弱位相

提供: testwiki
2023年11月21日 (火) 21:26時点におけるimported>Anakabotによる版 (Bot作業依頼#Cite webの和書引数追加)
(差分) ← 古い版 | 最新版 (差分) | 新しい版 → (差分)
ナビゲーションに移動 検索に移動

テンプレート:Pathnavテンプレート:About

弱位相(じゃくいそう、テンプレート:Lang-en-short)とは、ノルム空間テンプレート:Mvar上に定義される位相の一つである。体テンプレート:Mvar上のノルム空間にはノルムから定まる位相(ノルム位相。弱位相と区別するため強位相とも呼ばれる)があるが、弱位相はこれよりも弱い(強くない)位相であり、テンプレート:Mvar上のテンプレート:Mvar値有界線形写像(すなわちテンプレート:Mvar共役空間テンプレート:Mvarの元)が全て連続になる最弱な位相である。なお弱位相は位相空間論におけるテンプレート:仮リンクの特別な場合に当たる。


強位相に関するものと区別するため、弱位相に関する連続性、収束性、コンパクト性はそれぞれ弱連続性弱収束性弱コンパクト性と呼ばれる。

本項では弱位相の関連概念である*弱位相についても述べる。

定義

以下、テンプレート:Mvarを実数体もしくは複素数体とする。テンプレート:Math theorem

一方、テンプレート:Mvarのノルムにより定まる位相の事をノルム位相という。

ノルム空間上の線型写像が有界である必要十分条件は、その線型写像がノルム位相連続である事である。したがってテンプレート:Mvarの元はノルム位相に関して必ず連続である。

それに対しテンプレート:Mvarの元を連続にする最弱の位相であるので、以下が従う: テンプレート:Math theorem

この為、ノルム位相の事をテンプレート:Mvar強位相テンプレート:Lang-en-short)ともいう。

テンプレート:Mvarの係数体テンプレート:Mvar=,)の位相はテンプレート:Mvar上の絶対値をノルムと見なしたときのノルム位相と一致する事から、弱位相を以下のようにも特徴づけられる:

テンプレート:Math theorem よって特に、テンプレート:Mvarに弱位相を入れた空間は局所凸である。したがって弱位相は最も粗い極位相弱位相 (極位相)を参照)でもある。

弱収束・強収束

弱位相における点列(もしくはより一般に有向点族テンプレート:Mvarの収束を弱収束といい、

xnwx
xnx (弱)
xnx
w-limnxn=x

等と表記する[1]

一方ノルム位相に対する収束(ノルム収束)は強収束とも呼ばれ、弱収束と区別するため

xnsx
xnx (強)
s-limnxn=x

等と表記する[1]

ヒルベルト空間における強収束と弱収束の関係

ヒルベルト空間においては弱収束する点列が強収束するための必要十分条件が以下のように与えられる:

テンプレート:Math theorem

*弱位相

ノルム空間テンプレート:Mvarの共役空間テンプレート:Mvarには、作用素ノルム

α*=supxX{0}|α(x)||x|

が定義でき、このノルムからノルム位相が定まる。またテンプレート:Mvar自身も作用素ノルムに関してノルム空間であることからテンプレート:Mvarには弱位相も入り、定義よりこれはテンプレート:Mvarの共役空間(二重共役空間テンプレート:Mvarに属する写像を全て連続にする最弱の位相である。


さらにテンプレート:Mvarには下記の*弱位相も入る:テンプレート:Math theorem

{μx|xX}X**である事が知られているので、以下が従う: テンプレート:Math theorem

つまりテンプレート:Mvarに入る位相は強い順からノルム位相、弱位相、*弱位相である。

なお、定義より明らかに次が従う: テンプレート:Math theorem

位相空間論の言葉を使うと、*弱位相を別の角度から特徴づける事ができる。そのためにまず定義を述べる: テンプレート:Math theorem このとき次が従う: テンプレート:Math theorem

*弱収束

*弱位相における点列(ないしより一般的な有向点族)の収束を*弱収束[2]テンプレート:Lang-en-short)もしくは汎弱収束[2][3]といい、

αnw*α
αn*α
w*-limnαn=α

等と表記する[3]

具体例

テンプレート:See also [π,π]区間上の複素数値2乗可積分関数のなすヒルベルト空間H=L2([-π,π])を例に強収束と弱収束の違いを見る。なお、ヒルベルト空間は再帰的な事が知られているので、弱位相と*弱位相は同一である。


