CR多様体のソースを表示
←
CR多様体
ナビゲーションに移動
検索に移動
あなたには「このページの編集」を行う権限がありません。理由は以下の通りです:
この操作は、次のグループに属する利用者のみが実行できます:
登録利用者
。
このページのソースの閲覧やコピーができます。
数学において、'''CR多様体'''(CRたようたい、{{lang-en-short|CR manifold}})とは,[[微分可能多様体]]で,[[複素数|複素数空間]]の中の実[[超曲面]]の幾何構造をモデル化したものである. CR は,[[コーシー・リーマン方程式|コーシー・リーマン]],あるいは,複素 (Complex)・実 (Real)<ref>https://secure.msri.org/calendar/sgw/WorkshopInfo/434/show_sgw</ref> の省略形である. == 導入 == CR多様体のモデルは[[複素数空間]] <math>\mathbb{C}^{n}</math> 内の[[領域 (解析学)|領域]]の滑らかな境界である. 領域 <math>\Omega \subset \mathbb{C}^{n}</math> の滑らかな境界<math>M</math> について, 次で定義される{{仮リンク|複素化|en|complexified}}(complexified)された[[接束]] <math>\mathbb{C} T M = TM \otimes \mathbb{C}</math> の部分[[ベクトル束]] <math>L</math> を考えよう: <math>L := \mathbb{C} T M \, \cap \, T^{1,0}\mathbb{C}^{n}. </math> ここで, <math>T^{1,0}\mathbb{C}^{n}</math> は <math>\mathbb{C}^{n}</math> の[[正則接束]]を表すとする. このとき, <math>L</math> は次を満たす: * <math>[L,L]\subset L</math>, * <math>L\cap\overline{L}=\{0\}</math>. ただし, <math>\overline{L}</math> は <math>L</math> の[[複素共役]]とする. == 定義 == '''CR多様体'''とは,微分可能多様体 <math>M</math> とその上の{{仮リンク|複素化|en|complexified}}(complexified)された[[接束]] <math>\mathbb{C} T M = TM \otimes \mathbb{C}</math> の部分[[ベクトル束]] <math>L</math> で次の条件を満たすものの組 <math>(M, L)</math> のことである: * <math>[L,L]\subset L</math> ( <math>L</math> は[[可積分条件|可積分]](integrable)である ), * <math>L\cap\bar{L}=\{0\}</math>. ここで, <math>\overline{L}</math> は <math>L</math> の[[複素共役]]とする. このとき,ベクトル束 <math>L</math> を多様体 <math>M</math> 上の'''CR構造'''という. <math>L</math> の階数 <math>{\rm rank}_{\mathbb{C}} \, L</math> を'''CR次元,''' <math> \dim M - 2 \; {\rm rank}_{\mathbb{C}} \, L</math> を'''CR余次元'''という. CR余次元が1のとき, <math>(M, L)</math> は'''超曲面型'''(hypersurface type)であるという. == 例 == == 擬凸性 == ===レヴィ形式=== <math>M</math> を超曲面型のCR多様体とする.'''レヴィ形式''' <math>h</math> は,[[ラインバンドル|直線束]] :<math>V = \frac{TM\otimes{\mathbb C}}{L\oplus\bar{L}}</math> に値を持つ <math>L</math> 上で定義された{{仮リンク|ベクトル値形式|en|vector valued form}}(vector valued form)で, :<math>h(v,w) := \frac{1}{2i}[v,\bar{w}] \mod L\oplus\bar{L},\quad v,w\in L</math> により与えられる.<math>h</math> は,可積分条件により,<math>v</math> と <math>w</math> が <math>L</math> の切断へどのように拡張するかには依存せず,<math>L</math> 上の[[半双線型形式]]を定義する.この形式 <math>h</math> は,同じ形で束 <math>L\oplus\bar{L}</math> 上の[[エルミート形式]]へ拡張できる.この拡張された形式も,レヴィ形式と呼ばれることもある。 代わりに,レヴィ形式は双対性の言葉で特徴付けることもできる.''V'' を消滅させる複素[[余接バンドル|余接束]]の部分[[直線束]]を考えると, :<math>H_0M = V^* = (L\oplus\bar{L})^\perp\sub T^*M\otimes{\mathbb C}</math> となる.各々の切断 α∈Γ(''H<sub>0</sub> M'' ) に対し, :<math>h_\alpha(v,w) = d\alpha(v,\bar{w}) = -\alpha([v,\bar{w}]),\quad v,w\in L\oplus\bar{L}.</math> とする.形式 ''h''<sub>α</sub> は α を伴う複素数値エルミート形式である. 多様体が超曲面型でない場合も,レヴィ形式の一般化が存在する.ただし,この場合,値は[[直線束]]でなく,[[ベクトル束]]となる.よって,レヴィ形式ではなく,構造のレヴィ形式の集まりという。 超曲面型の抽象的CR多様体について,レヴィ形式はその上に擬[[エルミート計量]]を与える.この計量は,正則接ベクトル上で定義されているだけでなく,退化している. === 強擬凸, 擬凸, レヴィ平坦 === <math>M</math> が超曲面型の CR 多様体で単一の函数 <math>F = 0</math> で定義されているとする.