|2012|pp=22–23}} と記している。

== 自然変換の演算 ==
自然変換の間には代表して垂直合成 (vertical composition) と水平合成 (horizontal composition) という2種類の演算が存在する。2種類の演算について、垂直水平の方向はどの文献でも一致しているが、その記号は文献によって揺れが存在している。

=== 垂直合成 ===
関手 {{math|''F'', ''G'', ''H'' : ''C'' → ''D''}} の間の自然変換  {{math|σ : ''F'' ⇒ ''G''}}, {{math|τ : ''G'' ⇒ ''H''}} に対して、各コンポーネントの合成 {{math|{τ<sub>''x''</sub> ◦ σ<sub>''x''</sub>: ''Fx'' → ''Hx''}<sub>''x'' ∈ ''C''</sub>}} は再び自然変換となる。そこでこれを {{math|σ}} と {{math|τ}} の垂直合成と呼んで、<math display="inline">\tau\cdot\sigma</math> (Mac Lane, Riehl) や <math display="inline">\tau\circ\sigma</math> (Leinster, Awodey) と表記する。

定義から、自然変換の垂直合成は明らかに射の性質を継承して、結合律や[[単位元]]律を満たすことになるため、同じ型 {{math|''C'' → ''D''}} を持つ関手とその間の自然変換は圏を構成する。これを[[関手圏]]と言い、{{math|''D''<sup>''C''</sup>}} あるいは {{math|[''C'', ''D'']}} のように表す。

=== 水平合成 ===
圏 {{math|''C'', ''D'', ''E''}} に対して、関手 {{math|''F'', ''F{{'}}'' : ''C'' → ''D''}}, {{math|''G'', ''G{{'}}'' : ''D'' → ''E''}} とその間の自然変換  {{math|σ : ''F'' ⇒ ''F{{'}}''}}, {{math|τ : ''G'' ⇒ ''G{{'}}''}} について考える。このとき、{{math|''x'' ∈ ''C''}} に対して {{Mvar|E}} の射 <math display="inline">\tau_{F'x}\circ G\sigma_x=G'\sigma_x\circ\tau_{Fx}\colon GFx\to G'F'x</math> が取れて、これは {{math|''GF''}} から {{math|''G{{'}}F{{'}}''}} への自然変換をなす。これを {{math|σ}} と {{math|τ}} の水平合成と呼んで、<math display="inline">\tau\circ\sigma</math> (Mac Lane) や <math display="inline">\tau*\sigma</math> (Leinster, Riehl) で表す。

自然変換の水平合成に関して、関手に対する恒等変換をその関手の記号で省略することがある。すなわち、上記の例において、自然変換 {{math|''G''σ : ''GF'' ⇒ ''GF{{'}}''}} や {{math|τ''F'' : ''GF'' ⇒ ''G{{'}}F''}} を {{math|1=(''G''σ)<sub>''x''</sub> = ''G''σ<sub>''x''</sub>}} や {{math|1=(τ''F'')<sub>''x''</sub> = τ<sub>''Fx''</sub>}} で定義できる。従って、自然変換の水平合成に関して、等式 <math display="inline">\tau*\sigma=(\tau F')\cdot(G\sigma)=(G'\sigma)\cdot(\tau F) </math> が成り立つ。

=== 相互交換法則 ===
自然変換の垂直合成 <math display="inline">\tau\cdot\sigma</math> と水平合成 <math display="inline">\tau*\sigma</math> に対して、相互交換法則 (interchange law) と呼ばれる次の等式が成り立つ<ref group="注">{{Harvtxt|Mac Lane|1998|p=43|loc=Ⅱ.5}}、訳書版では p.54。{{Harvtxt|Leinster|2014|p=38}}、{{Harvtxt|Riehl|2016|p=46|loc=Lemma 1.7.7}} にも記載あり。</ref>。<math display="block">(\tau'\cdot\sigma')*(\tau\cdot\sigma)=(\tau'*\tau)\cdot(\sigma'*\sigma)</math>圏、関手と自然変換は、圏よりも高次の2次元的な構造を与える。このような構造を (ストリクト) {{日本語版にない記事リンク|2-圏|en|Strict 2-category|label=2-圏}}と呼び、小さな圏の圏 {{math|'''Cat'''}} (に自然変換を構造として付加したもの) は2-圏の代表的な例である<ref group="注">例えば {{Harvtxt|Johnson|Yau|2021}} などでは {{math|'''Cat'''}} を2-圏として例示している (Example 2.3.14)。</ref>。

