調和関数のソースを表示

{{単一の出典|date=2015年7月}}
[[file:Laplace's equation on an annulus.jpg|right|thumb|300px|[[アニュラス|環帯]]上で定義された調和関数]]

[[数学]]における'''調和関数'''（ちょうわかんすう、{{lang-en-short|harmonic function}}）は、[[ラプラス方程式]]を満足する[[滑らかな函数|二回連続的微分可能]]な[[関数 (数学)|関数]]のことをいう。

調和関数に関する重要な問題は[[ディリクレ問題]]である。ディリクレ問題の解決方法にはいくつかあるが、その中でも重要な一般的方法は[[ディリクレの原理]]である。

20世紀には、[[ウィリアム・ホッジ]]、[[ジョルジュ・ド・ラーム]]、[[小平邦彦]]らが調和積分論の発展の中心的な役割を果たした。

== 導入 ==
物理学において生じる調和函数は、その[[特異点 (数学)|特異点]]と（[[ディリクレ境界条件]]や[[ノイマン境界条件]]などの）境界条件によって決定される。さらに、境界のない領域上では任意の[[整函数]]の実部または虚部が同じ特異点を持つ調和函数を与えるから、この場合調和函数をその特異点のみで決定することはできないが、物理学的な要請として解は無限遠において消えるものと仮定すれば、やはり一意的な解を得ることができる（この一意性は[[リウヴィルの定理 (解析学)|リウヴィルの定理]]による）。

このような調和函数の特異点は、[[電気力学]]の言葉で言えば「[[電荷]]」や「[[電荷密度]]」として解釈することができて、対応する調和函数はこの電荷分布に従う[[電位]]に比例するものと理解することができる。またそのような函数は定数倍したり、回転したり、定数を加えたりしても調和函数を与える。調和函数の{{仮リンク|鏡像法|en|Method of inversion|label=反転}}もまた調和函数だが、特異点はもとの函数の（球面に関する）「鏡像」に写る。二つの調和函数の和も調和函数である。

== 定義といくつかの事実 ==
関数 {{math|''f'': '''C'''<sup>''n''</sup> (resp. '''R'''<sup>''n''</sup>) &rarr; '''C''' (resp. '''R''')}} が[[ラプラス作用素]] 
:<math>\Delta = \frac{\partial^2}{\partial x_1^2} + \frac{\partial^2}{\partial x_2^2} + \cdots + \frac{\partial^2}{\partial x_n^2}</math>
に対し、{{math|&Delta;''f'' {{=}} 0}} を満たすとき、関数 {{mvar|f}} は'''調和''' {{en|(harmonic)}} である、あるいは {{mvar|f}} は'''調和関数'''であるという。

* 与えられた領域 {{mvar|U}} 上の調和函数全体の成す集合は[[ラプラス作用素]] {{math|&Delta;}} の[[核空間|核]]であり、従って[[実数|実]][[ベクトル空間]]となる。すなわち、調和函数の和・差・スカラー倍はまた調和函数になる。
* 領域 {{mvar|U}} 上の調和函数 {{mvar|f}} に対し、{{mvar|f}} の任意の[[偏導函数]]はまた {{mvar|U}} 上の調和函数である。ラプラス作用素 {{math|Δ}} と偏微分作用素 {{math|∂}} は調和函数のクラスの上では可換になる。
* 幾つかの意味において、調和函数は[[正則函数]]の実解析における対応物と考えることができる。任意の調和函数は実[[解析関数|解析的]]である（つまり局所的に[[冪級数]]によって表される）。これは[[楕円型作用素]]（ラプラス作用素はその例としてよく知られている）に関する一般的な事実である。
* 調和函数の一様極限函数はまた調和函数である。これは中間値性質をもつ任意の連続函数が調和であることから分かる。{{math|(−∞,&nbsp;0)&nbsp;×&nbsp;'''R'''}} 上の函数列を {{math|''f''{{sub|''n''}}(''x'',''y'') {{=}} exp(''nx'')cos(''ny'')/''n''}} と定めればこれは一様に零函数に収束するが、注意すべきはこれらの偏導函数の成す列は（零函数の導函数としての）零函数には一様収束しないことである。つまり、極限が調和であるというためには連続性と中間値性質の両方を満足することが重要であることを示している。

