「ガトー微分」の版間の差分

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2023年7月28日 (金) 21:08時点における最新版

数学におけるガトー微分(ガトーびぶん、テンプレート:Lang-en-short)は、第一次世界大戦において夭折したフランス人数学者テンプレート:仮リンクに名を因む、微分学における方向微分の概念の一般化で、バナハ空間などの局所凸位相線型空間の間の函数に対して定義される。バナハ空間上のフレシェ微分同様に、ガトー微分は変分法物理学で広く用いられる汎函数微分の定式化にしばしば用いられる。

他の微分法と異なり、ガトー微分は必ずしも線型でないが、ガトー微分の定義にそれが連続線型変換となることも仮定することがよくある。文献によっては、例えば テンプレート:Harvtxt は(非線型かもしれない)ガトー微分係数 (テンプレート:En) と(必ず線型である)ガトー導函数 (テンプレート:En) をはっきりと区別する。応用に際して、連続線型性がそれぞれの状況において自然に課されるもっと原始的な条件、例えばテンプレート:仮リンクにおける複素可微分性や非線型解析学における連続的可微分性など、から従うということも多い。

厳密な定義

テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar局所凸位相線型空間とし、テンプレート:Math は開集合、 テンプレート:Math とするとき、テンプレート:Mvarテンプレート:Math における テンプレート:Math 方向へのガトー微分係数 テンプレート:Math

(1)dF(u;ψ)=limτ0F(u+τψ)F(u)τ=ddτF(u+τψ)|τ=0

として右辺の極限が存在する限りにおいて定める。この極限が任意の テンプレート:Math に対して存在するとき、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar においてガトー微分可能 (テンプレート:En) であると言う。

定義式 (1)に現れる極限の取り方は テンプレート:Mvar の位相と関係する。テンプレート:Mvar および テンプレート:Mvar がともに位相線型空間ならば、極限は実数 テンプレート:Mvar に関して取る。一方、テンプレート:Mvar および テンプレート:Mvar複素位相線型空間ならば上記は複素可微分性の定義におけると同様に複素数平面において テンプレート:Math とする極限を考えるのが普通である。また強収斂極限の代わりに弱収斂極限を取ることもあり、その場合弱ガトー微分の概念が導かれる。

線型性と連続性

各点 テンプレート:Math においてガトー微分は、函数

dF(u;):XY;ψdF(u;ψ)

を定める。この函数は任意のスカラー テンプレート:Mvar に対して

dF(u;αψ)=αdF(u;ψ)

を満たすという意味で斉一次だが、必ずしも加法的でなく、従ってガトー微分係数は線型でないことが起こり得る(この点ではフレシェ微分と異なる)。また、線型となる場合であっても、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar が無限次元の場合には テンプレート:Mvar に関して連続とならないことが生じ得る。さらに言えば、線型かつ連続となるようなガトー微分係数に対して、その連続的微分可能性の定式化には互いに同値でないいくつかの方法が存在する。

例えば、二変数の実数値函数 テンプレート:Mvar

F(x,y)={x3x2+y2 if (x,y)(0,0)0 if (x,y)=(0,0)

で定めると、これは テンプレート:Math においてガトー微分可能で、その微分係数は

dF(0,0;a,b)={a3a2+b2(a,b)(0,0)0(a,b)=(0,0)

となり、しかしこれは引数 テンプレート:Math に関して連続だが線型でない。無限次元の場合、テンプレート:Mvar 上の任意の不連続線型汎函数がガトー微分可能となるが、その テンプレート:Math におけるガトー微分係数は線型であり、かつ連続でない。

フレシェ微分との関係
テンプレート:Mvarフレシェ微分可能ならば、テンプレート:Mvar はまたガトー微分可能であり、そのフレシェ導函数とガトー導函数とは一致する。逆が明らかに真でないことは、ガトー導函数が線型や連続でないことがあることから分かるが、実はガトー導函数が線型かつ連続である場合にも、フレシェ導函数が存在しないことがあり得る。
にも拘らず、複素バナハ空間 テンプレート:Mvar から別のバナハ空間 テンプレート:Mvar への函数 テンプレート:Mvar に対して、ガトー導函数は(ただし、定義における極限は複素変数 テンプレート:Mvar に関して取るものとすると)、自動的に線型になる(テンプレート:Harvtxt の定理)。さらに テンプレート:Mvar が各点 テンプレート:Math において(複素)ガトー微分可能で、その導函数を テンプレート:Math とすると、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar 上でフレシェ微分可能であり、そのフレシェ導函数は テンプレート:Mvar になる テンプレート:Harv。このことは、古典的な複素解析において開集合上複素可微分な任意の函数が解析的となるという結果の類似対応物であり、テンプレート:仮リンクの基本的な結果の一つである。
連続的微分可能性
連続的ガトー微分可能性は大きく二つの方法で定義することができる。以下、函数 テンプレート:Math は開集合 テンプレート:Mvar の各点でガトー微分可能と仮定する。テンプレート:Mvar における連続的微分可能性の概念の一つは、直積空間上の写像 テンプレート:Math連続であることを課すものである。この場合線型性を仮定する必要はなく、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar がともにフレシェ空間ならば テンプレート:Math は任意の テンプレート:Mvar に関して自動的に有界かつ線型である テンプレート:Harv
より強い意味での連続的微分可能性は テンプレート:Mathテンプレート:Mvar から、テンプレート:Mvar から テンプレート:Mvar への連続線型写像全体の成す空間 テンプレート:Math への写像として連続であることを課すものである。即ち、テンプレート:Math の連続性を言う。ここで、テンプレート:Math 自体が連続であることは既に前提としていることに注意。
技術的な便宜上、テンプレート:Mvar がバナハ空間であるときは、後者の意味での連続的微分可能性を考えるのが典型的(だがいつも (テンプレート:En) というわけではない)である。これは テンプレート:Math もまたバナハであり、従って函数解析学における標準的な結果をそこで用いることができるという理由による。前者のほうは、非線型解析ではより一般的に用いられる定義であり、この分野では函数空間は必ずしもバナハでない。例えば、テンプレート:仮リンクは、しばしば可微分多様体上の滑らかな函数からなる意味のある函数空間において、テンプレート:仮リンクなどで応用される。


