補群のソースを表示

{{翻訳直後|1=[https://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Complement_(group_theory)&oldid=1072646899 19:22, 18 February 2022]|date=2023年4月}}
{{複数の問題
| 未検証 = 2023年4月2日 (日) 07:28 (UTC)
}}

{{読み仮名|'''補群'''|ほぐん|{{lang-en-short|complement}}}} とは、[[数学]]（特に[[群論]]として知られる[[代数学]]の分野) において、[[部分群]]に対して定義される[[補集合]]のような概念である。

== 定義 ==
[[群_(数学)|群]] ''G'' に於ける[[部分群]] ''H'' の'''補群'''とは、
''G'' の部分群 ''K'' で以下の二条件を満たすものをいう{{要検証|date=2023-04-08|title=Dummit & Foote にあるように、こう定義する人も少数はいるだろうが、標準的には Isaacs にあるように補群は正規部分群に対して定義するように思う。}}
* <math>HK = G,</math>
* <math>H\cap K = \{ e \}.</math>
ここで ''HK'' は部分集合 { ''hk'' | ''h'' &isin; ''H'', ''k'' &isin; ''K'' } を、また ''e'' は単位元を表す。
なお、同じことであるが、
「任意の <math>g \in G</math> が、<math>h \in H,  k \in K</math> を使って <math>g = hk</math> と
一意的<ref group=訳注 name="unique">実際、<math>h_1, h_2 \in H, k_1, k_2 \in K</math> が存在して
<math> (g =) h_1 k_1 = h_2 k_2 </math> と書けたとすると、両辺に左から <math>h_2^{-1}</math> と右から <math>k_1^{-1}</math> を
掛けることにより、<math>h_2^{-1} h_1 = k_2 k_1^{-1} </math> となる。ここで、H も K も部分群であるから、演算で閉じているので
<math>h_2^{-1} h_1 \in H</math> かつ <math>k_2 k_1^{-1} \in K</math> となるが、二番目の条件 <math>H \cap K = \{e\}</math> より
<math>h_2^{-1} h_1 = k_2 k_1^{-1} = e</math> でなければならない。よって <math>h_1 = h_2, k_1 = k_2</math> が成立。</ref>
に表すことができる。」
と言い換えることができる。

この関係は対称性がある。すなわち、''K'' が ''H'' の補群ならば、''H'' は ''K'' の補群である
<ref group=訳注 name="対称性">
実際、''K'' が ''H'' の補群とする
任意の <math>g \in G</math> に対して、群の定義から <math>g^{-1} \in G</math> であるから、
補群の定義の一番目の式によって、ある
<math>h \in H, k \in K</math> が存在して、<math>g^{-1} = h k</math> と書ける。
従って <math>g = k^{-1} h^{-1}, k^{-1} \in K, h^{-1} \in H</math> であるから、<math>G \subset KH</math> となる
(<math>G \supset KH</math> は明らか)。
また、第二式については <math>K \cap H = H \cap K = \{e\}</math> より自明。
</ref>。

ここで、''H'' および ''K'' については、必ずしも ''G'' の[[正規部分群]]である必要はない。

== 性質 ==
* 補群は必ずしも存在するとは限らない。
* もし補群が存在するとしても、それがただ一つとも限らない。すなわち''G'' の相異なる部分群 ''K''<sub>1</sub> および ''K''<sub>2</sub> があって、ともに ''H'' の補群であるようなものが存在することもありうる。
* もし ''K'' が ''G'' に於ける ''H'' の補群であるとき、''K'' の要素は、''H'' の (左右の) [[剰余類]]の[[完全代表系]]を成す（下記補足説明も参照）。
* ''H'' が正規部分群の場合は、補群 ''K'' は、[[商群]] ''G''/''H'' と[[群同型|同型]]である<ref group="訳注">実際、<math>\forall k \in K</math> に対して、<math>\varphi(k) = k H</math>と対応させれば <math> \varphi(k_1) \varphi(k_2) = \varphi(k_1 k_2)</math> (つまり群準同型) であるがすぐに示せる。さらに、三番目の性質を使えば、<math>\varphi</math> が全単射であることも証明できる</ref>。補群が複数存在するならば、それらはすべて ''G''/''H'' と同型である。
* {{ill2|シューア&ndash;ツァッセンハウスの定理|en|Schur–Zassenhaus theorem}} は、[[有限群]]の正規[[ホール部分群]]の補群の存在を保証する。