== 性質 ==
以下では {{mvar|i}} を[[虚数単位]]として用いる。

=== 複素関数と2次元調和関数 ===
複素数 {{math|''z'' {{=}} ''x'' + ''iy'' (''x'', ''y'' &isin; '''R''')}} を[[変数 (数学)|変数]]とする複素 1 変数複素関数 {{math|''f''&thinsp;(''z'')}} について、これを実 2 変数の関数として書き直すことができる。実 2 変数複素関数 {{math|''w''(''x'', ''y'') {{=}} ''f''(''z'')}} を、実部と虚部に分解すると
{{math|''w''(''x'', ''y'') {{=}} ''u''(''x'', ''y'')  + ''iv''(''x'', ''y'')  (''u'', ''v'' &isin; '''R'''),}}
実部と虚部に対応する実 2 変数の実関数として {{math|''u''(''x'', ''y'')}} と {{math|''v''(''x'', ''y'')}} が得られる。このとき、{{mvar|w}} が[[正則関数|複素微分可能]]であれば {{math|''u''(''x'', ''y''), ''v''(''x'', ''y'')}} は実 2 変数の調和関数となる。
[[コーシー・リーマンの関係式]]より、2 つの関数 {{math|''u''(''x'', ''y''), ''v''(''x'', ''y'')}} は

:<math>\begin{cases}
\dfrac{\partial u}{\partial x}(x,y) = \dfrac{\partial v}{\partial y}(x,y)\\
\dfrac{\partial u}{\partial y}(x,y) = -\dfrac{\partial v}{\partial x}(x,y)
\end{cases}</math>

を満たすが、これをベクトル解析の言葉で書き直せば {{math|grad ''u''(''x'', ''y'') {{=}} (&part;<sub>''y''</sub>, &minus;&part;<sub>''x''</sub>)<sup>T</sup>''v''(''x'', ''y'')}} となり、この[[発散 (ベクトル解析)|湧き出し]] {{math|div&thinsp;grad ''u''(''x'', ''y'') {{=}} &Delta; ''u''(''x'', ''y'')}} はゼロなので、関数 {{math|''u''(''x'', ''y'')}} は 2 次元のラプラス方程式を満たす調和関数であることが分かる。同様の方法でまた {{math|''v''(''x'', ''y'')}} も調和関数であることが導かれる。すなわち、正則な複素関数の実部と虚部は実調和関数となる。

逆に、2 つの実調和関数が[[コーシー・リーマンの関係式]]を満たすとき、それらは共役であるといい、共役な実調和関数の対{{math|''u''(''x'', ''y'')}}, {{math|''v''(''x'', ''y'')}} が与えられると、{{math|''z'' {{=}} ''x'' + ''iy''}} を変数とする正則関数{{math|''f''(''z'') {{=}} ''u''(''x'', ''y'')  + ''iv''(''x'', ''y'') }} が得られる。[[単連結]][[複素領域|領域]]上の実調和関数は共役調和関数を持つ（すなわち正則関数の実部あるいは虚部である）。

=== 平均値の性質 ===
{{math|&phi;(''x'')}} を {{math|'''R'''<sup>''n''</sup>}} 内の[[領域 (解析学)|領域]] {{mvar|U}} で定義された調和関数とする。このとき、ある点 {{mvar|''x'' &isin; U}} における値 {{math|''&phi;''(''x'')}} は、点 {{mvar|''x''}} を中心として {{mvar|U}} に含まれる任意の半径 {{mvar|r}} を持つ[[超球面| {{math|(''n'' &minus; 1)}}-次元球面]] {{math|&part;B(''x'',''r'')}} 上での {{mvar|&phi;}} の[[平均値]]に等しい{{sfn|Evans|2010|loc=Theorem 2 (Mean-value formulas for Laplace's equation)}}。すなわち、
:<math>
\phi(x)=\frac{1}{\omega(n)r^{n-1}}\int_{\partial B(x,r)}\!\! \phi(y)dS(y)
</math>
が成り立つ。但し、{{math|&omega;(''n'')}}は
:<math>
\omega(n)=\frac{n \pi^{n/2}}{\Gamma(\frac{n}{2}+1)}
</math>
で与えられる ''n'' &minus; 1 次元単位球面の面積である。これは調和関数の'''平均値の性質''' {{en|(mean value property)}}、あるいは'''ガウスの平均値定理''' {{en|(Gauss' mean value theorem)}}、または単に調和関数に関する'''平均値定理''' {{en|(mean value theorem for harmonic functions)}} と呼ばれる。この結果から調和関数 {{math|&phi;(''x'')}}は点 {{mvar|''x''}} を中心として {{mvar|U}} に含まれる任意の半径 {{mvar|r}} を持つ[[球体| {{mvar|n}}-次元球体]] {{math|B(''x'',''r'')}} での平均にも一致する。すなわち、
:<math>
\phi(x)=\frac{1}{\alpha(n)r^{n}}\int_{B(x,r)}\!\! \phi(y)dy
</math>
が成り立つ。但し、{{math|&alpha;(''n'')}}は
:<math>
\alpha(n)=\frac{\pi^{n/2}}{\Gamma(\frac{n}{2}+1)}
</math>
で与えられる {{mvar|n}}-次元単位球の体積である。