このとき,<math>M</math> の'''レヴィ形式'''({{仮リンク|エフゲニオ・エリア・レヴィ|en|Eugenio Elia Levi}}(Eugenio Elia Levi)の名に因む)とは<ref>See {{harv|Levi|909|p=207}}: the Levi form is the [[differential form]] associated to the [[differential operator]] ''C'', according to Levi's notation.</ref>、[[エルミート計量|エルミート 2-形式]] :<math>h=i\partial\bar{\partial}F|_L</math> のことを指す.レヴィ形式は <math>L</math> 上の計量を定める.<math>M</math> は,<math>h</math> が正定値であるとき,'''強擬凸'''(strictly pseudoconvex)と呼ばれ,<math>h</math> が半正定値のときは'''擬凸'''(pseudoconvex)と呼ばれる.CR多様体の理論の解析的な存在性と一意性の結果の多くは,レヴィ形式の強擬凸性によるものである. この命名は[[擬凸性|擬凸領域]]の研究から来ている: <math>M</math> が <math>\mathbb{C}^{n}</math> 内の(強)擬凸領域の境界であることと,CR多様体として(強)擬凸であることは同値である. == その他の話題 == ===接コーシー・リーマン作用素と接コーシー・リーマン複体=== まず,'''接コーシー・リーマン作用素''' <math>\overline{\partial}_{b}</math> を定義しよう.[[複素多様体]]の境界として実現されるCR多様体について,この作用素は <math>\overline{\partial}</math> の境界制限とみなすことができる.また,一般のCR多様体について(複素多様体の境界として実現されない場合も含めて),定義することができる.これは Webster 接続を用いて記述される.作用素 <math>\overline{\partial}_{b}</math> は[[鎖複体|複体]]をなす,すなわち,<math>\overline{\partial}_{b} \circ \overline{\partial}_{b} = 0</math> が成立する.この[[鎖複体|複体]]のことを'''接コーシー・リーマン複体''',あるいは,コーン・ロッシ複体という.この複体とそのコホモロジー群についての基本的な文献として,Joseph. J. Kohn と Hugo Rossi によるものが挙げられる.<ref>Kohn, Joseph J. and Rossi, Hugo (1965). “On the Extension of Holomorphic functions from the boundary of Complex Manifolds". ''Annals of Math''. '''81''': 451--472. doi: 10.2307/1970624.</ref> ==== CR関数 ==== 作用素 <math>\overline{\partial}_{b}</math> により消える関数を'''CR関数'''といい,正則関数の[[アナロジー]]になっている.また,CR関数の実部を'''CR多重調和関数'''という. ==== コーンラプラシアン ==== 接コーシー・リーマン複体に付随して,CR幾何学と[[多変数複素関数|多変数複素解析学]]において基本的な対象となる'''コーンラプラシアン''' <math>\Box_{b}</math> が次で定義される: <math>\Box_{b} := \overline{\partial}_{b} \overline{\partial}_{b}^{*} + \overline{\partial}_{b}^{*} \overline{\partial}_{b} </math> ここで,<math>\overline{\partial}_{b}^{*}</math> は <math>\overline{\partial}_{b}</math> の<math>L^{2}(M)</math> についての形式的共役を表すとする([[体積形式]]は,CR構造に付随する[[接触形式]]から誘導されるものとする).作用素 <math>\Box_{b}</math> は,非負[[自己共役作用素|自己共役]]である.[[コンパクト空間|コンパクト]]な強擬凸CR多様体について,作用素 <math>\Box_{b}</math> は正の離散[[固有値]]をもつ.その[[核空間]]は,CR関数から構成されるため,無限次元である.もし,作用素 <math>\Box_{b}</math> の正の固有値全体が正定数により下から抑えられていた場合,閉[[値域]]をもつ. ==== 具体例 ==== 具体例として,[[ハイゼンベルク群]](Heisenberg group)の作用素 <math>\overline{\partial}_{b}</math> を考察してみよう.通常のハイゼンベルク群 <math>\mathbb{C}^{n} \times \mathbb{R}</math> について,その上の左不変な正則ベクトル場 <math>L_{j} := \frac{\partial}{\partial z_{j}} + i \overline{z}_{j} \frac{\partial}{\partial t} (j = 1,2,\dotsm,n)</math> を考える.ここで,<math>(z_{1},z_{2},\dotsm,z_{n}) \in \mathbb{C}^{n}, t \in \mathbb{R}</math> とする.このとき,関数 <math>u</math> ''について,'' <math>\overline{\partial}_{b} u = \sum_{j = 1}^{n} \overline{L}_{j} u \; d\overline{z}_{j}</math> が成立する.ここで,<math>\overline{L}_{j}</math> は <math>L_{j}</math> の[[複素共役]]を表すとする.関数については <math>\overline{\partial}_{b}^{*}</math> は 0 であるから,ハイゼンベルク群における関数についてのコーンラプラシアンは次で与えられる: <math>\Box_{b} = - \sum_{j = 1}^{n} L_{j} \overline{L}_{j}.</math> さて,次の交換子の計算に注意する: <math>[L_{j}, \overline{L}_{j}] = - 2iT.</math> ただし,<math>T := \frac{\partial}{\partial t}</math> とする. 