同値類

数学において,ある集合 テンプレート:Mvar の元が(同値関係として定式化される)同値の概念を持つとき,集合 テンプレート:Mvar を同値類(どうちるい,テンプレート:Lang-en-short)たちに自然に分割できる.これらの同値類は,元 テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar が同じ同値類に属するのは テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar が同値であるとき,かつそのときに限るものとして構成される.
フォーマルには,集合 テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar 上の同値関係 テンプレート:Math が与えられたとき,元 テンプレート:Mvar の テンプレート:Mvar における同値類は,テンプレート:Mvar に同値な元全体の集合
である.「同値関係」の定義から同値類は [[集合の分割|テンプレート:Mvar の分割]]をなす.この分割,同値類たちの集合,を テンプレート:Mvar の テンプレート:Math による商集合 (quotient set) あるいは商空間 (quotient space) と呼び,テンプレート:Math と表記する.
集合 テンプレート:Mvar が(群演算や位相のような)構造を持ち,同値関係 テンプレート:Math がこの構造と適切に両立するように定義されているとき,商集合はしばしばもとの集合から類似の構造を引き継ぐ.例としては,線型代数学における商空間,位相空間論における商空間,テンプレート:仮リンク,等質空間,商環,テンプレート:仮リンク,テンプレート:仮リンクなど.
例
- テンプレート:Mvar がすべての車の集合であり,テンプレート:Math が「同じ色である」という同値関係のとき,ある1つの同値類はすべての緑色の車からなる.テンプレート:Math はすべての車の色の集合と自然に同一視できる.
- テンプレート:Mvar を平面内のすべての長方形の集合とし,テンプレート:Math を「同じ面積を持つ」という同値関係とする.各正の実数 テンプレート:Mvar に対し,面積が テンプレート:Mvar の長方形全体のなす同値類があるテンプレート:Sfn.
- 整数の集合 テンプレート:Math 上の2を法とした同値関係を考える,つまり テンプレート:Math とはそれらの差 テンプレート:Math が偶数であることである.この関係はちょうど2つの同値類を生じる:1つはすべての偶数からなり,もう1つはすべての奇数からなる.この関係の下で,テンプレート:Math, テンプレート:Math, テンプレート:Math はすべて テンプレート:Math の同じ元を表すテンプレート:Sfn.
- テンプレート:Mvar を テンプレート:Mvar が テンプレート:Math でない整数の順序対 テンプレート:Math 全体の集合とし,テンプレート:Mvar 上の同値関係 テンプレート:Math を テンプレート:Math によって定義する.すると対 テンプレート:Math の同値類は有理数 テンプレート:Math と同一視することができ,この同値関係とその同値類は有理数の形式的な定義に用いることができるテンプレート:Sfn.同じ構成は任意の整域の分数体に一般化することができる.
- テンプレート:Mvar をユークリッド平面内のすべての直線の集合とし,テンプレート:Math を テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar が平行と定義すると,互いに平行な直線の集合が1つの同値類をなす(直線は自分自身と平行と考える).この状況では,各同値類は無限遠点を決定する.
記法と定義
同値関係は二項関係 テンプレート:Math であって以下の3つの性質を満たすものであるテンプレート:Sfn:
- テンプレート:Mvar の任意の元 テンプレート:Mvar に対して,テンプレート:Math である(反射性),
- テンプレート:Mvar の任意の2元 テンプレート:Mvar, テンプレート:Mvar に対して,テンプレート:Math ならば テンプレート:Math である(対称性),
- テンプレート:Mvar の任意の3つの元 テンプレート:Mvar, テンプレート:Mvar, テンプレート:Mvar に対して,テンプレート:Math かつ テンプレート:Math ならば テンプレート:Math である(推移性).
元 テンプレート:Mvar の同値類は テンプレート:Math と書き,テンプレート:Mvar と テンプレート:Math によって関係づけられる元全体の集合
として定義される.同値関係 テンプレート:Mvar を明示して テンプレート:Math とも書かれる.これは テンプレート:Mvar の テンプレート:Mvar-同値類といわれる.
同値関係 テンプレート:Mvar に関する テンプレート:Mvar のすべての同値類からなる集合を テンプレート:Math と書き,テンプレート:Mvar の テンプレート:Mvar による商集合 (quotient set of テンプレート:Mvar by テンプレート:Mvar, テンプレート:Mvar modulo テンプレート:Mvar) と呼ぶテンプレート:Sfn.テンプレート:Mvar から テンプレート:Math への各元をその同値類に写す全射 は標準射影と呼ばれる.
各同値類の元を(しばしば暗黙に)選ぶと,テンプレート:仮リンクと呼ばれる単射が定義される.この切断を テンプレート:Mvar で表せば,各同値類 テンプレート:Mvar に対して テンプレート:Math である.元 テンプレート:Math は テンプレート:Mvar の代表元 (representative) と呼ばれる.切断を適切に取って類の任意の元をその類の代表元として選ぶことができる.
ある切断が他の切断よりも「自然」であることがある.この場合,代表元をテンプレート:仮リンク代表元と呼ぶ.例えば,合同算術において,整数上の同値関係で,テンプレート:Math を テンプレート:Math が法と呼ばれる与えられた整数 テンプレート:Mvar の倍数であると定義したものを考える.各類は テンプレート:Mvar 未満の非負整数を唯一つ含み,これらの整数が標準的な代表元である.類とその代表元は多かれ少なかれ同一視され,例えば テンプレート:Math という表記は類を表すことも標準的な代表元(テンプレート:Mvar を テンプレート:Mvar で割った余り)を表すこともある.