== 米田の補題 ==
{{Main|米田の補題}}
[[集合の圏|小さい集合の圏]] {{Mbf|Set}} への[[Hom関手]] {{math|'''C'''(_, _) : '''C'''<sup>op</sup> × '''C''' → '''Set'''}} を持つ圏 (すなわち、[[局所的に小さい圏]]) {{Mbf|C}} に対して、{{Mbf|C}} の対象 {{math|''A'' ∊ '''C'''}} を用いて {{math|'''C'''(''A'', _) : '''C''' → '''Set'''}} や {{math|'''C'''(_, ''A'') : '''C'''<sup>op</sup> → '''Set'''}} で表される関手、またはこれらと自然同型な関手を[[表現可能関手]]と呼ぶ。表現可能関手 {{math|''F'' : '''C''' → '''Set'''}} は定義から自然同型 {{math|''τ'' : '''C'''(''A'', _) &cong; ''F''}} を (ある {{math|''A'' ∊ '''C'''}} に対して) 持つ。これはすなわち、全ての {{Mvar|F}} の値 {{math|''FX''}} は、{{math|''A'' ∊ '''C'''}} からのある射と1対1対応するということである。このことは、米田の補題と呼ばれる次の主張に一般化される。

{{Math theorem|name=米田の補題|math_statement=局所的に小さい圏 {{Mbf|C}} からの集合値関手 {{math|''F'' : '''C''' → '''Set'''}} と対象 {{math|''A'' ∊ '''C'''}} に対して、{{math|'''C'''(''A'', _)}} から {{Mvar|F}} への自然変換の集合 {{math|Nat('''C'''(''A'', _), ''F'')}} と集合 {{math|''FA''}} の間に全単射が存在して、この写像は自然変換 {{math|''α'' : '''C'''(''A'', _) ⇒ ''F''}} を恒等射の像 {{math|''α''<sub>''A''</sub>(1<sub>''A''</sub>)}} に写す。}}

米田の補題は圏論において最も重要な結果であるとも評され<ref>{{Harvnb|Riehl|2016|p=50}}</ref>、様々な帰結をもたらすとても基礎的な補題である。

== 応用例 ==

=== 随伴 ===
{{Main|随伴関手}}
関手 {{math|''F'': '''C''' → '''D'''}} と {{math|''G'': '''D''' → '''C'''}} に対して、{{Mvar|F}} と {{Mvar|G}} が随伴 {{math|''F'' &dashv; ''G''}} であることは、自然な同型写像 {{math|&phi;<sub>''x'', ''y''</sub>: '''D'''(''Fx'', ''y'') &cong; '''C'''(''x'', ''Gy'')}} によって定まる (このとき {{math|&phi;<sub>''x'', ''y''</sub>}} は2つの関手 {{math|'''D'''(''F''_, _), '''C'''(_, ''G''_): '''C'''<sup>op</sup> × '''D''' → '''Set'''}} の間の自然同型を定めるコンポーネントとなる)。また、{{Mvar|F}} と {{Mvar|G}} が随伴 {{math|''F'' &dashv; ''G''}} であるとき、随伴の単位および余単位と呼ばれる自然変換 {{math|η: Id<sub>'''C'''</sub> ⇒ ''GF''}} と {{math|ε: ''FG'' ⇒ Id<sub>'''D'''</sub>}} が存在して、{{math|η}} は {{Mvar|G}} への普遍射、{{math|ε}} は {{Mvar|F}} からの普遍射となる。単位および余単位が同型であるとき、{{Mbf|C}} と {{Mbf|D}} は[[圏同値]]であるため、この意味で随伴を持つ関係は圏同値の一般化と言える。

重要な随伴関手の例として[[自由関手と忘却関手]]、[[テンソル積]] {{math|_ &otimes; ''X''}} と [[hom関手]] {{math|hom(''X'', _)}} が挙げられる。

