志村多様体

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テンプレート:要改訳 志村多様体(Shimura variety)とは代数多様体であってモジュラー曲線の高次元化とみなせるような整数論で重要な対象である。有理数体上の簡約代数群テンプレート:仮リンク(congruence subgroup)によるテンプレート:仮リンク(Hermitian symmetric space)の商として定義される。テンプレート:仮リンクテンプレート:仮リンクは志村多様体の例である。

志村多様体ははじめ志村五郎により虚数乗法論の一般化の中で導入された。志村は解析的に定義されたその多様体が数論的な対象であることを示した。すなわち、志村多様体は反射体とよばれる数体の上定義される。1970年代に、ピエール・ドリーニュ(Pierre Deligne)は、志村の仕事の公理的なフレームワークを作り出した。同時期にロバート・ラングランズ(Robert Langlands)は、ラングランズ・プログラムの文脈において、テンプレート:仮リンク(Motivic L-function)と保型形式のL-函数の対応のある例を志村多様体が作り上げることに注目した。志村多様体のコホモロジーの中に現れる保型形式は、一般的な保型形式よりも研究しやすい。たとえば、保型形式に対応するガロア表現を構成することができる。

定義

志村データ

S = ResC/R Gm複素数から実数への乗法群のテンプレート:仮リンク(Weil restriction)[1]とする。これは実代数群であり、群は R-点で、S(R) は C* で、C-点の群は C*×C* である。志村データ(Shimura datum)は、有理数Q 上で定義された簡約代数群 G と、次の公理を満たす群準同型 h: S → GR の G(R)-共役類 X からなるペア (G, X) である。

  • X の任意の h でウェイト(weight)が (0,0), (1,−1), (−1,1) のものは、gC の中にある、つまり、複素化された G のリー代数は下記の直和に分解する。
𝔤=𝔨𝔭+𝔭,
ここに、任意の z ∈ S に対して、h(z) は最初の加える数に自明に作用し、z/z¯ (それぞれ z¯/z)を通して第二の(第三の)加える数(第三の和)へそれぞれ作用する。
  • GR の随伴群は、H 上で h の射影が自明となるような Q 上に定義された要素 H を持たない。

これらの公理から X は一意な複素多様体の構造(離散的でもよい)を持ち、全ての表現 ρ: GR → GL(V) に対して、族 (V, ρ ⋅ h) がホッジ構造の正則な族をなし、さらに、ホッジ構造の変形を形成し、X はテンプレート:仮リンク(hermitian symmetric domain)の有限個の合併となることを示すことができる。

志村多様体

AƒQアデール環とする。十分に小さなコンパクトな G(Aƒ) の開部分集合 K に対して、テンプレート:仮リンク空間

ShK(G,X)=G()X×G(𝔸f)/K

は、Γ \ X+ の形をしたテンプレート:仮リンクの有限個の合併である。ここに、プラスの添字は連結成分を表している。多様体 ShK(G,X') は複素代数多様体で、それらは十分に小さなコンパクト開部分空間 K のすべてに対し、函手として逆極限[2]を形成する。この逆極限

(ShK(G,X))K

は、自然に右作用 G(Aƒ) が作用する。これを志村データ (G, X) に関する志村多様体といい、Sh(G, X) で表す。

歴史

エルミート対称空間の特別なタイプと合同群 Γ に対し、ΓX=ShK(G,X) の形の代数多様体とそのテンプレート:仮リンク(Baily–Borel compactification)は、1960年代に一連の志村五郎の論文で導入された。後日、彼のモノグラフとして出版されているが、志村のアプローチは、虚数乗法論の相反法則の最大限の一般化を追求する研究で、現象的にも広い範囲に及ぶ。時代は遡るが、「志村多様体」と言う命名はピエール・ドリーニュ(Pierre Deligne)が導入し、彼は志村理論の中で独立した抽象的な形をしている部分の研究を推し進めた。ドリーニュの定式化では、志村多様体はホッジ構造のあるタイプのパラメータ空間である。このようにして、彼らは、レベル構造を持つ楕円曲線モジュライ空間がそうであったように、モジュラ曲線の自然に高次元への一般化を作り出した。多くの場合、志村多様体が解であるようなモジュライ問題は同一視することができる。

F を総実な数体とし、D を F 上の四元数斜体とする。乗法群 D× は標準的な志村多様体を引き起こす。その次元 d は D が分解する無限の座(place)の数である。特に、d = 1 (例えば、F = Q や D ⊗ R ≅ M2(R))のとき、D× の十分小さなテンプレート:仮リンク(arithmetic subgroup)を固定すると、志村曲線を得ることができ、この構成から得られる曲線は既にコンパクトである(すなわち、射影的)。

明らかに方程式が知られている志村曲線の例は、以下の括弧の中の種数のテンプレート:仮リンク(Hurwitz curve)である。

と、次数 7 のテンプレート:仮リンク(Fermat curve)である。[3]