(φn)nテンプレート:Mathの完全正規直交基底とする。例えば

φn(x)=12πeinx

とすると、(φn)nが完全正規直交基底になる事が知られている[4]フーリエ展開を参照)。

(φn)nの正規直交性から、テンプレート:Mathに対し

φnφm=12

であるので、(φn)nはコーシー列ではなく、よってテンプレート:Mathのとき強収束の極限は存在しない。

しかし(φn)nは0に弱収束する。

理由は下記の通りである。ヒルベルト空間の共役空間テンプレート:Mvarの任意の元テンプレート:Mvarには必ず

α(ξ)=ξ,ψ

を満たすテンプレート:Mathが存在する(リースの表現定理)。

そして(φn)nが完全正規直交基底である事から、

ψ=s-limmk=mkakφk

を満たす(am)mが存在する。

上記の無限和に極限が存在する事から、limnan=0である。

以上の事から任意のテンプレート:Mathに対し、

α(φn)=φn,ψ=φn,s-limmk=mmakφk=limmφn,k=mmakφk=an

であるので、テンプレート:Mathのとき、

α(φn)=an0

となり、

w-limnφn=0

が成立する。

性質

バナッハ=アラオグルの定理

ノルム位相に対してはリースの補題から直接的に次の事実が従う:テンプレート:Math theoremしたがって無限次元の場合、テンプレート:Mvarの閉単位球はノルム位相に関してコンパクトではない。しかし、テンプレート:Mvarの閉単位球は*弱位相に関してはコンパクトになる:テンプレート:Math theoremこの定理はチコノフの定理に基づいて非構成的に示せる[5]。なおノルム空間テンプレート:Mvarが(ノルム位相に関して)可分な場合には直接的にに証明可能である[6]


バナッハ=アラオグルの定理は半径1の閉球に対するものだが、任意の半径の閉球もコンパクトになる事が容易に示せる。また*弱位相はハウスドルフ性を満たす事が知られており、コンパクトな空間の閉部分集合はコンパクトなので、以下の系が成立する:テンプレート:Math theoremなお、テンプレート:Mvar回帰的(すなわちテンプレート:Mathが成立する空間)であればテンプレート:Mvar上の弱*位相と弱位相は同一になるので、下記の系が従う:テンプレート:Math theoremテンプレート:Mathに対しLp空間p空間は回帰的なので、上記の定理が適用できる。しかし回帰的でない場合には上述の定理に反例があり、例えばテンプレート:Mvarに収束する複素数列全体にℓノルムを入れた空間テンプレート:Mvarの閉単位球は弱位相に関してコンパクトではない[7]

注意しなければならないのは、弱*位相における有界閉集合には内点が無く、有界閉集合上の点は必ず境界点になる事である。これはすなわち、たとえ閉単位球がコンパクトであっても弱*位相をいれたテンプレート:Mvar局所コンパクトにはなっていない事を意味する。

距離化可能性

テンプレート:Math theorem テンプレート:Math theorem

一般化

弱位相の概念は下記のように一般化できる:

テンプレート:Math theorem

上記の定義でテンプレート:Mathb(x,α)=α(x)とすれば、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarにはそれぞれ前の章で説明した意味での弱位相、*弱位相が入るので、上記の定義が前に述べた弱位相や*弱位相の定義の一般化になっている事がわかる。


弱作用素位相

XY位相ベクトル空間とするとき、連続線型作用素の空間 L(X,Y) に下記のように弱作用素位相を定義できる:

テンプレート:Math theoremX 上の弱位相の場合と同様、テンプレート:Math上の弱作用素位相もセミノルムによって特徴づけられる:

テンプレート:Math theorem

連続線形写像の空間テンプレート:Math上には弱作用素位相以外にも強作用素位相テンプレート:仮リンクなど複数の位相が入る。詳細は作用素位相を参照されたい。

関連項目

出典

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

参考文献

  1. 1.0 1.1 #伊藤 p.143, #増田 p.120.
  2. 2.0 2.1 #増田 p.125
  3. 3.0 3.1 弱位相#伊藤 p.138.
  4. #増田 p.42.
  5. #Schlumprecht p.7.
  6. #Semmes pp.15, 20-21
  7. #Heil p.361.