=== カン拡張 ===
{{Main|Kan拡張}}
関手 {{math|''W'': '''B''' → '''C'''}} が与えられたとき、関手の前に {{Mvar|W}} を合成する操作 {{math|''F'' &mapsto; ''F'' ◦ ''W''}} もまた関手 {{math|'''D'''<sup>''W''</sup>: '''D'''<sup>'''C'''</sup> → '''D'''<sup>'''B'''</sup>}} となる。関手 {{math|''W'': '''B''' → '''C'''}} と {{math|''T'': '''B''' → '''D'''}} に対して、{{math|'''D'''<sup>''W''</sup>}} から {{Mvar|T}} へ (あるいは {{Mvar|T}} から {{math|'''D'''<sup>''W''</sup>}} へ) の普遍射を構成する関手 {{math|''K'': '''C''' → '''D'''}} と自然変換 {{math|η: ''T'' ⇒ ''KW''}} ({{math|ε: ''KW'' ⇒ ''T''}}) の組が存在するとき、これを {{Mvar|T}} の {{Mvar|W}} に沿った左 (右) カン拡張という。

圏論における極限、随伴、米田の補題を初めとした諸概念はカン拡張によって表すことができ、マックレーンは「すべての概念はカン拡張である」と述べている<ref>{{Harvtxt|Mac Lane|2012}}, p.ⅶ (初版への序)、およびⅩ.7節タイトル。</ref>。

=== 層理論 ===
{{Main|層 (数学)}}
位相空間 <math display="inline">(X,\mathcal{O}_X)</math> に対して、{{Mvar|X}} 上の[[前層]]とは、{{Mvar|X}} の開集合 <math display="inline">U\in\mathcal{O}_X</math> に対してそれぞれ集合 <math display="inline">A(U)\in\mathbf{Set}</math> を割り当てる写像であって、開集合の[[包含写像|包含]] <math display="inline">V\subset U</math> に対して制限 (と呼ばれる写像) <math display="inline">r_{U,V}:A(U)\to A(V)</math> が存在して、よい条件を満たすものである。さらに任意の開集合、その[[集合の被覆|開被覆]] <math display="inline">\mathcal{O}_X\ni U=\bigcup_{i\in I}U_i</math> 、および共通部分を互いに共有する <math display="inline">\{f_i\in A(U_i)\}_{i\in I}</math> (すなわち、<math display="inline">r_{U_i,U_i\cap U_j}(f_i)=r_{U_j,U_i\cap u_j}(f_j)</math> を満たす) に対して、<math display="inline">f_i=r_{U,U_i}(f)</math> を満たす <math display="inline">f\in A(U)</math> の存在が成り立つとき、そのような前層を[[層 (数学)|層]]という。

開集合族は包含関係について[[順序集合|半順序]]をなすため、圏論的に捉えると前層とは {{Mbf|Set}} への反変関手 <math display="inline">A:\mathcal{O}_X^{\mathrm{op}}\to\mathbf{Set}</math> と思うことができる。このとき、前層 (層) の間の射を関手の間の自然変換として定義できる。従って、関手圏がそのまま前層の圏 <math display="inline">\mathrm{Psh}(X)=\mathbf{Set}^{\mathcal{O}_X^{\mathrm{op}}}</math> となり、層の圏はその[[充満部分圏]]を構成する。

数学において「局所から大域へ」という状況が数多く存在するために、層理論は代数幾何を始めとした数多くの分野と影響を及ぼしあっている<ref>{{Harvnb|Centazzo|Vitale|2003}}</ref>。

=== 普遍代数 ===
有限[[順序数]]の集合 {{math|1=ω = {0, 1, 2, ...}}} を対象の集合とする、{{Mbf|Set}} の充満部分圏を {{Mvar|N}} で表す。また、{{Mbf|Set}} の[[余積]] (すなわち集合の[[非交和]]) を {{Mvar|N}} の余積として導入する。

余積を持つ圏 <math display="inline">\mathbb{A}</math> は、対象について同型であってさらに余積を保つ関手 <math display="inline">A:N\to\mathbb{A}</math> を備えているとき、代数理論であるという<ref>{{Harvnb|Lawvere|1963|p=63}}</ref>。型 <math display="inline">\mathbb{A}</math> の代数とは、積を保つ集合値反変関手 <math display="inline">\mathbb{A}^{\mathrm{op}}\to\mathbf{Set}</math> である<ref group="注">ここでは、記法は全て{{Harvtxt|Lawvere|1963}} のものに準拠している。例えば {{Harvtxt|Adámek|Rosický|Vitale|2010}}では代数理論の射の向きは反転しており、型 <math display="inline">\mathcal{T}</math> の代数は共変関手 <math display="inline">\mathcal{T}\to\mathbf{Set}</math> として定義されている。</ref>。層の時と同様に <math display="inline">\mathbb{A}</math>-代数の準同型は自然変換として定義できて、代数の圏は関手圏 <math display="inline">\mathbf{Set}^{\mathbb{A}^{\mathrm{op}}}</math> の充満部分圏として定義される。