志村多様体の他の例は、テンプレート:仮リンク(Picard modular surface)やテンプレート:仮リンク(Hilbert–Blumenthal varieties)がある。

標準モデルと特殊点

各々の志村多様体は、反射体と言われる標準的な数体 E の上に定義することができる。志村多様体は解析的に(すなわち複素多様体として)定義されるが、このことから数論的な重要性を持っていることが示唆される。志村多様体は相互法則の志村による定式化の出発点を形成し、そこで特殊点とよばれる点が数論的に重要な役割を担う。

志村多様体上の特殊点の集合のザリスキー閉包の性質は、テンプレート:仮リンク(André-Oort conjecture)により記述される。一般化されたリーマン予想を前提として、条件付きの結果としてこの予想が得られる。[4]

ラングランズプログラムの中の役割

志村多様体はラングランズ・プログラムの中で際立った役割を果たす。典型的な定理として、アイヒラー・志村の合同関係式があり、これはモジュラー曲線のハッセ・ヴェイユのゼータ函数が、明示的にあたえられるウェイト 2 のモジュラ形式のL-函数の積であることを意味している。実際、この定理の一般化の過程で、志村五郎はこの多様体を導入し、彼の相反法則を証明した。他の数体上の群 GL2およびその内部形式(つまり四元数の乗法群)からさだまる志村多様体のゼータ函数は、アイヒラー(Eichler)、志村、久賀、伊原により研究された。彼らの結果を基礎として、ロバート・ラングランズ(Robert Langlands)は次の予想を立てた。ある数体上に定義された任意の代数多様体 W のハッセ・ヴェイユのゼータ函数は、保型形式のL-函数の積となるのではないだろうか、すなわち、保型表現の集まりから発生するはずである。しかし、このタイプの記述は哲学的な性質であるが、W が志村多様体のときは証明されている。[5] ラングランズのことばから引用する。

テンプレート:Cquote

脚注

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参考文献

テンプレート:Refbegin

  • テンプレート:Citation
  • James Arthur, David Ellwood, and Robert Kottwitz (ed) Harmonic Analysis, the Trace Formula and Shimura Varieties, Clay Mathematics Proceedings, vol 4, AMS, 2005 ISBN 978-0-8218-3844-0
  • Pierre Deligne, Travaux de Shimura. Séminaire Bourbaki, 23ème année (1970/71), Exp. No. 389, pp. 123–165. Lecture Notes in Math., Vol. 244, Springer, Berlin, 1971. テンプレート:MathSciNet, Numdam
  • Pierre Deligne, Variétés de Shimura: interprétation modulaire, et techniques de construction de modèles canoniques, in Automorphic forms, representations and L-functions, Proc. Sympos. Pure Math., XXXIII (Corvallis, OR, 1977), Part 2, pp. 247–289, Amer. Math. Soc., Providence, R.I., 1979. テンプレート:MathSciNet
  • Pierre Deligne, James S. Milne, Arthur Ogus, Kuang-yen Shi, Hodge cycles, motives, and Shimura varieties. Lecture Notes in Mathematics, 900. Springer-Verlag, Berlin-New York, 1982. ii+414 pp. ISBN 3-540-11174-3 テンプレート:MathSciNet
  • テンプレート:Citation
  • テンプレート:SpringerEOM
  • J. Milne, Shimura varieties and motives, in U. Jannsen, S. Kleiman. J.-P. Serre (ed.), Motives, Proc. Symp. Pure Math, 55:2, Amer. Math. Soc. (1994), pp. 447–523
  • J. S. Milne, Introduction to Shimura varieties, in Arthur, Ellwood, and Kottwitz (2005)
  • Harry Reimann, The semi-simple zeta function of quaternionic Shimura varieties, Lecture Notes in Mathematics, 1657, Springer, 1997
  • Goro Shimura, The Collected Works of Goro Shimura (2003), vol 1–5
  • Goro Shimura Introduction to Arithmetic Theory of Automorphic Functions

テンプレート:Refend

  1. L/k を体の有限拡大とし、X を L 上に定義された代数多様体とする。k-スキーム(schemes)op から集合への函手 ResL/kX を次のように定義する。
    ResL/kX(S)=X(S×kL).
    (特に、ResL/kXk-有理点は、X の L-有理である。この函手をテンプレート:仮リンクする多様体をスカラーの制限といい、もし存在すれば一意に決定する。この函手 ResL/kヴェイユの制限(Weil restriction)と言う。
  2. カテゴリ論の中で、射影極限に相当する。「逆極限」という用語を用いた.
  3. Elkies, section 4.4 (pp. 94–97) in テンプレート:Harv.
  4. http://people.math.jussieu.fr/~klingler/papiers/KY12.pdf
  5. 評価:多くの例が知られていて、志村多様体から「来た」という意味は、少し抽象的な意味となっている.