電気伝導率のソースを表示

{{出典の明記|date=2012年6月}}
{{物理量
 |名称 = 
 |英語 = electrical conductivity
 |画像 =
 |記号 =''&sigma;'', ''&gamma;'', ''&kappa;''
 |次元 =[[質量|M]]{{sup-|1}} [[長さ|L]]{{sup|−3}} [[時間|T]]{{sup|3}} [[電流|I]]{{sup|2}}
 |階 =[[スカラー (物理学)|スカラー]] {{疑問点|date=2021年4月|title=「スカラー または テンソル」}}
 |SI = S/m
}}
'''電気伝導率'''（でんきでんどうりつ、{{lang-en-short|electrical conductivity}}）とは、[[物質]]中における[[電気伝導]]のしやすさを表す[[物性量]]である。'''導電率'''（どうでんりつ）や'''電気伝導度'''（でんきでんどうど）とも呼ばれる。[[理学]]系では「電気伝導率」、[[工学]]系では「導電率」と呼ばれる傾向がある。また、『[[学術用語集]]』では「電気伝導率」が多く、次いで「'''電気伝導度'''」である。
[[農学]]分野において[[肥料]]濃度の目安として用いられるが、この場合は英語の頭文字をとり、「'''EC濃度'''」もしくは単に「'''EC'''」と呼ぶことが多い。通常、ギリシア文字のσ（シグマ）で表されるが、[[電気工学]]などではκ（カッパ）、あるいはγ（ガンマ）が使用されることもある。

なお、英語の{{en|electrical conductance}} は電気伝導度と訳されることがあるが、標準的な用語は[[コンダクタンス]]である。

電気伝導率は物質ごとに値が異なる物性量である。[[金属]]の電気伝導率は非常に大きいが水晶などの[[絶縁体]]では電気伝導率は非常に小さい。例えば、金属である[[銀]]の電気伝導率は {{val|6.30|e=7|u=S/m}} であるが、[[ガラス]]では {{val|e=-15|u=S/m}} から {{val|e=-11|u=S/m}} である。

== 単位 ==
; [[国際単位系]]（SI）
: '''[[ジーメンス]]毎[[メートル]]'''（S/m）
:: 肥料濃度を表す場合は単位が大きすぎるのでミリジーメンス毎[[センチメートル]]（mS/cm）が用いられる。
:; SIによるその他の単位
:: 毎[[オーム]]毎メートル（&Omega;{{sup-|1}} m{{sup-|1}}）
:: [[アンペア]]毎[[ボルト (単位)|ボルト]]毎[[メートル]]（A V{{sup-|1}} m{{sup-|1}}）
; IACS（{{en|international annealed copper standard}}）
: 電気抵抗（又は電気伝導度）の基準として、国際的に採択された焼鈍標準軟銅（体積抵抗率: {{val|1.7241|e=-2|u=&mu;&ohm;.m}}の導電率を、100%IACSとして規定。

== 定義 ==
[[ファイル:電気伝導率 図1.jpg|サムネイル|右]]
図1のような長さ {{mvar|l}}、断面積 {{mvar|A}} の一様な導体の底面間における抵抗 {{mvar|R}} は、
:<math>R=\rho\frac{l}{A}</math>
である。このときの[[比例係数]] {{mvar|&rho;}} を[[抵抗率]]あるいは、[[比抵抗]]といい（含まれている不純物や温度によって変化する）、その逆数を'''電気伝導率'''という。式で表すと'''電気伝導率''' {{mvar|&sigma;}} は、
:<math>\sigma=\frac{1}{\rho}</math>
である。