== 超自然変換 ==
圏 {{Mbf|A}}, {{Mbf|B}}, {{Mbf|C}}, {{Mbf|D}} と関手 {{math|''F'' : '''A''' × '''B'''<sup>op</sup> × '''B''' → '''D'''}}, {{math|''G'' : '''A''' × '''C'''<sup>op</sup> × '''C''' → '''D'''}} に対して、{{Mvar|F}} から {{Mvar|G}} への'''超自然変換''' (特別自然変換、英：{{Enlinkm|extranatural transformation}}) {{math|''α'' : ''F'' ⇒ ''G''}} とは、{{math|''a'' ∊ '''A'''}}, {{math|''b'' ∊ '''B'''}}, {{math|''c'' ∊ '''C'''}} でパラメータ付けられた射の族 {{math|''α''<sub>''a'', ''b'', ''c''</sub>: ''F''(''a'', ''b'', ''b'') → ''G''(''a'', ''c'', ''c'')}} で、任意の射 {{math|''f'': ''a'' → ''a{{'}}''}}, {{math|''g'': ''b'' → ''b{{'}}''}}, {{math|''h'': ''c'' → ''c{{'}}''}} に対して以下の図式が可換になるものをいう。

{{Flexbox start|direction=row|justify-content=center}}
[[ファイル:Extranatural-1.png|フレームなし]]
[[ファイル:Extranatural-2.png|フレームなし]]
[[ファイル:Extranatural-3.png|フレームなし]]
{{Flexbox end}}それぞれの可換図式は、{{math|''a'' ∊ '''A'''}} に対する自然性、{{math|''α''<sub>''a'', _, ''c''</sub>: ''F''(''a'', _, _) → ''G''(''a'', ''c'', ''c'')}} と {{math|''α''<sub>''a'', ''b'', _</sub>: ''F''(''a'', ''b'', ''b'') → ''G''(''a'', _, _)}} の、それぞれ {{math|''b'' ∊ '''B'''}} および {{math|''c'' ∊ '''C'''}} に対する特別自然性 ({{Harvtxt|Mac Lane|1998}} ではこのことを特別自然変換と呼ぶ) を表している<ref>{{Harvnb|Riehl|2016|p=28}}</ref>。

超自然変換のうち、特にどちらかが定数関手である場合、特殊な(余)極限として{{日本語版にない記事リンク|エンド (圏論)|en|End (category theory)|label=エンド|interwikilabel=end}}および{{日本語版にない記事リンク|コエンド|en|coend}}が定まる。エンドやコエンドは[[hom関手]]と関連性があり、例えば[[豊穣圏]]論では豊穣圏の「[[関手圏]]」を定義するためにエンドを用いている<ref>{{Harvnb|Kelly|1982|loc=Chapter 2}}</ref>。

