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3囚人問題
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{{混同|囚人のジレンマ}} '''3囚人問題'''(さんしゅうじんもんだい、{{lang-en-short|Three Prisoners problem}})は[[確率論]]の問題で、[[マーティン・ガードナー]]によって[[1959年]]に紹介された<ref>{{cite journal|last1=Gardner|first1=Martin|date=October 1959|title=Mathematical Games: Problems involving questions of probability and ambiguity|journal=Scientific American|volume=201|issue=4|pages=174-182|doi=10.1038/scientificamerican1059-174}}</ref><ref name="Gardner1959b">{{cite journal|last1=Gardner|first1=Martin|date=1959|title=Mathematical Games: How three modern mathematicians disproved a celebrated conjecture of Leonhard Euler|journal=Scientific American|volume=201|issue=5|page=188|doi=10.1038/scientificamerican1159-181}}</ref>。「{{仮リンク|ベルトランの箱のパラドクス|en|Bertrand's box paradox}}」を下敷きにしていると考えられている。 == 概要 == ある監獄にA、B、Cという3人の囚人がいて、それぞれ独房に入れられている。罪状はいずれも似たりよったりで、近々3人まとめて[[処刑]]される予定になっている。ところが[[恩赦]]が出て3人のうち[[ランダム]]に選ばれた1人だけ助かることになったという。誰が恩赦になるかは明かされておらず、それぞれの囚人が「私は助かるのか?」と聞いても[[看守部長|看守]]は答えない。したがって囚人Aが恩赦になる確率はこの時点では'''1/3'''であると考えられる。 囚人Aは一計を案じ、看守に向かってこう頼んだ。「BとCのどちらが処刑されるかだけでも教えてくれないか?」すると看守は「Bは処刑される」と教えてくれた。 それを聞いた囚人Aはひそかに喜んだ。Bが死刑になる事は確定した以上、恩赦になるのはAかCのいずれか一方であるはずであり、したがってAが恩赦になる確率は'''1/2'''に上昇したからである。 果たして囚人Aが喜んだのは正しいか? == 解法 == 結論を述べるためにまず記号を定義し、簡単な考察をする。「Aが恩赦になる」、「Bが恩赦になる」、「Cが恩赦になる」という事象を略記してそれぞれA、B、Cと書き、「看守が「Bは死刑になる」と答える」という事象をbとする。 看守はA自身が死刑になるか否かを答えないのであるから、恩赦になるのがBの場合、看守は必ず「Cは死刑になる」と答える。同様の理由により、恩赦になるのがCの場合、看守は必ず「Bは死刑になる」と答える。すなわち、 : <math>\Pr[b\mid B]=0, ~~~\Pr[b\mid C]=1</math> …① である。 しかし恩赦を受けるのがA自身であるケースでは、看守は「Bは死刑になる」という回答と「Cは死刑になる」という回答のいずれを答えるか任意に選ぶ事ができる。すなわち、 : <math>\Pr[b\mid A]</math> がいくつになるのかは3囚人問題のセッティングのみからは決まらず、看守の性格や思考等に依存して決まる。従って'''看守の答えを聞いて囚人Aが喜んだのが正しいか否かは、この<math>\Pr[b\mid A]</math>がどのような値になるのかに依存して異なる'''<ref name=":0">{{Cite book|author=Judea Pearl|title=Probabilistic Reasoning in Intelligent Systems: Networks of Plausible Inference|series=Morgan Kaufmann Series in Representation and Reasoning|date=1988/9/1|year=|publisher=Morgan Kaufmann|ISBN=978-1558604797|page=61}}</ref>。 これをみるために「Bは死刑になる」と看守から聞いた後Aが恩赦になる[[事後確率]]<math>\Pr[A\mid b]</math>を求める。