逆に{{math|&phi; &isin; C<sup>2</sup>(''U'')}}は、{{math|&phi;(''x'')}}が{{mvar|''U''}}内の任意の球面{{math|&part; B(''x'',''r'')}}上の平均と一致するならば、{{math|&phi;}}は調和関数となる{{sfn|Evans|2010|loc=Theorem 3 (Converse to mean-value property)}}。

=== ディリクレ問題とランダムウォーカー ===
平均値の性質から、点 {{mvar|''x''}} における調和関数の値 {{math|''&phi;''(''x'')}} は、点 {{mvar|''x''}} から出発したランダムウォーカーが領域 {{mvar|U}} の境界 {{mvar|&part;U}} に到達したとき、到達した点での調和関数の境界{{math|''&phi;''(''y'' &isin; ''&part;U'')}} の[[期待値]]に対応していることが分かる。逆に、任意の[[ディリクレ境界条件]]に対して、任意の点 {{mvar|''x''}} の調和関数の値 {{math|''&phi;''(''x'')}} を見積もるには、{{mvar|''x''}} を出発して到達した点での境界値の[[算術平均]]をとればよい。

=== 最大値原理 ===
{{main|最大値原理}}
調和関数の平均値の性質は、最大値（最小値）に強い制約を課すため、調和関数は領域の境界で最大値（最小値）をとる{{sfn|Evans|2010|loc=Theorem 4 (Strong maximum principle)}}。正確には、{{mvar|U}} を {{math|'''R'''<sup>''n''</sup>}} の有界な開集合とし、φ が ''U'' 上の調和関数で、φ を境界に連続に拡張できるならば、
:<math>\max_{\overline{U}}\phi=\max_{\partial U}\phi</math>
が成り立つ。この性質を'''調和関数の最大値原理'''と呼ぶ。{{mvar|U}} が[[連結空間|連結]]開集合である場合に、<math>\max_{U}\phi </math>
が存在すれば、{{math|&phi;}}は定数関数となる。この性質を'''調和関数の強最大値原理'''と呼ぶ。

最大値原理の直接的な応用としては、[[ポアソン方程式]]の境界値問題における解の一意性の証明がある。{{math|'''R'''<sup>''n''</sup>}} の有界な開集合{{mvar|U}} とその境界 {{mvar|&part;U}} において、{{math|''f'' &isin; ''C''(''U'')}}と{{math|''g'' &isin; ''C''(''&part;U'')}}を与え、ポアソン方程式の境界値問題を考える。この境界値問題の二つの解に対し、差を取ったものは調和関数であり、最大値原理より、その最大値、最小値はゼロとなる。すなわち、二つの解は一致する。

=== 正則性 ===
調和関数は[[微分可能関数|2階連続微分可能性]]のみを仮定しているに関わらず、[[滑らかな関数|無限回微分可能]]である{{sfn|Evans|2010|loc=Theorem 6 (Smoothness)}}。これは調和関数に球対称な[[軟化子]]を作用させたものが、平均値の性質から調和関数自身に一致することから示される。この性質は、より一般的な条件の下で[[ワイルの補題 (ラプラス方程式)|ワイルの補題]]として知られる。さらに、調和関数は[[解析関数|解析的]]である{{sfn|Evans|2010|loc=Theorem 10 (Analyticity)}}。

=== リウヴィルの定理 ===
全{{math|'''R'''<sup>''n''</sup>}} 上で定義された有界な調和関数は定数関数となる{{sfn|Evans|2010|loc=Theorem 8 (Liouville's Theorem)}}。この定理は、全複素平面で正則な複素関数（[[整関数]]）が有界ならば定数関数であるという、[[関数論]]における[[リウヴィルの定理 (解析学)|リウヴィルの定理]]の類似を与えている。

