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運動学的回折理論
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{{複数の問題 |出典の明記=2016年11月 |参照方法=2017年6月6日 (火) 07:13 (UTC) }} '''運動学的回折理論'''(うんどうがくてきかいせつりろん、{{Lang-en-short|kinematical diffraction theory}})とは、[[回折]]現象を扱うときに一回[[散乱]](回折)のみを考慮([[ボルン近似]])し、回折による入射光の減少を考慮しない理論のこと。 一方で、[[多重散乱理論|多重散乱]]を考慮した理論のことを[[動力学的回折理論]]という。 散乱確率の低い[[X線回折]]や[[中性子回折]]では運動学的な理論で概ね説明ができる。散乱確率の高い[[電子線回折]]では、動力学的な理論による取り扱いが必要となる。 == 電子の運動学的回折理論 == === 原子による散乱 === {{main|散乱理論}} 1つの[[原子]]による[[電子]]の弾性散乱では、相互作用ポテンシャルを {{math|''V''('''r''')}} とすると、散乱波の[[波動関数]]は次のように表される。 :<math>\psi(\mathbf{r})=e^{ikz}+f(\theta,\phi)\frac{e^{i\mathbf{k}\cdot\mathbf{r}}}{|\mathbf{r}|}</math> ここで {{math|''f''(''θ'', ''φ'')}} は原子による[[散乱振幅]]で、'''[[原子散乱因子]]'''と呼ばれる。たとえば原子による電子散乱では、原子散乱因子は原子ポテンシャルのフーリエ変換である。 :<math>f(\theta,\phi)=-\frac{m}{2\pi\hbar^2}\int V(\mathbf{r}')e^{i\mathbf{K}\cdot\mathbf{r}'}d\mathbf{r}'</math> ここで {{mathbf|K}} は入射波と散乱波との差を表すベクトルであり、散乱ベクトルと呼ばれる。散乱強度([[散乱断面積]])は原子散乱因子を用いて次のように表される。 :<math>I(\theta,\phi)=|f(\theta,\phi)|^2</math> === 結晶構造因子 === [[結晶]]による電子散乱では、{{math|''V''('''r''')}} を結晶による相互作用ポテンシャルに置き換えればよい。結晶における {{math|''V''('''r''')}} は次のような並進対称性を持つ。 :<math>V(\mathbf{r})=V(\mathbf{r}+n_1\mathbf{a}_1+n_2\mathbf{a}_2+n_3\mathbf{a}_3)</math> ここで次式で定義される'''結晶構造因子'''を導入する。 :<math>F=-\frac{m}{2\pi\hbar^2}\int_\mathrm{unit\ cell} V(\mathbf{r})e^{i\mathbf{K}\cdot\mathbf{r}}d\mathbf{r}</math> すると結晶による散乱強度(回折強度)は結晶構造因子の絶対値の2乗に比例することがわかる。 :<math>I_\mathrm{crystal}(\theta,\phi)=|F|^2\prod_{i=1}^3\frac{\sin^2(N_i\mathbf{K}\cdot\mathbf{a}_i/2)}{\sin^2(\mathbf{K}\cdot\mathbf{a}_i/2)}</math> つまり結晶全体の構造因子は、単位格子内の基本構造の干渉を表す[[結晶構造因子]]と、格子による干渉を表す関数(平行6面体の場合はラウエ関数、回折条件についての情報を含む)との積で表される。 === 回折条件 === 回折強度の式に含まれる次の関数を考える。 :<math>\frac{\sin^2(N_i\mathbf{K}\cdot\mathbf{a}_i/2)}{\sin^2(\mathbf{K}\cdot\mathbf{a}_i/2)}</math> これは {{mvar|N<sub>i</sub>}} が十分に大きければ、{{math|{{Sfrac|'''K'''⋅'''a'''<sub>''i''</sub>|2}} {{=}} ''π'' × ''n''}}(ただし {{Mvar|n}} は整数)でのみ値を持ち、それ以外は0である[[デルタ関数]]となる。よって回折強度が0でない条件(回折条件)は、次の[[ラウエ条件]]で与えられる。 :<math>\mathbf{K}\cdot\mathbf{a}_i=2\pi\times n</math> このことは、結晶の[[逆格子ベクトル]] {{math|'''G'''<sub>''hkl''</sub> {{=}} ''h'''''a'''{{SubSup||1|*}} + ''k'''''a'''{{SubSup||2|*}} + ''l'''''a'''{{SubSup||3|*}}}} と散乱ベクトル {{math|'''K''' {{=}} '''k'''<sub>''i''</sub> − '''k'''}} が一致することと同等である{{Sfnp|今野|2003}}。 :<math>\mathbf{G}_{hkl}=\mathbf{K}</math> このことを逆格子空間で考えると、[[エワルド球]]上に逆格子点が存在していることに対応している。 またこの式の両辺の絶対値をとると[[ブラッグの法則]]が得られる。 == X線の運動学的回折理論 == [[電子]]による[[X線]]散乱では、原子散乱因子は電子密度の[[フーリエ変換]]となる。そこからX線での結晶構造因子を導入すると、電子回折と同様の議論ができる。 == 脚注 == {{脚注ヘルプ}} {{Reflist}} == 参考文献 == {{ページ番号|section=1|date=2017年6月6日 (火) 07:13 (UTC)}} * {{cite book|和書|author=村田好正|url=http://www.asakura.co.jp/books/isbn/978-4-254-13687-6/|title=表面物理学|series=[[朝倉物理学大系]]|date=2003-03-28|publisher=[[朝倉書店]]|id={{全国書誌番号|20393762}}|isbn=978-4-254-13687-6|ncid=BA61617154|oclc=54660768|asin=4254136870}} * {{cite book|和書|last=今野|first=豊彦|url=http://www.kyoritsu-pub.co.jp/bookdetail/9784320034266|title=物質からの回折と結像―透過電子顕微鏡法の基礎|publisher=[[共立出版]]|date=2003-12-25|id={{全国書誌番号|20543772}}|isbn=978-4-320-03426-6|ncid=BA65112477|oclc=54920860|asin=4320034260|ref=harv}} {{Physics-stub}} {{DEFAULTSORT:うんとうかくてきかいせつりろん}} [[Category:回折]]
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