性質
テンプレート:Mvar の任意の元 テンプレート:Mvar は同値類 テンプレート:Math の元である.任意の2つの同値類 テンプレート:Math と テンプレート:Math は,等しいか互いに素かのいずれかである.したがって,テンプレート:Mvar のすべての同値類からなる集合は テンプレート:Mvar の分割をなす,つまり,テンプレート:Mvar の任意の元はちょうど1つの同値類に属するテンプレート:Sfn.逆に テンプレート:Mvar の任意の分割は同値関係からこのようにして生じる.テンプレート:Math を テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar が分割の同じ集合に属するとした同値関係であるテンプレート:Sfn.
同値関係の性質から次が従う:
言い換えると,テンプレート:Math が集合 テンプレート:Mvar 上の同値関係であり,テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar が テンプレート:Mvar の2つの元であれば,以下の主張は同値である:
グラフによる表現
任意の二項関係は有向グラフによって,同値関係のような対称的なものは無向グラフによって表すことができる.テンプレート:Math が集合 テンプレート:Mvar 上の同値関係であるとき,グラフの頂点全体を テンプレート:Mvar の元全体とし,テンプレート:Math のとき,かつそのときに限り頂点 テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar を結ぶ.同値類はこのグラフにおいてグラフのテンプレート:仮リンクをなす極大クリークによって表されるテンプレート:Sfn.
不変量
テンプレート:Math が テンプレート:Mvar 上の同値関係で テンプレート:Math が,テンプレート:Math であるときにはいつでも,テンプレート:Math が真ならば テンプレート:Math が真であるような,テンプレート:Mvar の元の性質であるとき,性質 テンプレート:Mvar は テンプレート:Math の不変量,あるいは関係 テンプレート:Math のもとで well-defined であるといわれる.
よくある場合は テンプレート:Mvar が テンプレート:Mvar から別の集合 テンプレート:Mvar への関数であるときに生じる;テンプレート:Math であるときにはいつでも テンプレート:Math であるとき,テンプレート:Mvar は テンプレート:Math に対する射,テンプレート:Math の下での類不変量,あるいは単に テンプレート:Math の下の不変量といわれる.これは例えば有限群の指標理論において現れる.著者によっては「テンプレート:Math の下で不変」の代わりに「テンプレート:Math と両立する」あるいはただ「テンプレート:Math に従う」を用いる.
任意の関数 テンプレート:Math はそれ自身,テンプレート:Math なる テンプレート:Mvar 上の同値関係を定義する.テンプレート:Mvar の同値類は テンプレート:Math に写される テンプレート:Mvar の元全体の集合である,つまり,類 テンプレート:Math は テンプレート:Math の逆像である.この同値関係は テンプレート:Mvar のテンプレート:仮リンクとして知られている.
より一般に,関数は(テンプレート:Mvar 上の同値関係 テンプレート:Math の下で)同値な引数を(テンプレート:Mvar 上の同値関係 テンプレート:Math の下で)同値な値に送ることがある.そのような関数は テンプレート:Math から テンプレート:Math への射と呼ばれる.
位相空間論における商空間
位相空間論において商空間は、与えられた同値関係に関する同値類全体の成す集合上にもとの空間の位相から誘導される位相を入れて得られる位相空間である。
抽象代数学において代数系の台集合上で定義される合同関係は、その関係に関する同値類全体の成す集合上にテンプレート:仮リンクと呼ばれる代数構造を誘導する。線型代数学における商空間は、加法群に関して商群をとることによって得られるベクトル空間で、その商写像は線型写像になる。用例を敷衍して、抽象代数学において商加群、商環、商群などの任意の商代数系のことを「商空間」と呼ぶことがあるが、より一般の場合においてもしばしば群作用の軌道とのアナロジーによって「商空間」の語を用いることがある。
適当な集合上に定義された群作用の軌道全体の成す空間は、その集合の群作用に関する商空間とも呼ばれる(特に群作用の軌道空間が作用群の部分群による(部分群によるもとの群への左移動作用から生じる)右剰余類集合、あるいは右移動による軌道としての左剰余類集合になっている場合)。
位相群の正規部分群がもとの群に移動作用で作用しているときの商空間は、位相空間の意味でも抽象代数学の意味でも群作用の意味でも同時に商空間になっている。
商空間という言葉を、更なる構造も含めたうえで、任意の同値関係による同値類集合に対して用いることはできるけれども、商空間と呼ぶ目的は一般に、集合 テンプレート:Mvar 上の同値関係の種類をもとの テンプレート:Mvar に入っているのと同じ種類の構造を同値類集合上に誘導する同値関係と、あるいは群作用の軌道空間と比較することである。同値関係で保たれる構造の意味でも、群作用に対する不変量の研究の意味でも、いずれも上で与えた同値類の不変量の定義が導かれる。
関連項目
- Equivalence partitioning, a method for devising test sets in software testing based on dividing the possible program inputs into equivalence classes according to the behavior of the program on those inputs
- 等質空間: リー群の商空間.
- テンプレート:仮リンク
脚注
出典
関連文献
This material is basic and can be found in any text dealing with the fundamentals of proof technique, such as any of the following:
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de:Äquivalenzrelation#Äquivalenzklassen nl:Equivalentierelatie#Equivalentieklasse ru:Класс эквивалентности