=== ハルナックの不等式 ===
{{main|ハルナックの不等式}}

== 一般化 ==

=== 弱調和函数 ===
{{main|{{仮リンク|弱調和函数|en|weakly harmonic}}}}
函数（あるいはより一般に[[シュヴァルツ超函数]]）がラプラス方程式 {{math|&Delta;''f'' {{=}} 0}} の[[弱微分|弱解]]（シュヴァルツ超函数の意味での解）となるとき{{仮リンク|弱調和函数|en|weakly harmonic|label='''弱調和'''}}であるという。

弱調和函数は殆ど至る所真の調和函数に一致し、特に滑らかである。弱調和超函数とは、真の調和函数に同伴するシュヴァルツ超函数のことであり、従ってこれもまた滑らかである。これ[[ワイルの補題 (ラプラス方程式)|ラプラス方程式に関するワイルの補題]]という。

このほかにもラプラス方程式の[[弱形式|弱バージョン]]で有用なものがたくさんある。そういったものの一つは[[ディリクレの原理]]で、これは[[ソボレフ空間]] {{math|''H''<sup>1</sup>(Ω)}} に属する調和函数を[[ディリクレエネルギー|ディリクレエネルギー積分]]
:<math>J(u):=\int_\Omega |\nabla u|^2\, dx</math>
を局所変分に関して最小化するものとして表現する。すなわち、調和函数 {{math|''u'' &isin; ''H''{{sup|1}}(&Omega;)}} は、任意の {{math|''v'' &isin; ''C''{{su|p=&infin;|b= ''c''}}(&Omega;)}} に対して（あるいは同じことだが {{math|''v'' &isin; ''H''{{su|b=0|p=1}}(&Omega;)}} に対して {{math|''J''(''u'') ≤ ''J''(''u'' + ''v'')}} を満たす。

=== 多様体上の調和函数 ===
任意の[[リーマン多様体]]上の調和函数は、{{仮リンク|ラプラス・ベルトラミ作用素|en|Laplace–Beltrami operator}} {{math|&Delta;}} を用いて定義することができる。すなわち、この文脈における函数が'''調和'''であるとはラプラス・ベルトラミ作用素に関する方程式 {{math|&Delta;''f'' {{=}} 0}} を満足することを言う。

既に述べたユークリッド空間内の領域上定義された調和函数が持つ多くの性質は、このより一般の状況に於いても満足され、例えば （[[測地線|測地的]]球体上の）平均値の定理、最大値原理、ハルナックの不等式などが成立する。平均値の定理を除けば、これらは二階の線型[[楕円型偏微分方程式]]一般に対する対応する結果の簡単な帰結である。

=== 劣調和函数 ===
{{main|劣調和函数}}
ラプラス方程式の代わりに、{{math|Δ''f'' ≥ 0}} を満足する {{math|''C''<sup>2</sup>}}-級函数は劣調和であると言う。この条件のもとでも最大値原理は保証されるが、調和函数が持つ他の性質は満たされるとは限らない。より一般に、劣調和函数となるための必要十分条件は、定義域内の任意の球体の内部においてその函数のグラフがその球体の境界値を補間する調和函数のグラフの下にあることである。

=== 調和形式 ===
{{main|ホッジ理論}}
調和函数に関する研究を一般化するものの一つとして、[[リーマン多様体]]上の[[ホッジ理論|調和形式]]及びそれに関連した[[コホモロジー論]]がある（同様にベクトル値調和函数や二つのリーマン多様体間の調和写像なども定義できる）。例えば、リーマン多様体内の曲線（つまり、[[実数直線]] {{math|'''R'''}} 内の区間からリーマン多様体への写像）が調和となるための必要十分条件はそれが[[測地線|測地的]]であることである。

滑らかな計量を持つ向き付け可能なコンパクト多様体 {{mvar|M}} 上の[[微分作用素]]の成す[[ド・ラームコホモロジー|ド・ラム複体]]  

:<math> 0\to \Omega^0(M) \stackrel{d_0}{{}\to{}} \Omega^1(M) \stackrel{d_1}{{}\to{}} \dotsb \stackrel{d_{n-1}}{{}\longrightarrow{}} \Omega^n(M) \stackrel{d_n}{{}\to{}} 0</math>