=== 補足 ===

三番目の性質について数式で書くと以下のようになる。
{{Indent|<math>\bigcup_{k \in K} H k = G</math> かつ}}
{{Indent|<math>k_1 \neq k_2</math> ならば <math>H k_1 \cap H k_2 = \emptyset</math> ただし <math>(k_1, k_2 \in K)</math>}}
{{要出典範囲|この性質は以下のように簡単に証明できる。|date=2023年4月}}
最初の条件は、補群の定義の一番目の条件 ''G = H K'' より明らか。
二番目の条件は、もし <math>H k_1 \cap H k_2 \neq \emptyset</math> ならば、ある
<math>g \in G</math> に対して、<math>h_1, h_2 \in H</math> が存在して、
<math>g = h_1 k_1 = h_2 k_2</math> と二通りに表すことができる。
これは、最初の定義の所で述べた表し方の一意性 <ref group="訳注" name="unique" /> に矛盾する。

この説明は、右剰余類のケースであるが、左剰余類についても同様である。

== 例 ==
{{節スタブ|date=2023-04-03}}
* 群 ''G'' を
: <math>G=\{ 0, 1, 2, 3, 4, 5 \}</math> とし、群演算を[[合同算術|6を法とする加法]]とする。''H'' と ''K'' をそれぞれ、<math>H = \{ 0, 2, 4 \}, K = \{ 0, 3 \}</math> とすると、''H'' と ''K'' は ''G'' の部分群であり、互いに他方の補群になっている  {{efn|実際、<math>0 = 0 + 0, 1 = 4 + 3, 2 = 2 + 0, 3 = 0 + 3, 4 = 4 + 0, 5 = 2 + 3</math> であるから <math>HK = G</math> であり、明らかに <math>H\cap K = \{ 0 \}.</math>}}。
; 以下は、ある部分群に対して、補群が複数存在する例である。
* 群 ''G'' を、複素数全体に演算を加法とした <math>G := (\mathbb{C}, +)</math> とする。実数全体 <math>H := \mathbb{R}</math> は ''G'' の部分群である。ここで
: <math>K_1 := \{ b i | b \in \mathbb{R} \}</math> (i は虚数単位)、つまり純虚数全体の集合とする。まず <math>K_1</math> が ''G'' の部分群であることはすぐに確かめられる。<math>H \cap K_1 = \{ 0 \}</math> もすぐに分かるだろう。さらに、任意の複素数<math>c = a + b i \quad (a, b \in \mathbb{R})</math> に対して、<math>a \in H, b i \in K_1</math> であるから、<math>H K_1 = G</math> も示される。従って、<math>K_1</math> は ''H'' の補群である。
* 上の ''G = C'' の例において、さらに、
: <math>K_2 := \{ b + b i | b \in \mathbb{R} \}</math> とする。まず、これが ''G'' の部分群であることと、<math>H \cap K_2 = \{ 0 \}</math> は容易に確かめられる。さらに、任意の複素数 <math>c = a + b i \quad (a, b \in \mathbb{R})</math> に対して、<math>c = (a - b) + (b + b i)</math>と変形すれば、<math>a - b \in H, b + b i \in K_2</math> だから <math>H K_2 = G</math> も満たす。
: 従って、<math>K_2</math> も ''H'' の補群である。(性質の二番目でも述べたが) 補群が複数存在する例である。
; 以下では逆に補群が存在しない例を示す。
* 整数全体の加法群 <math>G = (\mathbb{Z}, +)</math> を考える。任意の部分群を <math>H</math> とし、その中から適当に元 <math>a</math> を一つ取って固定する。すると、部分群の定義から <math>a</math> の倍数 {{efn|今考えているのは環ではなく群であり、従って演算は加法しかない。倍数と言っても積 ''n a'' が (直接) 定義されているわけではないが、ここでは ''a'' を ''n'' 回足し算したものを ''n a'' と書くことにする。当然、通常の意味の掛け算と一致する}}　はすべて
: <math>n a := \overbrace{a + a + \cdots + a}^{n times} \in H</math> でなければならない。
: もし二つの部分群 ''H'' と ''K'' があれば、その中から適当に一元ずつ <math>a \in H, b \in K</math> を取り出せば <math>a b \in H, b a \in K</math> であり、明らかに <math>a b = b a</math>。従って (''H'' か ''K'' のいずれかが <math>\{ 0 \}</math> でない限り) 補群の条件に必要な <math>H \cap K = \{ 0 \}</math> を満たすことは決してない。よって、<math>(Z, +)</math> の (非自明な) 部分群には対応する補群は存在しない。