上の等式を用いれば,簡単な計算によって,コーンラプラシアンが次のように書き換えられることがわかる: <math>\Box_{b} = - \frac{1}{2} \sum_{j = 1}^{n} (L_{j} \overline{L}_{j} + \overline{L}_{j} L_{j}) + i n T.</math> 右辺の1番目の項は,実作用素である(実際に,コーンラプラシアンの実部となっている).これを'''サブラプラシアン'''といい,<math>\Delta_{b}</math> で表すことが多い.部分積分から,非負であることがすぐにわかる.このとき,<math>\Box_{b} = \Delta_{b} + inT</math> と表すこともできる. === CR埋め込み問題 === CR幾何学の基本的な問題のひとつとして,与えられたCR多様体が,[[複素数空間]]の実部分多様体として実現できるかという問題('''CR'''[[埋め込み (数学)|埋め込み]]'''問題''')がある. 大域的なCR埋め込み問題について,実5次元以上の[[コンパクト空間|コンパクト]]な強擬凸CR多様体については,Louis Botet de Monvel により肯定的に解決された. 実3次元の場合は,反例が存在する: 3次元球面 <math>S^{3}</math> の自然なCR構造を摂動したものは大域的に埋め込むことができない.この例は,Rossi の例と呼ばれる(実際には, Hans Grauert により構成された). 局所的なCR埋め込み問題について,実3次元の場合には, Louis Nirenberg による反例が存在する.実7次元以上の場合は,[[倉西正武]](実9次元以上の場合)と[[赤堀隆夫]](実7次元の場合)により肯定的に解決された. 実5次元の場合の局所的なCR埋め込み問題は,未解決である. ==関連項目== *{{仮リンク|エフゲニオ・エリア・レヴィ|en|Eugenio Elia Levi}}(Eugenio Elia Levi) *[[擬凸性]] ==脚注== {{reflist|30em}} ==参考文献== *{{Citation | last = Levi | first = Eugenio Elia | author-link = Eugenio Elia Levi | title = Studii sui punti singolari essenziali delle funzioni analitiche di due o più variabili complesse | language = Italian | journal = [http://www.springerlink.com/content/108198/?p=723d441f3aee4d4bb65e370e90b9c567&pi=0 Annali di Matematica Pura e Applicata] | series = s. III, | volume = XVII | issue = 1 | pages = 61–87 | year = 1910 | url = http://www.springerlink.com/content/yr0150m4tq64j465/ | doi = 10.1007/BF02419336 | id = | jfm = 41.0487.01 }}. An important paper in the [[Several complex variables|theory of functions of several complex variables]]. An English translation of the title reads as:-"''studies on essential singular points of analytic functions of two or more complex variables''". * {{cite book|first=Albert|last=Boggess|title=CR Manifolds and the Tangential Cauchy Riemann Complex|publisher=CRC Press|year=1991}} * {{cite journal|author=Hill, D. and Nacinovich, M.|url=http://www.numdam.org/numdam-bin/fitem?id=ASNSP_1995_4_22_2_315_0|title=Duality and distribution cohomology of CR manifolds|journal=Ann. Scuola Norm. Sup. Pisa|volume=22|issue=2|year=1995|pages=315–339}} * {{cite journal|author=Chern S. S. and Moser, J.K.|title=Real hypersurfaces in complex manifolds|journal=Acta Math.|volume=133|pages=219–271|year=1974|doi=10.1007/BF02392146}} * {{cite journal|author=Harvey, F.R. and Lawson, H.B., Jr.|title=On boundaries of complex analytic varieties|journal=Ann. Math.|year=1978|pages=223–290|volume=102|doi=10.2307/1971032|issue=2|jstor=1971032}} {{Normdaten}} {{DEFAULTSORT:CRしいああるたようたい}} [[Category:微分可能多様体]] [[Category:多様体論]] [[Category:数学に関する記事]]
このページで使用されているテンプレート:
テンプレート:Citation
(
ソースを閲覧
)
テンプレート:Cite book
(
ソースを閲覧
)
テンプレート:Cite journal
(
ソースを閲覧
)
テンプレート:Harv
(
ソースを閲覧
)
テンプレート:Lang-en-short
(
ソースを閲覧
)
テンプレート:Normdaten
(
ソースを閲覧
)
テンプレート:Reflist
(
ソースを閲覧
)
テンプレート:仮リンク
(
ソースを閲覧
)
CR多様体
に戻る。
ナビゲーション メニュー
個人用ツール
ログイン
名前空間
ページ
議論
日本語
表示
閲覧
ソースを閲覧
履歴表示
その他
検索
案内
メインページ
最近の更新
おまかせ表示
MediaWiki についてのヘルプ
特別ページ
ツール
リンク元
関連ページの更新状況
ページ情報