F-空間のソースを表示

[[関数解析学]]における '''F-空間'''（Fくうかん、{{Lang-en|''F-space''}}）とは、[[実数|実]]あるいは[[複素数|複素]][[ベクトル空間]]であって、次を満たすような[[距離函数|距離]] {{math|''d'': ''V'' × ''V'' → '''R'''}} の定められているもののことを言う: 以下 {{mathbf|K}} は実数体 {{mathbf|R}} または複素数体 {{mathbf|C}} の何れかであるものとして
# {{mvar|V}} でのスカラー乗法は、距離 {{mvar|d}} および {{mathbf|K}} の標準距離に関して[[連続写像|連続]]である。
# {{mvar|V}} での加法は、距離 {{mvar|d}} について連続である。
# 距離 {{mvar|d}} は{{仮リンク|平行移動不変|en|translation-invariant metric}}である。すなわち、{{mvar|V}} 内の任意の {{mvar|x, y}} および {{mvar|a}} に対して <math>d(x + a, y + a) = d(x, y)</math> が成立する。
# 距離空間 {{math|(''V'', ''d'')}} は[[完備距離空間|完備]]である。
演算 {{math|''x'' {{mapsto}} {{norm|''x''}} {{coloneqq}} ''d''(0, ''x'')}} はひとつの '''F-ノルム'''を定める（一般の [[F-ノルム]]<ref>{{nlab|id=F-norm}}</ref>には完備性は仮定しない）。平行移動不変性により、もとの距離函数はこの F-ノルムから恢復可能である{{efn|すなわち、{{math|1={{norm|''y'' &minus; ''x''}} = ''d''(0, ''y'' &minus; ''x'') = ''d''(0 + ''x'', (''y'' &minus; ''x'')+ ''x'') = ''d''(''x'', ''y'')}}}}。したがって、{{mathbf|K}} 上の F-空間は、完備 F-ノルムを備えた {{mathbf|K}}-線型空間と言っても同じことである。

この空間を[[フレシェ空間]]と呼ぶこともあるが、その呼び名はふつう[[局所凸位相線型空間|局所凸]] F-空間を表すために用いられる。また上記のような距離函数の存在は、F-空間の構造の一部として要求する場合もあるし、しない場合もありうる。多くの文献では、そのような空間が上の性質を満足する仕方で[[距離化可能]]であることを要求するのみである。

== 例 ==
明らかに任意の[[バナッハ空間]]および[[フレシェ空間]]は F-空間である。特に、バナッハ空間は {{math|1=''d''(''αx'', 0) = {{abs|''α''}}&sdot;''d''(''x'', 0)}} なる余計な条件までも満たす F-空間となる<ref>{{citation|last1=Dunford |first1= Nelson |last2= Schwartz |first2= Jacob T. |year=1958 |title= Linear operators. Part I: general theory | series= Pure and Applied Mathematics | volume= 7 | publisher=Interscience publishers | location= New York}}</ref>{{rp|59}}。

[[ルベーグ空間|{{mvar|L{{sup|p}}}}-空間]]は、任意の {{math|''p'' ≥ 0}} に対して F-空間であり、{{math|''p'' ≥ 1}} ならば局所凸、したがってフレシェ空間であり、実際バナッハ空間ですらある。

=== 例1 ===
{{math|''L''{{sup|1/2}}{{closed-closed|0, 1}}}} は F-空間で、連続な半ノルムも連続線型汎関数も持たない（自明な[[双対空間]]を持つ）。

=== 例2 ===
{{math|''W{{sub|p}}''('''D''')}} を複素数値[[テイラー級数]] <math display="block">f(z)=\sum_{n \geq 0}a_n z^n</math> で単位円板 {{mathbf|D}} 上 <math display="block">\sum_{n}|a_n|^p < \infty</math> を満たすようなもの全体のなす空間とする。このとき、{{math|0 < ''p'' < 1}} に対して {{math|''W{{sub|p}}''('''D''')}} は {{mvar|p}}-ノルム <math display="block">\|f\|_p= \sum_{n}|a_n|^p \qquad (0 < p < 1)</math> のもと、F-空間となる。実は、{{mvar|W{{sub|p}}}} は{{仮リンク|準バナッハ環|en|quasi-Banach algebra}}である。さらに言えば、{{math|{{abs|''ζ''}} &le; 1}} なる任意の {{mvar|ζ}} に対して、写像 {{math|''f'' {{mapsto}} ''f''(''ζ'')}} は {{math|''W{{sub|p}}''('''D''')}} 上で有界線形（乗法的汎関数）となる。

== 注 ==
=== 注釈 ===
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=== 出典 ===
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== 参考文献 ==
* {{citation | first= Walter | last= Rudin | authorlink= Walter Rudin | title= Real & Complex Analysis | publisher= McGraw-Hill | year= 1966 | isbn= 0-07-054234-1}}

== 関連項目 ==
* {{ill2|K-空間 (函数解析学)|en|K-space (functional analysis)}}

{{Functional Analysis}}
{{DEFAULTSORT:Fくうかん}}
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