== 他の積との関係 ==
補群は、[[直積]] および [[半直積]] の一般化である。
一般の補群に対応する積を {{ill2|Zappa–Szép 積|en|Zappa–Szép product#Internal Zappa–Szép products}} と呼ぶ。
''H'' と ''K'' が非自明な場合
{{efn|一般に、''G'' 自身と {''e''} を自明な部分群という。
この時、明らかに、<math>\{e\} G = G \{e\} = G, \{e\} \cap G = \{e\} </math> であるから、
{''e''} と ''G'' は常に互いに補群の関係になる。}}
{{訳語疑問点範囲|補群は、群 ''G'' を小さな部分群に分解する。|date=2023-04-03}}
<!--
Complements generalize both the [[direct product of groups|direct product]] (where the subgroups ''H'' and ''K'' are normal in ''G''), and the [[semidirect product]] (where one of ''H'' or ''K'' is normal in ''G'').  The product corresponding to a general complement is called the [[Zappa–Szép product#Internal Zappa–Szép products|internal Zappa–Szép product]].  When ''H'' and ''K'' are [[trivial group|nontrivial]], complement subgroups factor a group into smaller pieces.
-->

== 存在性 ==
上に述べたように、補群は必ずしも存在するとは限らない。

''p''-補群（{{lang-en-short|''p''-complement}}）は、[[シロー部分群|シロー ''p''-部分群]]の補群である。
[[Ferdinand Georg Frobenius|Frobenius]] の定理や [[John G. Thompson|Thompson]] の定理によって、
群が{{ill2|正規 p-補群|en|normal p-complement}}を持つ条件が示される。 
{{ill2|Hall|en|Philip Hall}} は、有限群の中で[[可解群]] を任意の[[素数]] ''p'' に対して、''p''-補群を持つものとして特徴付けた。[[ホール部分群#シロー系|シロー系]]の構成にも ''p''-補群は利用される。

{{ill2|フロベニウス群|en|Frobenius group}}に於ける{{ill2|フロベニウス核|en|Frobenius kernel}}の補群は{{ill2|フロベニウス補群|en|Frobenius complement}}と呼ばれる。

{{ill2|Complemented group|en|complemented group}} とは、任意の部分群が補群を持つ群である。

== 関連項目 ==
* [[:en:Product of group subsets]]

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}

=== 注釈 ===
{{notelist}}

=== 訳注 ===
<references group="訳注" />

=== 出典 ===
{{reflist}}

== 参考文献 ==
*{{cite book | author=David S. Dummit & Richard M. Foote | title=Abstract Algebra | publisher=Wiley | year=2004 | isbn=978-0-471-43334-7}}
*{{cite book | author=I. Martin Isaacs |authorlink = Martin Isaacs| title=Finite Group Theory  | publisher=American Mathematical Society | year=2008 | isbn=978-0-8218-4344-4 }}

{{DEFAULTSORT:ほくん}}
[[Category:群論]]
[[Category:数学に関する記事]]

{{Abstract-algebra-stub}}