（ここで {{math|Ω<sup>''k''</sup>}} は次数 {{mvar|k}} の滑らかな[[微分形式]]の[[層 (数学)|層]]、{{math|''d<sub>k</sub>''}} は {{math|Ω<sup>''k''</sup>(''M'')}} 上の[[外微分]]である）に対して、ベクトル空間の系列
: <math>H^k(M)=\ker d_k / \operatorname{im} d_{k-1}</math>
はド・ラムコホモロジーと呼ばれる。{{mvar|M}} の計量が誘導する内積に関して、外微分 {{mvar|d}} に対する形式的な随伴作用素として{{仮リンク|余微分|en|codifferential}} {{mvar|δ}} を定義することができる。

このとき、微分形式上のラプラス作用素が {{math|Δ {{=}} ''d''δ + δ''d''}} で定義され、調和形式の空間
:<math>\mathcal H_\Delta^k(M)=\{\alpha\in\Omega^k(M)\mid\Delta\alpha=0\}</math>
が定義される。<math>d\mathcal H_\Delta^k(M)=0</math> であるから自然な写像
: <math>\varphi\colon \mathcal H_\Delta^k(M)\to H^k(M)</math>
が存在するが、ホッジの定理の第一部はこの {{mvar|&phi;}} がベクトル空間の同型となることを述べる。すなわち、{{mvar|M}} 上の各ド・ラムコホモロジー類に対し、その代表元として調和形式が一意的に取れる。

同様のことは、コンパクト多様体上の楕円型複体に対して述べられる。すなわち、楕円型複体のコホモロジーは調和切断の空間と自然に同型であり、各コホモロジー類は調和な代表元を一意に持つ。

=== 多様体間の調和写像 ===
{{main|{{仮リンク|調和写像|en|Harmonic map}}}}
ふたつのリーマン多様体 {{math|''M'', ''N''}} に対し、[[調和写像]] {{math|''u'': ''M'' &rarr; ''N''}} は、一般化ディリクレエネルギー汎函数
: <math>D[u] = \frac{1}{2}\int_M \|du\|^2\,dV</math>
の臨界点として定義される。ここで {{math|''du'': ''TM'' &rarr; ''TN''}} は {{mvar|u}} の微分であり、ノルムは {{mvar|M}} および {{mvar|N}} の距離から誘導されるテンソル積束 {{math|''T''*''M'' ⊗ ''u''<sup>&minus;1</sup> ''TN''}} 上のノルムである。

上述のように、これに特別の場合として調和函数が含まれることは[[ディリクレの原理]]に他ならない。

多様体間の調和写像の特別の場合として重要なものに[[極小曲面]]がある。これは曲面の三次元ユークリッド空間への調和はめ込み (harmonic immersion) に一致する（より一般に、極小部分多様体は多様体から別の多様体への調和はめ込みになる）。{{仮リンク|調和座標系|en|Harmonic coordinates}} とは、多様体から同じ次元のユークリッド空間の開部分集合への調和[[微分同相]]写像のことである。

== 脚注 ==
{{reflist}} 

== 参考文献 ==
* {{cite book
|last1      = Evans
|first1     = Lawrence C.
|year       = 2010
|title      = Partial Differential Equations
|edition    = 2nd
|series     = Graduate Students in Mathematics
|volume     = 19
|url        = {{google books|Xnu0o_EJrCQC|Partial Differential Equations|page=20|plainurl=yes}}
|publisher  = American Mathematical Society
|isbn       = 978-0-8218-4974-3
|ref        = harv
}}

== 関連項目 ==
*[[ラプラス方程式]]
*[[ホッジ分解]]
*[[重調和関数]]
*[[劣調和函数|劣調和関数と優調和関数]]
*[[多重劣調和函数|多重劣調和関数]]

== 外部リンク ==
*{{Kotobank|調和関数}}
*{{SpringerEOM|title=Harmonic function|urlname=Harmonic_function}}
*{{MathWorld | urlname=HarmonicFunction  | title= Harmonic Function }}
*[http://www.axler.net/HFT.html Harmonic Function Theory by S.Axler, Paul Bourdon, and Wade Ramey]
{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:ちようわかんすう}}
[[Category:関数]]
[[Category:調和関数|*]]
[[Category:微分方程式]]
[[Category:複素解析]]
[[Category:数学に関する記事]]