高階導函数

高階のフレシェ導函数が、同型 テンプレート:Math の反復適用によって、多重線型写像として自然に定義されるのに反して、高階ガトー導函数はこの方法で定義することはできない。その代わり、テンプレート:Mvar の開集合 テンプレート:Mvar 上の函数 テンプレート:Mathテンプレート:Mvar-方向への テンプレート:Mvar-階ガトー導函数は

(2) dnF(u;h)=dndτnF(u+τh)|τ=0

で定義される。つまりこれは、多重線型写像ではなくて、テンプレート:Mvar に関する テンプレート:Mvar-次の斉次函数になる。

あるいはまた、少なくとも テンプレート:Mvar がスカラー値函数である特別の場合には、高階導函数の別な候補として、テンプレート:Mvar二次変分としての函数

(3) D2F(u){h,k}=limτ0DF(u+τk)hDF(u)hτ=2τσF(u+σh+τk)|τ=σ=0

が、変分法において自然に生じてくるが、しかしこの方法だと テンプレート:Mvar および テンプレート:Mvar のそれぞれに関して斉次になることを除けば、まともな性質が全く保証されない。テンプレート:Mathテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar に関する対称双線型写像となること、およびその対称双線型写像が テンプレート:Mvarテンプレート:仮リンクと一致すること、を保証する十分条件を持つことが望ましい。

例えば、以下のような十分条件が挙げられる テンプレート:Harvテンプレート:Mvar は写像 テンプレート:Math が積位相に関して連続であるという意味で テンプレート:Math-級であるとし、さらに定義式 (3) の定める二次変分が テンプレート:Math が連続となるという意味で連続と仮定する。このとき テンプレート:Mathテンプレート:Mvar に関して双線型かつ対称である。双線型性のおかげで、極化恒等式

D2F(u){h,k}=12d2F(u;h+k)d2F(u;h)d2F(u;k)

が満たされ、二次変分 テンプレート:Math が二次微分係数 テンプレート:Math に関連付けられる。同様のことが高階導函数に関しても成立する。

性質

函数 テンプレート:Mvar が十分に連続的微分可能と仮定すると、テンプレート:Mvar のガトー微分に関して微分積分学の基本定理の一種が成立する。具体的に書けば、

テンプレート:Math はガトー微分 テンプレート:Math が連続函数であるという意味で テンプレート:Math-級とすると、任意の テンプレート:Math および テンプレート:Math に関して
F(u+h)F(u)=01dF(u+th;h)dt
が成り立つ。ただし、積分はゲルファント-ペティス積分(弱積分)の意味で取る。

これにより、よく知られた微分の性質の多くをガトー微分も満たす(例えば、高階導函数の重線型性や交換性)。基本定理の帰結として他にも、

連鎖律
任意の テンプレート:Math に対して d(GF)(u;x)=dG(F(u);dF(u;x)) が成り立つ。
剰余項を持つテイラーの定理
テンプレート:Mathテンプレート:Math を結ぶ線分がまったく テンプレート:Mvar に含まれると仮定する。テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar-級ならば
F(u+h)=F(u)+dF(u;h)+12!d2F(u;h)++1(k1)!dk1F(u;h)+Rk
が成り立つ。ただし剰余項は
Rk(u;h)=1(k1)!01(1t)k1dkF(u+th;h)dt
で与えられる。

などが成立する。

空間 テンプレート:Mvarユークリッド空間 テンプレート:Mathルベーグ可測集合 テンプレート:Math 上の自乗可積分函数全体の成すヒルベルト空間とする。テンプレート:Mvarテンプレート:Math なる実変数実数値函数で、テンプレート:Mvarテンプレート:Math 上の実数値函数とするとき、汎函数 テンプレート:Math

E(u)=ΩF(u(x))dx

で定めると、これはガトー導函数

dE(u,ψ)=f(u),ψ

を持つ。実際、

E(u+τψ)E(u)τ=1τ(ΩF(u+τψ)dxΩF(u)dx)=1τ(Ω01ddsF(u+sτψ)dsdx)=Ω01f(u+sτψ)ψdsdx

となるから、テンプレート:Math としてガトー導函数は

dE(u,ψ)=Ωf(u(x))ψ(x)dx,

即ち、内積 テンプレート:Math となる。

参考文献

関連項目