恩赦がランダムに決まるという仮定より : <math>\Pr[A]=\Pr[B]=\Pr[C]={1\over 3}</math> …② : であるので、[[ベイズの定理]]より、 : <math>\Pr[A\mid b]={\Pr[b\mid A]\Pr[A] \over \Pr[b]} ={\Pr[b\mid A]\Pr[A] \over \Pr[b\mid A]\Pr[A]+\Pr[b\mid B]\Pr[B]+\Pr[b\mid C]\Pr[C]} \underset{(2)}{=}{\Pr[b\mid A] \over \Pr[b\mid A]+\Pr[b\mid B]+\Pr[b\mid C]} \underset{(1)}{=}{\Pr[b\mid A] \over \Pr[b\mid A]+1} </math> である<ref name=":0" />。具体的な値をいくつか代入してみると、 : <math>\Pr[A\mid b]= \begin{cases} {1\over 2}&\text{if }\Pr[b\mid A]=1\\ {1\over 3}&\text{if }\Pr[b\mid A]={1\over 2}\\ 0&\text{if }\Pr[b\mid A]=0. \end{cases} </math> したがって最初に述べたように、「Bは死刑になる」と看守から聞いた後Aが恩赦になる[[事後確率]]<math>\Pr[A\mid b]</math>は、Aが恩赦されるケースで看守が「Bが死刑となる」と答える確率<math>\Pr[b\mid A]</math>に依存して値が変わる。 もしAが確率<math>\Pr[b\mid A]</math>に関して何ら情報を持たないなら、<math>\Pr[b\mid A]={1\over 2}</math>と仮定するのは自然である([[最大エントロピー原理]])<ref name=":0" />。この場合には、看守の返答後にAが恩赦になる確率 <math>\Pr[A\mid b]</math>は 1/3のままである。すなわち「恩赦の確率が1/2にあがった」という囚人Aが喜んだのは'''間違っている'''事になる。 しかしAが<math>\Pr[b\mid A]</math>に関する何らかの情報(例えば「看守はBを嫌っている」という情報)を持っている場合は、必ずしも<math>\Pr[b\mid A]={1\over 2}</math>とするのは自然ではない<ref name=":0" />。 仮に<math>\Pr[b\mid A]=1</math>であれば、 <math>\Pr[A\mid b]={1\over 2}</math> となる為、囚人Aが喜んだのは'''正しい'''事になる。 一方<math>\Pr[b\mid A]=0</math>であれば<math>\Pr[A\mid b]=0</math> より、看守の返答を聞いたことにより'''Aが恩赦になる確率は0に下がってしまう'''。 == 恩赦が等確率でない場合 == 上ではA、B、Cが恩赦を受ける確率はいずれも1/3である事を仮定し、<math>\Pr[b\mid A]={1\over 2}</math>なら囚人が喜んだのは間違っている事を見た。 しかし例えば、恩赦になる確率だけをそれぞれA=1/4、B=1/4、C=1/2に変えると、(<math>\Pr[b\mid A]={1\over 2}</math>であっても)看守が「Bは死刑になる」と答えることでAの恩赦確率は1/5とかえって低下してしまう<ref>{{Cite book|和書|author=市川伸一|authorlink=市川伸一|editor=[[日本認知科学会]]編|year=1998|month=5|title=確率の理解を探る――3囚人問題とその周辺|series=認知科学モノグラフ 10|publisher=共立出版|isbn=4-320-02860-0}}</ref><ref name=":1">{{Cite web|和書|url=http://www.tsu.ac.jp/Portals/0/research/10/P089-100.pdf|title=確率判断の認知心理(1) 、『東京成徳大学研究紀要』第5号|accessdate=2017-11-10|author=小林厚子|year=1998|format=pdf}} p3-5</ref>。 == 心理学の題材として == 直感的・主観的に捉えて予想した確率と本当の確率{{Efn|計算による正しい解。}}が一致しないのはなぜか、さらに、解答を説明されても即座に理解できなかったり、理解したつもりでも納得できないのはなぜか、という研究が[[認知心理学]]の研究分野で行われた。 看守の返答を聞いた後Aが恩赦になる確率のアンケートを行ったある研究{{Efn|対象:日本の文系大学生142人。}}では、回答者の76%が1/2、14%が1/3と解答している<ref name=":1" />。しかし、確率は[[統計]]に基づくことを説明するヒントを載せたところ、この比率は逆転した<ref name=":1" />。 == 脚注 == {{脚注ヘルプ}} ===注釈=== {{Notelist}} ===出典=== <references/> == 関連項目 == * [[モンティ・ホール問題]] * [[感染者問題]] * [[囚人のジレンマ]] {{デフォルトソート:さんしゆうしんもんたい}} [[Category:確率問題]] [[Category:数学に関する記事]]
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