== 場の関係としてのオームの法則 ==
[[ファイル:電気伝導率 図２.jpg|サムネイル|右|400px]]
電気伝導率を用いることで[[オームの法則]]を[[場]]（[[位置ベクトル]] {{mvar|'''r'''}} の関数）の関係式として表現することができる。図2のように {{mvar|'''r'''}} の周りに、側面が {{mvar|'''E'''}}({{mvar|'''r'''}}) に平行な[[無限小]]円柱を考える。このときの[[抵抗]]内の点 {{mvar|'''r'''}} の[[電気伝導]] {{mvar|''&sigma;''}}({{mvar|'''r'''}})、[[電場]]の強さを {{mvar|'''E'''}}({{mvar|'''r'''}})、[[電流密度]]を {{mvar|'''j'''}}({{mvar|'''r'''}}) とすると[[場]]の関係式としての[[オームの法則]]は、
:<math>\boldsymbol{j}(\boldsymbol{r})=\sigma(\boldsymbol{r})\boldsymbol{E}(\boldsymbol{r})</math> …(1)
と表すことができる。式(1)は図2の[[無限小]]円柱の底面間の[[電位差]]と断面を流れる[[電流]]によって導出することができる。[[無限小]]円柱の断面積を{{math|d''A''}}、高さを {{math|d''l''}} とすると、底面間の電位差 {{math|d''V''}} は
:<math>\mathrm{d}V=E(\boldsymbol{r})\mathrm{d}l</math> …(2)
断面 {{math|d''A''}} を流れる[[電流]] {{math|d''I''}} は
:<math>\mathrm{d}I=j(\boldsymbol{r})\mathrm{d}A</math> …(3)
である。この円柱の[[電気抵抗|抵抗]]は（[[抵抗率]]は定義より {{math|1=''&rho;'' = 1/''&sigma;''}} であるから）
:<math>R=\frac{1}{\sigma(\boldsymbol{r})}\times\frac{\mathrm{d}l}{\mathrm{d}A}</math> …(4)
である。ここで[[オームの法則]]
:<math>\mathrm{d}I=\frac{\mathrm{d}V}{R}</math> …(5)
の両辺に式(2)〜(4)を代入すると、
:<math>j(\boldsymbol{r})\mathrm{d}A=\frac{E(\boldsymbol{r})\mathrm{d}l}{\frac{\mathrm{d}l}{\sigma(\boldsymbol{r})\mathrm{d}A}}</math> …(6)
よって
:<math>j(\boldsymbol{r})=\sigma(\boldsymbol{r})E(\boldsymbol{r})</math> …(7)
と導出できる。向きを含めて表すと式(1)になる。

== 諸法則 ==
=== ウィーデマン・フランツの法則 ===
{{main|ウィーデマン・フランツの法則}}
金属の[[熱伝導率]]は、電気伝導率にほぼ比例する。さらにその比例係数は[[熱力学温度]]に比例する。
[[ウィーデマン・フランツの法則]]と呼ばれており、熱力学温度を {{mvar|T}}、熱伝導率を {{mvar|&kappa;}} とすれば
{{Indent|
<math>\frac{\kappa}{\sigma} =LT</math>
}}
と表わされる。ここで {{mvar|L}} はローレンツ数と呼ばれる定数である。

=== ドルーデ模型===
{{main|ドルーデ模型}}
導体中の[[電子]]などの[[電荷担体|キャリア]]を[[気体]]とみなして[[気体分子運動論]]を適用した[[ドルーデ模型]]においては、キャリアの[[電荷]] {{mvar|q}} と[[質量]] {{mvar|m}}、[[数密度]] {{mvar|n}}、および[[緩和時間]] {{mvar|&tau;}} により導電率が
{{Indent|
<math>\sigma =\frac{nq^2\tau}{m}</math>
}}
で表される<ref>[[#sunakawa|『理論電磁気学』]] p.79</ref>。

== 電気伝導率の周期性 ==
20 &deg;Cの値（上欄）は日軽金のホームページの抵抗率のデータの逆数をもちいた。
0 &deg;Cのデータ（下欄）はコットレルの「金属学」のデータである。