== 脚注 ==

=== 注釈 ===
<references group="注" />

=== 出典 ===
<references responsive="" />

== 参考文献 ==
{{refbegin|colwidth=30em}}
* {{Cite book|洋書|title=Algebraic Theories: A Categorical Introduction to General Algebra|year=2010|publisher=Cambridge University Press|ref=harv|last=Adámek|first=J.|series=Cambridge Tracts in Mathematics|isbn=9780521119221|issue=184|last2=Rosický|first2=J.|last3=Vitale|first3=E. M.|doi=10.1017/CBO9780511760754}}
*{{Cite book|title=Category Theory|year=2010|publisher=Oxford University Press|last=Awodey|first=Steve|author-link=:en:Steve Awodey|series=Oxford Logic Guides|isbn=9780199237180|洋書|ref=harv}}
* {{Cite journal|last=Eilenberg|first=Samuel|author-link=サミュエル・アイレンベルグ|last2=MacLane|first2=Saunders|year=1942|title=Group Extensions and Homology|journal=Annals of Mathematics|volume=43|issue=4|pages=757–831|publisher=Mathematics Department, Princeton University|ref={{Harvid|Eilenberg|MacLane|1942a}}|DOI=10.2307/1968966|JSTOR=1968966}}
* {{Cite journal|last=Eilenberg|first=Samuel|last2=MacLane|first2=Saunders|year=1942|title=Natural Isomorphisms in Group Theory|journal=Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America|volume=28|issue=12|pages=537–543|ref={{Harvid|Eilenberg|MacLane|1942b}}|DOI=10.1073/pnas.28.12.537|PMC=1078535}}
* {{Cite journal|last=Eilenberg|first=Samuel|last2=MacLane|first2=Saunders|year=1945|title=General Theory of Natural Equivalences|journal=Transaction of the American Mathematical Society|volume=58|issue=2|pages=231–294|publisher=American Mathematical Society|ref=harv|DOI=10.2307/1990284|JSTOR=1990284}}
* {{Cite journal|last=Heller|first=Alex|year=1990|title=An Existence Theorem for Recursion Categories|journal=The Journal of Symbolic Logic|volume=55|issue=3|pages=1252–1268|publisher=Association for Symbolic Logic|ref=harv|ISSN=0022-4812|JSTOR=2274486}}
* {{Cite journal|和書|year=2014|publisher=津田塾大学 数学・計算機科学研究所|pages=116–145|author=平井武|ref={{Harvid|平井|2013}}|url=https://www2.tsuda.ac.jp/suukeiken/math/suugakushi/sympo24/|journal=津田塾大学 数学・計算機科学研究所報|access-date=2022-11-24|title=A.H.Clifford (1908-1992) の「群の表現論」に関する業績|volume=35}}
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* {{Cite book|洋書|title=Basic Concepts of Enriched Category Theory|year=2005|publisher=Theory and Applications of Categories|ref={{Harvid|Kelly|1982}}|last=Kelly|first=Max|url=http://www.tac.mta.ca/tac/reprints/articles/10/tr10abs.html|series=Reprints in Theory and Applications of Categories|access-date=2022-11-24|issue=10|origyear=1982|postscript=(orig: Cambridge University Press, Lecture Notes in Mathematics 64)}}
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*{{Cite book|title=Basic category theory|url=|date=|location=Cambridge|isbn=978-1-107-36006-8|oclc=886649936|first=Tom|last=Leinster|year=2014|publisher=Cambridge University Press|洋書|arxiv=1612.09375|ref=harv}}
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* {{cite book | first = Saunders | last = Mac Lane | authorlink = ソーンダース・マックレーン | year = 1998 | title = Categories for the Working Mathematician | url = {{google books |MXboNPdTv7QC|plainurl=yes}}  | series = [[Graduate Texts in Mathematics]] | edition = 2nd | publisher = Springer-Verlag | isbn = 0-387-98403-8 | mr=1712872 | zbl=0906.18001 | ref = harv|洋書|volume=5|doi=10.1007/978-1-4757-4721-8}}
** {{Cite book|和書|title=圏論の基礎|year=2012|publisher=丸善出版|ref={{Harvid|Mac Lane|2012}}|author-link=ソーンダース・マックレーン|url=https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/?book_no=294317|access-date=2022-09-21|isbn=978-4-621-06324-8|translator=三好博之、高木理|origyear=1998|author=ソーンダース・マックレーン}}
* {{Cite book|洋書|title=Categorical Foundations: Special Topics in Order, Topology, Algebra, and Sheaf Theory|year=2003|publisher=Cambridge University Press|editor-last=Pedicchio|editor-first=Maria Cristina|editor2-first=Walter|editor2-last=Tholen|isbn=9780521834148|chapter=Sheaf Theory|chapter-url=https://perso.uclouvain.be/enrico.vitale/chapter7.pdf|ref={{Harvid|Centazzo|Vitale|2003}}|last=Centazzo|first=Claudia|last2=Enrico M.|first2=Vitale}}
*{{Cite book|洋書|title=Category Theory in Context|year=2016|publisher=Dover Publications|ref=harv|last=Riehl|first=Emily|url=https://emilyriehl.github.io/files/context.pdf|format=pdf|series=Aurora; Modern Math Originals|access-date=2022-09-22|isbn=9780486809038}}{{refend}}

{{圏論}}

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[[Category:圏論]]
[[Category:関手]]
[[Category:数学に関する記事]]