アンサンブルカルマンフィルタ

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アンサンブルカルマンフィルタ(Ensemble Kalman Filter;EnKF)とは、逐次型データ同化手法の一つである。シミュレーションモデル内の状態を表す確率変数について、その分布を実現値集合(アンサンブルと称す)によって保持し、観測を得るごとに、観測モデルをもとにしたカルマンフィルターによる推定により、2次モーメントまでが一致するよう、アンサンブルを修正することを繰り返す方法である。


概略

まず、時刻kにおけるシミュレーションモデル(状態方程式)は以下である。

𝒙k=𝒇k(𝒙k1,𝒗k)

ここで、𝒙kは状態ベクトル、𝒗kはシステムノイズである。

また、観測モデル(観測方程式)は、以下である。

𝒚k=𝒉k(𝒙k,𝒘k)

ここで、𝒚kは観測ベクトル、𝒘kは観測ノイズである。

本項目では、以下の線形の観測モデルを考える。

𝒚k=𝑯k𝒙k+𝒘k

ここでN個のアンサンブル{𝒙k1k1}i=1Nを考えたとき、条件付き分布pを以下のようにδ関数を用いて近似する。

 p(𝒙k𝒚1:k1)1Ni=1Nδ(𝒙k𝒙kk1(i))
 p(𝒙k𝒚1:k)1Ni=1Nδ(𝒙k𝒙kk(i))

アンサンブルカルマンフィルタの解析は、予測(prediction)、濾波(filtering)および平滑化(smoothing)の三つの推定問題に分類することができる。以下に三つの問題を示す。

予測

アンサンブルメンバー𝒙k1k1(i)をシミュレーションモデルに基づいて更新し、予測分布のアンサンブルを得る。すなわち、以下の式が得られる。

𝒙kk1(i)=𝒇k(𝒙k1k1(i),𝒗k(i))

濾波

𝒙kk1(i)=𝒙kk1(i)1Nj=1N𝒙kk1(j)
𝑽^kk1=1N1j=1N𝒙kk1(j)𝒙kk1(j)T
𝑹^k=1N1j=1N𝒘k(j)𝒘k(j)T

次に、以下のカルマンゲインより、アンサンブルメンバーを得る。

𝑲^k=𝑽^kk1𝑯kT(𝑯k𝑽^kk1𝑯kT+𝑹^k)1
𝒙kk(i)=𝒙kk1(i)+𝑲^k(𝒚k+𝒘k(i)𝑯k𝒙kk1(i))

平滑化

以下のアンサンブルメンバーを得る。ここで、𝑱^kkはカルマンゲインに相当する。

𝑱^kk=1N1(i=1N(𝒙kk1(i)𝒙^kk1)(𝒙kk1(i)𝒙^kk1)T)𝑯kT(𝑯k𝑽^kk1𝑯kT+𝑹^k)1
𝒙kk(i)=𝒙kk1(i)+𝑱^kk(𝒚k+𝒘k(i)𝑯k𝒙kk1(i))

参考文献

  • 中村和幸、上野玄太、樋口知之;データ同化:その概念と計算アルゴリズム、統計数理、第53巻、第2号、pp.211-229、2005.
  • 三好建正;アンサンブル・カルマンフィルタ‐データ同化とアンサンブル予報の接点‐、天気、Vol.52、No.2、pp.93-104、2005.
  • Evansen, G.: The ensemble Kalman filter : theoretical formulation and practical implementation, Ocean Dynamics, 53, pp.343-367, 2003.
  • Hamill, T.M.: Ensemble-based atmospheric data assimilation, A tutorial, NOAA-CIRES Climate Diagnostics Center, pp.1-46, 2003.