{| class="wikitable"
|[[水素|H]]|||||||||||||||||||||||||||||||||||[[ヘリウム|He]]
|-
|[[リチウム|Li]]<br />10.7<br />11.8||[[ベリリウム|Be]]<br />30.3<br />18|||||||||||||||||||||||[[ホウ素|B]]||[[炭素|C]]||[[窒素|N]]||[[酸素|O]]||[[フッ素|F]]||[[ネオン|Ne]]
|-
|[[ナトリウム|Na]]<br />21.2<br />23||[[マグネシウム|Mg]]<br />23.8<br />25|||||||||||||||||||||||[[アルミニウム|Al]]<br />37.4<br />40||[[ケイ素|Si]]<br />9.6||[[リン|P]]||[[硫黄|S]]||[[塩素|Cl]]||[[アルゴン|Ar]]
|-
|[[カリウム|K]]<br />14.7<br />15.9||[[カルシウム|Ca]]<br />27.0<br />23.5||[[スカンジウム|Sc]]<br />1.5||[[チタン|Ti]]<br />1.8<br />1.2||[[バナジウム|V]]<br />0.5||[[クロム|Cr]]<br />7.5<br />6.5||[[マンガン|Mn]]<br />0.6||[[鉄|Fe]]<br />9.9<br />11.2||[[コバルト|Co]]<br />15.7<br />16||[[ニッケル|Ni]]<br />14.5<br />16||[[銅|Cu]]<br />59.0<br />64.5||[[亜鉛|Zn]]<br />16.8<br />18.1||[[ガリウム|Ga]]||[[ゲルマニウム|Ge]]||[[ヒ素|As]]||[[セレン|Se]]<br />8.3||[[臭素|Br]]||[[クリプトン|Kr]]
|-
|[[ルビジウム|Rb]]<br />8.2||[[ストロンチウム|Sr]]<br />4.4||[[イットリウム|Y]]<br />1.8||[[ジルコニウム|Zr]]<br />2.2||[[ニオブ|Nb]]<br />6.2||[[モリブデン|Mo]]<br />17.5||[[テクネチウム|Tc]]||[[ルテニウム|Ru]]<br />13.0||[[ロジウム|Rh]]<br />21.2||[[パラジウム|Pd]]<br />9.2||[[銀|Ag]]<br />61.4<br />66.7||[[カドミウム|Cd]]<br />13.7<br />15||[[インジウム|In]]<br />11.3||[[スズ|Sn]]<br />7.9<br />10||[[アンチモン|Sb]]<br />2.4||[[テルル|Te]]||[[ヨウ素|I]]||[[キセノン|Xe]]
|-
|[[セシウム|Cs]]<br />5.0||[[バリウム|Ba]]<br />2.0<br />1.7||*||[[ハフニウム|Hf]]<br />3.1||[[タンタル|Ta]]<br />7.4||[[タングステン|W]]<br />18.5||[[レニウム|Re]]<br />5.3||[[オスミウム|Os]]<br />11.4||[[イリジウム|Ir]]<br />19.6||[[プラチナ|Pt]]<br />9.4||[[金|Au]]<br />45.5<br />49||[[水銀|Hg]]<br />1.0||[[タリウム|Tl]]<br />6.0||[[鉛|Pb]]<br />4.8<br />5.2||[[ビスマス|Bi]]<br />0.9<br />1.0||[[ポロニウム|Po]]||[[アスタチン|At]]||[[ラドン|Rn]]
|}
単位は {{val|e=6|u=S/m}} である。
0 &deg;Cでの値 ＞ 20 &deg;Cでの値 になっていないのは出典が違うことによる。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
<references />

== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書
 |author= 砂川重信
 |title= 理論電磁気学
 |edition= 第3版
 |year= 1999
 |publisher= 紀伊国屋書店
 |isbn= 4-314-00854-7
 |ref= sunakawa
}}

== 関連項目 ==
{{Wikidata property}}
* [[誘電率]]
* [[電気抵抗率]]

{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:てんきてんとうりつ}}
[[Category:物性値]]
[[Category:電気理論]]
[[Category:電磁気学]]
[[Category:電気工学]]
[[Category:電気回路]]
[[Category:無線工学]]

[[ru:Электрическая проводимость#Удельная проводимость]]
[[uk:Електропровідність#Питома електропровідність]]